【インタビュー】eastern youth 吉野 寿「止まらないで行こうと思ってます。止まるのは簡単だから」

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■同じプレイはもう二度とできないんで、全然別のバンド──新人としてまた頑張ります。
■(ライブハウスの)昼の部から始めますよ。

── ちょっと2014年を振り返ってみたいんですが、とても表層的なムードがあった1年だったんじゃないかと思っていて。たとえばアイスバケツチャレンジだって、チャリティーの精神から始まってるのに、人を助けるためには氷水かぶるくらいの勇気が必要だっていう悲しい現実が表れてしまったような気もします。ハロウィンも異様な盛り上がりになってきて、普段そんなに楽しいことがないのかなって切ない気持ちにもなるというか。だから「直に掴み取れ」を聴いていて、本当に「直に」物事の真ん中を掴んでいくことが大事だって改めて思ったんです。

吉野寿:うん……俺は、そういう群衆の表層的な熱狂みたいなものって、ゲー!って思うから意識的にコミットしたくないクチですよね。直に掴みとって生きてくことは当たり前というか。みんな、言うこと聞くのに慣れすぎちゃってるんじゃないの? ボタン押したら自動的にガチャンってなんかが出てくることに慣れきっちゃってる。本当はガッチャンとは出てこないですからね。自分で掘り起こしたり育てたり、自力でやることが大事。から騒ぎみたいなものを乗り継いで生きていく感覚からは俺は完全に逸脱してますよ。踏み外して生きてますけど、そんなふうに生きていきたいとは思わねぇし。

── 自分とはあまりにも関係ない世界?

吉野寿:街とか世の中に対しては、望む望まざるにかかわらず、関わってるわけですよね。そういう意味では関係ないでは済まないですよね。でも、「俺はイヤだね」って拒否することしかできない。人のことを啓発するような有意義な言葉を言う資格もない。50を目前にしてこんなに情けない大人になるとは自分でも思いませんでした(笑)。でも、ちょっとでもマシになるよう、努力はします……話が逸れちゃいましたね。

── いえいえ。この曲では、向井秀徳さん、ブッチャーズの射守矢さん、group_inouのcpさんという3人のミュージシャン仲間がコーラスで参加してますね。

吉野寿:あとね、PAの子と俺達の物販スタッフの子も加わってくれたんですよ。曲を作ってる段階から、あの部分にコーラスを入れたいと思ってたんです。いわゆるパンクのコーラスっぽい感じ──『民衆の声を聴けー!』みたいな感じの統制された太い合唱じゃなくて、年齢も性別もバラバラで混沌とした感じ。「ワッショイ」とか「ええじゃないか」的なコーラスにしたいと思ってて。でもみんな平日の昼間なんて仕事してるから声かけるの躊躇してて、はじめはバンドの中でパパっとやろうかと思ったんですよ。でも、平日の昼間になんもしてなさそうなのってミュージシャンくらいだから、ダメ元で連絡したら割とすぐ集まってくれました。

── このコーラス、いろんな声が聴こえてきて「街」みたいですよね。

吉野寿:その感じが出したかったんですよ。みんながひとつの方向を向いてるんじゃなくて、バラバラなんだけど同じ声を挙げているところが凄く大事だと思うんですよね。集団としての別人格が生まれてくるっていうことに対して、俺は嫌悪感が凄く強い。だから、ライブとかでみんながこうやってる(両腕を振る)のも大キライ。そういうことやってるバンドがイヤだっていうんじゃなくて、そういう光景がイヤなんです。盆踊りには儀式的な何かを感じるんですけどね。コール&レスポンスとかも基本嫌い。でも、あれは好き! 矢沢永吉さんの「トラベリン・バス」っていう曲で、「ルイジアナ~!」ってところで各自で持ってきたタオルを真上に投げるんすよ。俺も家からタオル持って行ってやったことあるんですけど、あれは楽しかったな。ツウはね、本当に離すと飛んでっちゃうから実はちょっと端っこ持っといてヨーヨーみたいに戻すんですよ。なるほどな~!つって。あ、うちにある花柄のバスタオルとか持ってってみればよかったな。バカにしてんのかって怒られるんかな。

── かもしれない(笑)。「矢沢永吉・ライブ・タオル」ってファンにとっては絶対的ですからね。

吉野寿:みんなで同じことするの楽しいじゃんって気持ちはわかるんですけどね。ただ、それを強制されたり同調圧力が生まれちゃう場合もありますからね。『素直に楽しめないなんて捻くれてるねぇ』なんて言われるけど、放っといてくれって感じですよね。同じことしないと排除されるっていう感覚は、やっぱりちょっと憎んでるっすよね。

── その憎しみはどこから生まれてるんですか?

吉野寿:“個”というものを圧するものはすべて憎いですよね。個こそが尊重されるべきだから。“個”を投げ出して“公”に同調しろという発想は逆転してると思う。『みんなのためにお前を捨てろ』はおかしい。子供の頃からそういうのイヤだったですね。『だってみんな言ってるよ~』の“みんな”って誰だよと思う。逐一個を大事にしていないと、巻き込まれちゃって、知らないうちに磨り減って、ちっちゃくなっちゃう。みんなで同じ方向を向くと熱狂できるんだよね。でも、熱狂って危ない。だからいつでも俺は踏み外していたいというか。右向け右向けじゃないんだよっていうのが大前提としてある。

── そうやって頑なに自分の道を歩いてき人間に対する人生賛歌が、アルバムのラスト「万雷の拍手」のようですよね。

吉野寿:あらためて人生賛歌って言われるとちょっと恥ずかしいですけどね(笑)。

── でもこの曲、完全にアルバムのフィナーレを飾ってますよね。

吉野寿:そうですね。“拍手”っていうのは集団の熱狂の象徴として使ったつもりです。集団の熱狂の中で個は見えなくなって底のほうに沈んでいくわけです。個は突き通そうとすればするほど、熱狂の中では踏みつけられていく。だからひとりでトボトボ歩いていくしかない。でも、別にそれでメソメソするんじゃねぇよっていう。それこそが自由というものだ、という気持ちがあるから。

── この歌を歌うことで、自分を肯定したいという気持ちもありますか?

吉野寿:そういう気持ちはありますよ。変なところで白旗上げたくねぇし。

── 今回のアルバムは、「街の底」から始まってこの「万雷の拍手」で終わっていきます。曲単位じゃなく、まさに何枚もの写真が収まったアルバムのようにストーリーやウネリが内包されていて、1枚のアルバムとしての作品性が素晴らしく高いと思いました。本来アルバムとは、こういう全体性のあるダイナミックなものなんだという提示をした部分もありますか?

吉野寿:それはありますね。曲がひとつぽこっと生まれてくると、その曲の引力が他の曲を呼ぶんですよね。曲同士の関連性でアルバムの流れはできていく。だからいつでもアルバムは、ひと繋がりなんですよ。

── アルバムのタイトルも『ボトムオブザワールド』つまり“世界の底”と名付けられていて、「街の底」から比べて包括的なイメージにスケールアップしてますよね。お見事だと思いました。最後の質問です。「白旗は上げたくない」っておっしゃいましたが、ベースの二宮さんが脱退されたあと、一体イースタンユースはどうなっていくんですか?

吉野寿:札幌で6月の頭にツアーファイナルをやるんですけど、それまではこのままでいきます。でも、このメンバーでもう四半世紀くらいやり続けてきたので、さすがにこの先のことはわからないですね。阿吽の呼吸でプレイしてきたんで、ひとり抜けるとガタッとバランスが変わっちゃうから。同じプレイはもう二度とできないんで、全然別のバンド──新人としてまた頑張ります。昼の部から始めますよ。

── それはまた極端な(笑)。

吉野寿:でも、それくらいバンドにとって大きな変革だからねぇ。ただ、止まらないで行こうと思ってます。無理矢理にでも強引にでも行ってやろうって、捨鉢な気持ちが半分。エライことになるかもわかんないですけど、やってみなきゃわかんないし。止まるのは簡単ですからね。

── 本当に。でも、「裸足の音楽社」の運営関係も二宮さんがやってらっしゃいましたよね。

吉野寿:やるしかないんで、それも引き継ぎます。バカなんで、ほんとヤバいんですけど……(笑)。

── 変な言い方になっちゃいますが、そのヤバさも含めいろいろ楽しみになってきました(笑)。

吉野寿:今後は、トラブルも含めたドキュメント感を全面に出していこうと思っておりますので、乞うご期待です。『あらぁ~、ひでぇことになったなぁ。笑えねぇぞ?』っていう可能性も非常に高いんですけど、そういう事態も含めて楽しみますよ(笑)。楽しんでいかないとね、人生は一度きりだから。

取材・文◎RYOKO SAKAI

  ◆  ◆  ◆

アルバム『ボトムオブザワールド』

2015年2月18日(水)発売
HOS-002 ¥2,600+税
1.街の底
2.鳴らせよ 鳴らせ
3.イッテコイ カエッテコイ
4.ナニクソ節
5.コンクリートの川
6.茫洋
7.テレビ塔
8.道をつなぐ
9.直に掴み取れ
10.万雷の拍手

ワンマンツアー<極東最前線/巡業2015~ボトムオブザワールド人間達~>

3月28日(土) 千葉 LOOK
OPEN/START 17:30/18:00 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]SMASH 03-3444-6751
3月29日(日) さいたま新都心 HEAVEN'S ROCK
OPEN/START 17:30/18:00 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]SMASH 03-3444-6751
4月03日(金) 金沢 vanvanV4
OPEN/START 19:00/19:30 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]FOB金沢 076-232-2424
4月04日(土) 長野 ライブハウスJ
OPEN/START 17:30/18:00 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]FOB新潟 025-229-5000
4月05日(日) 新潟 CLUB RIVERST
OPEN/START 17:30/18:00 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]FOB新潟 025-229-5000
4月10日(金) 福岡 DRUM Be-1
OPEN/START 19:00/19:30 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]BEA 092-712-4221
4月11日(土) 広島 ナミキジャンクション
OPEN/START 17:30/18:00 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]YUMEBANCHI広島 082-249-3571
4月17日(金) 横浜 F.A.D
OPEN/START 19:00/19:30 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]SMASH 03-3444-6751
4月18日(土) 静岡 SUNASH
OPEN/START 17:30/18:00 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]JAILHOUSE 052-936-6041
4月19日(日) 京都・磔磔
OPEN/START 17:30/18:00 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]SMASH WEST 06-6535-5569
5月09日(土) 松山 Double-u Studio
OPEN/START 17:30/18:00 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]DUKE松山 089-947-3535
5月10日(日) 岡山 ペパーランド
OPEN/START 17:30/18:00 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]YUMEBANCHI岡山 086-231-3531
5月16日(土) 盛岡 the five
OPEN/START 17:30/18:00 ¥3,500 (ドリンク別途)
[問]GIP 022-222-9999
5月17日(日) 仙台 CLUB JUNK BOX
OPEN/START 17:30/18:00 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]GIP 022-222-9999
5月23日(土) 名古屋 クラブクアトロ
OPEN/START 17:00/18:00 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]JAILHOUSE 052-936-6041
5月24日(日) 梅田 クラブクアトロ
OPEN/START 17:00/18:00 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]SMASH WEST 06-6535-5569
5月30日(土) 渋谷 TSUTAYA O-EAST
OPEN/START 17:00/18:00 ¥3,500(ドリンク別途)
[問]SMASH 03-3444-6751
6月06日(土) 札幌 cube garden
OPEN/START 17:30/18:00 ¥3,500 (ドリンク別途)
[問]SMASH EAST 011-261-5569

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