【インタビュー後編】「サンダーとツェッペリンとメイデンが合体してしまったような曲だ」

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サンダーが最高のライヴ・バンドであることは、1991年の初来日を知るオールド・ファンから、2014年の<ラウド・パーク14>フェスで彼らを知った若いリスナーまで、世界中のロック・ファンが知るところ。ニュー・アルバム『ワンダー・デイズ』は、そんな彼らの「全曲ライヴで盛り上がる」という自信に裏打ちされた作品だ。日本限定仕様・初回CD3枚組には『ライヴ・アット・ヴァッケン2013』が収録され、彼らのグレイテスト・ヒッツを、ライヴ・ヴァージョンで堪能することができる作品もリリースされている。

◆サンダー画像

インタビュー前編に続き、シンガーのダニー・ボウズが『ワンダー・デイズ』と、ライヴ・バンドとしてのサンダーについて語ってくれた。

──2014年10月の<ラウド・パーク14>でニュー・アルバムから「ワンダー・デイズ」と「ザ・シング・アイ・ウォント」を演奏しましたが、その時点でアルバムは完成していたのですか?

ダニー・ボウズ:うん、出来上がっていたよ。『ワンダー・デイズ』の曲はどれもライヴ映えするし、もっとたくさんプレイしたかったけど、時間の制約があったんだ。昔の曲もプレイしたいしね。初期のアルバムはスタジオに入って6週間ぐらいで一気に作っていたけど、今回は短いセッションを数回行って、徐々に作っていくようにした。2014年の3月、6月、8月末の3回かな。セッションの合間に新しい曲を書いたり、聴き直してアレンジを変えたりできたし、良い結果を得られたと思うよ。普段より制作費はかかったけど、その価値はあった。ミックスが終わったのが9月だから、まだ湯気が立っている状態で、長いあいだサンダーを応援してくれた日本のファンへのプレゼントとして演奏したんだ。

──<ラウド・パーク14>でその2曲を選んだのは何故でしょうか?

ダニー・ボウズ:最高の曲だからだよ。ルーク(・モーリー/ギター)がサンダーとしてのニュー・アルバムを作ることを提案してきたのは、2013年の終わりだった。この年、何度もライブをやって、バンドにマジックが残っていることはわかっていた。でも新作を作ることには躊躇があったんだ。全員が「うーん」と首をひねったけど、ルークは「とにかくデモを録るから聴いてくれ」と言って、2014年の初めに8曲のデモを送ってきた。「ワンダー・デイズ」はイントロを聴いただけで、絶対にうまく行く!と確信させるものだった。「ザ・シング・アイ・ウォント」はローリング・ストーンズと、ある意味INXSを思い出したけど、一瞬で恋に落ちたよ。もう1曲、気に入ったのは「ザ・プロフィット」だった。サンダーとレッド・ツェッペリンとアイアン・メイデンが交通事故に遭って合体してしまったような曲だと思ったんだ。そのうち2曲をプレイすることにしたんだよ。

──<ラウド・パーク>初参戦の感想は、どんなものでしたか?

ダニー・ボウズ:文句なしの、素晴らしいフェスティバルだったよ。運営がプロフェッショナルだし、お客さんも盛り上がってくれた。サンダーの音楽性は他の出演バンドとかなり異なっていたと思うけど、それがむしろ良かったんじゃないかな。ただ、ベン(・マシューズ/ギター)が病気で参加出来なかったのは残念だった。ルークのもうひとつのバンド、ザ・ユニオンのピーター・ショルダーが助っ人で良い仕事をしてくれたけど、やっぱりバンド全員が揃っていないのは不思議な気分だな。次回はベンを含めたフル・ラインアップで<ラウド・パーク>に出演したいね。


──初回限定盤のボーナス・ディスク『ライヴ・アット・ヴァッケン2013』について教えて下さい。

ダニー・ボウズ:このCDは2013年にドイツのフェスティバル<ヴァッケン・オープン・エア>でライブ録音したものだ。“ベスト・オブ・サンダー”のライブ・ヴァージョンで、『ワンダー・デイズ』で初めて私たちの音楽に触れるリスナーには良いイントロダクションとなるし、昔からのファンも楽しめる内容だ。良いショーだったし、世界中のファンに聴いて欲しかったんだ。

──<ラウド・パーク<や<ヴァッケン>を含め、これまでサンダーはハード・ロック/ヘヴィ・メタル系フェスティバルに数多く出演してきて、ブラック・メタルやドゥーム・メタル、グラインドコアなど、毛色の異なるバンドと共演してきましたが、他の出演バンドや観客層とズレは感じませんでしたか?

ダニー・ボウズ:あまり気にしていないんだ。私たちは他のバンドが誰であろうと、ステージに上がって、ベストを尽くすだけだ。自分たちの音楽とライブ・パフォーマンスには自信があるし、普段サンダーを聴かないような観客層も楽しませることに成功してきた。顔を白塗りにしているメタル・キッズをサンダー・ファンにしてしまうのは、いい気分だよ(笑)。<ラウド・パーク>に出演したことで、新しい日本のファンを獲得できたんじゃないかな。

──一躍ブレイクするきっかけになったのが1990年8月の英ドニントン<モンスターズ・オブ・ロック>だったり、サンダーはフェスティバルと縁があるバンドですね。

ダニー・ボウズ:開放感のあるフェス会場で大勢のキッズと楽しむのは、どでかいパーティーなんだ。パーティーに招待されたら、出席するのが私たちだよ。ただ、お客さんが1人しかいない酒場でも、10万人のロック・フリークが集まるフェスティバルでも、やることは同じなんだ。全力でロックンロールを演奏するだけだよ。早く『ワンダー・デイズ』の曲をステージでプレイしたくてたまらないんだ。アルバム全曲、ライヴで盛り上がるタイプの曲だと確信しているよ。


──サンダーの前身バンドであるテラプレインはいわゆるニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル(NWOBHM)の一角と見なされていましたが、当時はフェスティバルで他のバンドと親しむことができましたか?

ダニー・ボウズ:私たちは平和主義者だからね。昔も今も、バックステージで他のバンドと会えば「やあ、元気?」とか話していたし、親しんでいたよ。サンダーを結成してからテラプレインの曲は一度も演奏していないし、どんなサウンドだったかもあまり覚えていないけど、ヘヴィ・メタルをやっていたつもりはないんだ。言ってみれば“サンダーの学生版”という認識だよ。テラプレインのメンバーだったルークと私がミュージシャンとして成長して、アンディ・テイラーという才能あふれるプロデューサーを得たことで、サンダーは成功を収めることができた。ただ、私たちの音楽に対する姿勢は、初めて<レディング・フェスティバル>に出たとき(1982年)から変わっていないんだ。演奏がマシになっただけだ。

──あなたにとっては少年時代だけでなく、テラプレイン時代も“ワンダー・デイズ”だった?

ダニー・ボウズ:うん、その通りだ。まだ若くて無知で、怖いもの知らずだった時代だよ。1985年と1986年の夏は、とてつもなく暑かった。メジャー・レーベルと契約して、女の子のファンもいて、世界を獲ったつもりでいた。結局あのバンドでは成功できなかったけど、サンダーで何枚もアルバムを出して、何度もワールド・ツアーを出来たから、文句はないよ。今でも私たちは“ワンダー・デイズ”を生きているんだ。

──2015年は、あなたとルークが出会って40年、またデビュー・アルバム『バックストリート・シンフォニー』発表から25周年というアニヴァーサリー・イヤーとなります。何か特別なことは予定していますか?

ダニー・ボウズ:うーん、どうだろうな。『バックストリート・シンフォニー』は今でも大好きなアルバムだし、作ることが出来たのを誇りにしている。でもバンドが何度か活動休止を経て、インターバルを挟んでいるのに、25周年だ!と祝うのが正しいことかわからない。でもルークとどこかで食事をして、乾杯したい。私の寒いジョークに長いあいだ付き合ってくれて、本当にありがとうってね。

取材・文:山崎智之
(C)Jason Joyce

『ワンダー・デイズ』

通販限定セット:CD3枚組(『ワンダー・デイズ』+『ライヴ・アット・ヴァッケン2013+『キラー』EP[未発表4曲収録])+『ワンダー・デイズ』2枚組LP+オリジナルデザインTシャツ+「ワンダー・デイズ」直筆サイン入り7インチEPレコード 10,000+税
初回限定盤3枚組CD(『ワンダー・デイズ』+『ライヴ・アット・ヴァッケン2013』+『キラー』EP[未発表4曲収録]』 3,700+税
通常盤CD 2,500+税
ディスク1『ワンダー・デイズ』*通常盤CDはディスク1 のみを収録
1.ワンダー・デイズ
2.ザ・シング・アイ・ウォント
3.ザ・レイン
4.ブラック・ウォーター
5.ザ・プロフィット
6.レザレクション・デイ
7.チェイシング・シャドウズ
8.ブロークン
9.ホウェン・ザ・ミュージック・プレイド
10.サーペンタイン
11.アイ・ラヴ・ザ・ウィークエンド
12.T.B.A. (日本盤限定ボーナストラック)
ディスク2『ライヴ・アット・ヴァッケン2013』
1.ダーティ・ラヴ
2.リヴァー・オブ・ペイン
3.ハイヤー・グラウンド
4.ロウ・ライフ・イン・ハイ・プレイシズ
5.バックストリート・シンフォニー
6.ザ・デヴィル・メイド・ミー・ドゥ・イット
7.ユー・キャント・キープ・ア・グッド・マン・ダウン
8.ラヴ・ウォークド・イン
9.アイ・ラヴ・ユー・モア・ザン・ロックン・ロール
ディスク3『キラーEP』
1.キラー
2.アズ・タフ・アズ・イット・ゲッツ
3.ビッグ・ガンズ
4.ドント・セイ・ザット

【メンバー】
ダニー・ボウズ(ヴォーカル)
ルーク・モーリー(ギター)
ハリー・ジェイムズ(ドラムス)
ベン・マシューズ(ギター&キーボード)
クリス・チャイルズ(ベース)

◆サンダー『ワンダー・デイズ』オフィシャルサイト
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