【インタビュー】問題作「貴方解剖純愛歌~死ね~」でデビューする、あいみょん。「音楽は賛否両論あってこそだと思います」

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1995年生まれ、兵庫県西宮出身のシンガー・ソングライター「あいみょん」。BARKSでは2014年末から注目してきた彼女が、3月4日にシングル「貴方解剖純愛歌~死ね~」を発売しラストラムより遂にデビューする。CDのリリース前から、表題曲のLINEを駆使した現代的なYouTube動画が話題を呼んでいるように、とかくインパクトの強いニューフェイスだ。きっとまず、<死ね。 私を好きじゃないのならば>といったエキセントリックで身勝手な歌詞に耳が行くだろう。実際にこの楽曲は、テレビでもラジオでもオンエアNGをめいっぱいにくらっているのだが、幸か不幸か、それはあいみょんの歌と歌声の圧倒的な存在感の大きさを表してもいる。歌唱はリリックが鮮烈に心臓へ突き刺さってくるように強く、そして何より、キャッチーでメロディアスで普遍的なソングメイキングは、“本当の歌謡曲”にあるような歌そのものから受ける興奮や余韻をリスナーに与えるものだ。だからこそ、決して、せせら笑って受け流せないアーティストなのである。右から左へと移り変わりの激しい現在のポップシーンにおいて、あいみょんの登場は事件と希望そのものだ。特に、ギター1本で弾き語る彼女のライブは、歌があまりにビビッドに届いてくるから絶対に思わず息を呑んでしまうので、今のうちに観ておいて欲しい。誰も言わないタブーの連続のようなステージかもしれないが、どこにもないギザギザとした新鮮な違和感や刺激が与えられるだろう。この年齢にして叙情性の強い歌声にもびっくりして欲しい。シングルのリリース後は、各地のイベント出演も続々と決まってきている。

◆あいみょん 画像

今回のロングインタビューでは、現在19歳の彼女が何故このシングルをもって音楽シーンという荒野に現れたかを、じっくり訊いている。いまのところの、あいみょん全史だ。これまでの20年足らずの人生の中で、彼女がいかに彼女としてあるために何を思って何を得て何を歌にしてきたのか。その道筋からは、音楽や生き方が本来あるべき姿まで見えてくるのではないかと思う。綺麗事を嫌い、誤解を受けることを恐れずにポップシーンへと踏み出しているあいみょんには、パンクやロックの精神性もデフォルトで備わっているのだろう。全力で応援する。

  ◆  ◆  ◆


■友達がYouTubeに載せてくれた動画が今の事務所の人の目に止まったんです。
■男の人目線で書いた歌謡曲で、河島英五さんタイプの曲でした。

──19歳らしい爽やかさのない音楽性が、個性的で面白いと思ってます。

あいみょん:ありがとうございます(笑)。

──これまで、音楽とどういうふうに付き合ってきたんですか?

あいみょん:音楽の道では生きていけないと思ってたんで、夢に一直線っていうわけではなかったですね。他のこともやりつつ、あわよくばみたいな存在でした。

──でも、お父さんがPAの仕事をされていたり、環境的には恵まれてたわけですよね?

あいみょん:そうですね。でも、お父さんの力は借りたくなかったんです。歌手になりたいっていう気持ちは根っこのところにはあったし、たしかに音楽がある環境ではあったんですけど、なかなか行動には移せなかったですね。うちは6人姉弟の上が年子で3姉妹なんですけど、よく3人で競って歌っていたりして。その中でも私は家族からオンチって言われてたので、『歌手になりたい』って言うのも恥ずかしかったくらいですし。たまにギター持って曲作りはしてましたけど、自己満でした。高校卒業した頃は一番迷ってましたね。周りのみんなは大学に行っちゃって、『どうしよう……』って。

──そこからデビューするまでの道のりはどういうものだったんですか?

あいみょん:自分からオーディションを受けたりできなくて、友達がYouTubeに載せてくれた動画が今の事務所の人の目に止まったんです。高校2年生くらいの時の私が歌ってる映像なんですけど、曲は男の人目線で書いた歌謡曲というか。事務所の方が言うには、あの曲を歌ってなかったら声をかけられてなかったみたいなので、本当に偶然見つけてもらったっていう感じで(笑)。

──でも、1曲にそれだけの魅力があったんだと思いますけどね。具体的にどういう曲?

あいみょん:ざっと言うと、河島英五さんタイプの曲です。

──渋い!(笑)。酒と泪と……みたいな?

あいみょん:そうですそうです(笑)。河島英五さんに凄く憧れていた時期があったので。

──偶然じゃなくて、もう個性があったんですよ。今回のデビューシングルも、19歳くらいの女の子が歌いそうな等身大の表現──「夢を追ってます」とか「いつもありがとう」っていう内容ではないですよね。すでに成熟した歌謡曲というか。

あいみょん:やっぱり、自分が歌謡曲が好きっていうのは大きいと思いますね。フレッシュな曲を作って歌っても、なんか気持ち悪いんですよね……。

──気持ちが入っていかないんだ。

あいみょん:そうなんですよ。歌謡曲を聴くようになってから、言葉も渋いのに憧れてきたからですかね。でも嬉しいです、ちゃんと歌謡を感じてもらえて(笑)。

──すごく感じますよ。「貴方解剖純愛歌」も、<死ね>っていう強烈な言葉が出てくるけど、これは「愛憎」という恋愛歌謡曲にある核を表現しているリリックだと思ってるんですね。

あいみょん:そうですね。

──だからこの曲は、これまでのラブソング史みたいなものの最新版だと思うし。やっぱり鋭い言葉だから、世間に言葉の外面だけを切り取られる可能性もあるけど、“歌”というものが本来持ってる味わい深さみたいなものが、「貴方解剖純愛歌」にはありますよね。

あいみょん:そういった奥深さみたいなものは凄く好きです。今は機械を使ったりしていろんな音が出せるけど、昔はギターだけとかピアノだけで聴かせてたわけじゃないですか。そういう音楽は歌詞がすごく入ってくるから好きなんです。ガヤガヤしたヒップホップのバンドとかもよく聴いてましたけど、そういう曲ってもうありふれてるというか。他にも私は、浜田省吾さんとか渋い方が大好きなので(笑)。浜田省吾さんを聴き始めた高校くらいからですかね、歌謡曲みたいな歌を作りたいってずっと思ってるんです。

──今のポップシーンにはないから自分で作りたいっていう。

あいみょん:流行りには乗りたくないっていう気持ちは強いです。それを実際にどう曲でアピールするかだと思ってます。昭和の名曲とかってどうしても忘れられがちですけど、私はリスペクトしてるんで、引き継ぐっていうとおこがましいですけど。そういう音楽も踏まえて、新しいものを作りたくて。「貴方解剖純愛歌」はそういう意味では、言葉の組み合わせとか言葉遊びは新しいって自分では思ってます。



■たまたま、“ねぇ”と“死ね”の語呂が合っただけなんです。
■だから執念深く書いた曲ではないんです(笑)

──そうですね。この曲の凄いところは、好きな人に語りかける言葉である「ねぇ」と、相手を全否定する言葉「死ね」が韻を踏んでいるところで。これだけでも「愛憎」を見事に表現してると思います。

あいみょん:でもこの曲、10分くらいで結構スラっとできてしまったんです。「ねぇ」っていう言葉から自然と「死ね」が出てきたんです。

──凄い。自然だったことに作詞の才能を感じる。

あいみょん:なんとなく音楽活動を本格的にスタートするにあたって、とりあえず50個くらい作っていた曲の中の1曲でもあるんです。その時に、『死ねとか思っちゃう気持ちとかも書いてもいいんだな。』って思った機会があって。でも、絶対に“死ね”を入れようとしてたわけではなくて、たまたま“ねぇ”っていう言葉と語呂が合っただけなんです。だから執念深く書いた曲ではなくって(笑)。

──この歌詞、リリース前なのに“ストレート”っていう枕詞がもうついて回ってるじゃないですか。YouTubeのコメント欄にも、いっぱいそういう感想が出てますよね。でも、この曲のストレートさって、自分の気持ちをストレートに表現したわけでもないですよね?

あいみょん:確かに自分の気持ちを書いた曲ではなくて、女の人の根っこを代弁したつもりなんです。私は他の曲に対しても、みなさんの思い出や気持ちを歌っているという感覚で歌ってるというか……自分ではストレートに書いてるっていう意識はまったくないんですよ。いちいち綺麗な言葉に置き換えるわけではなく、そのまま書いているという感覚。「貴方解剖純愛歌」に共感してくれてる女の人は、ストレートさに興味を持ってくれてるわけではない気がしてるんです。男の人はだいたい、ストレート過ぎる!とかどーたらこーたら言いますけどね(苦笑)。

──まぁ猟奇的かもしれないけど、本当は女の人の悲しい気持ちを歌った曲ですもんね。

あいみょん:そうなんです。ピュアな女の人の歌です。好きな人のそばにいるためには、好きな人を切り刻んで自分に身に付けるしかないっていう切ない曲です。

──ネット上では、リスナーから「曲調かわいいのにメンヘラ過ぎ」とかっていう言葉も挙がっていて。

あいみょん:はい(笑)。

──ポップな曲調と極端な歌詞っていうギャップは、狙ってるんですか?

あいみょん:それもまったく意識してなかったです。いま言われて、『あ、そうなのか』って初めて思いました。最初は自分の歌詞が極端って言われることの意味もわからなかったですし……でも、YouTubeで公開する前は、使ってる言葉によってもっと私自身を否定されると思ってたんです。怖がられたり気持ち悪がられたりするんじゃないかって。もちろん、やっぱりそういう人も中にはいましたけど、割と受け入れてもらえたことは意外だったんですよね。この曲でそういう反応をもらえたからこそ、素直に歌を作れるようになりましたし。


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