【インタビュー】問題作「貴方解剖純愛歌~死ね~」でデビューする、あいみょん。「音楽は賛否両論あってこそだと思います」

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■親には、「ここで言ってる“死ね”と他で使われてるような“死ね”は別やから」
■って説明して、今は理解してもらってます。

──この曲でデビューするって、割とリスキーだとは思いませんでした? だってみんなに、「なんか凄いの出てきたな」ってまずは思われるじゃない?

あいみょん:そうですよね、びっくりしますよね。『この曲でデビューか!』って、親が一番びっくりしてると思いますけど(笑)。

──(笑)。親御さんはなんて言ってるの?

あいみょん:うちって、“死ね”って言っちゃダメな家なんですよ。

──だいたいの家庭はそうかな(笑)。

あいみょん:親には、『ここで言ってる“死ね”っていう言葉と他で使われてるような“死ね”は別やから』って説明して、今は理解してもらってます。だって、歌は別だけど、もちろん私だって人に向かってこんな言葉を言うのイヤですから。でも、言っちゃう時って実際あると思うんですよね。

──そこまで感情が高ぶる状況はあり得ますよね。

あいみょん:そう思うんです。もし家族が誰かに殺されたら、犯人のこと“死ね”って言うのは普通やん?って友達にも言ったんですよ。それでもそんなこと言っちゃダメなんて綺麗事言う人は、嫌いって思っちゃいます。



──あいみょんの歌にも綺麗事が全くないですよね。でも、ライブでこの曲を歌ってる時は、割とはっきり「死ね~!」って発音しなきゃいけないじゃない? 綺麗事云々じゃなくて、歌うのにやっぱりエネルギー要りません?

あいみょん:結構疲れます(笑)。昔はこの曲歌うときに、“死ね”の部分までめっちゃ人の顔色が気になってたんですよ。どう思われるんやろうって。初めて歌った時は、“死ねぇぇぇ~~~”とかって声がブルブルブル~って震えちゃってたんですよ。

──それ怖いです(笑)。

あいみょん:今は全然そんなことなくて、この曲を聴きに来てくれる人もいるからそんな中途半端には歌えないし、しっかり歌えるようにはなったんですけどね。1年前くらいに、この曲できてからすぐにライブがあったんですけど、当日急にこの曲をやることになって心の準備がまったくできてなかったんですよね。

──でも1年前って、結構最近ですね。

あいみょん:そもそもライブ自体まったくしてなかったんです。路上ライブとかも、しようと思ったら暑かったり寒かったりで、タイミングが合わなかったんで……。

──それは自分次第でいくらでもできたと思うな(笑)。

あいみょん:それくらい音楽に対する行動力がまったくなかったんですよね(笑)。趣味に関する行動力はめちゃくちゃあって、映画観たり写真撮ったり、友達とチャリでどっか遠く行ったりするのは好きだったんですけどね。音楽は、ほんまひと握りの世界だって決めつけてたし。親は『諦めるな』って言ってくれてたんで諦めてはなかったですけど、それと比例して反対する人も多かったから、そこまでのめり込まないようにしていたというか……。

──でもそれって、歌手になるっていうことのレベルが自分の中で高かったからだと思いますよ。

あいみょん:あぁ、理想は高かったと思います。なるからには絶対中途半端にはやりたくないって思ってましたし。

──今は、「貴方解剖純愛歌」を作ったことで自由に音楽を作れるようになったわけですよね?

あいみょん:そうですね。「貴方解剖純愛歌」から曲作りのペースが上がりました。今は110曲くらいあります。よく映画を観るので、映画の主題歌を作る感覚で曲を作ったり、ライブの対バン相手のことを歌った曲だったり、友達に言わずに終わったことを曲にしたり、割と普段の生活の中から生まれてます。

──作詞は、何かひとつのフレーズが浮かんでそこから膨らませる感じかなと思うんですけど。

あいみょん:そうです、そうです。1個の単語から膨らんでいきます。だいたい歌詞と曲は一緒に作っちゃうんです。サビのメロディ作っちゃえば、電車に乗りながらでも作詞はできますからね。

──「いいことしましょ」はどうやって生まれたんですか? この曲はなんというか、名異色作というか。

あいみょん:「貴方解剖純愛歌」を作ったあとに、セクシーな曲もあってもいいんじゃないかっていうアイデアを貰ったんですけど、エロくしてやろう!っていう気持ちはなくて。綺麗に聴こえる青春ソングを作りたかったんです。だからブックオフに行って官能小説を買ったんですけど、強烈なこと言ってるのに比喩表現がすごく綺麗でめっちゃ素敵だったんですよ。この曲も実は凄いこと言ってるけど、パッと聴くと一瞬綺麗に聴こえるんですよね。

──ライブで初めて聴いた人は、ザワザワし出すよね。曲がいいだけあって演奏後に拍手しづらいというか(笑)。私は、みんなのびっくりしてるリアクションを見て、「いいぞいいぞ」ってガッツポーツしてるような気分でいます(笑)。

あいみょん:たまに凄い顔して聴いてる人いるんですよ(笑)。『“この膨らみ”って!? どういうこと!? やだ~!』みたいな。私は、そういうリアクションを面白いなと思ってるんですけどね。

──もう賛否両論を楽しんでるんですね。

あいみょん:そうですね。歌に対して何か酷いこと言われても落ち込んだりしないですからね。もともとそういう世界だっていうのは知ってるし、逆に全員が『いい』って言ったら、変なことになってるぞって思うんで。数人が『いい』って言ってくれればいいと思ってます。みんなが『いい』って言ってる映画なんて、そんなに観に行きたいとは思わないですしね。

──いわゆる全米が泣いたとかね。

あいみょん:泣かないですからね。音楽は賛否両論あってこそだと思うんです。賛否両論があってこそ、人はその曲を聴いてみたいと思うはずなんですよ。だから聴きたくなる要素を作らないといけないと思ってます。その上で私は、自分が歌ってて楽しいかが大事なので、自分で書いててニヤニヤしたりワクワクするかどうかで判断しますね。

──自分と曲をちゃんと分離させてるんでしょうね。だからお客さんがザワッとするような作家性の高い歌が作れるのかもしれない。でも、自分を励ますために曲を書いて歌うシンガーソングライターの女の子って、普通に多いわけで。

あいみょん:そうですね。でも私は、イヤなことあったら寝ます。寝るか、なんか別のことします。歌詞を殴り書きしたりもしないですし。イヤなことは思い出したくないですもん(笑)。自分の曲に励まされたことって、まったくないですね。「いいことしましょ」で励まされるわけないですしね(笑)。

──(笑)。でも、10代後半とか20代前半くらいの年齢だと、学校とか家族っていう暫定的な組織から割と飛び出していかないといけない時期じゃないですか。

あいみょん:……たぶん、私にとってまだ音楽は生きがいではないんです。音楽で食べれるようになったら、生きがいやって初めて言えるのかなと思っていて。でももちろん、全力で音楽はやってますよ。支えてくれてる人のためにも、家族のためにも……そもそも歌手になりたいって思ったのは、貧乏で歌手になる夢を叶えられなかったおばあちゃんのためなんで。


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