【インタビュー】吉澤嘉代子、「自分じゃない誰かに歌うことができるようになった、それがすごくうれしい」

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吉澤嘉代子のメジャー1stアルバム『箒星図鑑』がリリースされた。インディーズ時代の作品『魔女図鑑』から、デビュー作『変身少女』、2作品目の『幻倶楽部』を経て発表されたのは、吉澤嘉代子の初期の集大成といえる1枚。今作には、吉澤の少女時代をモチーフにした13曲、13人の主人公が登場する。
その主人公の少女たちが描くストーリーには、幸せな気持ちになったり、笑えたり、切なくなったり、懐かしくなったり、毒や棘を感じてドキリとしたり、共感を覚えたり……。終始心が揺さぶられるこの“図鑑”は、女子が欲しかったもの、だと思う。
そんな『箒星図鑑』から、収録曲をいくつかピックアップして、楽曲に込められた思いや秘話を聞いた。

◆子供の頃にあった“根拠のない自信”を
取り戻したいと思って書いた曲



――BARKSの取材はメジャーデビュー・ミニアルバム『変身少女』の時以来になるのですが、デビュー以降、活動の変化、心境の変化などはありましたか?

吉澤:正確にはデビューから 1年弱なんですけど、もう“1年経ったんだ”と思うくらい、濃厚な1年だったなと思います。変化したことは、自分の頭の中だけで構築していたものを、周りの方にたくさん引き出してもらって、実現させていくことができたことですね。あとは、デビュー後、私の曲を聴いてくれる、ライブを観に来てくれるお客さんの存在が、何よりも支えになっているな、と感じています。

――メジャーデビュー後は、ワンマンライブをやることも増えましたしね。

吉澤:お客さんが私のライブを観に来てくれることに、とても幸せを感じるんですけど、特にワンマンライブをやると、いまだに “みんなが私を見ている!私はそんな人間じゃないのに!”ってハッとすることがあります(笑)。作品に対しては自信過剰なくらいなんですけど、自分にはあまり自信がないので……。でも、お客さんは私のことを好きだと思ってライブに来てくれるわけですから、その方たちに対して“自信がない”姿を見せるのはよくないと思っているんですけど、そこはまだあまり変わっていないですね。うーん、変わったこと……歌を届けるという意識は変わりました。今回『箒星図鑑』には新録した曲があるんですけど、前に録ったのと今回録ったのでは、歌に違いがあるように思います。


――では、その新作『箒星図鑑』から、楽曲についてお伺いしていきます。まずは、今作のリード曲となった「ストッキング」についてですが、この曲は、少女の頃に“魔女修行”をしていた吉澤さんのならではの曲だなと思ったのですが。

吉澤:子どもの頃、コミュニケーションが苦手だった私は、魔女修行をして自分の世界を繰り広げていたんですね(笑)。魔女修行をしていれば、いつか魔女がやって来て、その魔法で、どこか別の場所で特別な人になれると信じていました。大人になって、自分で曲を書くようになって、音楽の世界に入り込んだときに、上を見上げてはすごい人たちばかりだから、“自分はこれで大丈夫なんだろうか?”と自信をなくしていたんです。そんなときに、子供の頃にあった“根拠のない自信”を取り戻したいと思って書いた曲です。

――魔女修行をしていたことがきっかけで、大人になって自分の曲になるとは、子どもの頃の吉澤さんは思ってもみないでしょうね。

吉澤:魔女修行をしていた頃のことを忘れたい時もありましたよ(笑)。学校にも行かず、すべて放棄して逃げ出してひとりの世界を作っていたことが、コンプレックスというか、後ろめたい過去だと感じていたんです。でも自分で曲を書くようになってから、少女の頃に自分の世界を作り上げていたことは、曲を書くうえでは糧になっているんじゃないかと思い始めて……「ストッキング」はまさにそれが生かされていると思います。曲を書くときは、子どもの頃の自分に宛てて書いているようなところがあって……。どうにか魔女修行をしていた少女時代が報われるように、“こんな曲が作れたんだから、あなたはあれでよかったんだよ”っていう、証拠を集めているような……そんな感じもします。


◆“私がやらないで誰がやる!”と
思って完成させたんです(笑)。



――ミュージックビデオは、まさに魔女修行をやっている子どもの様子が描かれていますね。カラフルでドリーミーで、とても素敵です。

吉澤:1stアルバムのリード曲は「ストッキング」にしようと自分にとっては思い入れが強い、大切な曲なので、それが映像になったときに、“どうなるんだろう”っていうドキドキがありましたね。今回、監督は田中のぞみさんという方にお願いしたのですが、撮影前に“私は子どものころ魔女修行をやっていて……”みたいな話をさせてもらったんですけど、それをいっぱい受け止めてもらって。少女時代の自分とリンクした、すごく素敵なミュージックビデオになったと思います。

吉澤嘉代子『箒星図鑑』

――この『箒星図鑑』には、収録曲それぞれに主人公の少女が登場しますが、コミュニケーションを取るのが苦手だったという吉澤さんが書いた「なかよしグルーヴ」は、なかなかパンチがありました。女子的にはすごく共感できます。

吉澤:小学校の高学年にもなると、女の子たちの関係が複雑になってくるんですよね。女の子のグループが出来たりして。ターゲットになった子を自分のグループの仲間に入れる、入れないでいざこざが起きたり、友達だったはずが、今度は自分が悪口のターゲットにされたり。

――大人になって思い返すと大したことじゃなかったのに、と思うんですけど、子どもの頃は苦しく感じましたよね。

吉澤:子どもにとっては、学校という世界がすべてだったから、つらかったですね。もともとこれを題材に曲にしようと思っていて、歌詞もほとんど出来上がっていたんですけど、なかなか完成出来なかったんですよね。完成させようとしたら、当時を思い出して心にグザグサ刺さったりして……。でも、私自身、あまりこういう内容の曲を聴いたことがなかったので、“私がやらないで誰がやる!”と思って完成させたんです(笑)。女の子だったらわかると思うし、今まさにその渦中にいる子がいたら、その子に届いたらいいなと思って書きました。

――毒があり、痛快でもあるラップ、すごく良かったですよ。

吉澤:“仲良しグループ”と“悪口のグルーヴ”で曲名を「なかよしグルーヴ」にしたんですけど、グルーヴと言えばファンク調で。そこにラップも入れようと思いまして。ラップはユルくならないように気をつけました。ライブでやるときどうしようって感じですけど(笑)。

――曲の最後にある、笑っているような、泣いているような声は、ちょっとゾクッとしますが、絶妙でした。

吉澤:よかったです(笑)。

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