【ライブレポート】Berryz工房がラストコンサート。「また会えるよね」

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他の4人が衣装チェンジする間を繋ぐためのMCは、テーマを決めてなかったためにフリートークに。「なんかラストって感じあんましないんだけどー。本番前、すごいドキドキして結構バタバタしてたじゃん? でも今、最後って感じしてなくない?」「わかる。」「……だってサル着てんだもん。」と、軽快なトークで笑わせる。

4人が一足先に衣装チェンジを終えてバトンタッチ。怪獣に襲われる夢を見たという徳永千奈美(22歳)の話から始まった、嗣永、徳永、熊井、須藤によるトークパートでは、須藤茉麻の髪がまず話題に。昔はロングの黒髪がトレードマークだった須藤は、本公演では、その当時を彷彿とさせるスタイルへと変貌。ももちに促されてセクシーなキメ顔までも披露して歓声を浴びる。そして、11年間Berryz工房として活動してきたのに、徳永千奈美が今日、会場の警備員にパスを提示するよう求められたというももちからの暴露や、今朝、熊井が出発するときに母親が泣いていたが、「まだ泣かないよ」と捨て台詞を残して颯爽と家を出たというイケメンな話、さらに「スッペシャル ジェネレ~ション」で熊井と手があって嬉しかったというももちの話などが続き、コンサートは後半戦に突入していく。

「ジリリ キテル」から「なんちゅう恋をやってるぅ YOU KNOW?」「本気ボンバー!!」、そして「世の中薔薇色」へとなだれ込むアップテンポな展開。1曲ごとにイントロから歓声に包まれる武道館。しかし、この歓声が起こるたびに、最後の時は確実に近づいてくる。

ライダージャケットを投げ捨ててメンバーカラー別のワンピース姿になった「世の中薔薇色」では、ももちの過剰なアピールでリアルに嫌がる顔を見せた徳永。まぁ、こんな表情をしながらも徳永は、「カントリー・ガールズのプレイングマネージャーに就任したももちが、なんだか後輩たちに取られてしまった感じがしてイラつき、1ヶ月くらいももちと口をきかず、Yahoo!知恵袋で大人のケンカの仲直り方法を調べた」なんていう、本人からしたらちょっぴり恥ずかしいエピソードがあったりする。が、この「世の中薔薇色」で、その時のことを思い出したのかどうかは本人たちのみ知るところである(笑)。

コンサート本編終盤。「ライバル」では、ももちからの「みんなの声を聞かせてくださーい!」の声に応えて、客席からの大合唱が発生する。ももちや菅谷はイヤモニを外して、1万人が想いを重ねた歌声を全身で受け止める。さらに「すっちゃかめっちゃか~」では大きなコールが起こり、本編ラストの「一丁目ロック!」は、サッカーの試合でも始まるかのような大声援が日本武道館に吹き荒れた。

思えばBerryz工房は、とりわけファンに支えられていたグループだった。たとえば大きな公演やイベントが近づくと、ファンメイドのポスタービジュアルやプロモーション動画がWeb上に公開され、直前にはカウントダウンイベントもSNSでスタート。ハイクオリティーなクリエイティブの数々がTwitterのTLを賑わせ、結果的にBerryz工房のプロモーションが勝手に行なわれる形になっていた。またコンサートやイベントの最中、メンバーがピンチになるとコーラスが自然発生することもしばしば。つんく♂プロデューサーのことだから、ファンと一緒に歌う楽曲もBerryz工房は多めだったのかもしれない。「ファン参加型のグループ」「ファンはもうひとりのメンバー」。アイドル界隈では口先だけでよく言われるフレーズも、Berryz工房に限っては、素直に納得できてしまう。そんな熱いファンを抱えるグループだった。

メンバーカラーに染まるお城に向けて、アンコール代わりの「Berryz行くべ!」の大コール。本当に最後の時が刻一刻と近づく。

アンコール1曲目は「Bye Bye またね」。石村舞波が卒業する際にも歌われたこの曲で、メンバーはステージを上手下手に移動しながらファンに手を振って応える。そして再び、やさしい歌声に包まれていく日本武道館。思わず瞳を潤ませるメンバー。

そして、ひとりずつからの最後の挨拶(コメント全文はすでにメンバー別に掲載しているので割愛。参考URL: https://www.barks.jp/artist/?id=1000001202 )。公演中、何度も泣きそうになっていた最年少・菅谷梨沙子は、瞳を真っ赤にして「ここまで精一杯歌えたので、後悔はありません。」と語る。ここまで11年間、Berryz工房のメインボーカルのひとりとして、彼女は重圧と闘いながら歌い続けてきた。本公演では、歌声だとほとんど気にならなかったが、喉はやはり不調気味。しかし、その瞳には迷いはない。完全燃焼したようだった。

「今日は泣かない」と言っていた熊井友理奈も、言葉を口にするたび、涙が溢れてくる。そして「ENJOY」誕生秘話で笑いを運びつつ、「楽しい時はENJOY、つらい時でもENJOY」という哲学を最後に話し、ENJOY!三唱で締めくくる。

夏焼 雅は、ハロプロキッズに合格した頃を振り返りつつ、「大きなステージに立って、歌いたい気持ちは、まだまだあります。」と話して、会場から大きな拍手を受ける。昔から歌が大好き、踊るのが大好きな女の子。雅ちゃんの気持ちは、今度はBerryz工房とは別の形、別の音楽として、これからも我々を楽しませてくれるはずだ。

ちなみに余談だが、雅ちゃんのシングル初参加作品「がんばっちゃえ!」(2003年1月29日 / DVDシングル)からBerryz工房の36枚目となったシングル「ロマンスを語って/永久の歌」(2014年11月12日 / CDシングル)までを集計すると、彼女のパッケージシングル参加枚数は、デビュー11年10ヶ月で計61枚に達しているという(ファンからの情報提供を元に編集部で集計)。もちろんハロー!プロジェクトのメンバーの中でもこの記録は1位。

長きにわたってハロー!プロジェクト全体を支えていたボーカリスト。それは夏焼 雅だったのである。

そんな“わがままプリンセス”からの最後のお願いは、コンサートスタッフをも味方につけてのmiyaビーム。会場に放たれた涙まじりの光線に1万人は大興奮した。

須藤茉麻は、これまでハロー!プロジェクト・キッズのオーディションを受けたきっかけとして「モーニング娘。に興味があった」と話し続けてきたことが実は嘘で、本当は妹のオーディションのついでだったことを話す(これ自体はPHOTO BOOK『Berryz工房 2004-2015』でも触れられている)。ゆえに、合格した当時は、辻希美と加護亜依の区別がつかないほどにモーニング娘。に、そしてアイドル自体に興味がなかったことまでも暴露。しんみりムードの客席も、隣りにいた雅ちゃんもほかのメンバーも大爆笑となる。そんな彼女だったのに、いつしか苦手だった歌も、ライブも幸せな空間に変わっていったのはファンのおかげだと口にして、次の瞬間、涙に肩を震わせる。これまで決して泣かなかった須藤の涙に、雅ちゃんも両手で顔を押さえるようにして号泣。そして、「約12年半前の6月30日、あの日に戻るとしても、絶対に同じ道を選ぶと思います。」の名スピーチに、会場からは惜しみない拍手と歓声が送られるのだった。

「明日からメンバーがバラバラになると思うとすごく寂しいです。」と、徳永千奈美は冒頭に涙を見せる。しかしそこからは、彼女のチャームポイント、笑顔に溢れた挨拶へと変わる。「時間は止められない」「一番好きなのは、Berryz工房」。そう語る徳永。涙が頬を伝いながらも、やはり彼女は元気で人懐っこい笑顔がどこまでも似合うのだ。

嗣永桃子は、目を潤ませながらも、それでも“嗣永プロ”として、ファンひとりひとりと視線を重ねるように、場内の隅々まで目を向ける。そして、急に活動停止というわがままな決断した自分たちを愛してくれたことに感謝の気持ちを述べ、そして「ももちの大好きなBerryz工房を大好きになってくれて、本当にありがとうございました!」と頭を下げた。

メンバーの発言を受けて、「私たち、こんなに大きくなりました。」と、キャプテン・清水佐紀。菅谷と同じく、彼女もまた、グループの中で最年長として、キャプテンのプレッシャーを背負ってきた。本人も認めているように、決して先頭に立って引っ張っていくタイプではない。しかし、だからこそ、この強烈なメンバーの絶妙なバランスを保ちつつ、のべ4066日にわたって、多くの人に愛されるグループへと成長させることができたのだろう。

そしてBerryz工房は不滅なものとして、今度はひとりひとりの記憶と思い出の中で、新たな時を刻み始める。“俺たち、私たちのキャプテン”清水佐紀が「Berryz工房は永遠に不滅」と言ったのだから、それは不滅なのである。流行り廃りの激しい、賞味期限の短いアイドルシーンで、11年にわたって第一線で活動してきたグループ。その中で、ストイックに愚直にキャプテンとして奮闘し続けた彼女の発言は、どんな言葉よりも重い。

アンコールラストは、ラストシングルから「永久の歌」。ここまでくると、ステージも観客も涙、涙、涙。声を震わせるメンバーに、力の限り声援を届けようとする1万人。そして、ともにしばらくの別れを、最後の瞬間を刻みつけた。
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365日、アイドルが作るアイドルメディア Pop'n'Roll 準備号創刊

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