【インタビュー】ジャクソン・ブラウン「希望がある、そうだね。そうあるべきだ。」

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ジャクソン・ブラウンの7年ぶりとなる日本ツアーが、いよいよ月曜日(3月9日)名古屋からスタートする。ジャクソンは2014年秋、6年ぶりにニュー・アルバム『Standing In The Breach』をリリース。タイトル・ソングは2010年に起きたハイチ地震にインスパイアされ誕生した。

◆ジャクソン・ブラウン画像

彼のサウンドはいつだって心地好いものだが、それとは対照的に歌詞では政治や環境、世界で起きる問題などを鋭く指摘。しかし、彼の曲には必ず希望がある。

現在、来日中のジャクソン・ブラウンに新作や曲作り、日本公演について話を聞いた。その音楽と同じく穏やかで実直な彼は、質問の1つ1つに真摯に答えてくれた。長いインタビューとなったので、まずはダイジェスト版をお届けします。

――新作『Standing In The Breach』について聞かせてください。“裂け目に立つ、攻撃の矢面に立つ”とのタイトルをつけた理由は?

ジャクソン・ブラウン:アルバムのタイトルに関しては、僕はあいにく(アルバムに収録される)曲の1つから選ぶって以上のことはしていない。それがアルバムの中でベストな曲とは限らないけど、多分、アルバム全体を象徴していると思える曲だ。ときどき、後でしまったって思うことがあるよ。『I'm Alive』(1993年リリース)なんて、看板に“僕は生きてる!”ってバーンって出ているのを見たとき、“ああ、僕は生きてるよ、だから?”って思ったよ(笑)。でも、タイトルを考えるとき、中身に相応しく、その上みんながもっと知りたいって思うようなものにしたいとは意識している。『Standing In The Breach』というのは……、少なくとも、このアルバムの中身を要約していると思う。それに、いま世の中で起きていることもね。世界は壊れてしまっているから。

――アートワークも中身の(心地好い)サウンドとは違い、不安を掻き立てるものですが…

ジャクソン・ブラウン:そうだね。不安ってことに同意できるかわからないけど、もし、不安に思っている問題を突き付けられたと感じたなら悪いことじゃない。それが音楽のいいところの1つだ。音楽には問題を解決しようって思わせる力がある。いつも2つのことが起きていると思うんだ。1つは逃避だ、いいことだと思うよ。誰にとっても必要だ。でも一方で、人々は現実の問題と戦っている。この2つを同時に行うことはできない。いつまでも逃避できるわけじゃないし、四六時中、葛藤しているわけにもいかない。アートワークに関して言えば、僕はこの崩壊した街を歩く男性と女性の姿を美しいって思ったんだ。(ハイチで)実際起きた状況での現実の姿だ。曲も同じ出来事からインスパイアされているからね。このアルバムに相応しい。それに、アダムとイブだったり、この世に生き残ったたった2人だったり、一組の男女が生きていこうとする姿、崩壊した世界でどうやって生きていくのか、そんなイメージの象徴でもあるんだ。

――政治、環境、貧困、不正など世界で起きている問題やトラブルを目にしたとき、あなたはどんな感情を抱くのでしょうか? 怒り、それとも別のものなのでしょうか?

ジャクソン・ブラウン:うーん……、確かに怒りはある……。重大な問題に直面したとき、心を閉ざしたくなることもある。でも、僕は、物事をいいほうに変えようとする人たちに魅かれるんだ。そういう人たちの本を読んだり、ドキュメンタリーを見ることにすごく時間を費やしている。マーティン・ルーサー・キングのスピーチを聞いたり、ビル・マッキベンの本を読んだり……。彼らは問題を解決しようと力を尽くしている。情熱だ。でも、長い期間燃え続けなくてはならない情熱だ。若いとき、僕はもっと怒りを感じていた……。でも、大事なのはどう対処すべきか、どう変えていったらいいのかって考えることなんだ。ずっと怒り続けていることはできない。僕の場合、自分が抱く幸福感、人生に対する喜びが、ほかの人もそうあって欲しいって考え行動に移す動機になっている。

――あなたの曲は問題を提示しつつも、必ず歌詞に希望があり、だからこそ、みんなに好かれ支持されるのだと思います。

ジャクソン・ブラウン:そう願っているよ。希望がある、そうだね。そうあるべきだ。僕はどんなものにも希望を見出す。ただ問題を突き付けるだけでなく…、これは母の影響だと思うんだけど、問題を提示するときは、それを解決するような案を出したり、助けになるようなものを提供すべきだって考えている。でも、僕はみんなに罪悪感を持たせるようなことはしたくないんだ。そこが、問題を取り上げて曲を作るときの難しいところだ。罪悪感ではなく、なにかをやる気にさせたい。もしくは、みんな同じ気持ちでいるんだってことをわかってもらいたい。嫌悪感を抱かせることなく、問題を提示することに価値があると思う。

――10代でニッティー・グリッティー・ダート・バンドに参加して以来とても長い期間になりますが、音楽を作り続けていこうとするモチベーションは?

ジャクソン・ブラウン:自分が本当にやりたいことだからだよ。仕事だと思ったことはない。こうしていられるのを本当に嬉しく思っている。“自分の好きなことをしなければ、自分の人生は活かせない。だから自分の好きなことを見つけろ”っていうようなことわざがあったと思う。自分のやりたいことをやっている、それが秘訣だよ。単純なことだ。僕はこれをやり続けたいんだ。それに自分はラッキーだし、人に恵まれていると思う。

――公演、楽しみにしています。どんなショウになるのでしょう?

ジャクソン・ブラウン:これまでで最高のバンドと一緒なんだ。メンバー全員が新作でプレイしているから、曲を熟知している。ドラムのマウリシオ・リワークや(キーボードの)ジェフ・ヤングは長年一緒にツアーをやってきたから、僕の音楽はなんでもプレイできる。新作からの曲もやるし、昔の曲もたくさんやる。毎晩、ちょっとずつセットリストを変えるんだ。だから毎回、違うことが起きる。僕のお気に入りのバンドなんだよ。とくにグレッグ・リーズ(G)とヴァル・マッカラム(G)は毎回なにか新鮮で新しいことをやってくれる。毎晩忘れられないようなことが起きるから、僕はワクワクしてるんだ。だから、僕らも日本での公演を楽しみにしてるんだよ。

――残念ながら、残り時間がなくなったので、最後の質問、YESかNOでお答えいただけますか? いまでも音楽には世界を変える力があると思いますか?

ジャクソン・ブラウン:YES(笑)!

ジャクソンはこのインタビューの後、来日中のクロスビー、スティルス&ナッシュの公演を訪れ、ステージに飛び入り参加! ギターを抱え登場し、グラハム・ナッシュと「The Crow On The Cradle」をプレイし、オーディエンスを驚喜させたという。1979年、スリーマイル島の原発事故の後、マジソン・スクエアで開かれた<NO NUKES(原子力発電所建設反対運動)>コンサートで行われた演奏が再現された。

Ako Suzuki

<ジャクソン・ブラウン JAPAN TOUR 2015>
3月09日(月)名古屋 愛知県芸術劇場大ホール
3月11日(水)東京 オーチャードホール
3月12日(木)東京 オーチャードホール
3月13日(金)東京 オーチャードホール
3月16日(月)大阪 フェスティバルホール
3月17日(火)広島 広島文化学園HBGホール
3月19日(木)大阪 フェスティバルホール(追加公演)
[問]ウドー音楽事務所 03-3402-5999
http://udo.jp/Artists/JacksonBrowne/index.html

ジャクソン・ブラウン14th オリジナル・アルバム『スタンディング・イン・ザ・ブリーチ』
2014年10月8日発売
SICP-30674 ¥2,600+税
※日本盤のみ高品質Blu-spec CD2仕様+ボーナス・トラック収録
解説:五十嵐正
歌詞対訳:中川五郎
ハイレゾ・アルバム(96kHz/24bit):http://mora.jp/package/43000001/4547366227475/
1.ザ・バーズ・オブ・セント・マークス
2.Yeah Yeah
3.ザ・ロング・ウェイ・アラウンド
4.リーヴィング・ウィンスロウ
5.イフ・アイ・クッド・ビー・エニホェア
6.ユー・ノウ・ザ・ナイト
7.ウォールズ・アンド・ドアーズ
8.フィッチ・サイド
9.スタンディング・イン・ザ・ブリーチ
10.ヒア
11.ザ・バーズ・オブ・セント・マークス(Live:Piano Acoustic)*
*Track 11日本盤CDボーナス・トラック
プロデュース:ジャクソン・ブラウン&ポール・ディーター

ジャクソン・ブラウン
1948年10月9日にドイツのハイデルベルクに生まれ、カリフォルニアにて育つ。1968年にニッティー・グリッティー・ダート・バンドに参加後、ニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジでティム・バックリーやニコと活動。再びカリフォルニアに戻り、バーズとリンダ・ロンシュタットに曲を提供。その後アサイラム・レコードと契約。72年のデビュー・アルバム『ジャクソン・ブラウン』は高い評価を受け、シングル「ドクター・マイ・アイズ」はトップ10ヒットとなった。イーグルスのデビュー・ヒット「テイク・イット・イージー」のソングライターでもあり、『レイト・フォー・ザ・スカイ』(1974)、『プリテンダー』(1976)、『孤独なランナー』(1977)、初の全米1位を獲得した『ホールド・アウト』(1980)等など傑作・名作アルバムは数知れず、成熟期に入ろうとしていたロック・シーンに於いてシンガー・ソングライターというスタイルを確立した。2008年の『Time The Conqueror(時の征者)』まで、これまで13作のオリジナル・アルバムをリリース(他ベスト盤、ツアー用CDなど)。人生に対する真摯な姿勢に裏打ちされた、心のこもった誠実な歌の数々で“70年代最高の詩人”と称され、現在もアメリカを代表する偉大なるシンガー・ソングライターとして人々の心の奥深くにまで届く音楽を贈り続ける。2004年ロックの殿堂入り。同年集大成2枚組『The Very Best of Jackson Browne』を最後に長年在籍したエレクトラとの契約を終了。2007年にはソングライターの殿堂入りも果たす。本作は、「メインストリームでは居場所を見つけられない音楽の避難所を作る」というブラウンの構想を元に99年に立ち上げた自身のレーベル"Inside Recordings"からのリリースとなる。
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