【インタビュー】ブラッドバス「何よりもデス・メタルが好きだからね」

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カタトニアのアンダース“ブラックハイム”ニーストロムとヨナス“ロード・セス”レンクス、オーペスのマーティン“アクス”アクセンロットというデス/ドゥーム/プログレッシヴ・メタルの強豪たちが集ったスーパーグループ、ブラッドバス。彼らの魂の源流であるデス・メタルの王道を貫くこのバンドには、オーペスのミカエル・オーカーフェルト、ヒポクリシーのピーター・テクレンという一線級のヴォーカリストが参戦してきたが、3月25日に発売されたばかりの最新アルバム『偉大なる病魔の葬送』でヴォーカルをとっているのは、パラダイス・ロストのニック・ホームズである。

◆ブラッドバス画像

アルバムで黙示録の野獣のごときデス・ヴォイスを聴かせるニックが、ブラッドバス加入、アルバム制作、そして未来について解き明かした。

──ブラッドバスへの加入は、どのようにして実現したのですか?

ニック・ホームズ:2012年、パラダイス・ロストがカタトニアとデヴィン・タウンゼンドと一緒にアメリカ・ツアーをやった。そのときにカタトニアの2人(アンダース・ニーストロムとヨナス・レンクス)に頼まれたんだ。ミカエル・オーカーフェルトが脱退することになったから、次のアルバムで歌ってくれないかってね。彼らとは何年も前から友人だったし、ブラッドバスの過去のアルバムは聴いていたけど、最初は断ろうと思ったんだ。ミカエルと比較されることは避けられないし、彼は強力な個性を持ったヴォーカリストだからね。でも彼らは俺の力がどうしても必要だと、熱心に誘ってくれたから、一緒にやってみることにした。

──彼らがブラッドバスのヴォーカリストに求めていたのは、どんな要素でしょうか?

ニック・ホームズ:まず、友達として気が合うことが重要だった。これはどんなバンドにおいても大事なことだよ。もうひとつ、初期パラダイス・ロストで俺はデス・ヴォイスで歌っていたけど、俺の声質は比較的クリアーで、歌詞が聴き取りやすいタイプなんだ。ミカエルも似たタイプだったし、それで声をかけてきたんだと思う。

──あなたがデス・ヴォイスで歌うのは久しぶりだと思いますが、すぐにコツを取り戻すことはできましたか?

ニック・ホームズ:うん、比較的すぐに歌えるようになったよ。当時よりも今の方が、デス・ヴォーカルは歌いやすくなった。歳を取ったせいかも知れないけど、あのスタイルでは長年歌っていなかったのに、うまく歌えるようになったんだ。ただデス・ヴォイスといっても、初期パラダイス・ロストとブラッドバスではかなり異なっている。ブラッドバスの方が速い曲が多いから、吐き出すヴォーカルが多いんだ。時にはラップみたいになる。慣れていないと、息継ぎが難しいんだ。

──カタトニア、オーペス、パラダイス・ロストはいずれもメタルを原点としながら、徐々に純粋なメタルから距離を置くようになったバンドですが、ブラッドバスでデス・メタルをプレイしているのは、“本業”でのメタル離れに対する反動なのでしょうか?

ニック・ホームズ:そんな部分もあるだろうけど、まず何よりもデス・メタルが好きだからやっているんだ。十代の頃に聴いていた音楽を懐かしむというのもある。


──あなた達、またアナセマやウルヴァーなど、そのキャリアで“脱・メタル”を図るバンドが少なくないは何故でしょうか?

ニック・ホームズ:他のバンドについては何とも言えないけど…ミュージシャンとして進歩していき、オリジナルなことをやろうとしたら、既存のジャンルの枠内に留まり続けることはできないんだ。ヘヴィ・メタルというジャンルにはいろんなルールがあるし、自由な表現を行おうとしたら、そのルールを守ることができない。何十年も同じことをやって、匠の技を極めるバンドもいるけど、俺たちはいろんな音楽にチャレンジしていきたいんだ。ただ、決してメタルが嫌いになったわけではないし、時にはメタルをプレイしたくなる時もある。そんなときブラッドバスがあると、自分の中にあるメタルへの衝動を発散することができるんだ。

──あなたがブラッドバスに加入した時点で、アルバム『偉大なる病魔の葬送』はどの程度出来上がっていたのですか?

ニック・ホームズ:俺が参加した時点で、アルバムの曲はすべて書かれていたんだ。俺のクリエイティヴなインプットは「ビヨンド・クリメーション」と「ユナイト・イン・ペイン」で歌詞を書いただけだよ。全曲でヴォーカルは歌ったけど、ソングライティングやプロダクションには関わっていない。そんな一歩退いたポジションだからこそ、客観的な意見を言えると思うけど、『偉大なる病魔の葬送』は最高のアルバムだよ。このバンドに入ることができたことを、誇りにしている。俺がバンドに“新加入”するなんて、もう25年ぶりぐらいなんだ。すごく新鮮な気分だし、スリルを感じているよ。2015年の夏にはブラッドバスとしてライヴも行うんだ。それも楽しみにしている。

──ブラッドバスの一員として、あなたが『偉大なる病魔の葬送』でやろうとしているのは、どんなことでしょうか?

ニック・ホームズ:うーん、まだそこまで壮大な計画はないな。まだ俺が加入してから、ブラッドバスとしてのライヴは行ったことがないんだ。とにかくステージに立ってみて、それから考えることにする。他のメンバー達も同じように考えていると思うよ。今はただ、気が合う仲間とオールドスクール・デス・メタルをプレイして、楽しむだけだ。

──CDブックレットやプロモーション写真、そして「破滅教会ヴァスティタス」のミュージック・ビデオではあなたが白塗りコープスペイントと僧衣をまとっていますが、それは初めての経験ですか?

ニック・ホームズ:その通りだ。俺は“オールド・ニック”という変名キャラクターで参加していて、いつもとは異なるヴィジュアル性を出したかった。それで死神っぽいルックスにしたんだ。ライヴだとあのコスチュームは裾が長くてステージで転びそうだし、夏フェスだと無茶苦茶暑そうだから、もう少し動きやすいものにするつもりだけどね。

──これまでブラッドバスは単発ライヴを何度か行うのに留まっていましたが、あなたが加入して2015年、ヨーロッパの夏フェスに多数出演することになりました。その背景には、どんな事情があるのでしょうか?

ニック・ホームズ:俺が加入する前のことは知らないけど、ブラッドバスはエキサイティングなバンドだし、あまりライヴをやらなかったのは、メンバー達のスケジュールを調整するのが難しかったからじゃないかと思う。俺もパラダイス・ロストでのツアーがあるし、両立させるのは大変だけど、マネージメント事務所が同じだから、ブッキングはスムーズに行くんじゃないかな。2015年には13回だけライヴをやるつもりだったんだ。あえて不吉な数字にしたかった。それなのにマネージャーが2回追加して、15回になってしまったんだ。シャレが分からない奴だな…と思ったけど、ボーナス・トラックだと思って我慢するよ(苦笑)。

──ブラッドバスのライヴでは、メンバー達の他のバンドの曲はプレイしないのですか?

ニック・ホームズ:ああ、ブラッドバスの曲に専念するつもりだ。もうアルバム4枚分の曲があるし、セットリストを組むのに十分だと思う。パラダイス・ロストやカタトニアの曲はやらないよ。俺にとって大きな課題なのは、過去にミカエル・オーカーフェルトやピーター・テクレンが歌ったヴォーカルを、どのように俺なりに消化するかなんだ。ピーターのビッグなスクリームを真似しようとしたって俺には出来ないから、自分流で歌うしかないよ。15回のショーを終えた後、バンドがどこに向かっていくかはわからない。またライヴをやるのか、新しいアルバムを作るのか、まったく白紙なんだ。でも、未来がわからないからこそ、人生は面白いんだ。いつかブラッドバスとして日本でライヴをやれる日だって来るかも知れない。その日が来るのを、俺自身も楽しみにしているよ。

取材・文:山崎智之

『偉大なる病魔の葬送』

通販限定セット:CD+Tシャツ 4,000円+税
通常盤CD 2,500円+税
1.レット・ザ・スティルボーン・カム・トゥ・ミー
2.トータル・デス・エグジュームド
3.アン
4.破滅教会ヴァスティタス
5.ファミン・オブ・ゴッズ・ワード
6.メンタル・アボーション
7.ビヨンド・クリメーション
8.ヒズ・インファーナル・ネクロプシー
9.ユナイト・イン・ペイン
10.マイ・トーチャー
11.偉大なる病魔の葬送
12.ビヨンド・クリメーション(アンダーグラウンド・ミックス)*日本盤限定ボーナストラック
【メンバー】
オールド・ニック(ヴォーカル)[パラダイス・ロスト]
ブラックハイム(ギター)[カタトニア]
ソドマイザー(ギター)[元カタトニア]
ロード・セス(ベース)[カタトニア]
アクス(ドラムス)[オーペス]
-ゲスト-
クリス・ライファート(元デス/ オートプシー)[M11:ヴォーカル]
エリック・カトラー(オートプシー)[M2/6/9:ギター]

◆ブラッドバス『偉大なる病魔の葬送』オフィシャルサイト
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