【インタビュー前編】エクソダス「メタルを殺すことは出来ない」

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日本におけるスラッシュ・メタルの聖なる宴<THRASH DOMINATION>。第10回を記念して“最強決定戦”と銘打って行われた2015年のイベントには、エクソダス、オーヴァーキル、ソドムという過去出演してひときわ大きな声援を浴びた3バンドが出演した。

◆エクソダス画像

出演ラインアップの中で話題をさらったのがエクソダスだ。4回という歴代最多出演回数 を誇る彼らだが、1986~1992年と2002~2004年に在籍してきたヴォーカリスト、スティーヴ“ゼトロ”スーザが復帰。最新アルバム『ブラッド・イン・ブラッド・アウト』を引っ提げての来日である。

2年連続の<THRASH DOMINATION>参戦を果たした彼らのステージはゼトロの復帰ということもありいつになくアグレッシヴであった。中でも2日目、3月22日のステージは9台のカメラで撮影されていたこともあり、より一層熱気を増したライヴ・パフォーマンスが日本のスラッシャーの魂に永遠に刻み込まれる凄演となった。

不動のギタリストであるゲイリー・ホルト、そして日本のファンの期待を裏切らないステージで完全復活を宣言したゼトロにインタビュー。前後編の前編は、<THRASH DOMINATION>でのライヴの話題を中心に語ってもらった。

──<THRASH DOMINATION>は第10回を迎えますが、エクソダスはこれが4回目の出演となりますね。

ゲイリー:エクソダスは半分近くに出ているんだ。俺たちにとって、<THRASH DOMINATION>はバンドと日本のファンを繋ぐ鎖であり、重要なイベントだよ。

ゼトロ:俺が出るのは今回が初めてだけどね。1993年にエクソダスがクラブ・チッタでやったときは、まだ<THRASH DOMINATION>はなかったんだ。日本最大のスラッシュ・イベントに参加することが出来て嬉しい。何度でも出演したいな。

──ゼトロがバンドに復帰して、ゲイリーもオーストラリア・ツアーで欠席していたのが戻ってきて、“完全体”となって日本に来てくれて嬉しいです。

ゲイリー:俺は足を怪我して12日間歩けなくて、親父が病気だったりして、オーストラリア・ツアーに参加できなかったんだ。歳をとると、いろいろあるものさ。今ではステージ上を走り回ることが出来るし、問題はないよ。


──ゲイリーとゼトロが2人揃ったエクソダスのマジックを、どう説明しますか?

ゼトロ:マジック?そんなものはないよ。俺たちがメタルを好き過ぎるだけだ。

ゲイリー:今までエクソダスにはダメなラインアップやダメなメンバーなんて1人もいなかったよ。でもスティーヴはバンドの歴史で重要な位置を占めてきたメンバーだし、<THRASH DOMINATION>という場で彼とステージに立てるのは最高の気分だ。

──2015年の<THRASH DOMINATION>には史上最多数といえるほどのお客さんが集まってきました。1980年代に生まれたスラッシュ・メタルが、何故今日でもこれほど熱狂的に支持されているのでしょうか?

ゲイリー:スラッシュ・メタルはエネルギーに満ちあふれてエキサイティングで、嘘がない、純粋な音楽なんだ。メタルを嫌う連中はしょっちゅう“メタルは死んだ”と主張するけど、メタルを殺すことは出来ない。<THRASH DOMINATION>の後、会場から出てくるキッズの微笑み、そして彼らの垂らす鼻血がすべてを物語っている。

ゼトロ:それに1980年代にデビューしたバンドであっても、今でも最高のアルバムを出し続けている。エクソダスだけじゃなくて、オーヴァーキルやソドムの最新作だってクールだった。スラッシュ・メタルはレトロではなく、現在進行形で走り続ける音楽なんだ。

──グラインドコアやブラック・メタルが登場したことで、スラッシュ・メタルは一番速い音楽でも一番邪悪な音楽でもなくなったわけですが、それでもエクソダスがこれほどリスナーを熱狂させるのは何故でしょうか?


ゲイリー:俺たち以前にもモーターヘッドやヴェノムのような、速くてダーティーなバンドがいた。彼らは今でもエクストリームさを失っていない。それはエクソダスについてもいえることだ。ブラック・メタルのブラスト・ビートの方が速いといっても、それは数学的なものに過ぎないんだ。BPM的に一番速くなくても、スラッシュ・メタルには自動車でフルスピードで突っ走って、壁に激突するようなスリルと興奮がある。40代であっても十代であっても、魅力を感じる激しさがあるんだ。

──今回の<THRASH DOMINATION>は“最強決定戦”と銘打って、エクソダスは85分という長めのショータイムでしたが、名曲・人気曲が多く、新作『ブラッド・イン・ブラッド・アウト』からの曲も演奏すると、たとえ3時間プレイしても「あの曲をやらなかった!」と文句を言うファンがいるでしょうね。

ゼトロ:まあ、スラッシュ・メタルを3時間プレイするのは、バンドにとってもオーディエンスにとっても不可能だけどな。エクソダスのショーにはバラード・タイムがないし、一息つくことも出来ないんだ。

ゲイリー:世界中にスラッシュ・マニアがいて、それぞれ聴きたい曲が異なるからね。彼ら全員のリクエストに応えることは無理だけど、同じ都市で複数回ショーをやるときは、セットリストを変えて、出来る限り多くの曲をプレイするようにしているよ。

──ゼトロの復帰記念ライヴという話題性がありながら、それを前面に出すことをせず、加入第1作の『プレジャーズ・オブ・ザ・フレッシュ』(1987)からの曲も少なめだった(初日はなし、2日目は「プレジャーズ・オブ・ザ・フレッシュ」のみ)のは何故でしょうか?

ゲイリー:別に『プレジャーズ・オブ・ザ・フレッシュ』からの曲を避けているわけじゃないよ。たまたま初日はプレイしなかっただけだ。「ザ・トキシック・ワルツ」みたいに、オリジナルでスティーヴが歌った曲は何曲もプレイしているし、『プレジャーズ・オブ・ザ・フレッシュ』からの曲をプレイしない日があったとしたら、それは“たまたま”だよ。

ゼトロ:それに今やっているツアーは、別に“俺の復帰記念”じゃないしな(苦笑)。俺はエクソダスの一員だし、他のシンガーがレコーディングした曲だって、歌うことに躊躇はないよ。今回俺が復帰したとき、特別扱いはされなかった。曲を渡されて、「明日スタジオで歌ってみてくれ」と言われたんだ。午後10時過ぎに電話があって、「明日の5時に来い」ってね。その時点で、何も教えてもらっていなかった。アルバムで数曲歌うのか、ツアーに参加するのか、知らない状態だったんだ。「ブラック13」と「BTK」の2曲を徹夜で何度も聴いて、自分なりに歌ってみた。それでエクソダスに復帰することになったんだ。


──ファースト・アルバム『ボンデッド・バイ・ブラッド』(1985)からの曲を多くプレイしているのは、特別な思い入れがあるのでしょうか?

ゲイリー:俺たちがプレイして楽しいし、キッズがみんなクレイジーに盛り上がるからだ。『ボンデッド・バイ・ブラッド』は俺たちの原点であり、スラッシュ・メタルを定義したアルバムだ。このアルバムからの曲はいつでも全曲プレイ出来るようにリハーサルしているし、日本でも一度全曲プレイしたことがあったと記憶している。「ノー・ラヴ」はあまりプレイしない曲だけど、「今晩はやろうぜ」と誰かが言い出したら、すぐに演奏できる準備は出来ているよ。

ゼトロ:『ボンデッド・バイ・ブラッド』で歌ったポール・バーロフと俺ではヴォーカルのスタイルがまったく異なっているけど、もう長年このアルバムからの曲を歌ってきたし、俺なりの解釈で歌えるようになったよ。

ゲイリー・ホルトのスレイヤーでの活動、スラッシュ・メタルの未来などについては、インタビュー後編で語ってもらおう。

Photo by MIKIO ARIGA
取材・文:山崎智之



『ブラッド・イン、ブラッド・アウト』

【メンバー】
スティーヴ“ゼトロ”スーザ(ヴォーカル)
ゲイリー・ホルト(ギター)
リー・アルタス(ギター)
ジャック・ギブソン(ベース)
トム・ハンティング(ドラムス)
【ゲスト】
カーク・ハメット(ギター)[メタリカ]
通販限定直筆サイン入りブックレット付/CD+DVD 7,000円+税
初回限定盤CD+DVD 3,500円+税
通常盤CD 2,500円+税
1.ブラック13
2.ブラッド・イン・ブラッド・アウト
3.コラテラル・ダメージ
4.ソルト・ザ・ウーンド(with カーク・ハメット)
5.ボディ・ハーヴェスト
6.BTK
7.ラップド・イン・ジ・アームス・オブ・レイジ
8.マイ・ラスト・ナーヴ
9.ナム
10.オナー・キリングス
11.フード・フォー・ザ・ワームス
日本盤限定ボーナストラック
12.プロテクト・ノット・ディセクト
初回限定盤DVD(約134分)
メンバー・インタビュー&レコーディング映像を収録した130分を超えるメイキング映像にバックステージも捉えたツアードキュメント

◆エクソダス『ブラッド・イン・ブラッド・アウト』オフィシャルサイト
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