【インタビュー】究極のエルヴィス・プレスリー・トリビュート。当時の機材で録音環境も再現

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── THE NEAT BEATSも参加していますが、MR.PANさんがギターを弾かずにボーカルに専念しているのが意外ですね。

SUGAR:そうなんだ、これは今までの彼らにはないことだよね。

── MR.PANさんも音に関しては相当な変態度だと思うのですが(笑)、所有するスタジオGRAND-FROG STUDIOにあるヴィンテージ機材はSUGARさんがメンテナンスを担当しているんですよね。

SUGAR:あそこの機材は僕がだいぶ手を入れているね。MR.PANはマージー・ビートの研究においては右に出る者はいないんじゃないかな?

── そのイメージがあるだけに、エルヴィスを歌うMR.PANさんは意外に思えます。

SUGAR:僕も最初はそうだった。だが色々話しているうちに実はエルヴィスが好きなことがわかったんだ。イギリスのマージー・ビートのグループ、ビートルズももちろんそうだけど、エルヴィスから影響を受けていない人はいないんだ。ただそれが表面には見えてこないだけで、奥底ではすごく影響を受けている。THE NEAT BEATSもそうなんだ。

── 「I NEED YOUR LOVE TONIGHT」「A BIG HUNK O' LOVE」の2曲で参加していますが、共にJackie & The Cedricsのギタリスト、ROCKIN' ENOCKYさんも加わっているんですね。ENOCKYさんはギターソロも弾いているんですか?

SUGAR:いや、ソロを弾いているのはTHE NEAT BEATSのMR.LAWDYだね。他の楽曲でもそうなんだけど、ENOCKYさんは今回、“溶けて聴こえなくなるギター”というのを弾いているんだ。

── 溶けて聴こえなくなっているんですか(笑)!? いいんですか聴こえなくて?

SUGAR:そう。これは僕の注文なんだ。エルヴィスの音源を良く聴くと、ギターが数本重なっていて、その重なった音の上に一番目立つリードギターが聴こえて成立している楽曲というのが非常に多いんだよ。それなしだとスカスカになっちゃうんだ。

── それは、カレーに炒めたタマネギが溶けて入っているようなイメージでしょうか?

SUGAR:YES、まさしくその通りだね。直接存在を感じることはないんだが、なしはあり得ない。

── なるほど、それはなかなか楽曲から読み取るのは難しいかもしれないですね(笑)。そもそもSUGARさんはオリジナル楽曲からそれをどのように把握するんでしょうか?

SUGAR:僕はとことん聴き込んで、どう弾いているのか解析するんだ。全部は拾えてはいないんだが、おそらくそこまで聴き込んで拾った人はトリビュート・アルバムをやった人でもあんまりいないなんじゃないかな。

── あんまりというか、ひとりもいないと思います(笑)。

SUGAR:そしてENOCKYさんは僕に“実はそういうギターを弾いてくれって頼まれる日を今日まで心待ちにしていた”って言うんだよ(笑)。“こういうことがやりたかったけど、誰も今まで僕に「聴こえなくなるギターを弾いてほしい」って言ってくれなかった”って。だから喜んで弾いてくれたよ。

── それは頼む方も頼まれる方も相当な変態ですね(笑)。自分の音を前に出したいというエゴじゃなく、作品の中に溶け込んでしまいたいという。

SUGAR:でもその土台がないと成立しない、楽曲にならないんだ。それができるのはENOCKYさんしかいない。他のギタリストだと主張が強すぎて、聴こえちゃうんだよ。それは望んでいないんだ。

── それはプレイしたものをSUGARさんのエンジニアリングで直すということはできないんですか?

SUGAR:せーの、で全員で同じ部屋で録音するからね。だからそういうプレイをできる人じゃないと駄目なんだ。“溶けて消える術”ができる人じゃないと。それができる人はENOCKYさんだけだね。彼は7曲参加しているから、相当溶けているよ(笑)。

── その溶ける状態を実現するまでにかなりのテイクを費やした曲もあるようですね。

SUGAR:テイクが重なったのはTHE MINNESOTA VOODOOMENが参加した「HOUND DOG」で、37テイクやったよ。そしてOKになったのが27テイク目だった。丸1日費やしたね。

── それはどこにこだわって37テイクまで行ったんでしょうか?

SUGAR:やっぱり歌がちょっとひっかかったり、ドラムがちょっとしくじったり。全員が最高のパフォーマンスになったものが27テイク目なんだ。ただOKだけどもうちょっと良いものができるんじゃないか、と37テイクまでやってみたんだが結局できずに、27テイク目を採用したんだ。

── 話を聞くと、途中で挫けてしまいそうになるほど大変そうですね。

SUGAR:話だけ聞くと確かにそう感じると思うが、僕がこれをミネソタと始めるときには、“この曲を録れなかったら、俺もオマエたちも未来がない。今日で俺もオマエたちも終わりなんだ”と言ったんだ。そうしたら彼らは何も言わなくなった。

── すごく体育会系なレコーディングだったんですね(笑)。「HOUND DOG」というこのアルバム随一の超有名曲を担当しているだけに。

SUGAR:そう、1000本ノックに近いね。“何かちょっと”ということも許されなかったんだ。この曲はベースがスウィングしていたりしていなかったり中途半端なところで、ドラムもぎこちなく乗るんだ。それを再現しないとあれにはならなかった。普通、他の人が「HOUND DOG」をカバーするときに、ちゃんとノリでやってしまったりスウィングしてしまうんだが、それではまったくオリジナルとは違ってしまう。要するにロックのグルーヴというのがスウィングから4ビート、8ビートを絡めて進化していく最初の礎になった曲が「HOUND DOG」なんだと思う。オリジナルのベースは良く聴くとスウィングしようか、拍の頭で4分でステイしようか悩んで弾いている。というのも、毎回ポイントが違うんだ。ドラムはまだ8ビートが世の中に出てきていないから、勢いとノリを開拓している最中の楽曲なんだよ。だからそのスタンスで演奏しないとダメなんだ。ビートルズ以降の8ビートが当たり前に存在した時代の解釈で演奏したら台無しになってしまう。

── それは相当微妙なニュアンスですね。

SUGAR:そう、微妙なんだ。そしてそれを演奏者全員が理解していないといけない。ミネソタに関してはとにかく“それができなかったらオマエたちに明日はない”という話をした。その甲斐あって「HOUND DOG」は出来栄えは完璧だよ。バックトラックのジョーダネアーズのコーラスに関してもブレているところや外れているところ、声が震えているところや裏返ってくるところも全部やってるからね(笑)。
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