【インタビュー】KOZZY IWAKAWA、次の世代に伝えたいルーツ・ミュージック『THE ROOTS 2』

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── かなり存在感のある歌声を聴かせてくれていますね。ところでアメリカでもこういうルーツ・ミュージックのカバー・アルバムを作る人って今いるのかな? と思うんですが……。

KOZZY:いないです(笑)。もちろんいろんなカバーも出ているとは思うんだけど、そこにこだわってやっている人というのはあんまりいなくて。エンジニアやミュージシャンも面白がってやってくれますね。なんせ向こうのミュージシャンにとっては(ルーツ・ミュージックは)空気みたいなものだから。曲もその場で言えば、“ああ、あれね”ってすぐにできるし。

── じゃあレコーディングの期間も短かったんですか?

KOZZY:めちゃくちゃ短いです。2日、3日くらい。次はこの曲をやろうって言って元の音源を聴いて、じゃあこういうアレンジでやろうとか。日本語と英語で全然噛み合ってないんですけど(笑)。

── ソロをやるときって普段の自分の環境をガラっと変えたいという人もいると思うんですが、今回もベースのトミーさんが参加しているというのは、やはりKOZZYさんにとって一番気持ちの良いベースがトミーさんだからですか?

KOZZY:うん、そうですね。ベースは音楽の中でも重要なパートを占めていて。トミー君はベース全然弾かないんで(笑)。

トミー:ははははは!

── 全然弾かない(笑)それは音数が少ないという意味ですよね?

KOZZY:そう、ぜんっぜん弾かない。弾かないベースって難しいんですよ。やっぱりみんな、ベーシストというのは縁の下の力持ちでありながら、主張したがる人が多いんで。ベーシストって派手な人が多いんですけど、いくら派手にしても存在は地味みたいな。そういうポジションだと思うんですよね。野球で言えばキャッチャーみたいな。そこにいなくちゃいけないみたいな存在なんですけど、意外と主張する人が多いんですよ。特に外国人のベースは酷いから(笑)。それならベースじゃなくていいじゃん、みたいな。

── ギターみたいなベースを弾く人が多いんですか?

KOZZY:そう、一番前に出るみたいな。もちろんベースヒーローもいるんですけど、それはこういう音楽にいらないんで(笑)。ベースはしっかり曲の屋台骨を支えるように動いていないといけない、という昔ながらの考えがあるから、そういう意味ではトミー君のベースは何も主張することなく、無きゃないで良いよっていう(笑)。

トミー:ちょっとこう動かすと、“違うな?”って(笑)。

KOZZY:たとえば、じゃあ全員ミュージシャンを変えてやったときに“なきゃないでいいよ”みたいな人っていないでしょ? 逆に言うとそういう人にギャラは払えないし(笑)。

── でもそういう志向からすると、(KOZZYが好きなビートルズの)ポール・マッカートニーのベースは弾き過ぎということですよね。

KOZZY:弾き過ぎですね。だから僕はほとんどベースをカットして聴かないようにしてますから。

トミー:ははははは。

KOZZY:まあそんなことはないけど(笑)。あれはポールのベースありきのバンドですからね。

── KOZZYさんがやっている音楽でベストマッチなのがトミーさんのベースということですね。

KOZZY:そうですね。やっぱりビートルズもポールのベースじゃなきゃいけないわけですから。いくらうるさくても(笑)。でもあれがメロディを作っているようなところもあるから。逆に言うと、こういうシンプルなルーツみたいな音楽はあんまり動かないベースがメロディを作っているというか、重要なものなので言葉が通じない人には任せられないなと。

── 細かいニュアンスを伝えるのは難しいんですね。

KOZZY:その場で一緒に演奏してテープで録っていて、ドラムとベースはかぶっちゃっているから後で変えられないんですよね。ダビングはギターくらいしかやっていないんで。ところがドラムのドンさんは英語だし、トミーは標準語すら喋れないから。

トミー:(笑)。

── 広島弁で(笑)。

KOZZY:そのふたりが普通に会話してやっているんですよ。僕も歌いながらなんで、ブースに入っているから、そうするとスタジオの中はドンさんとトミーだけなんですよ。そうすると、“なんか合わないね”って会話してるんですよ。英語と広島弁で(笑)。

トミー:なんかわかるんですよね。お互いに。終わったらニコって笑ってるから、“今の成功ですよね?”みたいな顔したら“うん”って(笑)。

── それはミュージシャンならではですね。

KOZZY:そうですね、まったく言葉がいらないというか。ここはちょっとリズムが走っちゃったり上手く表現されていないからもう一回チャレンジしてみようとか、みんなで検討してやって。“KOZZYどうだ?”って訊かれて最終的には僕が決めるんで、“もう1回”とか“今ので良い”とかを話しながらやっているんですけど、それが終って飯の時間になると誰も喋らないんですよ(笑)。

トミー:そうだね、確かに喋らないね。

── 音楽があるからコミュニケーションできるという。

KOZZY:それが終わると通訳がいないと喋れないという。急に閉じちゃうのは日本人の良くないところだよね(笑)。
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