【JUNO REACTOR来日ライブ記念 SUGIZOインタビュー】Vol.1 JUNO REACTORとの出会い/音楽遍歴編

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1990年代ロンドンでトランスムーブメントを巻き起こし、今なおシーンの頂点に君臨し続けるJUNO REACTOR。彼らの2013年以来となる待望の来日公演が決定した。ギタリストとして加入8年目となるSUGIZO。現在、都内某所でスタジオ作業に没頭するSUGIZOに、これまで語られていなかった音楽遍歴から、JUNO REACTORとの出会い、これから向かう未来に至るまで、ロングインタビューを行った。全3回に渡りお届けする。

◆JUNO REACTOR 来日公演ティザー映像

◆その時期の僕は、ソロ音楽では
どんどんトランスの方向に接近していました


――SUGIZOさんは2006年にJUNOに加入されましたが、JUNOとSUGIZOさんの出会い、そして加入に至るまでの経緯はどのようなものだったのでしょうか?

SUGIZO:1990年代、もともとは普通にリスナーだったんですよ。JUNO REACTORは、サイケデリックトランスシーンのオリジネイターであり、シーン自体を築いた存在だったんです。 僕は、その前に…1993年ぐらいかな?1stの『Luciana』で彼らを知ったんです。もともとはThe OrbやYouthが好きだったんですよ。 1992~1993年頃からアンビエント・テクノのシーンに傾倒していき、きっかけはThe Orbであり、そのThe Orbを知ったきっかけが、Primal ScreamのScreamadelica。そしてその後Youthが好きになった。もともとキリング・ジョーク は好きだったんだけど、テクノクリエイターとしての彼の方に惹かれたんです。そして、エイフェックス・ツインが出てきた。テクノシーンがアンビエント、サイケデリックな方向に向かっている、そんな時代でしたね。そんな中、1993年にYMOが再生。その彼らのアルバム『TECHNODON』は、今聴いても全く古くなっていない、アンビエントのアルバムです。しかも、彼らの東京ドームでの復活公演のオープニングアクトがThe Orbだった。そういった時代の一連のシーンの中で、JUNO REACTORに出会ったんです。もちろん、その時点ではトランスということは意識せずに。そうこうしているうちに、トランス・シーンが立ち上がり、JUNOがそのトップに君臨していた。一般に知れ渡るきっかけになったのが、映画『レジェンド・オブ・メキシコ』の「Pistolero」であり、何と言っても映画『マトリックス』ですよね。2作目の『マトリックス リローデッド』 と、3作目の『マトリックスレボリューションズ』で一気に世界的なレベルまで広まった。その時期の僕は、ソロ音楽ではどんどんトランスの方向に接近していました。もともとのソロの音楽はUK的で、JUNOはUK出身だけど、トランスに僕はUKのイメージはあまりなかったんですよね。

――でも、UKだと思いますよ。Youthにしても、結局皆がバタフライスタジオで発信したものが、やがて ゴアトランスと呼ばれるようになった。

SUGIZO:ああ、そうなのか。確かに(The Orbの)アレックス・パターソンもそうだしね。トランスはどうしてもゴアや中東のイメージが強いけど、確かにアーティスト自体はイギリスですね。

――テクノだったらドイツだったりアメリカだったりしますけど、トランスだったらイギリスが発祥の地かもしれないですね。

SUGIZO:僕の中では「動」がトランスで「静」がアンビエント。それは対になっているものなんです。例えば、アンビエントの大物であるアレックス・パターソンは、実はJUNO REACTORの初期メンバーでもありますし、DJとしても名を連ねていますよね。僕はそのシーンにすっかり魅了され、ソロではその方向でのアプローチの色がどんどん強くなっていきました。



▲SUGIZO(2008年時)

――JUNOとの最初の接点は?

SUGIZO:2002年当時『SUPER LOVE』、『DEAR LIFE』などのリミックス・プロジェクトの制作に日本のトランス畑のアーティスト、例えばUBERTMERさんやMaZDAくんやMasaさん、あとはトランスではないんだけどリスペクトし合っていたアンビエント・アーティストのElectrical LOVERSなど、今振り返っても良いアーティストの方々とコラボレーションしていたんですよ。その後は紆余曲折があり、リミックス・プロジェクトは暫くの間暗礁に乗り上げていたのですが、リミックスのプロジェクトが再び動き出した時に、やはりトランスを中心に攻めていきたいくて。どうせやるのであれば一か八か、トランスの帝王であるJUNO REACTORにオファーしたいと思ったんですよ。その時、僕の知人を介してJUNOの日本のエージェントと繋がることができまして、ベン・ワトキンス(以後/ベン)に連絡を取ってもらい、すぐに快諾してもらえました。それが「SPIRITUARISE」という曲です。

◆なんと公演3日前に僕に
サポート出演依頼が来まして(笑)


――その後、ベンと対面したのはいつですか?




▲ベン・ワトキンス

SUGIZO:ベンがアニメーション映画『ブレイブストーリー』のサウンドトラックを手がけた際にプロモーションで来日し、雑誌の対談で初めて対面することになりました。音楽の話、スピリチュアルな話などですっかり意気投合したんです。サウンドトラックは、全編フルオーケストラで構成される素晴らしい作品でした。そして、その年の秋に、JUNOが過去最大規模の編成で来日公演を行ったんですが、その時にセッションでの出演打診をもらって。いくつかの候補曲はあったんですが、ライヴ前日になってもまだセットリストが決まっていないようなグダングダンな酷い状態で(笑)。さすがにセッションプレイヤーとしての参加は難しかったため、その時は出演はしませんでした。その時のギタリストは80年代のスターであるスティーヴ・スティーヴンスですね。でもその後、1週間後に開催される<渚・音楽祭>でJUNOのヘッドライナー出演が緊急決定したんですが、なんとスティーヴが諸事情で帰国してしまい、出演できないことになってしまったんです。それを受けて、なんと公演3日前に僕にサポート出演依頼が来まして(笑)。なんとか3日間で猛練習して、無事フェスにJUNOとしての出演に至りました。ライヴは大成功で 、メンバーとも完全に意気投合して、これから是非一緒にやっていこう、という流れに至ったんです。


▲ビリーアイドルのギタリストとしても知られ、TOP GUNのサウンドトラックデグラミー賞も受賞したSteve Stevens

――かなりエクストリームな状況からの出会いだったんですね。これでSUGIZOさんとJUNOの線が繋がりました。

SUGIZO:やはり背景を知らない多くの人には、SUGIZOとJUNO REACTORがすぐには結び付かないと思うんですね。でも、このような僕の音楽遍歴からすると、この出会いはごく自然な事であり、必然だったと思います。サイケデリック・トランスのシーンが形成される以前の、所謂セカンド・サマー・オブ・ラヴ(EDMの源流となった、1980年代後半のUKで生まれたダンスミュージックのムーヴメント)からの一連の流れだったんですね。


▲南アフリカを代表するAmampondoもJuno Reactorのメンバーとして在籍


▲アジアン・ダブ・ファンデーションのメンバーとしても在籍した、ゲットープリースト


▲マイルス・デイヴィスのバンドにも在籍経験のある南アフリカのパーカッショニスト MABI

――そういった音楽性を通ってきている日本のミュージシャンは、なかなかいないですよね。

SUGIZO:そうかな? 僕のルーツはYMOで、そのシーンに強く影響を受けているということが大きいですね。トランスやアンビエントは、音楽の質感やディテールはもちろん大事ですが、最も重要なのは、その根底にあるスピリチュアリティなんですね。トランスやアンビエントは精神性を表現するための音楽で、とてもシャーマニックなもの。そして、そういったシーンでの日本の第一人者は細野(晴臣)さんであり、その影響下にある僕がこの方向に進んでいったのは自然なことだったと思います。同じYMOの3人でも、坂本(龍一)さんは、より現実的でアカデミックな要素が強い。(高橋)幸宏さんはハイセンスなポップス。その3人の影響が僕には強くあるはずですし、それはまた違った形でLUNA SEAにも現れているはずです。ベンやSYSTEM 7のスティーヴ・ヒレッジと一緒に居ると、また違った角度からそういった影響を強く意識するんです。ベンは58歳、スティーヴは還暦を過ぎていますが、彼らが子供の時にはもちろんテクノなんかありませんでした。ロック少年だった彼らが影響を受けたのは、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリン、デヴィッド・ボウイ。つまり、今日のニューウェーヴやアンビエントなテクノ・ミュージックの総本山です。彼らはロックで育ち、僕も同じくロックで育った。彼らはテクノの大御所アーティストですが、面白いことに、僕と音楽遍歴がかなり一致するんですね。 今の若い世代のテクノ・アーティストはそのルーツを通っていない人が多いので、最初からテクノに入っていますよね。生楽器、ギター、生ドラムを知らない人が多い。そういったバックグラウンドで作る音楽はそれはそれでかっこいいのですが、生のロックの洗礼を受けてそこからテクノを産みだしたベンやスティーヴのような世代では、同じテクノ・ミュージックでも明らかな違いが存在します。

――なるほど。

SUGIZO:僕は実は彼らと同じ側にいますし、彼らと同じようにロックや生楽器のライヴな感覚の中で生きていながらも、エレクトロニック・ミュージックを追及するようになった一人です。ベンやスティーヴとは世代は違いますが、ルーツは完全に同じなんです。ベンが初めて観たライヴはデヴィッド・ボウイで、今でもボウイ崇拝していると言いますし、しかも彼はJUNOを始める前、1980年代初期にはニューウェーブ・バンドのシンガーだったんです(笑)。ニューウェーヴやゴスをリアルタイムで体験している。現在のJUNOのドラマーのバッジーも、スージー&ザ・バンシーズのオリジナルドラマーで、ゴスシーンの第一人者です。一般的にはトランス、ゴス、ロックと、SUGIZOとの繋がりが見えづらいかもしれませんが、実は非常に必然的なものだったんです。

◆好きになったらルーツや歴史を
とことん追及したくなる


――アメリカでは、JUNOはインダストリアル・ロック系のレーベル Metropolisからリリースされていますし、トランスではないシーンにアプローチしていますよね。

SUGIZO:そうですね。アメリカではあまりトランスのマーケットは大きくないですし、ベンもアメリカではJUNOをロックバンドとしてのスタンスで成功させたいという意思があります。僕が最初に作ったソロの作品では、ドラムン・ベースやアブストラクト・ヒップホップが中心で、その後トランスの方向に進んでいきました。追及したかったのは、テクノ・ミュージックとハードなギターをいかに高次元な融合をさせることができるか。あとは、当時のアーティスト、特に日本のアーティストはまだほとんど誰もやっていなかったのですが、ドラムン・ベースのグルーヴを生演奏で表現したかった。生の楽器で、ロックミュージシャンの視点からの解釈で、ダンスミュージックにアプローチするという手法は当時は新しかったんです。同時期に、JUNO REACTORは生ドラムやディストーション・ギターを採用し始め、ライヴでもロックバンド的なアプローチを始めていた。両者の音楽的な背景から、このアプローチは自然な流れだったんですね。僕の視点では、ドラムン・ベースやアブストラクト・ヒップホップは黒人的グルーヴが源流で、トランスは白人的なアプローチがルーツだと認識しています。僕は黒人的なダンスミュージックに最初アプローチしていて、それはマイルス・デイヴィスやプリンスが僕の神だったからです。ドラムン・ベースにはマイルス的グルーヴが確実に存在しますし、彼の名盤「On the Corner」こそがドラムン・ベースの礎を築いた作品だと解釈しています。一方、アンビエント・ミュージックの礎はピンク・フロイドの「Echoes」等だと認識していますし、トランスのベースにあったのが、やはりフロイドでありゴングであり、いわゆるプログレッシヴ・ロックシーンだった。The Orbの「U.F.Orb」というサイケデリック・アンビエントの名盤があって、その中に最高にかっこいいグッショグショなエレキギターが入っています。その頃の僕はまだSYSTEM 7を知らなかったんですが、それをプレイしていたのがスティーヴ・ヒレッジだった。そこからSYSTEM 7にハマって行くんですが、ゴングのギタリストが今はこんな事をやっているのか!、という強烈な衝撃がありましたね。多分、僕の音楽の聴き方は男性的なのかもしれないですね。好きになったらルーツや歴史をとことん追及したくなる。学術的。それとは逆に、女性的な聴き方は、好きになったものだけが好きという、より感覚的なもの。もちろん誰もが音楽評論家になるわけではないですし、どちらが良いという事はないのですが、僕は全てを知りたいという欲の塊でしたし、それは今でも変わっていないと思っています。

Vol.2 JUNO REACTORの音楽編に続く――


<JUNO REACTOR Japan Tour 2015>

2015年5月19日(火) ミナミアメリカ村 BIGCAT
開場 19:00/開演 20:00
¥5,800(税込/スタンディング・整理番号付き)
※ドリンク代別途¥600 ※当日券¥6,500
opening:Djmukai(leapGAzoom)
チケット一般発売:2月13日(金)
プレイガイド
チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:254-235)
ローソンチケット 0570-084-005(Lコード:54565)
イープラス http://eplus.jp/
後援:FM802
[問]:BIGCAT 06-6258-5008
http://bigcat-live.com

2015年5月21日(木) 名古屋 BOTTOM LINE
開場 19:00/開演 20:00
¥5,800(税込/スタンディング・整理番号付き)
※ドリンク代別途¥500 ※当日券¥6,500
opening: DJ KAGIWO(Landscape Music)
チケット一般発売:2月13日(金)
プレイガイド
チケットぴあ 0570-02-999(Pコード:254-777)
ローソンチケット 0570-084-004(Lコード:45673)
イープラス http://eplus.jp/
後援:InterFM
特別協力:ZIP-FM
[問]:BOTTOM LINE 052-741-1620
http://www.bottomline.co.jp

2015年5月22日(金) 渋谷 TSUTAYA O-EAST
開場 19:00/開演 20:00
¥5,800(税込・スタンディング・整理番号付き)
※ドリンク代別途¥500 ※当日券¥6,500
チケット一般発売:2月13日(金)
Opening : FUNKY GONG [DJ] ✕VISIBLEX [VJ]
プレイガイド
チケットぴあ 0570-02-9999(Pコード:253-839)
ローソンチケット 0570-084-003(Lコード:78240)
イープラスhttp://eplus.jp/
主催:J-WAVE 後援:InterFM
[問]:M&Iカンパニー 03-5453-8899
http://www.mandicompany.co.jp

New Album『The Golden Sun Remix』

2015年4月15日発売
FAMC-178 ¥2,592(税込)
発売元:Wakyo Records
販売元:株式会社KADOKAWA
12cmデジパック仕様
収録曲
1.Final Frontier (Extrawelt Remix)
2.Zombi (GMS Remix)
3.Guillotine (Bliss Remix)
4.Invisible (Ritmo Remix)
5.Tempest (Zeologic Remix)
6.Trans Siberian (Cylon Remix)
7.Shine (Modus Remix)
8.Byculla (Tortured Brain Remix)
9.Play With Fire (Jitter Remix)

◆JUNO RECTOR オフィシャルサイト
◆SUGIZO オフィシャルサイト
◆<JUNO REACTOR Japan Tour 2015>特設Facebook
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