【インタビュー】フレデリック、『OWARASE NIGHT』に「自分の言葉で本当に伝えたいこと」

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フレデリックが5月6日、ミニアルバム『OWARASE NIGHT』をリリースする。全曲の作詞作曲を手掛ける三原康司曰く「より現実的に。伝えたいことを確信した」という歌詞は鋭く、クラブミュージックやニューウェイブからの影響を感じさせる楽器隊のサウンドアレンジがメロディ本来の美しさを際立たせる仕上がりだ。16ビートを疾走させる赤頭隆児のエモーショナルなギター、康司とkaz.によるリズムは王道にしてシンプルがゆえにエレクトロとの交わりも素晴らしい。そして三原健司が奏でるメロディーは一度聴いたら耳から離れぬ中毒性と躍動感を普遍的にはらんでいる。

◆「オワラセナイト」ミュージックビデオ

リリック的にもサウンド的にも新境地と変わらぬ本質に貫かれたこのミニアルバムのテーマは、“はじめるために終わらせないと”。メジャーデビュー作となった前ミニアルバム『oddloop』を踏襲しつつ、自らの未知へ踏み出した『OWARASE NIGHT』には、夜を終わらせたからこそ勝ち得た清々しい朝日の到来が輝いている。夜を徹して撮影されたミニアルバムのアートワークもそれを物語るもの。多くのチャレンジが注ぎ込まれた今作について、メンバー4人に話を訊いた。

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■悲しみのどん底があったからこそポジティブになれた
■だから今、僕はうれしい

──メジャーデビュー作となったミニアルバム『oddloop』(2014年9月24日発表)が、全日本CDショップ大賞の関西ブロック賞を受賞したほか、タイトルトラック「オドル―プ」のYouTube再生回数が280万回を越えるなど、バンドの認知度がグッと上がった印象があるのですが、そのあたり、たくさんの人に聴いてもらっているという手応えはありますか?

三原康司(B&Cho):「オドル―プ」はリリース前からライブでやっていたんですけど、もうその時点で手応えは感じていたんですね。ライブで1回やったときに、お客さん全員の手が挙がった曲だったんです、初めて披露したのに。それは今までの自分たちのライブにはなかったことだったんです。

──即効性があったんですね。

康司:インディーズで出した『うちゅうにむちゅう』(2014年3月12日発表)は、初めての全国流通ということで、“こんにちは、フレデリックです。こういう音楽をやっています”という内容の作品だったんです。ライブも“僕たちはこういうライブをやっています、好きな人は付いてきてください”っていうようなもので。その後、メジャーデビューにあたり、これからお客さんにどういうことを提示していくかをバンド全体でちゃんと考えて、いろんな話し合いをしたうえで出来上がったのが『oddloop』だったんです。『oddloop』を掲げたライブをやって、お客さんの反応を実感したときに自分たちの新境地が見えた。バンドの1歩先が見えた作品になったんです。そしてまた、『oddloop』を経たからこそ、『OWARASE NIGHT』を完成させることが出来たと思っています。

──今作『OWARASE NIGHT』もフレデリックの特徴である中毒性を存分に含んだ7曲が揃っています。作品のテーマは“終わりとはじまり”ということですが?

康司:“終わりとはじまり”、“夜と朝”がテーマです。僕自身のことなんですけど、夜も眠れないぐらい悲しいことがあって、時間も気にせずいろいろ考え事をしていて……窓の外をぼーっと見ていたんですね。そうしたら朝日が上がってきて。その朝日がいつも見ている朝日とは違うようで、いつもよりすごくきれいに見えたんですよ。そのときに人は悲しみのどん底にいるときに、小さな幸せがすごく大きく見えるんやなと思って。それってものすごくポジティブなことだと思いませんか? 自分が経験したこの気持ちを、聴いてくれる人にも伝えないといけないなと。悲しいこと、つらいこと、そこに終わり打って、新しいスタートを切る。これはすごく大事なことやなと思って、今回テーマにしました。

──今、テーマのきっかけを聞いて、少し意外でした。今作には“悲しみのどん底”が、あまり描かれていない印象だったので。

康司:“悲しみのどん底”があったからこそ、ポジティブになれた。新しいスタートを切れた。だから今、僕はうれしい。『OWARASE NIGHT』にはその気持ちが詰まっているんですね。

──1曲目の「オワラセナイト」ですが、これをタイトルトラックでありリードトラックにすることは決まっていたのですか?

康司:「オワラセナイト」は、今回の収録曲の中でいちばん最後に出来た曲なんですよ。この曲が出来たときに、これが本当に自分の言葉として伝えたいことだったんだと確信しました。

──「オワラセナイト」の原曲を聴いて、みなさんはどのような印象を受けましたか?

三原健司(Vo&G):デモの段階から“終わらせないと なにもはじまんない”という歌詞があったんですけど、康司が伝えたいことはこれだったんだなと。アルバム曲の中でいちばん最後に出来た曲ですが、いちばん後から出来た曲がリードトラックになるのって普通はあまりないと思うんですよね。でもこの歌詞が出たときに、これはアルバムのリードトラックにする他ないと思った。それは、この言葉がフレデリックが今進める道なんじゃないかと確信したから。ボーカリストとしても、今後道を切り拓いていくためには、この曲をしっかりと歌わないとって。今までの自分のままじゃ足りないと思いましたね。

──すごく細かい質問なんですけど、歌詞に“終電感情線外回りに間に合わないよ”ってあるんですけど、終電の後も夜は続くじゃないですか。なのに、“間に合わない”のはなぜですか?

康司:「オワラセナイト」は夜から朝に向かっていく曲で。歌詞は“大阪環状線”に引っかけているんですが、朝からずっと周ってきてちゃんと終電がある。そこでひとつの区切りがつくんですよね。それでまた次の朝がある。環状線と自分たちの日常、生活のサイクル、そこに終着を付けるっていうのをかぶせました。

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