【インタビュー】SEELA [D'ERLANGER]、「重ねてきたのは常に変化ではなく、進化」

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前作『#Sixx』から約2年を経ての登場となるD'ERLANGERのニュー・アルバムは、『Spectacular Nite-狂おしい夜について-』と銘打たれている。今年がバンドにとってメジャー・デビュー25周年にあたる記念すべき節目であること、そしてこのアルバムに、彼らのデビュー・シングルと2ndシングルにあたる「DARLIN’」と「LULLABY」の再録ヴァージョンが収められていること、さらにはその2曲を含む全3曲が、彼らにとって初の海外レコーディングによるものだということなど、今作に関してはメンバーたちの口から直接語ってもらわなければならないことがたくさんある。しかし、何よりもまず言っておきたいのは、とにかくこの作品が、そうした事実関係を抜きにしても素晴らしく痛快なものであるということだ。

◆「CRAZY4YOU」ミュージックビデオ

SEELAはときおり、“ミラクル”という言葉を口にする。このバンドが音楽を作り上げていく過程において、いつも思いがけずそれが起こるのだ、と。ところが今作、『Spectacular Nite-狂おしい夜について-』にまつわる取材のなかで、彼は一度もその言葉を発することがなかった。もちろんそれが意味するのは、ミラクルが不発だったということではない。もはや奇跡レヴェルの化学反応すら、D’ERLANGERにとっての日常になっているということなのだ。

   ◆   ◆   ◆

■やっぱみんな、ギリギリの時に
■バッとやるのがすごい人たちなんで

──ストレートに訊きます。SEELAさんとしては今作について、どういうアルバムができたと感じているんでしょうか?

SEELA:なんか、幅がさらに広がったかなという感じがあって。まあ、毎回それはあるんですよ。楽曲の感じが広がってるというか、“こんな曲もあれば、あんな曲もある”というのはいつも感じさせられることで。ただ、今回のサウンドについては、結構スッキリした感じというか、より新しいD'ERLANGERという感じがしますね、漠然と。

──毎回毎回、新しいと感じる何かがあるということなんですね?

SEELA:ええ。とはいえ結果論なんですけどね。こういうアルバムにしよう、という話を事前にするわけでもないし。なんか今回については、いい意味で綺麗というか……いや、違うか。ある意味、聴きやすいというか……。正直、聴きやすいとか綺麗みたいな言い方はあんまりしたくないんですよね。なんか、いい言葉が見つからないですけど。

──綺麗で聴きやすいとはいっても、アクがないとかドロドロしてないという意味ではないぞ、と?

SEELA:そうそう。それをどう言うたらええか、というのが難しいんですけど(笑)。

──でも、確かにある種の透明感があるというか、クリアな感じのするアルバムですよね。

SEELA:ああ、やっぱそう思います?

──ええ。実際、kyoさんやCIPHERさんとも、“抜けのいいアルバム”という話をしてたんですよ。音と音の間の空気が淀んでないというか。

SEELA:うん、そうですね。そういう音になったのもやっぱり結果論でしかなくて、やってる最中はああだこうだ考えずにいたんですけどね。いつも、ひとつひとつの曲をどうしたらいいかってことし考えてないから。

──結果、そういうものになった理由というのは思い当たります?

SEELA:うーん。まずは音的な部分で言ったら、L.A.に行ったことというのも理由としてあるかもしれないし、国内でのレコーディングも今までとは違うエンジニアとやった、というのもあるのかもしれない。そういうのも含めて、今までの流れとはちょっと違うという感じではあったんで。なにしろD’ERLANGERとしては、初めて組んだエンジニアだったから。

──つまり“D’ERLANGERのレコーディングはこういうもの”という先入観のない方ということですよね?

SEELA:そうですね。やっぱりずっと一緒にやってきた人だと、イメージできるじゃないですか。だいたいこれぐらいは行くかな、みたいなことが想定できるというか。でも初めてやから、それがないわけですよね。でも、それが結果的には功を奏したんかな。

▲@L.A.レコーディング

──で、やっぱりL.A.行きの影響というのも大きかったんでしょうか?

SEELA:いやー、どうなんやろ? 影響として大きいかどうかはわかんないですけど、やっぱり新鮮やったしね。日本での作業をする前に行けたっていうのも良かったかもしれないですね。

──しかし、そのぶん帰国後の作業日程は大変なことに。いつも以上に今回は厳しいスケジュールだったんじゃないですか?

SEELA:ええ、まあ。ただ、そこについてもちょっと感覚の差みたいなものはあるみたいで。kyoちゃんと話した時に、彼は「これまでになかったぐらいカツカツな感じだった」と言ってたんだけど、俺はそこまでカツカツやったとは感じてなくて。いや、カツカツなのは確かにいつも通りカツカツなんやけど(笑)、ちょっとオフの日が挟まって撮影があったりとか、そういうのがクッションになって、そこまで切羽詰まった感じにはならずに済んだというか。まあ、それでも“ヤバいな”みたいなのはありましたけど(笑)。

──これまでにも綱渡りのスケジュールは経験してきたはずですけど、それでも今回のように“L.A.での再録から帰国後に新曲のプリプロとレコーディングを一気に”というのはかなりリスキーだったはずですよね? 失礼な言い方にはなりますけど、曲なんて、出てこないときは出てこないものでもあるわけで。

SEELA:確かに。でも、だいたいいつもそうなんで(笑)。いや、当然、気持ちのなかでは“どうなんかな?”と思ったりはするけども、それも含めていつもの感じなんですよ。しかも、もっと言えば、切羽詰まらないとできなかったりもするんで(笑)。だから逆に、余裕をもってやることで、それがいい結果に繋がるのかどうかもわからないんですよね。毎度こうだから、結果的にこうできてるというのはあるけど、もっと余裕をもってやろうとすれば……やっぱり時間があればあるほど考えてしまうじゃないですか。どうにでも行けるわけで。そうなってくると“これ!”っていう一瞬の判断が鈍ってしまうというか。

──選択肢が多いがゆえに、逆に迷いが生じてしまうことがある、と?

SEELA:そういうこともあるのかな、と思うんです。だから結構よくあるのが、何曲かバーッと曲作りが始まった場合、初めに取り組んだ曲で考え込んでしまうこと。ところがそこで流れに乗っていけると、ギリギリになってからバババッとできたりとか。

──つまり、少なくともCIPHERさんの曲作りさえ間に合うならば、このバンドの場合はこうした作業のあり方が望ましいということなんですね?

SEELA:いいか悪いかはわからないですけど、全然これでも大丈夫っていうのは確かで(笑)。それも全部、結果論として言えることなんですけどね。やっぱみんな、ギリギリの時にバッとやるのがすごい人たちなんで。

──追い込まれた時の集中力とか瞬発力とか。SEELAさん自身もそれを発揮するタイプだという自覚があるわけですね?

SEELA:そうですね。今回のレコーディングでは……結果的にリズム隊の録りが3日間あったんですけど、結局そのうち2日ドラムをやったんで、最後の1日だけでベースは録ったんですよ(笑)。しかもその3日目、1曲だけまだドラムが録れてなかったんで、自分は早くスタジオに入って、Tetsuが来る前に全部終わらせたるぞ、というのをその日の目標にして(笑)。で、最後の曲の中盤ぐらいにTetsuがやって来たんで、“あともうちょいやったな”って(笑)。まあ、時間的にはキツかったですけど、そのぶんポンポン、とできたんで。ひとつ終わったらすぐに“はい、次行こう”という感じで。

──同じようなキャリアや実力があっても、そこまで思い切り良くやれる人ばかりではないはず。そういう人ばかりこうして集まっているバンドって、ある意味めずらしいんじゃないかとも思うんですよ。

SEELA:そう……なんすかね。多分そうなんでしょうね(笑)。やっぱ、レコーディングが終わってからすぐに「ああしたほうが良かったかな」というのが結構出てはくるんですよ、いつも。でも、そこで思うのは、「でも、その時の感覚がいちばんアレやし」ってことなんです。

──それが何よりも尊重されるべきだ、と?

SEELA:うん。その時点では、その時のいちばんだと思ってそう弾いたわけだから。あとから時間の経過とともにいろいろ出てくるのは当然のことだし、だったらその瞬間において、いちばんだと思うことができてるんならそれでいいというか。

──なるほど。しかもそこで時間的余裕があると「このままでもいいけど、せっかくもう1日あるから何か試してみない?」みたいなことになり兼ねない。

SEELA:ああ、そういうのもありますよね。まあ、当然やっぱ時間も気にしてますよ、やってる時は。(締め切りから)こぼれたらどうしよう、というのもあるし。その瀬戸際にいますよね、常に。だけども絶対やったるぜ、と(笑)。

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