【インタビュー】flumpool、『FOUR ROOMS』に「1本の大きな木を植えて新しい根を」

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■僕がflumpoolのLINEグループに入ってないことに
■誰も気付いてないんですよ(笑)

──ちなみに「とある始まりの情景 ~Bookstore on the hill~」はどんなイメージを持って作りました?

阪井:とにかくシンプルにしたかった。打ち込みを使わずにこの4人だけで完結するものを作りたかったんですね。最初はストリングスを入れようかと思ったんですけど、コーラスがストリングス代わりになるアレンジも面白いなって。

──歌メロも美しいけれど、コーラスのラインも負けていないというか、ライヴで一緒に歌いたくなるメロディですよね。ふわーっと広がっていく感じで。

阪井:自然に溶け込んでいくような音楽がいいなと思ったんですよね。野外ライヴも夏に決まっているし。

──歌詞はもともと構想があったんですか? それとも阪井さんの曲にインスパイアされた部分が大きかった?

山村:曲に刺激されたところはありますね。誠司(兵庫県出身)以外の僕たち3人は幼なじみなんですけど、この曲ってスッと入ってくる穏やかさがあって、どこか自分たちの地元(大阪府松原市)っぽいんですよ。ホントに何にもなくて、パン工場ぐらいしかなくてね。

阪井:それは言い過ぎ(笑)。

山村:TSUTAYAもあるな(笑)。まぁ、何もないところなんですけど、“それでもいいんだよ”って包みこんでくれるような、自然体でいさせてくれる場所なんですよ。一生が作った曲を聴いたときに同じような気持ちになったので、聴く人にとっても少し自分と向き合えたり、風みたいに空間を包んでくれる楽曲になってほしいという想いで詞を書きました。

──歌詞の中で人生を本のページに例えていて、タイトルにも“Bookstore”という言葉が出てきますよね。

山村:サビをどうしようかなって悩んでいたときにふと本屋に立ち寄ったら、できた歌詞なんです。本屋って多種多様なジャンルの本があって、いろいろな人たちが訪れて自分に合う本を選んで帰っていくじゃないですか。自分の好きなものを選べる場所っていうかね。今は携帯で常に誰かと連絡がとれるけど、めまぐるしく何かに追われていて、意外とひとりで好きなことに夢中になったり、熱中したりする時間が少ないなと思ったこともキッカケになったし。好きなものに囲まれていられる空間や時間って大切だなって。僕らも本屋さんの空間のような素敵な音楽でありたいと思ってタイトルにも入れたんです。

──それで“丘の上にある本屋さん”という言葉が?

山村:そうですね。風が吹いているようなイメージ。

──では、この曲を演奏するに当たって大事にしたところ、こだわったところはありますか?

小倉:いつも通りですけど、音色ですかね。4曲を通じて言えることなんですけど、やわらかさを大事にしつつ、力強さも感じられる音を奏でられるように。

──ドラムセットはチューニングを変えてます?

小倉:今回は普段ライヴで使っている機材を使ったんです。今までのレコーディングではテックの方が持ってくるセットで状況によって音色を変えていたので。その違いは大きいですね。

尼川:僕は正直、特に変化はないんですけど(笑)。シンプルな分、いつもより抑揚のあるベースかもしれないですね。ガッツリ弾くところと極端に音を減らすところのメリハリをつけたというか。あとはふだんはシーケンスに任せるところをベースで弾いていたり。

──全曲通して、リズム隊はすごく重要な役割を担っていますよね。アコースティックが主体となっているので全体の音数が少ないだけに、メロディとハーモニーと、そしてリズムが際立っているというか。ベースとドラムの音が抜けてくる印象があります。

尼川:確かに今までより目立つというか、担う部分が大きいですね。うねりを出す部分だったりとかは特に。

小倉:アコースティックはもともと好きだったので、それはイコール、得意だったのかなっていう。グルーヴ的にもね。

──「歓喜のフィドル」のマーチングドラム的なアクセントや、「大好きだった」のカウンターメロディ的なベースフレーズとか、リズム隊の聴きどころが満載でした。

小倉:ああ、うれしいですね(笑)。

──ギターに関してはどうですか?

阪井:「とある始まりの情景 ~Bookstore on the hill~」に関しては最初のデモの段階から何もフレーズを変えていないんです。歌いながら自然と弾いていたアコギのアルペジオを大事にしたいと思ったし、アコギのソロってカッコいいなと思ったから、真似したくなるようなフレーズを意識しましたね。

──ヴォーカルとコーラスについては?

山村:路上ライヴじゃないですけど、今回は空の下で演奏することをイメージして作られた曲なので、歌も歌詞と同じで穏やかに。そういうふうに歌うために逆に気を配ってすべての箇所にこだわって歌いました。英詞のコーラスは大勢の人が歌っている感じを出したかったのでメンバー以外にも参加してもらったりしています。シンプルで生々しいサウンドなので生命力を大事にしたかったんですよね。サム・スミスの「ステイ・ウィズ・ミー」じゃないけれど、みんなで歌っている温もりみたいなものを表現したいねって。

──ライヴの話が出ましたが、「歓喜のフィドル」は芝生が広がっている空間で聴きたくなるような曲でトラディショナル・ミュージックの要素が感じられます。

阪井:まさにライヴを意識した曲ですね。サビでバーンと広がる爽快な感じとか。カントリーやブルーグラスの要素があったら面白いなと思って、最初からフィドル(民族音楽で用いられるバイオリン)を入れたかった曲なんです。間奏でかなり遊んでもらったんですが、ここまでやっている日本のバンドはいないなと思ってチャレンジも含めて“楽しんでます!!”っていう空気を全面に出したかった曲。

──アコースティックギターのフレーズもカントリー調のものが入って来ますよね。それに、後半にいくに連れて高揚していく展開が気持ちいい。新しいところに踏み込んだ曲ですか?

山村:こういうタイプの音楽はもともと好きなので、たまたま出してなかったっていうのもあります。フィドルの下町感のある響きも自分たちにすごくしっくり来ましたね。歌詞もライヴを意識しているんですけど、“なんでライヴに行くんだろう”と思うと、みんな日常は楽しいことばかりじゃないし、むしろ、辛いことや耐えることのほうが多いと思うんですよ。そういう日々だからこそ、楽しいんであって……。ライヴは頑張ってきた小さな努力があるから生まれる小さな幸せを感じられる場所だと思うんですよ。みんなで幸せを分かち合えるときにフィドルの音が鳴り響くイメージが沸いたから、タイトルを「歓喜のフィドル」にしたんです。頑張ってきた理由が今、この瞬間なんだっていう。

──みなさんの血の中にある曲なんでしょうね。

阪井:好きな音楽ではありましたけど、今までflumpoolにこういう曲はなかったので、1つ1つのカッティングとかグルーヴとかいろいろ試してギターレコーディングは新鮮でしたね。

尼川:「こういう曲をやりたいね」ってずっと言っていたこともあって、前回のツアーにサポートとして参加してもらったバイオリニスト(須磨和声氏)にレコーディングでも弾いてもらったんです。結果、すごくいい形になった。最初のデモを聴いたときはどうなるかと思ってたけど。

山村:2人で心配したな。この曲、ジジくさいって(笑)。

阪井:ジジくさくはないよ(笑)。

尼川:いろいろ軌道修正してこういう形になりました(笑)。

小倉:あと、レコーディングする前に初めて隆太が歌詞を持ってきたんですよ。だから世界観が掴みやすかったですね。

山村:ははは、確かに。初めてだっけ? まぁ、この2人は読んでなかったけどね。

尼川:そう(笑)。送られてきたけど、読んでなかった。

阪井:俺が入れてもらってないヤツ? LINEのグループ、僕だけ仲間はずれなんですよ(笑)。

山村:flumpoolのLINEグループ、3人しかいない(笑)。

阪井:しかも「歌詞送ったよ」って言うんだけど、僕がLINEグループに入ってないことに誰も気付いてないんですよ(笑)。

尼川:オマエ(阪井)が承認しないからだよ。

小倉:自分が悪いんだよ(笑)。

阪井:そういうことか(笑)。

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