【インタビュー】YOSHIKI、ルナフェス出演のため手の手術を延期

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──そういえば、4月8日に開催された<新経済サミット2015>で、非常に興味深い発言をしていましたね。

YOSHIKI:ストリーミングの話ですか?これから音楽流通の主体がストリーミングになることは間違いないですね。レコード、CD、ダウンロード、そしてストリーミングと変わって、ストリーミングの会社もいっぱい出てきていますよね。Spotifyはもちろん、Google PlayとかBeats MusicもTIDALもそうですけど、それ自体を良い/悪いと言っているわけじゃない。むしろ良いと思います。ただ、この状況の中で、一般リスナーが全員サブスクリプション(註:月額定額で聴き放題のストリーミングサービス)するとは思えない。そこからの利益分配があるわけですが、一体これだけで音楽業界がまかなえるのか?と。

──かなり、厳しい状況ですよね。

YOSHIKI:クラシックの場合、例えば200年位前はコンサートの売上とかも多少はあったのかもしれないですけど、基本的に音楽というのは文化への投資/アートへの投資だった。宮廷のロイヤルファミリーのサポートがあってね。だから、音楽という芸術が電化製品を売るような商業ビジネスと同じスキームにある事自体が違うんじゃないかと感じているんです。

──そもそもの問題として?

YOSHIKI:そう。じゃないと、やっぱり付加価値を売っていかなくちゃいけないということになってしまう。稼ぐことは大事ですけど、必ずしもそれだけではないんじゃないかと感じるんです。たまたま20~30年前、CDに変わって音楽が大きな利益を出しましたけど、その基準で考えていくべきなのかどうか。もしそうであれば、今のサブスクリプション方式ではまかなえない。

──そうですね。

YOSHIKI:であれば、ISP(インターネットサービスプロバイダ)が今より課金を僅かでいいので増やして、コンテンツホルダーに分配していく以外にないんじゃないかと思うわけです。

──すでに現代社会では、情報インフラはライフラインのひとつですからね。

YOSHIKI:電気料金は皆さん払いますよね、電気止められると困るから。そこまで強いことを言うわけではないですけど、これから新しいアーティストが出てくるための投資として、ISPからの徴収方式がいいんじゃないかと思うわけです。コンサートビジネスは伸びているじゃないかと言われますけど、それはファンを大勢持つビッグネームが成功しているだけで、新人が出てこれる土壌にはなっていないんです。新しいアーティストがでかいホールやアリーナを埋めるのはそんなに簡単ではない。

──ええ。

YOSHIKI:アメリカでもそんな議論をしているんですが、IPSからの徴収というアイディアに関しては、エージェントの人や弁護士の方々からも「実はそうなんだよね」という意見を耳にしていたので、今回の<新経済サミット2015>でそれを喋ったんです。実際15~16年前ですけど、ISPと対話があったらしいんです。でもそのときは拒否されてしまったらしい。仮にアメリカで全員が1ドル余分に払ってくれて、それが還元されたら…と思います。これは音楽に限った話ではなくて、フィルム制作者もそうだし、コンテンツをネット上で運営している人たちへの還元するシステムになるんじゃないか、と。じゃないと、エンターテイメントはどんどんシュリンクしてしまいますよ。

──宮廷音楽をはじめクラシック音楽がパトロンに支えられて発展してきた歴史がありますよね。ここ数十年は国民がパトロンとなって音楽を支えてきたわけですが、僕は今後は国がパトロンになるべきだと思っているんです。つまり、ミュージシャンは国家公務員になる作戦。割とマジで。

YOSHIKI:ははは(笑)。それはそれで斬新なアイデアですね。ある程度アロケーションがあった上で、でも自由競争も必要だと思いますから、その上で当然Spotifyとかがあってもいい。でもそれを高価にしても多くの人がお金を払うとは思えない。だから、今の既存のビジネスを活かした上で、+αが乗ると成立しうるのじゃないかということで、そこはISPしかないんじゃないかと思っている。

──なるほど。

YOSHIKI:この前、TIDALというジェイZが立ち上げたサブスクリプションオンリーのサービスも発表されましたけどね。

──TIDALは無料試聴は一切なく、全て有料サービスですよね。

YOSHIKI:それもいいんですけど、でも今やすべての人がお金を払って聴くということも考えにくいですし、ファンの人達に無理矢理お金を払わせる感覚は良くない。そう考えると、電気料金をみんなちゃんと払うように、プロバイダにはちゃんと支払いますよね?ネットが繋がらなくなりますから。そこでの支払いであれば、スムーズに行くのでは。

──確かに、音楽はインターネット基盤の上に存在する形になってしまいましたから、理に適っていますね。

YOSHIKI:ネットにはコンテンツがあってこそ成り立っているわけですから、ISPがある種の責任を持っているのではないかと。ぎりぎりのラインだと思いますが。ただそれを全世界で展開するのは確実に難しい。でも日本がもしそういうモデルが作れれば…日本じゃなくてもいいんですけど、どこかの国で成り立ったとすればそれはやがて世界に広がります。その最初の国が日本だったらそれはそれで素晴らしいなと思うわけで。もちろんこれはコントラバーシャルというか、いろんな議論を呼び起こす言葉なので、僕自身は音楽に集中したいんでそういう渦中のど真ん中に行くのは好きじゃないけど、でも今回ばっかりはもう1回一から考えないといけないと思って発言しました。

──そのくらいの危機感がある、と。

YOSHIKI:そうですね。自分自身もメンバーである米グラミーでもそういうミーティングをするんですが、このまま行くとどうなっちゃうのか…。僕達が生きているうちはまだいいかもしれないですけど、その先を考えるとね。だからISP経由での徴収というのは未来に対する投資なんです。「ISPから税金を徴収するんですか?」って言われがちなんですけど、税の徴収ではなく、いずれそれがまた新たなお金を産んで還元されるという文化を育むための投資という考え方です。

──そもそもなんでこういうことになったんでしょう。ネットで音楽は流通しやすくなったのに。

YOSHIKI:権利を守ることと音楽をPRすることの対話がうまくできなかったからでしょうね。ISP経由で還元するような仕組みは最初だったらできたかもしれないですよね。今からでは非常に難しいことだと思いますから。
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