【インタビュー】Tetsu [D'ERLANGER]、「作りものじゃなくて、リアルに感じられるもの」

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■2年間やり続けてきたあの曲をもう一回録りたいって
■すげえのが録れるはずだっていう確信が俺にはあったからね

──今回のレコーディングで使用されているのが、STEAKHOUSE STUDIO。正直、名前を知った時は「ステーキ屋かよ!」と思ったんですが(笑)、Tetsuさんには馴染みのあるスタジオだったんですか?

Tetsu:いや、まったく(笑)。まあ、向こうでやってみたかったのは確かだけど、「どうしても!」というわけではなかったし、実際、俺としては「可能なの?」というくらいのことしか言ってないんですよ。それこそ予算的な都合とかもあるわけで(笑)。どうしてL.A.で録ったのが3曲だけだったかといえば、そこにも理由があるんですけどね。エンジニアのギャラも、現地での宿泊も、全部その予算に含まれてるわけだから。でもまあ、いきなり海外でフル・アルバムを録り切るっていうのも疲れちゃうかな、とは思ってましたね。イチかバチかのところもあるし、新鮮さが薄れちゃう場合もあるだろうし。初めてのL.A.でいきなりアルバム1枚を作るっていうよりは、まずは観光がてら行ってみてて……ぐらいのほうがいいんじゃないかとも思ったし。だけども同時に、このチャンスは逃せないぞ、とも思ってた。結果、この3曲を録るっていう判断はちょうど良かったと思いますね。ご予算との兼ね合いも含めて(笑)。アルバムの半分くらい録っても良かったのかもしれないけど。

──失礼を承知で言いますけど、仮に現地でのレコーディングが良い結果に繋がらなかったとしても、それに続く国内での作業で挽回が可能になってくるし、そういう意味では安全でもあります。

Tetsu:そうともいえますね。とはいえ、やっぱり間違いなく刺激にはなったし……。要するに、現地に入った時点では、ほとんど他の曲というのはなかったわけですよ。2曲ほど新曲があるにはあったけども。で、「DARLIN’」と「LULLABY」の再録というのは、“25周年スペシャル”みたいな感じで、メーカー側からもリクエストがあったことで。こっちとしては全然、やぶさかではなかった。ただ、当初はその2曲と、その時点で曲としては完成されていた新曲2曲のうち、どちらかを録ろうってことになってたんです。で、向こうのエンジニアからは、前もって曲のデータをくれって言われてたんだけども、俺は敢えて渡さずにいたんですよ。

──先入観を持って欲しくなかったから、ですか?

Tetsu:そう。「LULLABY」も「DARLIN’」も、聴いて感じたままフェーダーをいじって欲しかったし、前もって「こんな曲だよ」って渡しておいて、それがこびりついた感じで臨んで欲しくはなかったんで。実際、ぶっつけ本番だったから。1日目、現地にみんなが着いた当日は、スタジオに挨拶しに行ったりして終わり、2日目からガチでドラムを録ったんですけど、その日にあの2曲を録って……。その夜、メンバーに、あと1曲については新曲のうちどちらかをという予定だったけども、「Candy In The Shape Of You」を録ってみたくなった、という話をして。L.A.という場所で、初めて組んだコリンというエンジニアが、すごくガチで向かってきてくれてね。言いたいことも言ってくれて。すごく良かったんですよ。「俺はこう思うんだ」ということをお互い言い合えて。なんか、わかり合えた感じがあった。で、俺はそこで、どうしてもこの男にバラードを録ってみて欲しいな、と思ったんです。いい雰囲気だったし、そこでうちのメンバーたちがいい感じで乗ってきてるというのもあったし。その流れのなかで、勢いで新曲を録るよりは、2年間やり続けてあっためてきたあの曲をもう一回録りたいっていう気持ちになって。それでみんなに唐突に提案してみたら、反対意見も出るかなって思ってたけど、さすがD'ERLANGERですね。みんな、「いいんじゃない?」って。結局、みんなそういうのが好きっていうかね。自分で言うのも変だけど、俺が言ったことにもきっと説得力を感じてくれたんだと思う。すげえのが録れるはずだっていう確信が俺にはあったからね。

▲@L.A.レコーディング

──素敵な話ですね。で、しかもその空気を日本に持って帰って来られてるというのがまた素晴らしいと思うんですよ。

Tetsu:本当は向こうで完璧に上がってきた3曲の音をそのまま持って帰ってきたかったんだけど、コリンからは「2週間待ってくれ」って言われて。現地で時間がなかったこともあるんで、録るだけ録った後のエディットに時間をかけたい、という話でね。それで2週間待ってたら、結果、3週間になっちゃったんだけども(笑)。

──その間に日本での作業も始めなければならなかったわけですよね?

Tetsu:もちろん。だから、音が届いた頃にはあれこれ進んでた。あの3曲については、もちろん現地に居る間もサウンドチェックで聴けてたわけですよ。でも、あのシチュエーションでいい気分で聴いてるから、悪く聴こえるはずがない。変な話、冷静に聴けないというかね。普通に家で聴く状態と聴き比べてみようと思ってパソコンを通して流してみたりしても、窓の外はやっぱりL.A.じゃないですか(笑)。興奮してるのもあるから、やっぱり良く聴こえちゃうというのもあるんで。

──なかなかそこで冷静になれるもんじゃないですよね。そして、帰国後、その音の到着を待ちながら、あらかじめあった2曲以外の新曲たちのプリプロが始まったわけですよね?

Tetsu:うん。L.A.でのモードのままね。楽器単体の音については、L.A.で叩いた時の音像というのが頭にあって、日本でその音が出せるスタジオはあそこかあそこだ、というのが自分のなかにあるんですよ。正直、「これが俺だ!」っていうのが録れるスタジオは、都内でも2軒ほどしかない。もちろんスタジオのせいにするのは嫌だし、余所様から頼まれた仕事の場合は与えられた環境でのベストを尽くすんだけど、やっぱりD’ERLANGERのレコーディングでは胸張りたいし、強気でありたいからね。で、そういうスタジオでの、事情がわかってるエンジニアさんとの作業ってことになると、こっちの感覚的なところをすごくわかってもらえるわけなんです。「叩いた後のこのキラキラした感じ、あるじゃん? そのキラキラを録って欲しいんだよね」ぐらいのことは言えちゃうから(笑)。そういう俺の言葉をわかってくれる人たちが俺のまわりにはいてくれるんですよ。でもね、逆に言えば、L.A.で叩いてた時は、無条件にそのキラキラが録れてたんですよね。そうなってくるとエンジニアも演奏者自身も楽しくなってくるし、お互いいっそうガチでやれるようになるし。そこが楽しいんですよ。ただ、やっぱり日本だと、どんなに和気藹々としてるようでも、エンジニアさんとかも俺たちに「いや、そこはこうだ」とはなかなか言いにくかったりするわけですよ。

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