【インタビュー後編】ホワイト・エンプレスの進んでいく道程

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BSフジ『伊藤政則のロックTV!』で反響のあったアーティストを紹介するライヴイベント<ロック・オブ・ケイオス>、その第2弾として8月31日~9月1日に初来日となるアナセマ出演が発表されたばかりだが、5月12日に開催された第一弾には話題のシンフォニック・デスメタル、ホワイト・エンプレスが待望の日本初上陸を果たした。デビュー・アルバム『純白の女帝』の美しくもエクストリームなメタル・サウンドが衝撃を呼んだ彼らだが、ポール・アレンダー(ギター/元クレイドル・オブ・フィルス)、メアリ・ズィマー(ヴォーカル/元ルナ・モーティス)、シーラ・レア・ハーパー(ベース/元コール・チェンバー)という歴戦の強者たちが集結したステージは、メタルのライヴを盛り上げるツボを知り尽くした実力者ならではの盛り上がりを見せた。日本公演を終えて、ポール・アレンダーにホワイト・エンプレスの進んでいく道程について語ってもらった。

◆ホワイト・エンプレス画像

なおインタビュー及びライヴの模様は6月13日(土)26:00(AM2:00)からのBSフジ『伊藤政則のロックTV!』でも放送される。

──初来日ライヴの感想を教えて下さい。

ポール・アレンダー:最高に楽しかった!俺たちはホワイト・エンプレスの音楽がライヴでさらに素晴らしいものに変貌すると確信していた。でも予想をはるかに上回るショーになって嬉しいよ。

──ホワイト・エンプレスとしてライヴを行ったのは昨年10月と今年5月の数回のみと、決して回数は多くありませんが、不安はありませんでしたか?


ポール・アレンダー:俺はクレイドル・オブ・フィルスで何年もツアーしてきたし、メンバー全員がそれぞれ別のバンドで場数を踏んできたから、ステージ・パフォーマンスにはまったく不安がなかった。メアリやシーラは凄い存在感を放っていたよ。ただ、音楽の方向性については不安がないわけではなかった。ホワイト・エンプレスの音楽は新しい、誰もやったことがないものだ。それがファンに受け入れてもらえるか判らなかった。でも、みんな盛り上がってくれたんだ。日本のファンは新しい音楽に対してオープンだと思う。どの曲でも大きな声援が返ってきたけど、特に「スヴェンの棲む塔」を気に入ってくれたみたいだね。そんな要望に応えて、次のアルバムではスラッシーなタイプの曲が増えるかも知れないよ。

──今回<ロック・オブ・ケイオスVol.1>で共演したベルフェゴールについては、どう感じましたか?

ポール・アレンダー:ベルフェゴールの名前は聞いたことがあったけど、ライヴを見るのは初めてだった。良いバンドだと思ったよ。今回の日本公演は東京だけだったし、彼らと一緒にツアー・バスで移動することはなかったけど、もっと話してみたかったね。同じツアーで出演するバンドと友達になるのは、海外ツアーの楽しみのひとつなんだ。

──ベルフェゴールはオーストリア出身ですが、ホワイト・エンプレスもアメリカを活動基盤としながら、ヨーロッパ的な音楽性が特徴ですね?

ポール・アレンダー:うん、それは俺が持ち込んだ要素だよ。俺はイギリス生まれだけど、イギリスだってヨーロッパの一部だし、現在は女王が統治しているからね。さらにいえばアイアン・メイデンみたいなヘヴィ・メタル・バンドの音楽性にも常に、ヨーロッパ的な要素があったんだ。俺は子供の頃はアイアン・メイデン、ジューダス・プリースト、モーターヘッドが大好きだった。部屋中、アイアン・メイデンのポスターを貼りまくっていたし、毎日何時間も彼らの曲をギターで練習していたよ。それに「流浪者~女帝の帰還」のグルーヴにはモーターヘッドからの影響がある。ただ、彼らの模倣では終わりたくなかったんだ。『純白の女帝』にはジャズのスウィング感もあるけど、消化して自分のものにしているし、アルバムを聴いても「ジャズっぽい」とは感じないだろうね。

──さまざまな影響の下で、メタルを貫くこだわりとは何でしょうか?

ポール・アレンダー:俺の中では“メタルをやっている”という意識は特にないんだ。自分の内面から生まれる音楽をやっているだけだ。俺がやりたかったのは、自分が受けてきた影響を踏まえながら、新しいスタイルを築くことだった。今のエクストリーム・メタルというものには興味がないんだ。好きでも嫌いでもない。ただ距離を置いているんだ。それより映画を見た方が、自分の音楽へのインスピレーションになるよ。

──非キリスト教的な価値観という点で、ブラック・メタルに通じる要素もあると思いますが、ブラック・メタルとの接点は感じますか?


ポール・アレンダー:クレイドル・オブ・フィルス時代にはいろんなブラック・メタル・バンドと一緒にライヴをやってきたし、話すこともあったけど、彼らが真顔でサタンとか悪魔について語っているのは、ちょっと滑稽にも思えた。ブラック・メタルのアルバムで本当に大好きなのは、エンペラーの『闇の皇帝』(1994)、それからバーズムの初期作品ぐらいかな。ホワイト・エンプレスの音楽とあまり接点があるとは思わない。

──『純白の女帝』の共同プロデューサーであるキット・ウールヴェンはシン・リジィやカテドラル、アナセマなどを手がけてきた英国ハード・ロック界の名プロデューサーですが、彼と作業することになったきっかけは?

ポール・アレンダー:実はキットが手がけたアルバムは、あまり聴いたことがないんだ。もしかしたら彼がプロデュースしたことを知らずに聴いているアルバムがあるかも知れないけどね。彼の奥さんが俺たちのマネージャーなんだよ。クレイドル・オブ・フィルスの『ダスク・アンド・ハー・エンブレイス』(1996)もプロデュースしているし、信頼できるプロデューサーだということは知っていた。『純白の女帝』のデモを聴かせてみたら、「凄く良いね!僕にできることはないかい?」と言うんで、「じゃあプロデュースして下さい」ってことになったんだ。彼は素晴らしい仕事をしてくれたよ。

──ホワイト・エンプレスの“純白の女帝”というコンセプトについて教えて下さい。

ポール・アレンダー:女戦士でありながら高貴な女帝でもあるというキャラクターを、ずっと昔から思い描いていたんだ。元々、俺は6歳の頃から和道流空手をやってきたし、養神館合気道と詠春拳も少しやった。だから日本や中国のマーシャル・アーツ(格闘技・武侠)映画が好きだったし、東洋の文化への憧れがあったんだ。『AKIRA』や『超神伝説うろつき童子』みたいな日本のアニメ映画も好きだったしね。そんな東洋の皇后や女帝をイメージしていた。ただ、そのまま模倣するのではなく、俺のルーツであるヨーロッパ的な要素を取り入れたんだ。ヴィジュアル面では、俺はクレイドルにいたから、黒いドレスとかは繰り返しになってしまうし、避けたかった。それで正反対の、白い女帝にすることにしたんだ。

──ある意味、昨年公開された映画『アナと雪の女王』のコンセプトと共通するものがあるかも知れませんね!


ポール・アレンダー:そうだな(笑)。まさか誤解する人もいないと思うけど、影響はないよ。ホワイト・エンプレスのコンセプトは、『アナと雪の女王』よりずっと前からあったんだ。あの映画が公開されたときは少し驚いたけど、幸い誰にも比較されなかったよ。まあ、俺も見てないけどな!

──ホワイト・エンプレスのコンセプトは、今後どのように発展していくでしょうか?

ポール・アレンダー:『純白の女帝』のジャケット・アートに王冠があるのは、女帝の誕生を意味しているんだ。次のアルバムでは、純白の女帝はよりダークで邪悪な方向に進んでいくだろう。音楽面では、速い曲が増えるかも知れない。ただ、次のアルバムに取りかかるのは、2016年の後半になるだろう。それまでは世界中を、命が絶えるほどツアーしまくるつもりだ。日本公演の次はミネアポリスで何回か単発のショーをやって、その後に南米をツアーする。それからヨーロッパの野外フェスティバルにも出たいし、世界を視野に入れてライヴ活動をやっていく。アルバムの世界観についてじっくり考えて、さらに奥行きと深みのあるものにしたいんだ。ホワイト・エンプレスの物語は壮大なスケールのものなんだ。アルバム1枚や2枚で語り尽くすことは出来ない。少なくとも10枚以上かけて語っていくつもりだ。

──ホワイト・エンプレスのヴィジュアル・コンセプトはどうなるでしょうか?『純白の女帝』ではミス・ラクネのアートワークを使っていましたが、今後も彼女を起用していくでしょうか?

ポール・アレンダー:ミス・ラクネのアートワークは素晴らしいものだけど、アルバムごとに異なったアーティストを起用していきたいんだ。出来れば新人を使って、バンドと共に成長していきたい。今考えているのは、“純白の女帝”の物語を題材にしたコミックを刊行することだ。何人かのコミック・アーティストが頭にあるけど、まだ明かすには早いと思う。いずれ映画化だってあり得るし、夢は広がっていくよ。

──あなた自身は、バンド外でのプロジェクトは考えていますか?

ポール・アレンダー:ホワイト・エンプレスは片手間でできるものじゃないし、しばらくは専念するつもりだ。ただ、ツアーやレコーディングをしていないときは、他のバンドのプロデュースをやるかもね。こないだブルー・フェリックスっていう若手バンドのアレンジャーをやったんだ。すごく才能のあるバンドで、少しヒントを与えるだけで、見違えるように良くなったよ。これからホワイト・エンプレスとして前進していくのと並行して、優れたバンドを育てられたら最高だね。そうして俺たちの“純白の帝国”の領土を広げていくんだ(笑)。

取材・文 山崎 智之
Photo by Mikio Ariga


【メンバー】
ポール・アレンダー(ギター)
メアリー・ズィマー(ヴォーカル)
シーラ・レア・ハーパー(ベース)
ジェレミー・コーンマン(ギター)
ザック・モリス(ドラムス)
ウィル・グラニー(キーボード)

ホワイト・エンプレス『ライズ・オブ・ジ・エンプレス~純白の女帝』

50セット通販限定/直筆サイン入りブックレット付きCD 2,500円+税
通常盤CD 2,500円+税
1.女帝、君臨す
2.使徒よ、集結せよ
3.繋がれざる囚人
4.忍びよる漆黒の闇
5.スヴェンの棲む塔
6.書き換えられし記憶
7.悦びと哀しみの日々
8.玉座を追われし者
9.女帝に心を奪われ
10.自己焼却
11.流浪者~女帝の帰還(ボーナストラック)
12.老衛兵、墜つ(ボーナストラック)
13.使徒よ、集結せよ(デモ)(日本盤限定ボーナストラック)
14.悦びと哀しみの日々(デモ)(日本盤限定ボーナストラック)

◆ホワイト・エンプレス『ライズ・オブ・ジ・エンプレス~純白の女帝』オフィシャルサイト
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