【ライブレポート】℃-uteが初の横浜アリーナ公演。「まだまだたくさん叶えたい夢がある」

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昔を振り返るトークパートでは、萩原舞から、ハロー!プロジェクト・キッズにオーディションで合格した時に配布されたという“アイドルの掟”なる書類についての思い出が語られる。そこに書かれていたのは「タンクトップ(露出の高い服装)禁止」「アクセサリーは高校生から」「帽子は深く被る」「MDプレイヤーを購入する」といった事柄。これに岡井千聖が「マジで破産するかと思った。」と、当時を思い出してうんざりしたように呟く。当時は所属が決まっただけで、自分たちの未来がどうなるかもわからない状態。そこにMDプレイヤーに歌の録音するためのマイク、そして自分の動きを確認するためのビデオテープ。「ビデオって1本さあ、300円くらいしたでしょ。毎日毎日レッスンするわけ。1ヶ月くらい。1日300円でしょ。もう破産してたよ。水道止まってたもん、絶対。」と、岡井。もっとも、今の℃-uteがあるからこその笑い話である。

さらに、藤本美貴のバックダンサーをハロー!プロジェクト・キッズが務めることになったものの、萩原舞、中島早貴、岡井千聖は身長が小さいから衣装がなくて踊れないと言われた時を振り返る。「その時は純粋だから、“私たち踊れないんだねー。ちっちゃいもんねー、うちら。”って言ってたんですけど、今考えると、んなわけないじゃん!」と、中島は憤りを隠せない。岡井も「Berryz工房の清水佐紀ちゃんも身長変わらなかったじゃん。」とぼやく。そして萩原は「“大人の事情”を知っちゃったって、切ないね。」と、寂しそうに口にする。そんな彼女は、今やハロー!プロジェクト・キッズ出身者の中で最後の10代である。

鈴木愛理からは、ハロー!プロジェクト最強の雨女を擁する℃-uteの、雨の話。モーニング娘。'15の譜久村聖から岡井に「横浜は集中豪雨ですね。」とメールがきたことなどを紹介すると、“当事者”矢島舞美は「今のところ降ってないっぽいよ。」と他人事(確かにこのトークのタイミングで、雨が降ってはいないことは記者が実際に外に出て確認済み)。そんな℃-uteは、1周年の記念日に告知なしで行なったイベントでも雨だったそう。もっとも、(無告知ということで)客席には観客がふたりしかおらず、そんなふたりのために当時の℃-uteは「まっさらブルージーンズ」を披露。「そんな時もあったのに、こんなたくさんの方が℃-uteのために集まってくれるようになって……。」と、5人は1万2000人の客席を眺めながら感慨深そうに話していた。

コンサートの中盤、観客をシビレさせたのは彼女たちが初めて英語詞に挑戦した「Flashdance...What a Feeling」での、空間を切り取るようなレーザーの洪水……も、さることながら、その次に披露された「次の角を曲がれ」だろう。歪んだギターの生音に促される岡井千聖、鈴木愛理のボーカル。中島卓偉が作り上げたロックチューン、LoVendoЯのギタリストふたり(魚住有希、宮澤茉凛)が奏でるサウンド、そして℃-uteのパフォーマンスが融合したスペシャルバージョンで、突き抜けるような興奮が会場を走り、オーディエンスも熱量を爆発させた。

そのまま「君は自転車 私は電車で帰宅」。今度は哀愁を帯びた魚住、宮澤のギターが、℃-uteの歌声とともに横浜アリーナに写し出された夕焼け空に染み渡り、一気に切なさを醸し出す。言うまでもなく、この表現力の幅も彼女たちが10年の活動を通して培ったものである。

これぞ℃-uteともいえる楽曲を並べた後半。鈴木愛理と岡井千聖が喉の奥から叫び、絡み合うようなハモリで圧倒する「悲しきヘブン」。「Midnight Temptation」では再びLoVendoЯのギター隊が音に厚みを乗せていく。そして花火のようなエアバーストもあった「都会っ子純情」では、矢島舞美と萩原舞がイントロ、アウトロの台詞部分をワンフレーズずつ交互に担当。そんなオリジナルver.と2012神聖なるVer.の奇跡のコラボも、なんともニクい演出だった。

ここまでメインステージ、サブステージ、さらに外周と、横浜アリーナを目一杯使って展開してきた℃-uteのツアーファイナル。本編最後を飾ったのは、つんく♂が2013年に℃-uteのために書いた「たどり着いた女戦士」。

日本武道館、そして横浜アリーナにまでたどり着いた彼女たちが、その万感の思いを胸に抱きながら歌い上げる姿。順風満帆ではなく、むしろ傷だらけになりながらの10年。しかし時は、彼女たちを大人に変え、そして、誰にも負けないほどの強く、美しく、そして気高い輝きを授けていたのだった。
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