【ライブレポート】the telephones、台湾公演で「オレたちは、強い」

ツイート

最高気温33度、湿度70%以上という蒸し暑さに加え、さらに強い陽射しという猛烈な暑さとなった6月20日の台湾・高雄市。この地で、the telephonesが通算3回目となる台湾ライブを行なった。

◆the telephones 画像

台湾第二の都市である高雄でのライブとしては、2012年3月に開催された<MEGAPORT FESTIVAL 2012 大港開唱>への出演以来、約3年3ヶ月ぶり。当時も、同じ“駁二藝術特区”と呼ばれるエリア内でのステージではあったが、今回の会場は、5月に正式オープンしたばかりの“Live Warehouse”だ。そもそも駁二藝術特区は、港町である高雄の波止場に残された旧倉庫群を、新進気鋭の若手アーティストらによって、芸術と文化の拠点として再生された場所。そのため、至るところにアート作品やオブジェが並び、ショップやカフェも併設されるなど、高雄で注目の人気スポットとなっている。Live Warehouseも同様のコンセプトで、古びたレンガ造りの廃墟感が漂う外観に、最新のLEDディスプレイが設置され、一歩中に入れば、実にきれいで広々としたホールが表れるというミスマッチ感は、なかなかのハイセンスだ。

そんな場所で、“日本最強disco揺滾團(=ロックバンド)襲来!!!”と現地で紹介されているthe telephonesがライブを行うのだから、否応なしに期待は高まっていく。しかも今回のライブは、台湾側からのオファーによって実現したものであり、主催は高雄市政府文化局。街中の大きなバス停や、ローカル新聞にも告知記事が載るほどの歓迎ぶりだ。

14時少し前に会場入りしたメンバーは、ステージの準備が整うと、すぐさまリハーサルを開始。初めての会場というだけでなく、現地で調達したアンプ類やドラムなど、普段とは異なる機材もあるため、入念にサウンド・チェックが行われていた。当然ながら、メンバーにはやりづらさがあっただろう。だが反面、こうしたシステムの違いがもたらすロック色の強いサウンドを聴くと、新鮮なアグレッシブさが感じられ、ひょっとしたら10年前のライブもこんな雰囲気だったのかもしれないと、想像が膨らんでいく。こうした点も、聴く側にとっては、海外公演ならではの面白さでもある。

「足元(エフェクター類)も、普段の1/4くらいしか持ってこれませんでした。でも、やることは日本と変わりませんからね。本番が楽しみ。ワクワクします」──長島
「だからあとはもう、お客さんが自由に楽しんでくれたら、何も言うことはないですよ。僕らも楽しみたいです」──松本

こうしてリハーサルを終え、ひと息ついたメンバーは、全員揃って会場を出て、リラックスした表情で駁二藝術特区内を散策したり、近場をしばし観光。このような時でも、常に4人一緒(さらに言えば、スタッフを含めたチーム全員)で行動するあたりが、いかにもthe telephonesらしい。今回の滞在中、なかなかのんびりとした時間が取れなかった彼らにとって、短いながらも、異国の地を楽しめた貴重な時間となったであろう。

そして、開場時間である18時30分にライブハウスに戻ったメンバーは、そこから少しずつ本番に向けてテンションを上げていく。そんな4人に大きな刺激を与えたのが、先にステージへ立った地元・台湾のEDMバンド「OVDS」だ。2014年に日本でもツアーを行い、その際にメンバーと交流を持っていた彼らは、ボーカルが唇サングラスでパフォーマンスを行なうなど、フロアを十二分に暖めてくれた。その波に乗るかのように、20時35分、バックステージで円陣を組んだ4人は、「オレたちは、強い。それだけだ。今日は楽しんでいこう!」(石毛)と声を出し、互いにハイタッチをしたり、背中を叩きあって、テンションをMAXにもっていく。するといつものように、フロアに「happiness, happiness, happiness」が大音響で流れ、青、黄、黒、赤のウィッグを被ったthe telephonesが、ステージへ飛び出ていった。

ギターのフィードバック・サウンドとバンドの轟音をバックに、「We are the telephones from KITA-URAWA, SAITAMA, JAPAN!!! Let's Enjoy!!! Come on KAOHSIUNG!!!」と石毛がハイトーンでシャウトすると、松本が叩き出すビートに観客が“Oi !!! Oi !!!”と応え、「D.A.N.C.E to the telephones」からライブはスタートした。フロアには、日本からはるばる高雄まで足を運んだ熱心なファンの姿も見受けられたが、この日は、ほとんどが地元ファン。しかも驚くことに、彼女たちの多くは、10周年記念グッズや、武道館 DE DISCO!!!グッズを身にまとっていたのだ。きっと、5月21日の日本武道館公演も、台湾から観に来ていたのであろう。そして今度は、the telephonesが台湾にやって来てくれた。石毛のボーカルが、“D.A.N.C.E , Sing along!!!”と1オクターブ上がったのをきっかけに、その喜びが爆発する。間髪入れずに、続いて「Urban Disco」のイントロが流れると、岡本はフロアに飛び込み、そこで突然、腕立て伏せを始めると、周囲は爆笑に包まれる。すると、やや遠巻きに様子を見ていた、おそらく対バン目的で来たであろう観客たちも、自然と前方へと集まってきた。もはや、完全にthe telephonesペース。そして「I Hate DISCOOOOOOO!!!」では、大合唱も巻き起った。

最初のMCで、石毛は「ニーハオ!こんばんは!」と、中国語と日本語を使って挨拶すると、観客からの「こんばんは!」という日本語での大きなレスポンスに驚きつつ、「楽しいですね」とつぶやく。そして、3年振りに高雄へ戻ってきたことを告げ、「We're back!!! Because, we will be ……DISCO!? あはははは(爆笑)OK, Let's enjoy tonight!!!」と語り、「Yeah Yeah Yeah」、そして「A.B.C DISCO」を披露。the telephonesはいつも、“踊れ!”とシャウトし、観客をアジテートしながらも、この曲で“Shall We Dance ?(踊りませんか?)”と歌う。ハチャメチャに見える彼らの音楽に、どことなく漂うロマンチックさは、きっと台湾ファンのハートにも伝わっているだろう。だからこそ観客は、それぞれが思い思いに身体を揺らし、自由にダンスを楽しむ。このライブハウスにはミラーボールがなかったが、フロアを埋める笑顔は、ミラーボール以上に輝いていた。

「A.B.C DISCO」と共に、台湾でもリリースしている「kiss me, love me, kiss me」を終えると、今度はマイクを手にした岡本が、中国語で「ちまき食べた?(吃粽子了嗎?)」と絶叫。実はこの日、台湾は三大節句のひとつである“端午節(旧暦5月5日、つまり日本で言うところの端午の節句)”にあたり、現地ではちまきを食べる風習があるのだそうだ。この中国語のMCには、台湾の観客は大喜び。そのリアクションに対し、なぜだかキレ気味に「早く食べろ!(快點吃!)」と叫んだかと思うと、笑顔で「美味しいですか~???(好吃嗎~???)」と笑わせる。そこに長島が、「ごめんごめん!(拍謝拍謝~!)」と絶妙な間で合いの手を入れて、さらにフロアの爆笑を誘った(ちなみに、石毛も爆笑していた(笑))。こんなユーモラスな空気感も、彼らならではのものであり、しかもライブというリアルな場だからこそ体験できるもの。この日を心待ちにしていたであろう、台湾のファンを大いに楽しませていた。

そこから、台湾で初披露となる「Say DISCO」を演奏し、続けざまに「Don’t Stop The Move, Keep On Dancing」、「Keep Your DISCO!!!」といった曲でアッパーに攻めると、ここで“We are!!!” “DISCO!!!”という怒涛のコール&レスポンスだ。これを何と、10回近く繰り返すと、ステージとフロアはさらにガッチリと一体感を増していく。文法的にも、言葉的にも間違いだらけの“We are DISCO!!!”というワードが、海外の地で、そこに集う人々をひとつにしている光景は、実に痛快であると同時に、そんな奇跡を起こしているthe telephonesというバンドの魅力とエネルギーを、改めて痛感した。

こうして、大盛り上がりとなった「Monkey Discooooooo」で本編を終了すると、観客からは“DISCO!!! DISCO!!!”のカーテンコール。それに応えてステージに戻ってきた4人に対して中国語の歓声が飛ぶと、自称“スーパー高雄マン(笑)”こと、岡本がリアクションする。きっと、お互いに言葉の内容は理解できていなかったであろう。それにも関わらず、十分すぎるほどコミュニケーションが成立しているという、この摩訶不思議な空気感。岡本の縦横無尽なクレイジー・パフォーマンスは、もはや国境や言語も関係なく、その超越っぷりに、驚かされるばかりだ。そして大歓声の中、ファイナル・ソング「Love&DISCO」の合唱で、約60分間のライブが終了した。

▲終演後。対バンのOVDSと、the telephonesの4人。

「ホント、楽しかったです。感動しました。雰囲気もすごくよかったですね」──岡本
「台湾って、日本と同じアジアだけど、お客さんのノリが欧米っぽい。自由に楽しんでくれている感じがいいですね。沖縄の雰囲気とちょっと近いかな。一緒に歌ってくれたのも、嬉しかったです」──石毛

台湾のファンは、ただthe telephonesの音楽が好きだというだけでなく、日本語も完璧に近いくらいまでマスターし、彼らに直接、言葉で、そして手紙で、その想いを伝えようとする。そんな光景をこの日、幾度となく目にした。そこには、ミュージシャンへのリスペクトもしっかりと伝わってくるし、同時に、音楽を愛する仲間として、とてもフラットな関係性も感じられる。そして何よりも、無期限活動休止前に、再び台湾に来てくれたという喜びと、感謝。

ライブ中、ほぼ英語と中国語のみでMCを行っていた石毛は、最後に日本語を交えて、「謝謝!!! 本当にありがとう。また、来ます。いつか、台湾ツアーを……また会いましょう!!! 」と、最大限の感謝を込めたメッセージを送った。もちろん、無期限活動休止前の台湾ライブは、これが最後であることは誰の目にも明らかだ。しかしながら、単なるリップ・サービスではなく、本気でそう思わせる“何か”が、この60分間の中に確実に存在していた。その“何か”こそが、“音楽”の真の姿であり、the telephonesが10年かけて築き上げた“DISCO!!!”の本質なのかもしれない。

文・撮影◎布施雄一郎

■<Warehouse "J" Chapter the telephones 2015 台灣演唱會>
2015年6月20日@台湾・高雄Live Warehouseセットリスト

01. D.A.N.C.E to the telephones
02. Urban Disco
03. I Hate DISCOOOOOOO!!!
04. Yeah Yeah Yeah
05. A.B.C DISCO
06. kiss me, love me, kiss me
07. Say DISCO
08. Don’t Stop The Move, Keep On Dancing
09. Keep Your DISCO!!!
10. Monkey Discooooooo
Encore
E01. Love&DISCO


■7th Album『Bye Bye Hello』

2015年7月22日発売
[初回限定盤]紙ジャケット仕様
CD+DVD:TYCT-69083 ¥3,500+税
[初回限定盤]紙ジャケット仕様
CD:TYCT-69084 ¥2,800+税
※初回限定盤が終了次第、通常盤(プラスチックケース・CDのみ)に切り替え

[CD収録内容](TYCT-69083&TYCT-69084共通)
1. Amber Romance
2. Something Good
3. Last Night
4. When The Zombies Come
5. Pretty Pretty Pretty
6. Never Say No
7. Thank You DISCO!!!
8. Relationships
9. My Hero
10. Let’s Talk About Music
11. Jesus
12. Love Is All
13. Evergreen

[特典DVD収録内容](TYCT-69083のみ)
2008年12月6日にラフォーレミュージアム原宿で開催した「SUPER DISCO Hits!!! the telephones ONE-MAN SHOW!!!」からスタートし、2015年5月21日「武道館 DE DISCO!!! ~SUPER DISCO Hits 10!!! the telephones 10th Anniversary~」で通算10回目となる"SUPER DISCO Hits!!!"シリーズの中から選りすぐりの映像BESTをコンパイル。

■<the telephones presents Last Party ~We are DISCO!!!~>

2015年11月3日(火・祝) さいたまスーパーアリーナ
OPEN/START 9:30/11:30
出演:the telephones and more
チケット料金:前売¥6,500
※オフィシャルホームページ(http://thetelephones.net/)で先行販売受付中

◆the telephones オフィシャルサイト
◆結成10周年特設サイト
この記事をツイート

この記事の関連情報

*

TREND BOX

編集部おすすめ

ARTIST RANKING

アーティストランキング

FEATURE / SERVICE

特集・サービス