【インタビュー】丸本莉子、いつもの景色が違うものに見えてくる柔らかな“大丈夫”が耳に響く「ココロ予報」

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ひと声耳にしただけで名前が浮かぶ、顔が見える。そういう声の持ち主はシンガーとして幸せだ。このたび『ココロ予報』でデビューした丸本莉子も、その意味でとびきりの幸せ者。高音で派手に聴かせるシンガーではないけれども、どういう曲も、その声で自分色に染め上げてしまう。そんなお得な声。その声で歌われるデビュー曲『ココロ予報』は、どっちを向いてもスッキリしない今の世の中で、柔らかな清涼感を持って耳に響く。何度も歌われる「大丈夫」という言葉に、そっと心を撫でられるような心持ちになった1曲である。

◆丸本莉子~画像&映像~

●普通に死にたくなかったカエル声のバレーボール少女

──小さい頃から歌は好きでしたか。

丸本:大好きでした。とにかく大きな声で歌うんで、よく親に怒られてました。それで小学校の低学年の頃、お父さんに「自分の声を聞いてみろ!」って録音して聞かされて、「おまえの声はカエルみたいだぞ」って言われ(笑)。そこから自分の声がちょっとコンプレックスになったりして。

──声が低かった?

丸本:そうなんです。その頃からハスキーだったし、ほんとカエルみたいでショックだったけど(笑)、それに打ち勝つほど歌が好きで、人前で歌うのも好きでした。でも当時は「将来、歌手になる!」とは思ってなかったです。いい声の人が歌手になるんだから、私は歌手になれないと思ってました。

──その頃は、どんな歌を歌っていました?

丸本:松田聖子さんとか。お母さんがカラオケで歌うのを見てマネして歌うようになって。中島みゆきさんの『糸』もそうですね。あとお父さんが聴いてた長渕剛さんとか。

──声コンプレックスは、その後どうなりました?

丸本:いつの間にかなくなりました。「いい声だね」って言われるようになってからコンプレックスもなくなりましたけど、今でも喋り声は「気持ち悪っ……」って思いますね(笑)。でも歌う声は、いいなと思います。なかなかいいなと思います(笑)。

──それだけ歌が好きだったら、音楽の授業でも張り切って歌ったり。

丸本:小学校の音楽の授業でやる♪エ~デルワ~イス~みたいな曲は、キーが高いから嫌いでしたね。むしろ音楽よりスポーツのほうが好きで、小学1年からずっとバレーボールをやってました。ところが中学校のときの選択授業で、なぜか体育じゃなく音楽を選んだんですよ。校庭での体育は暑かった……んですかね(笑)。でもそれが結果正解で。

──楽しかった?

丸本:選択授業は自分達でバンドをやる感じだったんで。そこでギターを独学で始めて、休み時間とかに友達を呼んで歌ったりして。

──ギターが好きだったんですか。

丸本:小学1年から、バレーボールが忙しくなる5年までピアノを習ってたんです。だからギターが新鮮だったし、女の子でギターをめっちゃ上手く弾けたらカッコいいと思って。

──その一方でバレーボールもやり。

丸本:そうなんです、高校もバレーボールのスポーツ推薦で入学したので。

──ポジションはどこだったんですか。

丸本:小学校のときはセンターで、中学校と高校のときはレフトでした。

──バレーボールのエースじゃないですか。


▲「ココロ予報」ハイレゾ先行配信シングル

丸本:ところが高校1年の後半には、なんか楽しくなくなってきて。やらされてる感が出てきたというか、ちょっと違うなって思い始めたんです。だけどスポーツ推薦で入ってるから、辞められるわけがなかったんですね。

──入学して半年で? 展開が早いですね。

丸本:スポーツ推薦なんだから模範生じゃなきゃいけない、模範生じゃなきゃいらないって言われて。それがちょっと重たくなってきたのもあったし。友達がみんな恋とかして楽しそうに青春を送ってるのに、私は何をしてるんだって思い始めちゃって。弱かったんですよね。で、2回くらい部活をサボったら、まさかのクビ(笑)。だけど、それで音楽を始められたんで、なんか不思議な気がします。

──そこから音楽活動が始まるわけですか。

丸本:バレーボールもなくなって何しようかなって思ったとき、中学の友達にバンドに誘われて。高校1年の終わりから始めました。

──パートは?

丸本:すでにギターは二人いたんでボーカルでした。その頃は自分に自信があって、歌も上手いって思ってたんで(笑)。でもみんな全然練習しなくて一向に上手くならないから、「やる気ないんだったら私は一人でやる」って、2年になってから弾き語りでやり始めて。ギターは中学のときからずっと家ではやってたんですけど、バレーボールを辞めてからは学校帰りに毎日、原爆ドームの橋の下で練習してました。ギター背負ってチャリで通学して。学校に楽器を持ってくるのは禁止だったのを、担任の先生がすごい応援してくれて楽器を預かってくれて。

──弾き語りでは、どんな曲を?

丸本:倖田來未さんとかスピッツさん、ゆずさん、19さんとかの曲をやってました。

──曲を作り始めるのは、いつからですか。

丸本:高校2年くらいからですね。声が低いからカラオケで合う曲が少なくて。声に合う、こういう気持ちを歌った曲ないかなって、ずっと思ってたんで。

──最初に作った曲は、どんな曲?

丸本:『あなたの夢を見た日には』っていう、振られたときに作った曲ですね。

──どちらかと言うと、実体験がもとになることが多いですか。

丸本:広島にいるときは、そっちのほうが多かったです。で、上京するまでは歌詞を先に書いてました。歌詞がちゃんとストーリーになっててほしいから、歌詞だけバーッと書いて、そこから適当に歌ってメロディーを作り上げていってましたね。

──その頃から、いずれはデビューしたいと思うように?

丸本:なってましたね。売れると思ってましたし、世界を変えれると思ってました(笑)。とにかくその頃までは、普通に死にたくないって思ってたんですね。

──どういうことですか?


▲「ココロ予報」ハイレゾ先行配信シングル

丸本:子どもの頃から世の中に足跡を刻むような生き方をしたい、私なら何かできるって思ってたんです。だから本当は高校を卒業してすぐ上京したかったんですけど、人生そんな甘くないぞと言われて就職して。2年間、介護の仕事をしながら音楽活動してました。

──なぜその仕事に就こうと?

丸本:お母さんが介護の仕事をしてて。大変そうだけど、すごく楽しそうにしてたので。

──でも重労働な大変な仕事ですよね。

丸本:訪問介護担当だったので、楽しいことのほうが多かったです。お婆さんに孫のように可愛がってもらって、料理を作ってると「これはね!」って教わっちゃって、支援になってないしと思ったり(笑)。お茶飲みながら、ずっとお話しを聞かせてもらったり。

──平行して音楽活動も続けていて。

丸本:一緒に働いてる人達がすごい応援してくれて、ラジオに出させてもらったり、東京に歌いに行かせてもらったりしてました。だから今のままでもいいのかなと思ってたんです。仕事も楽しいし、音楽もできてるし、有名になるなんてどうせ夢だしって。でも訪問介護の支店長さんに、「このままじゃ全部が中途半端に終わるから、介護の仕事を続けるなら音楽は趣味にしなさい。音楽を趣味にできないなら、東京に行ってみたら」って言われて。そのとき思ったんですよね、人生一回きりだからチャレンジしてみたいなって。

──そう言われなかったら、そのままの生活が続いていたと思います?

丸本:だと思います。だってデビューなんて、そうそうできるわけないじゃないですか(笑)。でも上京するんで仕事を辞めますって言ったら、それが周りで噂になって、「莉子ちゃん、上京するんでしょ?」「いつ上京するの?」「1ヵ月後に上京するんだってね」って、話が一人歩きして。私も、「あ、行かなきゃいけない」って思っちゃって、仕事を辞めた2ヵ月後に上京してました(笑)。

──自分より先に周りが決めていた(笑)。

丸本:はい(笑)。それで急いで東京で住む家を決めて。結局、それがよかったんですよね。自分で決断しなきゃいけなかったら、あのままズルズルいってたと思うんで。だからここまで来られたのは、私の行動力というより巡り合わせとか、周りの人達との素敵な出会いのおかげなんだと思います。

──そして本格的に音楽活動が始まり。

丸本:でもツテはないし、お金もないし。

──ツテはなかったんですか。

丸本:まったくなかったんですけど、上京する直前に広島のテレビ局の方から、『雨のち晴れ』っていう番組の主題歌を作ってみないかっていうお話をいただいて。高校卒業したてのときに、広島の音楽番組に出たことがあって、たまたまそのときの映像を見たプロデューサーさんが、「なんの当てもなく上京することに感動した(笑)」って声をかけてくれたんです。なんでも、声が特徴的な広島の女性アーティストを捜してたみたいで。それが今回のデビュー曲になった『ココロ予報』っていう曲なんですけど。でもツテと言えるようなものは、それだけで。だから上京したら、音源をいろんなとこに送って、オーディションもめっちゃ受けようと思ってました。

──実際、送ったり、受けたりしました?

丸本:しなかったです。『ココロ予報』を聞いてくださった安芸太田町の方から、「町のイメージソングを作って欲しい」ってお話しをいただいて。そうこうするうちに広島のテレビ番組の方から音楽プロデューサーさんを紹介されて、その方が今の事務所を知っていて……みたいな。だからホントにすべてが『ココロ予報』から始まった感じでした。

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