我が名は“ランディ・ブライ”、ラム・オブ・ゴッド最新作世界同時発売

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ラム・オブ・ゴッドのニュー・アルバム『VII シュトゥルム・ウント・ドラング~疾風怒濤~』が、世界同時発売となった。そのタイトルの通り、アルバムでは怒濤のヘヴィ・グルーヴが荒れ狂い、先行公開されたオープニング・ナンバー「スティル・エコーズ」や「512」からも、全編ヘヴィネスの音塊が聴覚を襲う。

◆ラム・オブ・ゴッド画像

かつてない激情がアルバムを覆っているのは、2012年にバンドが経た“暗黒の日々”が大きな影響を及ぼしているだろう。6月にチェコのプラハで公演を行うべく空港に降り立った彼らだが、飛行機を降りるや武装警官隊に囲まれ、ヴォーカリストのランディ・ブライが拘留された。その2年前、プラハ公演でステージから転落して死亡したファンをランディが突き落としたのでは?という容疑によるものだった。

ランディは保釈されるまでの38日間、プラハのパンクラーツ刑務所で過ごすことになった。まったく覚えのない罪状で拘束された怒りと不安、もしかしたら自分がファンの死に関わっているかも知れないという自責、千人以上が処刑された刑務所で犯罪者たちと過ごした日々は、確実に本作に影を落としている。それは残されたメンバー達にとっても同様であり、バンドの未来に暗雲が垂れ込めた1年間を経て、その演奏はさらにヘヴィで攻撃的なものへと変貌を遂げている。

ただ、苦難の日々は彼らのミュージシャンシップに厚みを加え、さらなる拡がりをもたらすことになった。ランディは裁判で無罪となり、バンドはさらに強靱になって帰ってきた。『VII シュトゥルム・ウント・ドラング~疾風怒濤~』はラム・オブ・ゴッドが7作目にして打ち立てた金字塔であり、2015年を代表するメタル・アルバムのひとつだと早くも話題になっている。



ラム・オブ・ゴッドは、現代アメリカン・メタル界において抜きん出た存在として近作がいずれも全米ナショナル・チャート上位にエントリーしている。4作目のアルバム『サクラメント』(2006)が8位、『ラス』(2009)が2位、『レゾリューション』(2012)が3位となり、新作はいよいよ1位獲得か…?とも期待されているが、そんな破竹の勢いで驀進する彼らには意外な悩みがある。ランディの名前をきちんと呼んでもらえないのだとか。

ランディの名字はBlytheと書いて“ブライ”と読む。彼の家系はアイルランド系だそうだが、それでもブライと読むのは珍しいらしい(ブライス人形も同じBlytheで、こちらは“ブライス”と読む)。プラハ事件を報じる一般メディアやニュースも、“ブライス”と発音することが少なくなかった。絶大な人気を誇るバンドのフロントマンでありながら、いつまでも名前を正しく発音してもらえないことに業を煮やしてか、最近インタビューなどで、ランディ自身が自分の名前が“ブライ”であることを強調することが増えてきた。

また、プラハ事件を中心にランディが自らの心象風景を綴った随想録『Dark Days: A Memoir』でも、こう書かれている。

「誰も俺の名前を正しく発音してくれない!theは発音せず“fly”みたいに“ブライ”と呼ぶんだ」

状況は変わりつつある。世界的にバンドとランディの知名度は高まっていく中で、日本のレコード会社やメディアも長年“ブライス”あるいは“ブライズ”と表記していたが、新作から本来の“ブライ”表記となった。ラム・オブ・ゴッドの傑作『VII シュトゥルム・ウント・ドラング~疾風怒濤~』で凄まじいヴォーカルを聴かせている男。彼の名は“ランディ・ブライ”だ。

文:山崎智之
Photo By Travis Shinn
編集:BARKS編集部

『VII シュトゥルム・ウント・ドラング~疾風怒濤~』
通販限定/直輸入オフィシャルTシャツ+直筆サイン入りフォトカード+CD 6,000円+税
通常盤CD 2,500円+税
【メンバー】
ランディ・ブライ(ヴォーカル)
マーク・モートン(ギター)
ウィル・アドラー(ギター)
ジョン・キャンベル(ベース)
クリス・アドラー(ドラムス)
1.スティル・エコーズ
2.イレイス・ディス
3.512
4.エンバーズ
5.フットプリンツ
6.オーヴァーロード
7.アンソロポイド
8.エンゲージ・ザ・フィアー・マシン
9.デリュージョン・パンデミック
10.トーチズ
11.ワイン&ピス
12.ナイトメア・シーカー (ザ・リトル・レッド・ハウス)
13. ルーイン (ライヴ)*
14. スティル・エコーズ (ライヴ)*
*日本盤限定ボーナストラック〔2015年6月7日 ドイツ/メンディヒ “ロック・アム・リング”フェスティバルにて収録〕

◆ラム・オブ・ゴッド『VII シュトゥルム・ウント・ドラング~疾風怒濤~』オフィシャルページ
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