【インタビュー】ジェイク・シマブクロ「ウクレレは最大の情熱、好きだからやり続けるんだよ」

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ウクレレの達人、ジェイク・シマブクロが2年ぶりとなるオリジナル・アルバム『Travels』をリリースした。この数年、ツアーで訪れた世界中の様々な土地からインスピレーションを得て誕生したという曲は、それぞれがキャラクターを持ち、ハワイアン、ジャズ、ロックはもちろん、映画音楽のようなメランコリックで繊細な曲やプログレ風、圧巻のソロなどアルバム全体は多彩なサウンドで溢れている。

◆ジェイク・シマブクロ画像

これまでの集大成でもあり新たな挑戦ともいえる新作をひっさげ、9月終わりから10月にかけて日本全国ツアーを行なう彼に、ニュー・アルバムやツアー、ウクレレの魅力について訊いた。


――まずは『トラベルズ』というアルバム・タイトルについて教えてください。“トラベル”という言葉はいろいろな意味に解釈できますが、あなたにとってはどんな意味があり、なぜ、タイトルに選んだのでしょう?

ジェイク・シマブクロ:2つ、いや3つの理由がある。1つは、この数年僕が世界中を旅して体験したり得たものを紹介したかったんだ。これは言葉通り、物理的な意味での旅だね。2つ目は、ミュージシャンとしての旅だ。子供のときから今日までの、ミュージシャンとしての自分の歴史みたいな意味がある。伝統に挑み、革新しようとしてきたミュージシャンの旅だ。そして3つ目は、これは僕の大好きなアルバムのタイトルでもあるんだ。パット・メセニーの『Travels』(1983年)だよ。すごくエモーショナルで…、このアルバムでのギター・サウンド、彼のギターのプレイは本当に素晴らしい。僕のお気に入りのアルバムの1枚なんだ。彼は…、このアルバムは新作の大きなインスピレーションになった。

――それぞれの曲は、あなたが訪れた国や街からインスピレーションを得て誕生したと聞きましたが。

ジェイク・シマブクロ:そういう部分もある。ツアーの合間に作った曲が多いからね。どれも違う国、違う街でアイディアが浮かんだ。だから、このアルバムはとても多彩なサウンドになったんだ。

――日本からインスピレーションを得て誕生した曲はありますか?


ジェイク・シマブクロ:「Ichigo Ichie(一期一会)」がそうだよ。僕が日本に対してどう思っているか、何を受け継いでいるのかを曲にしたんだ。なぜ、この曲をもう一度レコーディングしたかっていうと…、日本ではいつも「Ichigo Ichie」をパフォーマンスしているけど、日本以外の場所ではプレイしたことがなかったんだ。それを7~8ヶ月前に初めて日本以外のところでプレイし始めた。アメリカやオーストラリア、カナダなんかでやって、この先、UKでもパフォーマンスするつもりだ。僕の中ではずっと、これは日本についての曲だから日本でプレイすべきだって思いがあったんだけど、ほかの国の人たちも一期一会って言葉の意味に興味を持ち、理解し、共感することに気がついた。たくさんのコメントをもらったよ。それで、僕が旅をすることで、ハワイの文化を広めるだけでなく、僕が受け継ぐ日本の文化も世界中の人たちとシェアできるんだってわかった。だから、この曲を再レコーディングすることにしたんだよ。日本だけじゃなく、アメリカでもリリースしたかったから。

――このアルバムを作る上で最大のチャレンジだったことは?

ジェイク・シマブクロ:うーん…、今回最大のチャレンジは、ウクレレ本来の音を忠実にとらえようとしたことだと思う。ウクレレが持つエネルギーやトーンをレコードにする。これは今までもずっと挑戦してきたことだ。ライヴでプレイしているときのサウンドやフィーリングが大好きなんだけど、スタジオへ入ると、どういうわけかいつも、サウンドが違うんだよ(笑)。今回は、レコーディング・スタジオでもライヴと同じフィーリング、同じエネルギーをとらえようと、いろんなことを試してみた。僕は、ウクレレの美しくて温かく、強くパワフルだけど繊細なサウンドやトーンが大好きなんだ。だから、それをアルバムにも収めようと、たくさんの種類のマイクを使ったり、プリアンプでいろんなことを試してみた。すごく時間をかけたよ。

――歌詞がなくて、感情やフィーリングを表現するのを難しいと思うことはありませんか?

ジェイク・シマブクロ:その通りだよ。すごく難しい。大変だって思うよ。でも、いつもできる限り感情やフィーリンングを込めようと最善を尽くしている。簡単なことじゃない。いつも苦労しているよ。全ての感情を音楽に込めるのは、とても大変だ。そう、それもチャレンジの1つだった。でも、(ライヴでは)オーディエンスがいることで、とてもやり易い。オーディエンスからエネルギーをもらえるからね。

――4歳のときからプレイしてきたウクレレは、あなたにとってどんな存在なのでしょう?


ジェイク・シマブクロ:そうだな、ウクレレは…、家族、ホームタウン、僕が育ったハワイを象徴するものだね。僕の子供時代、思想、人生すべてを意味するものでもある。ただ音楽っていうだけじゃない。僕の人生の大きなパートを占めているし、僕が何者かって点でも重要な役割を果たしている。

――お子さんもウクレレを演奏するのですか?

ジェイク・シマブクロ:うん(笑)、僕がプレイしている横で弾いてるよ。小さなウクレレを持っているんだ。よく一緒にプレイしてる。

――ギターやベースをプレイする人はたくさんいますが、ウクレレは少ないですよね。ウクレレの魅力を教えてください。

ジェイク・シマブクロ:ウクレレのいいところは、いつも持ち歩けるとこだね。それに、演奏するのが簡単だ。

――これまでに「僕って天才!」と思った瞬間はありましたか?

ジェイク・シマブクロ:ハハハ、ないね。ないよ(笑)。

――でも、これまでウクレレでいろんなことに挑戦し、境界線を押し広げてきたと思いますが…

ジェイク・シマブクロ:自分のこと、いいミュージシャンだとも思ってないよ。音楽は大好きだよ。情熱を持っている。ウクレレをプレイするのは大好きだし、僕の最大の情熱だ。でも、例えば、ゴルフと同じだって思うんだ。ゴルフが大好きだったら、上手いか下手かは関係ないんじゃないかな。ゴルフをプレイすること自体が楽しくて仕方ないと思う。僕は釣りが大好きだけど、すごく下手なんだ。でも、釣りに行くのが大好きで、釣れたときはすごく嬉しい。ウクレレもそれと同じだよ。僕はウクレレをプレイするのが大好きなんだ。それは4歳のときも今も変わらない。子供のときは3つか4つのコードしか知らなかったけど、演奏するのが大好きってところは、今もそのときも同じだ。僕にとって、好きなら、上手いか下手かなんてどうでもいいんだ。好きだから、それをやり続ける。僕はウクレレに対してそう思っている。

――最近、ハワイ・シンフォニー・オーケストラとパフォーマンスしたと聞きましたが。


ジェイク・シマブクロ:あれは多分、僕の人生で最大の音楽体験だったね。キャリアの頂点だった。シンフォニーとポップ・コンサートでプレイしたことはあったんだ。でも、これは全く違った。完全にクラシックだったからね。ウクレレがクラシックの楽器としてフィーチャーされたのは、史上初めてのことだったんだよ。前半は、バイロン・ヤスイ教授(ハワイ大学名誉教授)が作曲した「カンパネラ」って曲を演奏した。オーケストラのためのウクレレの協奏曲だ。30分くらいあるコンテンポラリーなクラシックの曲で、僕がこれまで取り組んだ中で1番難しい曲だった。後半はシンフォニー・オーケストラがマーラーの交響曲第1番を演奏した。だから、完全なクラシックのプログラムだったんだ。ウクレレがクラシックの世界に受け入れてもらえるなんて、夢にも思ってなかった。クラシックって音楽の世界で最高のレベルにあるものだから、自分がその分野でプレイできるなんて、ものすごく名誉なことだったよ。この質問が出たのは奇遇だったな。さっきちょうど、その時録音したものを聴いてたんだよ(笑)。

――それほど素晴らしいコンサートをやり遂げたいま、次の目標は?

ジェイク・シマブクロ:うーん…、僕の最大の目標は、自分自身の手でウクレレの協奏曲を作ることだね。何十年も先になると思うけど(笑)。でも、それが僕の夢だな。協奏曲を作って、それをオーケストラとパフォーマンスして…、僕がパフォーマンスしなくてもいい。誰か別の人がパフォーマンスしたら、それは…凄いよ。学校へ戻ったり、そのためにやることがいっぱいあるから時間はかかるよ。でも、それが僕の最大の夢だね。

――それは楽しみです。では、秋の日本ツアーはどんなものになるのでしょう?


ジェイク・シマブクロ:すごく楽しいものになるよ。僕とベース、キーボードのトリオでプレイするんだ。新作からの曲もたくさん演奏するし、新しくアレンジしたものもいっぱいある。こういう形でプレイするの初めてなんだ。大抵いつも、ウクレレとベース&ドラムでプレイしている。でも、今回はウクレレ、ベース&キーボードだ。だから、すごく違うテクスチャーだし、サウンドやカラーも変わってくる。ワクワクしてるんだ。よく知られている曲でも、新しいサウンド、新しいアプローチになる。ピアニストといろんなことができるよ。これまでと違うことがね。ベース、ドラムとプレイしているとき、僕はメロディ、ハーモニー全てをプレイしなきゃならない。でも、今回はベースとグルーヴしている間、キーボード・プレイヤーがハーモニーを演奏するなんてことができる。ドラムがないことで、ウクレレのパーカッション的な面も見せることができる。だから、すごく興味深いコンサートになると思うよ。すごく興奮してるんだ。このスタイルは初めてだからね。

――ドラマーがいないんですか。

ジェイク・シマブクロ:そう、僕がドラマーだ(笑)。

――最後に、新作やツアーを楽しみにしている日本のファンへメッセージを。

ジェイク・シマブクロ:みんなが新作を楽しんでくれると嬉しいな。それに、コンサートにも来てくれたら…。これまでのショウとは違うものになるよ。でも、エネルギーやポジティヴなヴァイブは同じだ。コンサートに来てくれた人たちには、いい気分になってもらいたいんだ。笑顔で楽しい時間を過ごしてほしい。そして、映画を観るときと同じように、ハッピーな瞬間があったり、メランコリーでちょっと悲しい瞬間もある。ローラーコースターに乗り込むような感じで、感情のアップダウンを共有したい。それに、新作の曲をプレイするのをとても楽しみにしてるんだ。すごくラウドな曲もあれば、エモーショナルなものもある。ものすごく多彩なコンサートになると思うよ。

写真:Coleman Saunders
取材・文:Ako Suzuki


ジェイク・シマブクロ『トラベルズ』

2015年7月22日発売
定価:\ 2,778+税| \3,000(税込)|品番:SICX 1
1.ディパーチャー・スウィート・パートワン Departure Suite - part 1
2.トレイン・ライド Train Ride
3.ロウ・ライダー Low Rider(カヴァー)
4.トラベルズ Travels
5.インタールード・ワン Interlude Ⅰ
6.パスポート Passport
7.ヒイラヴェ Hi'ilawe(カヴァー)
8.エヴリシング・イズ・ベター・ウィズ・ユー Everything Is Better With You
9.ディパーチャー・スウィーツ・パートツーアンドスリー Departure Suite - parts 2 & 3
10.オアマ Oama
11.アイルー・ビー・ゼア I'll Be There(カヴァー)
12.ハヴント・ウィ・ビーン・ヒア・ビフォー? Haven't We Been Here Before?
13.インタール―ド・ツー Interlude Ⅱ
14.カヴィカ Kawika(カヴァー)
15.レッド・アイ Red Eye
16.一期一会 Ichigo Ichie(セルフカヴァー)
17.ディナー・アンド・ア・ムービー Dinner And A Movie
日本盤ボーナス・トラック
18.涙そうそう(カヴァー)
Tracks 2,4,5,8,9,10,15,16 & 17 written by Jake Shimabukuro
Tracks 1,6 & 12 written by Jake Shimabukuro & Dean Taba
Track 13 written by Dean Taba
Track 3 written by War & Jerry Goldstein
Track 11 written by Hal Davis, Berry Gordy, Willie Hutchison and Bob West
Track 18 written by Ryoko Moriyama & BEGIN
Tracks 7 & 14 Traditional Songs

<アメリカン・エキスプレス JAKE SHIMABUKURO JAPAN TOUR 2015 SHOWS>

9/28(月)東京 六本木EX THEATER
9/29(火)東京 Bunkamuraオーチャードホール
9/30(水)横浜 関内ホール
前売¥6,800(座席指定・税込)OPEN18:00/START19:00
主催:J-WAVE
info.03-3444-6751(SMASH )/03-5720-9999(HOT STUFF PROMOTION/Doobie)

10/1(木)名古屋 DIAMOND HALL
前売¥6,800(座席指定・税込・ドリンク代別途)OPEN18:00/START19:00
主催:ZIP FM
info.052-936-6041(JAIL HOUSE)

10/3(土)札幌 PENNY LANE 24
前売¥7,500(座席指定・税込・ドリンク代別途)¥6,500(スタンディング・税込・ドリンク代別途)
一部 OPEN14:00/START14:30 /2部 OPEN 17:00 START17:30
主催:FM NORTH FM
info:011-261-5569(SMASH EAST)

10/5(月)京都 京都市呉竹文化センター
前売¥6,800(座席指定・税込)OPEN18:00/START19:00
主催:FM802 協力:MBS
info:075-252-5150(NowWest 1)

10/6(火)大阪 サンケイホールブリーゼ
前売¥6,800(座席指定・税込・ドリンク代別途)OPEN18:00/START19:00
主催:FM802 協力:MBS
info.06-6535-5569(SMASH WEST)

10/7(水)滋賀 びわ湖ホール 小ホール
前売¥6,800(座席指定・税込)OPEN18:00/START19:00
主催:FM802 協力:MBS
info:075-252-5150(NowWest 1)

TICKET
東 京:eプラス(プレ:6/15-21)、ローソン(L:9/28:72981 9/29:72988 9/30:72997)、
ぴあ(P:266-839)、 楽天チケット、岩盤
名古屋:eプラス(プレ:6/15-21)、ローソン(L:47950)、ぴあ(P:265-647)
札幌:eプラス(プレ:6/15-21)、ローソン(L:14859)、ぴあ(P:266-404)、TOWER RECORDS札幌PIVOT店
京都:eプラス(プレ:6/15-21)、ローソン(L:52392 )、ぴあ(P:266-118)
大阪:eプラス(プレ:6/15-21)、ぴあ(P:266-101)、ローソン(L:52313)、TOWER RECORDS(梅田マルビル店、NU茶屋町店)
滋賀:eプラス(プレ:6/15-21)、ローソン(L:52384 )、ぴあ(P:266-144 )

企画制作:SMASH/DOOBIE
特別協賛:アメリカン・エキスプレス
協賛:KAMAKA UKULELE(株)黒澤楽器店
協力:SONY MUSIC JAPAN INTERNATIONAL
総合問合せ:SMASH 03-3444-6751
http://smash-jpn.com http://smash-mobile.com
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