MASH A&R、<MASH FIGHT! >ファイナルへのシード権獲得は THE BOSSS、パノラマパナマタウン

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音楽雑誌『MUSICA』、flumpoolやONE OK ROCKなどが在籍するA-Sketch、音楽専門チャンネル SPACE SHOWER TV、サカナクションや系列会社にBUMP OF CHICKENが在籍するHIP LAND MUISCの4社が合同で立ち上げたオーディション&育成プロジェクト「MASH A&R」。これまでTHE ORAL CIGARETTES、フレデリック、LAMP IN TERRENを輩出&契約してきた同オーディションも今年で4年目を迎えるが、そのセミファイナルイベントである<MASH FIGHT! 夏のセミファイナル2015>が、8月17日に大阪 心斎橋Music Club Janus、続く20日に東京 新代田LIVE HOUSE FEVERで開催された。

◆<MASH FIGHT! 夏のセミファイナル2015> 画像

このイベントは12月6日に渋谷WWWで行われるファイナルオーディションへの出場権を争う公開ライヴ型のオーディションで、大阪、東京でそれぞれ選ばれた1組ずつがファイナルへの切符を手に入れるというもの。2015年上半期のマンスリー審査を勝ち抜いたアーティスト達が、熱いライヴを繰り広げた。

8月17日@大阪 心斎橋Music Club Janus

会場には若いバンドファンから小さな子供(!)まで、新しい音、新しいアーティストとの出会いへの期待に胸を膨らませたお客さんが詰めかけたこの日、ステージ上で司会進行を行うMCを担ったのはFM802でDJを務める飯室大吾。今年は大阪・東京共に各5組のバンドがエントリーされていたが、残念ながらこの日出演予定だったT / ssueはヴォーカルの体調不良により欠場、よって大阪編は4組によって競われることとなった。



▲バウンダリー

トップバッターは、バウンダリー。大阪在住の現役女子高生ふたり組バンドだ(ライブは男性のサポートベーシストを迎えた3ピース編成)。トップバッターということもあって独特の緊張感が張り詰めたフロアに、ど頭からジャキッとしたパンチある3ピースのロックサウンドが勢いよく跳ねる。ゆきの歌声は、その小柄な容姿から想像されるイメージをいい意味で裏切る、ややハスキーな太さと力強さを持ったロックボーカル。荒削りな衝動感をバンドサウンドとしての武器に変えたパワフルなサウンドに乗せ、シンプルなロックマナーを踏まえつつも予定調和に陥らないキャッチーなフックを効かせた楽曲群を次々に投下し、フロアを沸かせた。



▲GIMMICK_SCULT

2組目に登場したのはGIMMICK_SCULT。すでに大阪を中心にかなりライブを繰り広げている4ピースバンドで、紹介を受けるとフロアからは歓声も上がっていた。少年性の強い透明感ある声の中に、切ない棘と確かな意志が見え隠れする歌声が、あっという間にオーディエンスを惹きつけ、場を掌握していく。心の深くに直接語りかけるような歌と、4人の衝動とエモーションが迸るバンドならではのダイナミクス溢れるサウンドで巧みに緩急をつけながら、聴き手の心のドアをこじ開けて解放に向かわせるステージ。短時間の中でもバンドが内包する熱量とドラマをきっちり爆発させたアクトだった。



▲Atomic Stooges

3組目に登場したのはAtomic Stooges。ファーストデモ音源はアメリカのインディーズレーベルからリリースしたという、関西を中心に活動する3ピースバンドだ。Stoogesという名を宿していることからも想像されるように、始まった瞬間からパンキッシュなガレージロックを不敵に叩きつける。紅一点の女性ドラマーを土台に生み出すグルーヴは、アグレッシブに尖りつつも快感ロック指数が高く、自然とこちらのアドレナリンも大放出状態に。曲によってはヒップホップも咀嚼しつつ、ブルージーなギターも聴かせるなど、様々な音楽に対する理解とフェチズムを自由に自分達の楽曲へと昇華していて、高い肉体性を誇るバンド力と共に音楽的な広がりと可能性を感じさせた。



▲THE BOSSS

オーディションバンド最後に登場したのは、一昨年西宮で結成されたという4ピースバンド THE BOSSS。応募プロフィールにつけられた「自称・人力ダンスパンクロックバンド」という謳い文句からは高速四つ打ち系なイメージが浮かぶが、実際は全然違ってて、ややバックビート寄りな、ナチュラルに腰を横に振らせるグルーヴが心地よくカラダを刺激しながら開放的な昂揚感を生んで行った。何より、大陸的な雄大さをも宿す開けたメロディラインと、どこか夕焼け感のある日常的な叙情性を共存させた歌がいい。ポジティブでハッピーなヴァイブスでフロアを染め上げる一方で、その奥にグッと握りしめられた泣きのエモーションが心を揺さぶる、そんなアクトだった。

全バンド演奏を終えたところで、オーディエンスによる投票タイム。<MASH FIGHT!>は、セミファイナル・ファイナル共に、会場に集ったオーディエンスからの投票も考慮されるのだ。それぞれ最もグッと来たバンドをひとつだけ選択し、あらかじめ配られた投票用紙にしたためて係員へ渡していく。



別室で審査員が協議している間、フロアではゲストバンドのライヴが行われた。大阪編のゲストはフレデリック。2012年に行われた初回の<MASH FIGHT!>で特別賞を受賞してデビューした彼らは神戸出身であり、まさに関西から全国へ羽ばたいたバンド。この1年で急激な上昇カーブを描き、今年の夏フェスでも各地で大盛況という勢いそのままに、1曲目からいきなり「オワラセナイト」を投下し、バンド、オーディエンス双方のギアを一気にトップまで持っていった。この1年の間にフェスやイベントを歴戦しながら鍛え上げた、分厚い太さと鮮やかなキレが同居するタフなグルーヴがガッツリとフロアを踊らせていく様は痛快。




今のフレデリックはダンサブルにオーディエンスを煽る瞬間も、その楽曲&サウンドの深層にグッと引き込まんとする瞬間も、どの場面でも一貫してバンドの「攻め」の姿勢と気迫が見える演奏・パフォーマンスをしていて、それがとてもいい。誰より率先してベースが踊るタメのあるビートも、時に直情的に前のめりな勢いを見せるアンサンブルも、独特のエキゾチックさを放つ歌も、ライヴという現場でオーディエンスと向かい合いながら着実に獲得してきた彼らの確信が見事な花を咲かせていく。最後は「オーディションというのは、バンドにとってひとつの夢なんです」、「記録より記憶に残るライブを大事にしよう」と、今日出たバンドへのメッセージとも取れるMCを発し、すっかりアンセムへと成長した「オドループ」で熱気溢れる大団円となった。


フレデリックとオーディエンスが共に作り上げた熱い余韻が残る中、MASH A&Rを代表して鹿野淳がステージに登場し、いよいよセミファイナル・オーディションの結果発表。見事ファイナル出場権を獲得したのは「THE BOSSS」! ダンサブルでポジティヴなグルーヴと歌メロのよさに強い可能性を感じさせたTHE BOSSSが、12月のファイナルまでにどんな進化を辿るのか、とても楽しみだ。

8月20日@新代田LIVE HOUSE FEVER

熱狂に包まれた大阪編の3日後、新代田FEVERにて開催された東京編。この日のMCを務めたのは藤田琢己。会場には若い女性を中心とした多くのバンドファンが今か今かと期待を寄せながら、でも和気あいあいとした朗らかな雰囲気で開演を待っていた。



▲flower in the vasement

1組目に登場したのは、flower in the vasement。ロック、エレクトロ、ポップスなど多ジャンルを昇華した音楽性の4ピースバンドだ。ダンサブルだけどセンチメンタルな音像、エモーショナルかつ感傷的に歌い上げるヴォーカル、聴き手の心に突き刺さるようなダイナミックなドラミングが光っていて、とても心打たれる。3曲通してドラマティック&ロマンティックにラストに向かって羽を広げていく曲に、オーディエンスはどっぷり聴き入っていた。



▲水上カルビ

続く2組目は、水上カルビ。TEEN'S ROCK HITACHINAKAや閃光ライオットのファイナリストまで残った埼玉出身の4ピースバンドだ。熱く漲るエモーションを迸らせながら、躍動的でシンガロング感のあるポップでキャッチーなメロディでザクザク聴き手の心に切り込みながら、オーディエンスを煽っていく人間力溢れる堂々としたスタイルでフロアの心を掴んでいく。ラストは攻撃的な頭2曲とうってかわった叙情的なミディアムバラードで締めていたが、選曲からもスタイルからも音楽に対する情熱が伝わってくるようなアクトだった。



▲こどもランドリー

3組目は、こどもランドリー。都内を中心に活動する男女4ピースバンドである。ポップミュージックを基調としたグルーヴィでメランコリックなサウンド、女性ヴォーカル・マルヤマサトミのキュートさと力強さを兼ね備えた歌声がとても心地いい。情景が浮かんでくるような言葉選びや、夕日が沈んでいくような切なさを纏った音像、折り重なっていくコーラスはとてもドリーミーで暖かなものだったが、同時に自分達のスタイルを確立しようとする熱意も伝わってきて、短時間ながら感動を誘うパフォーマンスを繰り広げた。



▲パノラマパナマタウン

4組目はパノラマパナマタウン。神戸出身の4ピースバンドながら今回の東京編に出演した彼らは、しょっぱなからロック×ヒップホップな曲とフロウ、MCでゆるく攻めつつ、徐々に熱気を掻き立てていく。攻撃的で鋭利ながら、リズム隊とメロディがガッツリ手を組むパワフルなロックサウンドと、ゆるさと熱さにまみれたリリック、激情的にまくし立てるような男臭いヴォーカルでガシガシ唾を飛ばしていく最高に熱のこもったパフォーマンスは、今後の可能性を大いに感じさせるものだった。



▲メランコリック写楽

そしてラスト5組目は、メランコリック写楽。2015年4月に結成されたばかりの男女4ピースバンド。「サイケポップメンヘラビーム」というユーモラスなキャッチコピーの通り、ハイトーンであどけないももす(Vo&G、Syn)のかわいらしいヴォーカルと、骨太だけどポップなロックサウンドで新鮮なギャップを醸し出していた。耳に残るシュールなリリックと変則的な展開で無邪気に翻弄しながらも、自分達のパフォーマンスをしっかり刻み込む覚悟と自信に満ちたアクトで熱戦を締め括った。


オーディエンスによる投票タイムを挟み、ゲストバンドとしてセミファイナル東京編を締めくくるLAMP IN TERRENが登場。一昨年のMASH FIGHT!でグランプリを勝ち取ったLAMP IN TERRENは、1曲目“林檎の理”から気迫のこもったステージを展開。彼らはこの1年半近くで飛躍的にバンドのグルーヴが増したけど、この日は3ピースバンド特有のミニマルなダイナミックさと松本大(Vo&G)のエモーショナルなヴォーカルがいつも以上にパワーアップしていて、1音鳴らした瞬間からとても感動的だった。




スタートの「林檎の理」では、7月にリリースした『LIFE PROBE』によってより強固になった絆を表すかのような躍動感あるサウンドが高らかに響きわたり、“緑閃光”では1音1音を聴き逃すまいと聴き入るオーディエンスの心の扉をこじ開けるように、松本の懐深く力強い歌声がこだましていた。MCでは、MASHに対する熱い想いやオーディションバンドに激励を送り、ラストでは「来いよ!」と煽りながら感情的に攻め立てる。「今日を目撃してくれてありがとう!」と叫びながら充実の表情でステージを降りた3人の姿は、今回のセミファイナルに出演したすべてのバンド達の熱い想いを代弁しているようだった。


東京編でシード権を得たのは、パノラマパナマタウン。そのぶっ飛んだ独特のバンド力と高い演奏力が評価され、見事ファイナルへの切符を勝ち取った。大阪編でシード権を得たTHE BOSSSとパノラマパナマタウンは、12月6日に渋谷WWWで行われるファイナルに出演。4ヵ月後のファイナルでどんな闘いが繰り広げられるのか、今後も目が離せない。なお、MASH FIGHT!へのエントリーは現在も受付中。この後、9~10月のマンスリー審査の結果も踏まえた上で12月のファイナル出場者が決定するので、デビューをめざすアーティストは是非積極的に応募して欲しい。

Photo by 渡邉一生(大阪公演)、浜野カズシ(東京公演)

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