【インタビュー】the GazettE、2014年の再定義を経て原点に大きく舵を切り返した新作『DOGMA』

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■犯罪に対する法の在り方って自分の想像を越えるほど耐え難いこと
■俺の歌詞は、わりとそこが中心になっていると思います


──“腫れ上がった巨大な妄想"とか、“形成仕切らぬ人格"っていう表現は、まさにRUKIの哲学的解釈であると思うからね。故に犯罪に至るという哲学がそこにはある。“ヴィジュアル系っぽい歌詞だな"って、思われるはすごくもったいないと思う。RUKIはファンタジーを歌うボーカリストではなく、身近に起こることをジャーナリズム的な感性で切り取って抉るボーカリストだと思うからね。

RUKI:そうですね。でもなんか、そこまで面と向かって言われるとなんか恥ずかしいですけど(笑)、なんて言うんですかね、わりとすごい主観というか。主観で歌詞を書くことが多いですね。でも単純に、普通の人は生きている中で、歌詞という形態に言葉を落とし込むことがないけど、たぶん、俺が歌詞として描いていることって、普通にみんなが思うことなんじゃないかなって思うんですよね。そういうところは、今言ってもらったみたいに、俺が創り出したファンタジーではないというか。身近に起こることをジャーナリズム的なとらえ方で歌詞にしているとは思います。例えば事件が起きたとして、ニュースで届けられるのは表面的なものが多いと思うんですよ。犯罪を犯した人のその後とか、被害者のその後とかっていうのは、あまりクローズアップされないから。わりとざっくり、人を殺しましたっていうことと、現場はここでしたってことと、その人の過去はこうでしたっていうことだけが情報として伝えられるだけっていうかね。根本ってそこじゃなかったりとかするのかなっても思いつつ、いつもニュースとか見てるんです。だから、歌詞では、その人が犯行を犯した後で何を言っていたのかとか、何を思っていたのかとか、自分の理解できない気持ちを書いていきたいと思ってるんですよね。これも、【こういうことを書こう!】って書き始めるんじゃなく、やっぱりそこは音楽を作るときと同じで、俺の中ではすごくわりと自然な行為というか。「BIZARRE」の歌詞に限らず、そういうことを歌詞にしていくことが多いですね。例えば自分の子どもが殺されたとしたときって、その親の気持ちって計り知れないものだと思うんですよ。世の中には法という裁きの方法は存在するけど、犯罪に対する法の在り方っていうのは、納得のいかないことが多かったりすることもあって。そんなことを考えるんです。犯罪に対する法の在り方っていうのは、自分の想像を越えるほど耐え難いことでもあったりするのかもしれないなって。俺の歌詞は、わりとそこが中心になっていると思いますね。

──そうだよね。「BIZARRE」に限らず、今回のアルバムでは、それをより深く感じられたというか。楽曲だけではなく、RUKIの歌詞も、the GazettEが唱える芯の部分がより浮き彫りになっていた気がして。今までもそういう、法では裁けないものへのアンチテーゼだったりとか、ジャーナリズムを歌ってきたバンドだと思うからね。

RUKI:なんか、ジャーナリズムとか言うと大袈裟に聞こえちゃいますけどね(笑)。でも、そこをあえて書く人もそんなに量が多いわけじゃないので。


▲『DOGMA』完全生産限定盤


▲『DOGMA』通常盤

──だからこそ響くんだと思うし、求められるんだと思うよ、RUKIの歌詞とthe GazettEの音は。「WASTELAND」の台詞調に唱えられる“神をも殺す千の眼は 規則貧る凶徒と化す"っていう歌い出しは、「BIZARRE」を生み出した世の中を鋭く切ってると思うしね。

RUKI:「WASTELAND」の歌い出しの歌詞に関しては、インターネット時代と化した世の中を歌っている部分で。今って、政治家でも芸能人の方でも、いろんなことがネットで裁ける時代というか。例えば何かを言ってしまった政治家に対して、インターネットやSNSを通して、みんなが直接抗議をする。物事がひっくり返されてしまうくらいの力がある。そのシステム自体がどうだろうっていうか。悪いことではないと思うんですけど、本音でポロッと出ちゃったことに対して、こっちはこっちで、なりふり構わず言ってしまってそのことをより炎上させちゃうっていう。確実に昔はそんなことはありえなくて。昔は、政治と普通の一般庶民には距離があったけど、今はそういう時代ではない。だから神っていうのは、今まで触れられなかったものであったけれども、現代が生み出したインターネットというシステムは、神すらもその位置から引きずり下ろせそうなほどの力があるってことで。今の時代、警察のだめな部分とかが、平気でYouTubeに上がったりするじゃないですか。そこに世の歪みを感じるというか。インターネットが無い時代から、そういう歪みはあったと思うんですよ。でも、今の時代、元々あった部分があからさまになってきてるってことでもあるんですよね。インターネットを裁き切れないっていうか、そこは法には引っかからない部分だから、自由度が高いっていうか。「WASTELAND」は、最初の4行ぐらいで、この曲で伝えたかったことは集約されています。

──なるほどね。今回、楽曲的に、激しい楽曲ももちろんのこと、奥行きを感じるミディな曲がすごく印象的だった。アルバムの軸でもある「OMINOUS」や、「DERACINE」「WASTELAND」「GRUDGE」とか、バンドが歴史を重ねてきたからこその音だと感じたというか。そこにthe GazettEの基軸を感じさせられた。

RUKI:そうですね。だから今まではそういう曲たちをバランスよく入れていたんですけど、今回は、バランスを見てというよりは、そういうとこをより極めてこうという意識でもあったというか。いままでは「OMINOUS」みたいな曲があったとしたら、たぶん、もう1個すごくバラード調のものが入ってるようなバランス感だったんですよ。そういう感覚を省いたんですよね、今回。いい歌を入れようって感覚はなかったんで。「OMINOUS」みたいな曲があったとしたら、もう1個すごくバラード調のものが入ってるようなバランス感は、うちらの中の今までのバランスですよね。わりとそれが結構ライヴだと保たれてないんですよ。保たれないというか、すごくヘヴィなことを言い続けているんですけど、ふと恋愛ものが入ってくるんで、自分のなかではズレるというか。そうなると一貫してできないんです。そこを排除しようっていう作り方が、そもそも『DIM』とかだったんですよ。

──なるほどね。今回は、そういう意味でも『DIM』に近いってことなんだね。今、恋愛ものっていうワードが出たけど、これも独特なthe GazettE感を感じさせられるとこでもあると思うんだよね。普通の恋愛を切り取ったものではない。今回のアルバムで言うならば、「GRUDGE」はthe GazettE流の究極のラブソングだと思うからね。

RUKI:まぁ、そうですね。「GRUDGE」は恨みつらみですからね(笑)。

──恨みつらみって、究極のラブソングじゃない?

RUKI:たしかにね(笑)。うちらの中で「GRUDGE」は、“昼ドラ"って呼ばれてましたけどね(笑)。

──だってそうだったんでしょ? 実際(笑)。

RUKI:そうですね。『ゴーンガール』からのインスパイアというか。いわゆる海外風の昼ドラですからね、あれ(笑)。

──これも恋愛の哲学的なところだよね。このズンとした落ち方と切なさと、きれいさと怖さが描かれた楽曲と歌詞の絡みがすごくいい。人を愛し愛されることは幸せではあるけど、その愛がちょっと歪んだときの狂気と化す怖さって逆の世界観だからね。the GazettEの恋愛の曲は、愛の深さと複雑さを楽曲と歌詞で見事に描ききってると思う。

RUKI:そうですね。自分は普通の恋愛ソングっていうのはあんまり書かないほうなので。難しいんですよ。恋愛の歌詞って。俺が書く恋愛の歌詞は、ちっちゃな喧嘩でもあるんですけど、そこの感情を断片的に抜いたような感じに近いというか。例えばそこで浮気している人もいるでしょうし、すれ違いだったりもするでしょうし。それがあるからこそ、恋だの愛だのが切なく感じる気もするんですよね。そういう心情を描いてるというか。だからこう、一緒に海に行ったよねとか、そういうところじゃないっていうか(笑)。

──つまり、日記的な歌詞でしょ(笑)?

RUKI:うん、まぁね、自分は絶対に書かないけど、そういう日記もわかるんですよ。青春の1ページじゃないですけど、その歳になってそれを書くっていうのはまた難しいしね。だとしたら、なんとなく不倫臭がする方がしっくりるというか(笑)。

──あははは。なんとなく不倫臭がする感覚の愛のが解るっていう(笑)。

RUKI:そう(笑)。それはそれでまたもうちょっと先でもいいのかなと思いつつ。

──いつか書いてくれることを期待してる(笑)。これは褒め言葉だけど、演歌の世界なんだよね。

RUKI:まぁそうっすね。演歌ってそうですよね、確かに(笑)。

──別れるっていうなら殺してくれみたいな極端さというかね。それってすごく日本的感覚だと思う。そこは大事にしていくべきだと思うから。

RUKI:俺もそうっすかね。日本の歌はそこが好きかなと思いますからね。

──海外の人が絶対日本をマネできないものって、歌詞にあると思っていたりするの。例えば、【馬脚をあらわす】って言葉あるでしょ。海外の人たちが、このことばをすごいと思って使ったところで、そこにある歴史を知って使っているのと知らずに言葉だけを使うのとでは、魂の入り方が違うと思うんだよね。馬脚をあらわすってのは、もともと歌舞伎から来た言葉で。そこは、日本人がこう軽はずみに意味わからず格好良いなって思って使う英語と、たぶん同じなんだろうなって思うというか。そう思ったら日本人って大事にしていかなきゃいかないとこって、歌詞にあるんだなって感じたりもしていて。

RUKI:あぁ、その感覚すごく解りますね。漢字が特にそうなんですけど、“懺愧”にしても“怨恨”にしても、それと似たようなフレーズがいっぱいあって、微妙に違うんですよね、意味が。だからそこの使い方は自分でもわりとこだわるほうなので。あんまり普段聞かないような言葉もあったりはするんですけど。

──そこをファッションで使ってるわけではないってことだよね。

RUKI:そう。だからなんかこう、難しいですよね。苦しいっていう表現を使いたいんだけど、苦しいって字面は、かなりポピュラーなもんだから。でもそこの感情とは自分はもうちょっと深いんだよってやるときには、例えばじゃあ“苦悩”を使うか。そういうところですね。恨んでるとか憎いっていうところを使うときに、もっと本当は憎んでるんだけど、憎いって言葉がかなりよく普段でも使うんで、やっぱすごく浅くなってしまうというか。それは字の持つ力だと思うんですけど。だから二字熟語はわりとよく見ますけど、とか。わりと歌詞書く時は本当はこの意味、どういう意味なんだろうとか、っていうのは調べたりはしますね。普通に使う言葉でも、本来のもっと深いところの意味があるときもあったりするから。そういう意味では、楽器の音って言葉ではないから、日本人としての個性は出しにくい部分ではありますよね。歌詞や映像で日本の個性を色濃く出していくことは出来るけど、音では極端な話和楽器とかを使うとか、日本的なフレーズを使うとかで表現するしかなかったりしますからね。

──そうだね。難しいところではあるよね。でも、「RAGE」なんてお経っぽいイメージというかね。そういうところでは日本という個性を出せてるんだと思うけどね。いい意味で邦楽を感じる。洋楽っぽさもあるんだけど、そこがすごく不思議なとこだったというか。私の印象としては、完全にサタニックメタルだったんだけどね、このアルバム。だけどそこに和を感じたというか。音色的なことで言うならば、今回のアルバムは世界観が近いというか、統一されていたイメージでもあったけど、ギターの音とかも意識して近づいていた感じ?

RUKI:曲によりますね、その。原曲者の意向により、こういうイメージがあるとか。でも基本は同じセットで、同じ音でっていうのはありますけど、その前のリバーブの違いだったりとか、ぐらいはありますけどね。

──ただ今までも曲によってはそれこそ音色変えたりとかギター変えたりとかだったとは思うけど、いままでは新たなものを取り込むからこそ、そこに必要なものが出てきてたっていうところの追及の仕方でもあったと思うけど、今回ってまたその追及の仕方とは違うでしょ?

RUKI:そうですね。わりとだからみんな、同じような音を使うというか、同じ人が弾いてるというか。曲によってギターの歪みの感じを変えたりとかはあんまりしてなかったっぽいですけどね。

──なるほどね。ドラムに関しては、相当殺人的なリズムも多かったよね、今回。

RUKI:戒はいつも死んでるんで(笑)。

──あははは。それだけのスキルを楽曲に求められるから応えずにはいられないからね。でも、5人は本当に音に対してストイックであることが素晴しいと思います。これは本当に切に思うこと。ところで、すぐにツアーを控えているわけですが、これを引っさげてのツアーになるわけですが、どんな見せ方になっていく感じ?

RUKI:今、オフィシャルサイトで、わりとツアーがわかりやすいように、ライヴのノリがわかりやすくライヴ映像も入れて全曲視聴を作って見せているので、それを見て来てもらうと、より入り込んで楽しんでもらえると思いますね。うちら視聴を作ること自体が初めてなんで。全曲視聴は、リリックPVが連なっているような感じなので、ぜひじっくり見ていただけると嬉しいです。

取材・文●武市尚子


『DOGMA』

2015年8月26日(水)発売
■完全生産限定盤
(CD+2DVD+写真集+BOOK)
SRCL-8887-8890
\10,800 (tax-in)
■初回限定盤
(CD+DVD)
SRCL-8891-8892
\4,320 (tax-in)
■通常盤
(CD ONLY)
SRCL-8893
\3,300 (tax-in)

DISC 01:CD
01.NIHIL
02.DOGMA
03.RAGE
04.DAWN
05.DERACINE
06.BIZARRE
07.WASTELAND
08.INCUBUS
09.LUCY
10.GRUDGE
11.PARALYSIS
12.DEUX
13.BLEMISH
14.OMINOUS
DISC 02:DVD
01.[DOGMA] MUSIC VIDEO
DISC 03:DVD
01.DOCUMENTARY OF [-13-] AT 日本武道館
02.[DEUX] MUSIC VIDEO
03.[OMINOUS] LYRIC VIDEO
04.MAKING OF [DOGMA] MV
05.TRAILER COLLECTION

ライブ・イベント情報

<LIVE TOUR 15「DOGMATIC -UN-」>
09.05(sat) 羽生市産業文化ホール HERESY ONLY
09.06(sun) 羽生市産業文化ホール
09.08(tue) 金沢市文化ホール
09.10(thu) 新潟テルサ
09.14(mon) 神奈川県民ホール
09.17(thu) 市川市文化会館 大ホール
09.19(sat) 千葉県文化会館
09.22(tue) 相模女子大学グリーンホール
09.24(thu) 茨城県立県民文化センター
09.26(sat) コラニー文化ホール(山梨県立県民文化ホール)
09.29(tue) 三重県文化会館 大ホール
10.03(sat) サンシティ越谷市民ホール
10.04(sun) サンシティ越谷市民ホール
10.06(tue) 長野県・ホクト文化ホール 中ホール
10.07(wed) 富山県民会館
10.09(fri) 前橋市民文化会館
10.11(sun) 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール
10.14(wed) 栃木県総合文化センター
10.15(thu) 大宮ソニックシティ
10.27(tue) 弘前市民会館
10.28(wed) 秋田市文化会館 大ホール
10.30(fri) 郡山市民文化センター 中ホール
総合問い合わせ
Zeppライブ 03-5575-5170(平日13:00~17:00)

<LIVE TOUR 15-16「DOGMATIC -DUE-」>
12.01(tue) よこすか芸術劇場
12.03(thu) オリンパスホール八王子
12.09(wed) 松戸・森のホール21
12.11(fri) 高知市文化プラザ・かるぽーと
12.13(sun) サンポートホール高松
12.15(tue) 広島アステールプラザ 大ホール
12.17(thu) 倉敷市芸文館
12.19(sat) オリックス劇場
12.20(sun) オリックス劇場
12.23(wed) 和歌山市民会館
12.24(thu) 神戸国際会館 こくさいホール
12.27(sun) 仙台サンプラザホール
01.07(thu) 旭川市民文化会館大ホール
01.09(sat) 札幌市教育文化会館
01.11(mon) 山形市民会館 大ホール
01.13(wed) 盛岡市民文化ホール
01.16(sat) 福岡市民会館 大ホール
01.18(mon) 鹿児島市民文化ホール 第2ホール
01.23(sat) 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール(名古屋市民会館)
01.24(sun) なら100年会館 大ホール
総合問い合わせ
Zeppライブ 03-5575-5170(平日13:00~17:00)


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