【連載】Hiroのもいもいフィンランドvol.18「フィンランドの超ビッグバンドHIMまさかの国内ミニクラブツアー」

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フィンランド本国では誰もが知っているだろう超ビッグバンドであるHIMの小さなクラブをまわるフィンランド国内ミニツアーが5月に発表になった。オフィシャルで発表になる前Facebookのタイムライン上にでてきたフィンランドの音楽雑誌のニュースで知り、え?こんな小さな会場でHIMのライブがあるの?と一瞬目を疑いました。タンペレとトゥルクのKlubiにユヴァスキュラのLutakko。行ったことがあるのはタンペレのKlubiのみでしたが、キャバが450人というすごく小さな会場。同じ建物内にPakkahuoneという最大で1200人収容のライブハウスがあるので間違いじゃないかと思ったほど。そしていきなりチケット本日より発売とかかれてたのでみてみたらほんとだ。発売になってる。家からライブに行くにはヘルシンキが一番近いのですが今回はヘルシンキがない。HIMは国外進出してからフィンランド国内でのライブが夏フェスとTavastiaで年末恒例になったHIMの祭典ともいえるHelldone以外にはほとんどなく、国内でこんな小さな会場でHIMが見れるというのはめったにないチャンス。すぐにチケット購入しておいて正解!次々と他のメディアでもニュースがUPになり、オフィシャルで発表になったのは午後になってからで、すでにチケット予約完売状態。

1991年にフィンランドにきてからまずはフィンランド語の勉強、そのあと育児に追われ、ネットもない時代で日本にいた頃は洋楽大好きだったのが90年代は音楽から全くかけ離れた生活でした。そんな時2003年秋に息子にせがまれて買った2枚組のフィンランドのヒット曲がつまったコンピレーションアルバムに収録されていたHIMの「The Sacrament」がこちらに来てからのフィンバンド、フィンロックとの出会いでした。さっそく当時最新アルバムだった彼らの4作目の『Love Metal』を購入して聴いてみました。季節はちょうど秋から冬に移り変わる一番暗い時期。このアルバムを聴いた時、そんなどんよりと雲に覆われた暗い空からひとすじの光がさしこむ光景を見たような気がしました。とにかく暗く気が沈みがちなシーズンになんだか救われた気がし、それからこのアルバムを何度も何度も聴き春を待ちました。

これがきっかけで他のフィンランドのバンドもいろいろ聴いてみるとなかなかいいバンドがいるではありませんか。これをぜひ日本のロックファンにも知ってもらいたいがさて何から始めよう?思いついたのは日本の洋楽のラジオ番組にリクエストしてみたらどうかということ。実は日本にいた頃、当時はハガキで毎週毎週ほんとによくあきずに(笑)リクエストしていたのであります。するとなんと国際電話でラジオに声の出演の機会が訪れ、フィンランドのバンド紹介をし実際に曲をかけてもらえたことも。とにかく何でもやってみるもんですね。まずはそういうことからフィンロック普及をはじめ、これまでにいろんな方との出会いがあり今に至ります。というわけで自分にとってHIMはとてもスペシャルなバンドなのであります。ただ私が知った時点で彼らはすでに国外進出をしていて、フィンランド国内であまりライブがなく観る機会があまりなかったのです。なので今回のこのチャンスを逃すわけにはいかない!ってことでタンペレまでいってきました。

開場の30分ほど前に行くとすでに入場を待つ列が。待っている間に列は2倍以上にふくれあがりました。こちらのスタンディングのライブは整理券などないので早く場所を取った者勝ち!ってことで入場してすぐギタリストのLinde側2列目ゲット!ライブ開始予定の22時まで2時間あったのですが、ラッキーにも何とかチケットをゲットした友達が一緒だったので待ち時間おしゃべりができて助かりました。1人でぼーっと立って2時間待つのはけっこうつらい。友達が一緒なら途中トイレに行ったり、ドリンクを取ってきたりもできるのでそういう点でも助かります。ちなみにタンペレのKlubiにはセルフサービスの無料の水が置かれてました。


ライブの方は開始予定時刻をちょっとすぎてスタート!会場は小さいながらもメンバーがステージに登場すると大きな歓声が!オープニングナンバーはヘビーでかっこいい「Buried Alive By Love」!個人的には昔の曲のほうが好きなのですが、なんとこのライブでは昔の曲をいっぱいやってくれてすごくうれしかった。フィンロックにはまるきっかけを作ってくれた曲「The Sacrament」はもちろんのこと、同じアルバムにはいっていた大好きな曲「The Funeral of Hearts」をはじめ、なんだかもう好きな曲のオンパレード。ヴォーカルのVille Valoは昔ほどの妖艶さはなくなってしまったけど、HIMは楽曲が好きなのを実感。曲を聴くと当時を思い出すものもあり、HIMを昔から応援していてメンバーとも友達だった友人が闘病の末亡くなった頃「Scared to Death」のミュージックビデオが公開になり、この曲を聴くといつもその友人を思い出すんですが、この日もイントロが流れたとたん友人の顔が浮かびました。そしてその昔その友人と他のバンドのライブに行った時の光景が浮かんできました。ライブ前に会場横のレストランバーによったのですが、友人はバーカウンター前にいた男性となにやらハグ。照明が暗くてそれが誰だったのかわからず近くに立っていると、友人がハグしていた男性は次に私の方を向き手を差し出したのです。その男性の顔をみてびっくり。Ville Valoではありませんか。曲を聴いているとそういういろんなことが頭に浮かんできて、じわじわじわ~と目頭が熱くなったり。そういう不思議なマジックをもった曲がありますね。Villeはこの日マイクをよく口に含み、その音響効果を楽しんでいたようにもみえました。そして片手にハンドタオルをずっと持っていたのですが、汗を拭くのでなくマイクを拭いてました(笑)。


HIMは随分長い間Ville、Linde、Mige、Burton、Gasというメンバーでしたが、今年の初めドラマーGasが脱退を表明。後任ドラマーについてはなぞのままでしたが、今年7月オウルで開催されたQstockフェスで、Villeの1人バンドRambo Rimbaudが出演予定だったところサプライズでなんとHIMが出演!正式に新ドラマーJukka "Kosmo" Kröger をお披露目しました。そして彼はGasの後任を見事に果たしました。とはいえライブでGasがいないのはとても寂しく感じましたが、脱退はGas本人の意思だったようなので、それを尊重する以外ありませんもんね。ここの会場、小さかったのでステージ前にフェンスなどなく、さらにステージがけっこう高かったので2列目からだと見上げる感じで、後半になってくると首がかなりこりこりになってきましたが(笑)2時間弱のライブたっぷり楽しめました。そしてこんな小さな会場でHIMが観れたというのがとってもラッキーでした。



《セットリスト》

1.Buried Alive By Love
2.Poison Girl
3.The Kiss of Dawn
4.Pretending
5.Into the Night
6.Killing Loneliness
7.Scared to Death
8.Your Sweet Six Six Six
9.Join Me in Death
10.Bleed Well
11.In Joy and Sorrow
12.All Lips Go Blue
13.The Sacrament
14.Rip Out the Wings of a Butterfly
15.Gone With the Sin
16.Wicked Game(Chris Isaak カヴァー)
17.Heartkiller
18.Heartache Every Moment
19.Tears on Tape
20.Right Here in My Arms
21.The Funeral of Hearts
22.When Love and Death Embrace
~アンコール~
23.Rebel Yell(Billy Idol カヴァー)

文:Hiro
写真:Hiromi Usenius

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