【詳細レポ】<WORLD HAPPINESS 2015>、真の意味での“YMOフェス”へ

ツイート

<WORLD HAPPINESS 2015>が8月23日(日)、東京・夢の島公園陸上競技場にて開催された。<WORLD HAPPINESS 2015>が終わって早や2週間以上が過ぎ、あの暑かった陽射しも、秋の柔らかさを含むようになってきた。そんな今、8年目を迎えた<WORLD HAPPINESS>が到達した、その新たな存在意義について、改めて考えてみたい。

◆<WORLD HAPPINESS 2015> 画像

今年の全8時間、全13アクトを観て強く感じたことは、この特別なフェスがポジティブな意味で“YMO色”から脱却し得たことで、真の意味での“YMOフェス”へと、さらに大きく近づけたのではないか、ということだ。この変化は、第1回から観客として<WORLD HAPPINESS>を皆勤している筆者にとって、緩やかではありながら、とても劇的であった。そして何よりも、<WORLD HAPPINESS>がこれから先、長く続いていくためには、とても大切なことだったと考えている。

この本題に入る前に、まず今年、初めて取り入れられた、ふたつの新たな試みについて触れておきたい。ひとつは、開催時期が従来の8月上旬から下旬へと移行されたことだ。高橋幸宏氏によると、気候面への配慮だけでなく、他フェスとの兼ね合い等もあっての日程変更だったようだ。とは言え、結果的に、特に夕方以降は涼しさを感じるほどの過ごしやすさで、観客への負担(当然ながら、出演者も)は、かなり軽減されたのではないだろうか。もちろん、天候だけは事前の予測が極めて難しいが、ここ数年の8月上旬の酷暑を考えると、観客へのホスピタリティ性を重視する<WORLD HAPPINESS>のスタンスとしても、この変更は歓迎すべきことだと言える。

そしてもうひとつ、今年は従来あったCブロックと屋台村が廃止され、会場の外周部分にフード・ショップが並ぶというレイアウトへと変更された。この点に関しては、昨年までのように、Cブロックの草むらに寝転んで、のんびりとフェスを楽しむ……といったことは出来なくなったものの、ステージを観ながらフード・ショップの列に並ぶことが可能となり、「音楽を聴きながら休憩を取れる」といったメリットも大きかったように思う。

では、本題に入ろう。

ご存知の方も多いだろうが、<WORLD HAPPINESS>は、2008年に“子供連れで楽しめる、大人の夏フェス”として、高橋幸宏のキュレーションにより始まった。そして、2012年までの5年間はYMOがトリを務めたことで、いゆわる“YMOフェス”という独自性をもって、夏フェスの定番として定着した。

当然ながら、YMOがメインでありながらも、高橋氏をはじめ、細野晴臣、坂本龍一の3人は、以前から「過去のYMOの楽曲ばかりではなく、自分たちが好きな(影響を受けた)音楽も聴いて欲しい」といった内容の発言を繰り返し行なってきた。つまり、自身の作品だけでなく、聴いて欲しい音楽、伝えたい音楽をたくさん持っているのだ。当然ながら、<WORLD HAPPINESS>自体も、同様のコンセプトの基で、高橋氏が“面白い”と感じている音楽/ミュージシャンが集うフェスとして誕生したのだ。

しかしながら、特にスタート当初は、観る側のYMOへの期待感が突出して強かったことも、これまた事実である。そのため、フェス制作者側の想いと、観客側の欲求というバランス調整には、なかなか難しい側面が多々あったのではないかと、かねてから筆者は感じていた。

そのYMOは、先にも紹介したように、2012年を最後に、<WORLD HAPPINESS>への出演は一旦区切りを付けたものの、その後も各人がソロとして出演したり、セッションが行われることで、依然として“YMO色”は強いものだった。ところが昨年、坂本氏が病気療養のため不参加となり(注:喜ばしいことに、今年8月3日、音楽活動への復帰がアナウンスされている)、そして今年は、高橋氏のみの出演(METAFAIVE/LOVE PSYCHEDELICO)となったことで、8年目にして、初めて“YMO色”が薄い<WORLD HAPPINESS>となったのだ。

つまり、「YMOありき」でスタートした<WORLD HAPPINESS>が、「YMOなし」へと変貌したことで、一体、今年はどのようなフェスが展開されるのか、そこに大きな興味を抱きながら、8度目となる夢の島へ足を運んだ。その結果、感じたことが、冒頭で述べたように、「より理想的な“YMOフェス”になっていた」ということであったのだ。

なぜか。ここで重要となるのが、バラエティに富んだ今年のラインナップだ。ステージに立った13アーティストの、音楽的な面白さやバリエーションの豊富さはもちろんのこと、見逃せないのが、その出演順が紡ぎ出すストーリー性が、実に見事であったということだ。そしてそれこそが、高橋氏によるキュレーションの力である。今年ほど、その部分が色濃く表れた年はなかったと感じるし、これこそが、<WORLD HAPPINESS>のスタート時に思い描いていた、ひとつの理想形だったのではないだろうか。

   ◆   ◆   ◆

TRICERATOPS


Charisma.com


SCANDAL


野宮真貴withカジヒデキ


今春、<WORLD HAPPINESS>出演アーティストとして真っ先に発表されたTRICERATOPSがオープニングを飾り、“現役OL”エレクトロ・ラップ・ユニットとして話題のCharisma.comが、クラブ仕様の強いローを鳴らすと、ワールド・ツアーもこなす人気と実力を備えたガールズバンドSCANDALで、フェス感は一気に高まっていった。そこで登場した“元祖渋谷系”野宮真貴と、“最後の渋谷系”カジヒデキによるジョイントは、早々に迎えたひとつのクライマックスであった。

坂本真綾


KA.F.KA



筋肉少女帯


そして、初出演となるベテラン・シンガー坂本真綾の表現力豊かな歌に続いて、土屋昌巳率いる新バンドKA.F.KAが突出した個性と美学を見せつける。そこに、「なんで呼ばれたのか、さっぱり分かりません!」と大槻ケンヂが絶叫し、筋肉少女帯の登場だ。「完全アウェイ!」と叫びながらも、かつて“空手バカボン”というユニットで、YMOの(しかも高橋氏の作曲である)名曲「RYDEEN」に歌詞をつけた禁断の曲、「来たるべき世界」を披露するなど、力技で場内を完璧にホームへと一変させた。そんな彼らの爆音パフォーマンスは、今年のMVPと言っても過言ではないだろう。

スチャダラパー


LOVE PSYCHEDELICO


<WORLD HAPPINESS>への出演が4回目となるスチャダラパーは、今年はバンド編成で、観客をうねらせる。彼らのラップで、音楽ファンが盛り上がらないはずがないと言えるほど、フェスにおける“テッパン”的存在だ。その熱量を追い風に、高橋氏がドラムで参加するLOVE PSYCHEDELICOのステージは、この日、何度目かのピークを迎えた。LOVE PSYCHEDELICOは、2009年、2010年に<WORLD HAPPINESS>に出演。それがきっかけとなり、今年の全国ツアーに高橋氏が参加することになり、この日も、そのツアー・メンバーでの出演となった。まさに夢の島から生まれた夢のコラボレーションとして、<WORLD HAPPINESS>のひとつの特色を象徴するステージであった。

Controversial Spark


クラムボン


この流れからの盛り上がり上昇カーブは、特に目を見張るものがあった。<WORLD HAPPINESS>皆勤の鈴木慶一は、自身の新バンドControversial Sparkとして登場。ベテランが生み出すインディー・ロックは、スクリーンに大写しされるアンディ・ウォーホルをも彷彿とさせる鈴木氏の風貌と相まって、そのラジカルさとユニークさが際立ち、強いインパクトを残した。同じように、独自の音楽性と確固たる世界観を持つクラムボンのパフォーマンスは、緩やかに、しかし確実に観客を熱狂させ、そして数多くのロック・フェスで“TOISU!!!(彼らが作った挨拶)”を浸透させてきた百戦錬磨のPOLYSICSが、圧倒的な勢いで、LEFT STAGEのトリを務めた。

POLYSICS


POLYSICSのリーダーであるハヤシは、小学生時代に、筋肉少女帯をきっかけに音楽を聴き始めると、YMO、クラフトワーク、DEVOから多大な影響を受け、POLYSICS結成に至った。つまり、<WORLD HAPPINESS>の文脈に完璧に合致するバンドなのだ(ちなみに、終盤に演奏された「シーラカンス イズ アンドロイド」冒頭の機械音は、YMO『TECNODELIC』収録の「EPILOGUE」からのサンプリングだ)。そんな彼らだが、あえて“<WORLD HAPPINESS>仕様”のセットリストは組まず、あくまでも自身のベスト・パフォーマンスで<WORLD HAPPINESS>に臨んだことは、大いに評価したい。

クラムボンが演奏したYMOカバー曲「以心電信」も<WORLD HAPPINESS>へのリスペクトの表れだし、POLYSICSの姿勢もまた、<WORLD HAPPINESS>へのリスペクトなのだ。

METAFIVE




そして、大トリとして<WORLD HAPPINESS>を締め括ったのが、スーパー・バンドMETAFIVE。高橋氏をはじめ、小山田圭吾、砂原良徳、TOWA TEI、ゴンドウトモヒコ、LEO今井という錚々たるメンバー構成を聞いただけでも想像できるように、さすがの貫禄でパフォーマンスを展開。しかも、最先端のエッジイさが鋭く輝いている点に、思わず唸ってしまう。その中で、鈴木氏をゲストに迎え、高橋氏とTHE BEATNIKSの楽曲「No Way Out」を披露すると、METAFIVEの新曲「Don’t Move」「Maisie’s Avenue」を演奏し、来年の新譜リリースという嬉しいニュースを観客にプレゼントしてくれた。アンコールでは、土屋氏も加わり、YMO「CUE」を演奏。1982年に行われた高橋氏の初ソロ・ツアー(当時、土屋氏はサポート・メンバーで参加していた)を彷彿とさせながら、あくまでも“今”のサウンドでフィナーレを迎えた。

そう、トップ・バッターのTRICERATOPSからトリのMETAFIVEに至るまで、すべてにおいて、出演者のこだわりと“現在進行形”の音楽が詰まったフェスであった。そのことこそが、<WORLD HAPPINESS>の存在意義だと言えるのではないだろうか。

   ◆   ◆   ◆

昨今のJ-POPシーンは、フェスを中心に制作スケジュールが組まれ、フェスで観客をどれだけ盛り上げられるか、そこが楽曲そのものの評価に直結するといった風潮があることは、否めない事実である。しかし、<WORLD HAPPINESS>は、それらの流れとは真逆のものとして存在している。「まず音楽ありき」のフェスであり、主役である音楽を楽しもうという観客が、夢の島に集まるという構図を確立している。言ってみれば、“フェス至上主義”に対するカウンターとして存在しているフェスであり、その存在意義が、奇しくもYMO色が薄まったことで、より一層、明確なものとなったのではないだろうか。

当然ながら、「YMOが観たい」という熱狂的なファン層は減っていくかもしれない。しかし、さまざまなフェスが乱立する現在、<WORLD HAPPINESS>が長く続いていくために、間違いなく今年は大きなターニング・ポイントであったであろうし、その変化を見事にソフト・ランディングさせたことで、<WORLD HAPPINESS>そのものが、明確に新たなフェーズへと移行したように感じている。

2016年以降、<WORLD HAPPINESS>のステージからどんな音楽が発信されるのか。今から、とても楽しみであると同時に、そのうえで、再びYMOがこのステージに戻ってくる日を、焦らず、ゆっくりと待つことにしたい。

取材・文◎布施雄一郎 撮影◎TEAM LIGHTSOME

■<WORLD HAPPINESS 2015>2015年8月23日(日)@東京 夢の島公園陸上競技場セットリスト

1.【TRICERATOPS】
スターライト スターライト / GOING TO THE MOON / Shout! / FLY AWAY / Raspberry
2.【Charisma.com】
イイナヅケブルー / とんがりヤング / こんがらガール / HATE / お局ロック
3.【SCANDAL】
OVER DRIVE / love in action / Sisters / Stamp! / 会わないつもりの、元気でね
4.【野宮真貴withカジヒデキ】
東京は夜の七時 / Love So Fine / 雨降り都市 / SUMMER BEAUTY(ラテンでレッツ・ラブまたは 1990サマー・ビューティー計画) / ラ・ブーム / 僕らが旅に出る理由 / メッセージ・ソング
5.【坂本真綾】
DOWN TOWN / レプリカ / バイク / まだうごく / doreddo 39 / 約束はいらない
6.【土屋昌巳(KA.F.KA)】
Spider & Pirates (inst.) / Jack The Midnight / The Prisoner / Transmission
7.【筋肉少女帯】
イワンのばか / 日本印度化計画~来るべき世界~日本印度化計画 / 踊るダメ人間 / 釈迦
8.【スチャダラパー】
Quiet Village / ライツカメラアクション / A.K.A ETC / MORE FUN-KEY-WORD / GET UP AND DANCE / 今夜はブギー・バック(smooth rap) / 中庸平凡パンチ / 大人になっても / サマージャム
9.【LOVE PSYCHEDELICO】
Your song / Free world / This way / Last Smile / Lady Madonna / Freedom
10.【Controversial Spark】
Hello Mutants / Ex-Car / In June / 眠る人
11.【clammbon】
シカゴ / サラウンド / 以心電信 / GOLDWRAP / KANADE Dance / 波よせて / yet
12.【POLYSICS】
Introduction! / Buggie Technica / Beat Flash / How are you? / Let's ダバダバ / 怪獣殿下 ~古代怪獣ゴモラ登場~ / Dr Pepper!!!!! / シーラカンス イズ アンドロイド / Electric Surfin' Go Go
13.【METAFIVE】
School Of Thought / Radio / Split Spirit / No Way Out(w/鈴木慶一) / Don't Move / Maisie's Avenue / Turn Turn / Luv Pandemic (w/水原佑果) / Cue (w/土屋昌巳)

◆<WORLD HAPPINESS> オフィシャルサイト
この記事をツイート

この記事の関連情報