デフ・レパード『DEF LEPPARD』は、『HYSTERIA』以来の名作

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デフ・レパード7年振りのスタジオアルバム『DEF LEPPARD』が、10月30日に世界同時発売されることが発表された。全てメンバー自身による全14曲の新曲を収録した、バンド名をそのままタイトルに冠したバンドのキャリア集大成ともいうべき作品だ。

◆デフ・レパード画像

結成から38年を数えるこのバンドが、ここにきてセルフ・タイトルのアルバムを発表するのが興味深い。これまでロバート・ジョン・マット・ラングをはじめとする名プロデューサーたちとも関わりを持ってきた彼らだが、今作は基本的にバンド自身の手によるセルフ・プロデュースにより完成されている。いわゆる外部ソングライターの起用も一切なく、そこに詰め込まれているのはジョー・エリオット(Vo)、フィル・コリン(G)、ヴィヴィアン・キャンベル(G)、リック・サヴェージ(B)、そしてリック・アレン(Dr)という5人のメンバーの作による楽曲ばかり。バンドの結束力がエネルギーとなった100パーセントまじりけ無しのDEF LEPPARDなのである。

この最新作の完成に際してメンバーたちが異口同音に語っているのは、楽曲の充実ぶりと、そのバラエティの豊富さだ。特定のアルバム像を見据えながら書かれたのではなく、とにかく良い曲を作ろうという純粋な動機から書かれた楽曲ばかりがふるいにかけられ、ジョー・エリオットの言葉を借りるならば「絶頂期のQUEENのアルバムに通ずるような多面性」を持ったアルバムに仕上がった。また、DEF LEPPARDのアルバムに駄作がないのは周知のとおりであり、各作品のセールス実績もまたそれを証明しているが、フィル・コリンは「これは、あの『HYSTERIA』以来の名作かもしれない」と語っていたりもする。

実際、その『HYSTERIA』から生まれた大ヒット曲である「Pour Some Sugar On Me」の進化版、あるいは深化版とも形容できそうな「Let’s Go」を筆頭に、収録曲のすべてがシングルになり得そうな洗練されたキャッチーさを持ち合わせており、ハードな楽曲からファンキーなナンバー、バラードの類いに至るまで、いずれも一聴しただけでDEF LEPPARDだとわかる仕上がりになっているのはさすがの一言だ。ジョーの口からも名前の挙がったQUEENやLED ZEPPELINが持ち合わせていたブリティッシュ・ハード・ロックの多面性/多様性といったものが、いっそうコンパクトかつ現代的に体現されたのが本作であり、それ自体がDEF LEPPARDという稀有なバンドの特質だと解釈すべきだろう。ルーツである70年代のロックに忠実であろうとするのではなく、そうした出自を自覚しながらも常に独自のシグネイチャー・サウンドともいうべきものを磨き続けてきたバンド、それが彼らなのである。

本作のリリースを待たずして、バンドは現在、STYXとTESLAを従えての全米アリーナ・ツアーを繰り広げている。ただしそこでは一切、ここに収められている新曲たちは披露されていない。同ツアー終了後、11月には日本武道館での公演を含む4年ぶりのジャパン・ツアーが決定しているが、この『DEF LEPPARD』からの楽曲が世界のどの国よりも先にライヴで披露されるのが、ここ日本ということになる。まさにワールド・プレミアというわけだ。もちろんこの日本公演においては、今日に至るまでに天文学的数値のセールスを記録してきた過去の名盤アルバム群からの楽曲もたっぷりと披露されることになるはずだが、その来日直前にリリースされる『DEF LEPPARD』は、すべてのファンにとって必聴の1枚と言っていいだろう。

バンドの歴史を簡単に振り返っておくと、DEF LEPPARDが英国のシェフィールドで結成されたのは1977年のこと。1980年には1stアルバム『ON TROUGH THE NIGHT』を発表。デビュー当時はIRON MAIDEN、SAXSONらと共に、NWOBHM(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)のムーヴメントを象徴するバンドのひとつとして認識されていたが、伝統的ブリティッシュ・ハード・ロックをその音楽的基盤としながらも、いわゆるグラム・ロック、バブルガム・ポップのキャッチーさを生まれながらにして持ち合わせていた彼らの音楽は、熱心なメタル層からの支持にとどまることなく、幅広い層に訴えかける力を当初から持ち合わせていた。他の同時代的バンドに比べて早い段階からアメリカからの好反応を得ていたことも、当然ながらそれとは無関係ではない。

以降、彼らが発表してきたオリジナル・アルバムは『HIGH’N’DRY』(1981年)、『PYROMANIA』(1983年)、『HYSTERIA』(1987年)、『ADRENALIZE』(1992年)、『SLANG』(1996年)、『EUPHORIA』(1999年)、『X』(2002年)、そして2008年発表の『SONGS FROM THE SPARCLE LOUONGE』という顔ぶれ。そして、それに続く通のが、今回リリースを迎える『DEF LEPPARD』ということになる。彼らのディスコグラフィーにはたくさんのミリオンセラーが名を連ねているが、なかでも『PYROMANIA』と『HYSTERIA』のセールスは、それぞれアメリカ国内だけでも1,000万枚をゆうに超えており、『HYSTERIA』と『ADRENALIZE』は全米No.1にも輝いている。当然ながらヒット・シングルについても枚挙にいとまがない。

もちろん上記の作品群以外にも、ライヴ作品やベスト・アルバム、カヴァー・アルバムなどが発表され、それぞれヒット・チャートを賑わせてきたが、活動歴の長さに対してオリジナル・アルバムの発表枚数があまり多くないのは、このバンドの波乱万丈の歴史に起因する。2ndアルバム発表後の1982年、オリジナル・ギタリストにあたるピート・ウィリスの飲酒癖による脱退は、GIRLでの活動歴を持つフィル・コリンを後任に迎えることで難なく解決しているが、1984年末にはドラマーのリック・アレンが交通事故により重傷を負う。自らの左手を切断する事態に至り、一時はバンドの存続自体が危ぶまれていた。結果、片手と両足で演奏可能なドラム・キットが彼のために開発されることになり、現在でも彼はそれを駆使しながら演奏活動を続けている。

バンドがさらなる悲劇に見舞われたのは1991年1月のこと。ギタリストのスティーヴ・クラークが、アルコールと精神安定剤、鎮痛剤の過剰摂取により死亡。ちょうどアルバム制作途中にあった彼らは、メンバーの補充を行なわずに『ADRENALIZE』を完成させたのち、その後任には元DIO、WHITESNAKEのヴィヴィアン・キャンベルが迎えられている。近年ではさらに、そのヴィヴィアンが癌に冒されるという事態にも見舞われているが、治療の甲斐もあって彼は音楽活動を継続できるようになり、DEF LEPPARDのラインナップは、彼が加入した1992年以降はまったく変わっていない。

さまざまな危機を乗り越え、純粋な音楽愛を保ちながら常に現在進行形であり続けているDEF LEPPARD。最新作『DEF LEPPARD』は、まさにこのバンドの魅力が余すところなく詰め込まれた決定的な1枚といえるだろう。


-デフ・レパード-
リック・アレン(ドラムス/パーカッション)
ヴィヴィアン・キャンベル(ギター/バッキング・ヴォーカル)
フィル・コリン(ギター/バッキング・ヴォーカル)
ジョー・エリオット(リード・ヴォーカル/バッキング・ヴォーカル)
リック・サヴェージ(ベース/バッキング・ヴォーカル)


『デフ・レパード』

10月30日 世界同時発売
【通常盤CD/歌詞対訳付き/日本語解説書封入】2,700円+税
【2,000セット完全限定生産CD+Tシャツ TYPEA】5,000円+税
【1,000セット完全限定生産2枚組LPレコード/ハイレゾ音源ダウンロードクーポンコード付き】5,800円+税
【1,000セット通販限定/CD+2LP+Tシャツ2種(TYPE A&B)/メンバー全員直筆サイン入りBOX】20,000円+税
1.レッツ・ゴー
2.デンジャラス
3.マン・イナフ
4.ウィ・ビロング
5.インヴィンシブル
6.シー・オブ・ラヴ
7.エネジャイズド
8.オール・タイム・ハイ
9.バトル・オブ・マイ・オウン
10.ブロークン・ブロークンハーテッド
11.フォーエヴァー・ヤング
12.ラスト・ダンス
13.ウィングス・オブ・アン・エンジェル
14.ブラインド・フェイス
15.ラスト・ダンス(デモ)[日本盤限定ボーナストラック]

◆デフ・レパード『デフ・レパード』オフィシャルページ
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