【インタビュー】クラムボン ミトが語る『心が叫びたがってるんだ。』のストーリーと音楽との関わり

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幼い頃、何気なく発した自分の言葉がきっかけになって、家族がバラバラになってしまった少女・成瀬順を主人公とする『心が叫びたがってるんだ。』(9月19日ロードショー)。すごくリアルで、すごく現実的で、すべてのシーンが自分が生きて来た景色と当て嵌まるような映画。でも、ミュージカルを題材としたこの作品は、どこかファンタジーでもある。今回、この映画の音楽を担当したクラムボンのミトに、ストーリーと音楽との関わりを訊いた。

◆ミト&『心が叫びたがってるんだ。』~画像~

■僕は、同じ世代のひとよりもスタンダード音楽に詳しい方だったんです
■そういう話なら力になれると思うよっていうところから始まった


──今回、この映画の音楽をミトさんが担当されたということですが、どういうきっかけで担当されることになったんですか?


ミト:一昨年の10月くらいに、脚本の岡田麿里氏と一緒に『花咲くいろは』っていうアニメの聖地イベント会場に向かうときに、彼女から、“実は今、ミュージカルを題材とした映画を作ろうと思っているんだけど、ミトさんミュージカルとか詳しい?”って聞かれたんです。選曲アドバイザーをしてほしいんだけど、ということを言われ。そこで使っていきたい音楽がスタンダード音楽であるということも、そのときに言われたんです。とても偶然な話でもあるんですけど、僕は両親がスタンダードを演奏するお店をやっていたこともあり、それがとても身近にあったので、たぶん、同じ世代を生きているひとよりも、スタンダード音楽に詳しい方だったんですよね。そこで、全然そういう話なら力になれると思うよっていうところから始まったんです。

──もうそのときには、お話全体のプロットは出来上がっていた状態だったんですか?

ミト:まだ完全に定まっている状態ではなかったと思うんですけど、ミュージカルを題材にしたいというところは、彼女の中にはっきりとあったんですよ。なので、その劇中に出て来るミュージカルのシナリオだけ渡されて、何曲か具体的に使いたい曲が上がっていたのを聴かせてもらって、“こういう音楽を使ってミュージカルを表現していきたい”って言われたんです。なので、それを探し出すところから始めていった感じでしたね。

──なるほど。全体のストーリーの中でミュージカルのシーンというのは、とても重要な部分というか、まさに、主人公である成瀬順が叫びたかったことでもありますからね。

ミト:そうですね。なので、そこで使われる音楽の選曲はかなり重要ではありました。岡田氏の中では、曲ありきで物語を進めていきたかったと思うので。曲からイマジネーションを膨らませていった感覚というか。今回、歌詞はすべて彼女が付けているので、それもあって、曲ありきで固めていきたかったんでしょうね。まず、岡田氏と“ミュージカルとは”っていう話から始めましたからね。“この曲だったら、こういうストーリーも広げていけるかもね”なんて話をしながら。彼女自身、そのストーリーに綺麗に舵を向けていこうと思うし、ちゃんと自分が伝えていきたい部分もしっかりとあっただろうし。コンセプトアルバムを作っているような感覚でした。

──そうですね。ストーリーアルバムを作るような感覚だったんだろうなって思います。

ミト:そうそう。それくらい密接な感じでした。

──今回ミュージカルに使われている音楽はスタンダード音楽が中心で、そこに替え歌という形で歌詞が乗っているわけですけど、どこで最初に耳にしたのか解らないけど、すごく知ってる音楽であるというスタンダード音楽が、より物語に入り込める要因になっているように思うんですよね。


ミト:うんうんうん。スタンダードがすごいのは、潜在意識の中に擦り込まれているくらいのところまで影響してるんですよね。今回使っているスタンダード音楽っていうのは、都合上、「Over The Rainbow」以外、基本、版権が切れてる楽曲を中心に選んでいるんです。だから、みんなが知っているスタンダード音楽の中でも、限りなく範囲が狭まっているはずなんですけど、それでもやっぱりみんながどこかで聴いて知っている音楽であるということなんですよね。「悲愴」とか「アラベスク」とかは、ピアノ習ってない人だとちょっと知らないかもなぁって思いますけど、でも、たぶん、たいていの人はどこかで聴いたことがある音楽だと思うんです。

──そうなんですよね。そこにすごく郷愁感があるというか。この映画の中に出て来る都会過ぎず田舎過ぎない町並みとか、誰もが目にする風景とか高校時代とか、そんなところとすごくリンクしていたというか。グッと入り込めた気がするんです。


ミト:そうなんですよね。アレンジは今っぽくなっているんですけど、ちゃんと古い曲を使いながら、新しい世代に伝えられているというか。あのですね、実はそこまでくるとちょっとしたオカルト話になってくるんですよ(笑)。

──え!? オカルト(笑)!?

ミト:そうそう(笑)。音楽の作用っていう話になってくるんです(笑)。

──あ、それすごく興味深い話ですね!

ミト:正直そこを追求しだしたら、もっとすごい話になると思うんですけどね(笑)。トラッドと言われている歌というのが、何故今も残っているのか? というと、時代がどんどん変わっていったとしても、その時代の伝えたかったことをトレース出来るスペックを持っていると思うんですよ。古いんだけど、ものすごく新しい情報に改変される柔軟性も持っているはずなんです。メロディは変わらないんですよ。でも、唄った人が、その時代を生きているだけで、その時代の言葉になるんです。面白いでしょ。そう思うとね、時代を越えたトランスレーターなんですよね、、、。って、こんな深い話をするインタビューじゃないですよね、ここ(笑)。

──あははは。いやいや、すごく興味深い話ですよ(笑)。

ミト:でもね、大げさだけどそんなちょっとした深層心理学的なとこさえ踏込んでるのかもしれないなって思います、この映画。

──そう思うんですよね。これが、スタンダード音楽を使った替え歌でなければ、また違った見え方になっていたんじゃないかな? って思ったんです。


ミト:そう。僕もね、岡田氏がスタンダード音楽にこだわりたかった意味って、そこだと思うんですよね。やっぱり、劇中では高校生たちが自分たちでミュージカルをやるというシーンなわけで、僕がその音楽を担当するということは、プロが作った音楽になってしまうってことなんですよね。そこでまず違和感が生まれるというか。不自然なモノになっちゃうと思うんですよ。それもあって、スタンダード音楽を使った替え歌にしたかったんだと思うんです。それに、よく子供の頃、いろんな曲で替え歌作りませんでした(笑)?

──作りました作りました(笑)。恥ずかしげもなく、それを大声で歌ったりしてね。やったなぁ?(笑)。

ミト:ね、やりましたよね(笑)。それも、卑猥な替え歌とか作って馬鹿みたいに喜んだりして(笑)。なんというか、そんなのも青春の1ページとして色濃く残っているんですよね。そんなところも、この映画に入れたかった岡田氏の個性だったと思うんですよね。同世代生まれだからということもあり、そこを面白く思う感覚とかも、すごく解りましたしね(笑)。歌詞はすべて彼女が書いたんですけど、替え歌だったからか、すごくスルッと上手く歌詞にしていたんです。その歌詞のスキルといったら。本当にびっくりするぐらい素晴しいと感じました。スタンダードが題材だったから出て来た歌詞であったのか? 替え歌というところでカジュアルに生まれてきたモノであったのか? それにしたって、あんだけ綺麗に曲に歌詞を乗っけられるってすごいことだと思うんです。トップノートに母音を綺麗に乗せたりとかっていうのは、何百回も書かないと普通は出て来ないんです。歌詞を書くのは初めてではないとは言ってましたけど、そこまで書いてはいないと思います。それであの曲数書けたっていうのは、本当にすごいことだと思いますよ。主人公を含め、この物語の中心になる4人の男女が、どんどん感情をぶつけ合っていくという心情の移り変わりを、歌詞でとても上手く表現出来ていたと思います。本当にすごいスペックだと思いました。いつかまた、機会があったら、僕プロデュース案件で歌詞を書いてもらいたいなって思いましたからね、彼女には。

──素敵ですね。『心が叫びたがってるんだ。』は、とても現実的なお話でもありますよね。最初はちょっとファンタジーなストーリーなのかな? って思いましたけど。

ミト:ま、言うなれば、ねじ曲がったファンタジーですよね(笑)。


▲『心が叫びたがってるんだ。』オリジナルサウンドトラック 初回仕様限定特典:三方背ケース

──そうですね。でも、すごく深いお話だったなって。

ミト:そうですね。それぞれの家庭環境も描かれていたりね。片親だったりっていうのは、今の時代、そんなに非現実なことではなかったりするし、幼少の頃にいろんなことを経験して、トラウマを持ってしまったりっていうのも、珍しい話ではないというか。でも、そのねじ曲がったファンタジー感というのは、自分がねじ曲がりたくてねじ曲がったわけではなく、まわりにねじ曲げられてしまったというか。この物語では、そんなことを描いていると思うんです。主人公の順は、すごく素直ないい子で、人一倍夢見がちだったが故に、おかしなところに行ってしまったというかね。人間誰もが経験してもおかしくないというお話でもありますからね。順の失敗は、あながちやってしまいがちな失敗であると思いますから。本当に、いろんなことを感じてもらえるアニメなんじゃないかなと思います。そして、劇中にもある、順たちの担任の先生の言葉にもあるように、“歌にすると、こっ恥ずかしいことも言葉に出来る”ってことを感じてもらえるんじゃないかな。音楽って本当にすごくシンプルで、本当に人の感情を素直に出来るモノだと思うから。悲しいときに悲しい音楽を聴くとかもありだし、楽しいときにおもいっきり楽しい音楽を聴くのもありだし。日々いろんなことで振り回される感情を、音楽というモノはとても助けてくれるんですよ。そういう意味でも、音楽というモノの大切さやカジュアルさを、この映画から感じ取ってもらえたらなと思うんです。僕もクラムボンというバンドをやっていて、いつもJ-POPであるカジュアルさは意識していますから。口をついて出て来る音楽が、自分の環境を変えてくれることもあるし。さっき話した、歌い手が変わっても今の時代に響くということにも繋がると思うんですけど、当たり前のことを言い続けてることの良さということも、この映画の中で伝えていけたらいいなと思ったんです。難しいことなんて言ってないんですよね。すごくシンプルなことしか言ってない。だからこそ伝わるんじゃないかなって思うんです。そこも含め、ものすごく音楽が身近にあるんだなってことを、実感させられる映画でもあると思うので、ぜひ、楽しんでもらえたらと思います。

取材・文●武市尚子



『心が叫びたがってるんだ。』 作品情報

●公開表記: 9月19日(土) 全国公開
●コピーライト表記:(C) KOKOSAKE PROJECT
●配給:アニプレックス
●制作:A-1 Pictures
●製作:「心が叫びたがってるんだ。」製作委員会
●公式HP: http://kokosake.jp
公式TW: @kokosakeproject
公式FB: kokosakeproject

リリース情報

「心が叫びたがってるんだ。」オリジナルサウンドトラック
2015年9月16日(水)発売
3,240円(税込)/SVWC 70100-70101(Disc2枚組)
【Disc 1】
01:憧れのお城
02:言葉の罪
03:降りかかる罰
04:おはようの会話
05:ふれあい交流会実行委員!?
06:心の中を見られた
07:祖父母
08:鼓動
09:使えない“ポンコツ”
10:痛くない
11:伝えたいこと
12:言葉は人を傷つける
13:わたしの王子様
14:取り戻せない言葉
15:母と子
16:届かなかった気持ち
17:つながっていく
18:吐露
19:王子の悲しみ
20:Harmonia
21:好きとか、そんなんじゃない
22:もう歌えない・・・
23:叫び
24:言葉がほしい
25:お前のおかげ
26:素直な気持ち
【Disc 2】
01:あこがれの舞踏会
02:光のない部屋
03:燃えあがれ
04:word word word
05:わたしの声
06:玉子の中にはなにがある
07:心が叫びだす~あなたの名前呼ぶよ
08:Over The Rainbow
09:あこがれの舞踏会 Instrumental
10:光のない部屋 Instrumental
11:燃えあがれ Instrumental
12:word word word Instrumental
13:わたしの声 Instrumental
14:玉子の中にはなにがある Instrumental
15:心が叫びだす~あなたの名前呼ぶよ Instrumental
16:Over The Rainbow Instrumental

クラムボン アルバム『triology』

2015年3月25日発売
[CD]
初回限定盤(CD+DVD)
COZP-1035~6 ¥3,800(+税)
初回限定盤DVD:2015.02.11 “クラムボン 祝!結成20周年スペシャルフリーライブat 代々木公園”
1.Re-ある鼓動
2.シカゴ
3.パンと蜜をめしあがれ
4.茜色の夕日
5.波よせて
6.アジテーター
7.yet
EN.サラウンド

通常盤(CD)
COCP-39059 ¥3,000(+税)
[Blu-ray Audio]初回生産限定
COXP-1127 ¥3,800(+税)
[LP]
COJA-9292 ¥3,800(+税)
[収録曲]
1.Lightly!
2.アジテーター
3.the 大丈夫
4.Rough & Laugh
5.agua
6.noir
7.Scene 3
8.はなさくいろは -bon bori ver.-
9.バタフライ
10.yet -triology ver.-
11.Re-ある鼓動
12.Lightly…

ライブ・イベント情報

<clammbon 20th Anniversary 『tour triology』>
2015年11月06日(金) 東京・日本武道館


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