【ライブレポート】<情熱大陸フェス>東京公演、6時間半の“音楽”という贅沢な“お祭り”

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「最終的には、大阪の御堂筋と、東京では表参道をぶち抜く一週間くらいの音楽祭にしたい」。こう語る葉加瀬太郎がイベントアドバイザーを務める、<情熱大陸 SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA'15>の東京公演が8月22日、夏らしい真っ青な空の下、東京・夢の島公園陸上競技場で開催された。

◆<情熱大陸 SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA’15> 画像

今年で14年目を迎えるこのイベントは、通称"情熱大陸フェス"として親しまれ、定番夏フェスのひとつとしてすっかり定着。この日も、13,000人の観客がピクニック感覚で、"音楽"という贅沢な"お祭り"を五感で満喫した。

"情熱大陸フェス"と言えば、他のフェスにはない、出演者同士のファミリー感と、この日だけ行われる葉加瀬氏と出演者のスペシャルなコラボレーション、そして観客(さらには出演者)に対するホスピタリティ性の高さが魅力だ。開演に先立って挨拶を行った葉加瀬氏も、「このイベントは、いつも美味しいお酒とお料理を楽しんでいただこうと、特別なメニューを用意させていただいております」と空間全体を楽しんで欲しいとメッセージを送ると、「僕も、できる限りコラボをして頑張りたいと思います!」と、お祭りの開会宣言を行った。



そんな葉加瀬氏の言葉に導かれるように、今年が初出場となる家入レオが元気にBONANZA STAGE(センターステージ)に登場。真っ青な空に向けて高々と手を上げ、観客と一緒に手拍子を始めると、1曲目の「Shine」から会場を爽やかに盛り上げた。今年の出演陣の中でも最年少となる彼女は、16歳で福岡から上京し、「初めて観た夏フェスが、このフェスだったんです。今日、こうやって歌っていることが不思議です」とエピソードを語ると、3日前の8月19日にリリースされたばかりの新曲「君がくれた夏」を披露。続く「Silly」では、葉加瀬氏とのコラボレーションを行い、力強くも、優しさを含んだヴァイオリンの音色と、表現力豊かな歌声の共演に、大きな拍手が送られた。



続いてBONANZA STAGEに登場したのは、2週間ほど前の最終発表で出演がアナウンスされたMy Little Loverだ。「音のない世界」「DESTINY」「Hello,Again ~昔からある場所~」といった代表曲を惜しみなく披露すると、葉加瀬氏のヴァイオリンをフィーチャーした「白いカイト」では、暑さを一瞬忘れるような心地よい歌声を届けてくれた。


そしてJOUNETSU STAGE(サブステージ)に姿を見せた桐嶋ノドカは、7月29に1stミニアルバム『round voice』でメジャー・デビューしたばかりの新人シンガー。ピアノをバックに、この日は「風」と、彼女が大好きだというカバー曲「Chandelier」という2曲のみのステージではあったが、その実力と存在感は、しっかりと観客に伝えていたに違いない。



観客の視線が再びBONANZA STAGEへ戻ると、<情熱大陸フェス>定番とも言える押尾コータローが、早くも登場。12年前から連続してこのステージに立ち続ける押尾氏は、アコースティック・ギター1本だけで、バスドラムのようなパーカッションから、ベース・サウンドまでを変幻自在に奏で、そこに、ある時は力強く、ある時は繊細にメロディを重ねていくという超絶パフォーマンスで、13,000人の観客を魅了した。葉加瀬氏とのコラボレーションによる「Big Blue Ocean」では、チェリストの柏木広樹も加えた3人編成で、弦楽器アンサンブルを優雅に響かせながら、曲中で観客にウェーヴのパフォーマンスを促すなど、会場全体の一体感を楽しむ余裕も見せるなど、さすがの貫禄あるステージを展開してくれた。


JOUNETSU STAGE出場2番手は、シンガー・ソングライター上田和寛とサウンド・プロデューサー/ギタリスト杉山勝彦から成るUSAGI。かつて、年間200本以上のストリートライヴをこなしていたというだけあり、演奏力はもちろん、観客の掴みもバッチリ。今回、葉加瀬氏とのコラボレーションが実現出来なかったことを残念がりながら、「来年、USAGIがあちらの(センター)ステージに立てるように、応援よろしくお願いします。聞こえていないと思いますが、太郎さん、よろしくお願いします!(笑)」とユーモアを交え、場内を大いに沸かせた。



そのBONANZA STAGEに、大歓声を浴びて登場したのが、昨年に引き続き2度目の出演となるMay J.だ。ダンサーを従えて歌った「So Beautiful」や「風になりたい~RAINBOW」では、観客と一緒に手を振り、踊り、大合唱で会場全体を包み込んでいく。そして、誰もが待ち望んでいた「Let It Go -English ver.-」では、超有名な最後のワン・フレーズを“♪少しも暑くないわ”と歌詞を替えてキュートに歌い、喝采を浴びた。ラストには、葉加瀬氏とのコラボレーションで新曲「Sparkle」を熱唱。「夢は、自分を信じていれば叶えることができる」というメッセージを込めて書いたという詞を、実にドラマチックに歌い上げていた。



同じBONANZA STAGEでは、続いてクリス・ハートが、中島みゆき「糸」や、槇原敬之「どんなときも」といったお馴染みの名曲たちをカバー。音楽の素晴らしさを堪能させてくれる中で、"荒井由実"名義時代のユーミンのカバー曲「やさしさに包まれたなら」では、ギター・プレイも披露。そして、葉加瀬氏に加え、May J.との3人で「I Believe」をジョイントすると、大きな歓声が沸き上がった。


クリス・ハートの歌声が心に響いた後、JOUNETSU STAGEからは、奄美大島在住の2人組ユニット、カサリンチュによる軽快なヒューマンビートボックスのリズムが響き渡る。7回目の出演となる彼らは、<情熱大陸フェス>ファンには、もうお馴染みの存在だ。もちろん、彼らもこの会場の空気感を熟知しており、クイーンの名曲「We Will Rock You」のリズムに、ラップ調のMCを軽快に乗せ、グイグイと観客を引き込んでいく。一方で、デビュー当時から歌い続けている「故郷(ふるさと)」をしっとりと聴かせると、ラストは一転、いかにも南国のハッピーなノリで「やめられないとまれない」を演奏し、この"お祭り"気分を大いに盛り上げてくれた。


5年振りにBONANZA STAGEに帰ってきた柴田淳は、「私の作品の中では、かなりハードな曲を集めてみました」というMCで、「雲海」や、二十歳の時に作ったという「哀れな女たち」など、"大人のポップス"を披露。このフェスと同様に、2016年デビュー15周年を迎えるという彼女は、「深く深く、想いを込めて作りました。これからもずっと歌っていきたい曲です」というコメントし、葉加瀬氏を迎えて「道」を歌うと、その歌声に、多くの観客が耳を傾けていた。


「みんな、何か飲もうか。乾杯! 休憩と思って、聴いてください(笑)」。彼ならではのMCで、「TRUE LOVE」のイントロが流れると、もう会場は総立ち。そう、いよいよ藤井フミヤの出番だ。続けて、「今日はバンドの中に弟(藤井尚之)がいまして。どっちかが死ぬまで、"F-BLOOD"を続けて行くつもりなので、ここで代表曲を……と言っても、猿岩石が歌ってたんですけど(笑)」と、心地よい風が吹き始めた会場に、「白い雲のように」を届ける。

「それでは、私の天空の友達を紹介しよう。ヘラクレス太郎!」という藤井氏の呼び込みで表れたのは、"情熱大陸フェス"の名物ともなっている、コスプレ姿の葉加瀬氏だ。ディズニー映画のキャラクターであるヘラクレスに扮した葉加瀬氏と、その映画の主題歌「Go the Distance」を歌うと、次は尚之氏のサックスをフィーチャーしてチェッカーズの名曲「ミセスマーメイド」をプレイ。まさかの展開に、観客は大喜びだ。


しかし、その"まさか"は、まだまだ終わらない。ラストに披露した、フミヤ氏作詞、尚之氏作曲による、テレビ番組の主題歌「友よ」では、なんと木梨憲武とヒロミの2人がサプライズ・ゲストとして登場。前夜、3人で飲んでいる時に急遽、この日の出演が決まったという経緯を話し、「ミュージシャンは、こういう活動をしているんだね」(木梨)、「簡単に呼ばないでくれる?」(ヒロミ)と、観客を笑わせつつも、スペシャルなパフォーマンスで、この日一番の盛り上がりを見せた。


続いてJOUNETSU STAGEでは、沖仁によるフラメンコ・ギターが、夢の島にスペインの風を運んでくれた。パーカッションと、2人のパルマ(手拍子を演奏する人)編成で行われたステージは、「禁じられた遊び」から始まり、「こんな暑い日に、さらに熱い曲を用意してしまいました(笑)」というMCで、<情熱大陸フェス>をイメージして作られたオリジナル曲「乱れ咲きフローレス」を披露。こういった沖氏の演奏は、このフェスに通い続ける観客にとっては、欠かすことのできないステージのひとつと言えるだろう。しかしながら、このような本場フラメンコ・ギターは、よほどの音楽通でなければ、なかなか体験できるものではない。ましてや、ポップス系のフェスにおいては、なおさらだ。そこまでもカバーする幅広い音楽性こそが、このフェスの大きな魅力。藤井氏のエンタテインメント性の高いステージを観た後に、沖氏の本格的なフラメンコ・ギターが楽しめるという振り幅も大きさは、このフェス以外では決してあり得ない、<情熱大陸フェス>の醍醐味と言えるだろう。



そして、アコースティック・ギターを抱えて登場したmiwaが、終盤を迎えたBONANZA STAGEを華やかに彩ってくれた。「ミラクル」を歌い終えて、「後ろの人までタオルを回してくれていたのが見えました。すごい!」と喜びを素直に表現すると、ドラえもんの主題歌として子供にも大人気の「360°」では、軽快なステップも披露し、歓声を浴びた。続くMCで「みんながひとつになれるように、心を込めて歌います」とメッセージを送り、フライングVを弾きながら「ヒカリヘ」を歌い終えると、葉加瀬氏が登場。MCでは、2013年の大晦日から1年間、彼女を密着し、遂にはDVD化されるほど話題となった『情熱大陸』でのmiwa特集に触れ、その放送内で作詞に苦悩する姿が映し出されていた曲「月食~winter moon~」と、さらに「君に出会えたから」の2曲で葉加瀬氏とコラボレーション。彼女の魅力が凝縮された、素晴らしいステージだった。


miwaの素敵な笑顔は、そのままナオト・インティライミにバトンタッチされ、BONANZA STAGEの盛り上がりは、終盤のピークを迎える。「1曲目から、みなさんに参加してもらいたいんです!」と、冒頭からテンションMAXのMCで観客を盛り上げると、ラテン・フレイバー満載のアッパー・チューン「ナイテタッテ」では、観客を90度ずつ向きを変えながら一斉にジャンプさせるという"方向転換の儀式"で13,000人をひとつにする。するとアコースティック・ギターを手にし、6月に発売されたベスト盤『THE BEST!』の収録曲を、ユニークなトークと共にワン・フレーズずつ披露し、そのまま最新のシングル曲「いつかきっと」へ。会場からは、自然と大きな手拍子が巻き起こった。


そして「大先生であり、僕のお兄ちゃんだとも勝手に思っている、葉加瀬太郎ティライミ!」と、葉加瀬氏を呼び込む。ここで何と葉加瀬氏から、爆弾発言。「ナオト・ファンの息子が、「来年の"情熱大陸フェス"15周年で、ナオトがいないとマズイんじゃないの?」って言うんだよ。来年、出てくれる?」と、ステージ上でまさかの直談判。「えっ、1年後でしょ?……いいよ!」とナオトが応え、交渉が成立すると、「タカラモノ~この声がなくなるまで~」を2人でコラボレーション。大盛り上がりとなったラスト「カーニバる?」のエンディングでは、観客をバックに葉加瀬氏と2ショット記念写真を撮るなど、観客を耳と目と体感で、思う存分に楽しませてくれた。


JOUNETSU STAGEでの最後のパフォーマンスは、男性ヴォーカルグループLE VELVETS。ユーモア溢れるMCを挟みながら、クイーンの有名曲を集めたメドレー「Queen Must Go On」や、クラシック音楽の名曲「Nessun Dorma(誰も寝てはならぬ)」など、誰もが知る聴き馴染みのある楽曲を、3人のテノールと2人のバリトンで、美しくも力強く歌い上げた。クラシカルな要素とポップスを融合させたハーモニーは、夕暮れの野外に気持ちよく鳴り響き、観客は余韻に包まれていた。


青空がすっかり星空に変わり、色とりどりの照明がカラフルにステージを彩り始めた頃、大トリとしてステージに姿を表したのは、もちろん"情熱大陸"マイスター、葉加瀬太郎だ。1曲目に演奏された「エトピリカ」は、『情熱大陸』のエンディング曲として、今や誰もが知る名曲。ところがこの曲は、番組用に書き下ろされたものではなく、番組開始よりもずっと以前に葉加瀬氏によって生み出されたオリジナル曲。その名曲たる所以とも言うべき美しいメロディが、夏の熱気を和らげてくれる。

ここで、このフェスを支えたハウス・バンド(葉加瀬氏は「スーパー・バンド」と称賛していた)のメンバー紹介が行われた。そう、このフェスがもっとも特長的な点は、すべての出演者が、自身のバック・バンドを連れてくるのではなく、<情熱大陸フェス>のために編成されたバンドの演奏で歌うという点にある。しかもそのメンバーは、有賀啓雄(Bs&Mand Master)をはじめ、藤井尚之(Sax)、屋敷豪太(Dr)、斎藤有太(Key)、石成正人(Gt)、田中義人(Gt)など、総勢13名のトップ・ミュージシャンから成る、まさにスペシャルなバンドなのだ。

そんな贅沢なバンドをバックに、葉加瀬氏のデビュー25周年記念アルバム『DELUXE ~Best Duets~』にも収録されている「ひまわり」が演奏されると、ステージには、この日三度目となるMay J.が登場。葉加瀬氏が「運命的な1曲」と語る、セリーヌ・ディオンとの共演で世界中の話題となった「To Love You More」を彼女とのコラボレーションで披露してくれた。実は、この曲をセリーヌ・ディオン以外のヴォーカリストと共演したのは今回が初めてのことであり、葉加瀬氏にとっても、May J.にとっても、もちろん観客によっても特別な夜となったことだろう。

そして、アップ・テンポの「The Mission To Complete」で観客も、そしてステージ上も派手に盛り上げると、続けざまにラテンのリズムに乗って、このフェスのテーマ曲とも言える「情熱大陸」が演奏され、約6時間半に渡る"お祭り"はフィナーレを迎えた。最後には、広いステージに並び切らないほどの数となる全出演者が、お揃いのフェスTシャツ姿で、一同にラインナップ。この贅沢な顔ぶれに、観客からは惜しみない拍手がいつまでも続いた。そして、最速で来年の出場を宣言したナオト・インティライミと葉加瀬氏が肩を組みながらステージを後にすると、これが<情熱大陸 SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA'16>への序章となり、東京公演は幕を閉じた。

取材・文◎布施雄一郎

■<情熱大陸 SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA'15>
2015年08月22日(土)@東京・夢の島公園 陸上競技場SETLIST

<BONANZA STAGE>
【家入レオ】
1.Shine
2.TWO HEARTS
3.君がくれた夏
4.Silly(w/葉加瀬太郎)
5.純情
6.サブリナ
【My Little Lover】
1.音のない世界
2.DESTINY
3.Hello, Again ~昔からある場所~
4.白いカイト(w/葉加瀬太郎)
【押尾コータロー】
1.彼方へ
2.モモの唄(w/柏木広樹)
3.Big Blue Ocean(w/葉加瀬太郎、柏木広樹)
4.Legend ~時の英雄たち~
【May J.】
1.Be mine ~君が好きだよ~
2.So Beautiful
3.風になりたい~RAINBOW
4.Let It Go -English ver.-
5.Sparkle(w/葉加瀬太郎)
【クリス・ハート】
1.糸
2.やさしさに包まれたなら
3.どんなときも
4.あなたへ(w/葉加瀬太郎)
5.I Believe(w/葉加瀬太郎、May J.)
【柴田淳】
1.雲海
2.哀れな女たち
3.救世主
4.道(w/葉加瀬太郎)
5.ノマド
【藤井フミヤ】
1.TRUE LOVE
2.白い雲のように
3.GO the Distance(w/葉加瀬太郎)
4.ミセス マーメイド
5.友よ(w/木梨憲武、ヒロミ)
【miwa】
1.ミラクル
2.360°
3.ヒカリヘ
4.月食 ~winter moon~(w/葉加瀬太郎)
5.君に出逢えたから(w/葉加瀬太郎)
【ナオト・インティライミ】
1.ナイテタッテ
2.タカラモノ ~この声がなくなるまで~(w/葉加瀬太郎)
3.いつかきっと
4.The World is ours!
5.カーニバる?
【葉加瀬太郎】
1.エトピリカ
2.ひまわり
3.To Love You More(w/May J.)
4.The Mission to Complete
5.情熱大陸
<JOUNETSU STAGE>
【桐嶋ノドカ】
1.風
2.Chandelier
【USAGI】
1.当たり前じゃないってこと
2.ここから
3.イマジン
【カサリンチュ】
1.さぁ行こう
2.故郷(ふるさと)
3.やめられないとまれない
【沖仁】
1.禁じられた遊び
2.乱れ咲きフローレス
3.カノン~ Smoke On The Water~Spain
【LE VELVETS】
1.Time To Say Goodbye
2.'O sole mio
3.Queen Must Go On
4.Nessun Dorma

◆<情熱大陸 SPECIAL LIVE SUMMER TIME BONANZA'15>オフィシャルサイト
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