【インタビュー】ソルスターフィア「すべての音楽性を、日本の音楽ファンの前で披露したい」

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2015年8月~9月、アイスランド出身のポスト・メタル・バンド、ソルスターフィアが初来日公演を行った。<伊藤政則のロックTV!プレゼンツ ROCK OF CHAOS Vol.2>で来日、東京・恵比寿LIQUID ROOMでアナセマと共に2公演を行ったソルスターフィアの持ち時間は各日40分と決して長いものではなかったが、最新アルバム『オウッタ』からのナンバーを軸としたステージは日本の音楽ファンに鮮烈なインパクトを残した。

◆ソルスターフィア画像

日本初上陸を果たしたソルスターフィアは、どこから来て、どこに向かっていくのか。バンドの正式メンバーであるアザルビョールン・“アディ”・トリッグヴァソン(Vo、G)、サイソア・マリウス・“ピュディ”・サイソアソン(G)、スヴァーバル・“スヴァビ”・オイストマン(B)の3人に訊いた。



──アイスランド出身であるということは、ソルスターフィアの音楽にどのような影響をもたらしたと思いますか?

アディ:第2次大戦前、アイスランドはデンマークの領土で、貧しい地域だった。大戦中に独立国になったけど、国民の生活は豊かではなかったんだ。だから海外のポップやロック・バンドがアイスランドをツアーすることはほぼ皆無だった。1970年にレッド・ツェッペリンがレイキャビクでライヴをやったことは、アイスランドの音楽史において重要なでき事だよ。その後、1971年にはディープ・パープルも来たし、少しずつバンドが来るようになった。キッスやアイアン・メイデン、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンも来たことがあるよ。でも今日でも、外国のバンドが訪れることは滅多にない。ソルスターフィアがバンド活動を始めた頃、アイスランドではメタル・クラブやジャズ・クラブなど、ジャンルごとに分かれたクラブはなかった。だから俺たちはインディー・バンドやポップ・バンド、ラッパーなど、さまざまなアーティストと共演してきたんだ。それでひとつの音楽ジャンルに囚われることなく、さまざまなスタイルを取り入れながら自分たちのスタイルを築くことができた。

──アイスランドの歴史や文化などから影響を受けていますか?

アディ:ソルスターフィアの音楽はむしろ、アイスランドの大自然から影響を受けてきたんじゃないかな。灰色の空がどこまでも拡がって、人口が少ないから土地もだだっ広い。でも大雪のせいで町が停電になって、3日間学校にも行けなかったり、寒波で人が死んだりもする。さらに火山国だから地震も多い。そんな大自然の広さと脅威のコントラストは、我々の音楽にとって大きなインスピレーションとなってきたんだ。

──アイスランド出身のアーティストというとビョークやシガー・ロスが世界的に知られていますが、彼らとの交流はありますか?

アディ:シガー・ロスとは1999年頃から知り合いなんだ。ファースト・アルバムは当時彼らが所有していたスタジオで作ったし、『オウッタ』も彼らの『スントロイジン・スタジオ』でレコーディングした。水泳用プールを改築したスタジオで、音の拡がりのある良いサウンドを得ることができたよ。

ピュディ:あと、今回俺たちと一緒に日本に来ているハルグリムル・ハルグリムスンは、シガー・ロスのヨンシーがやっていたビー・スパイダーズのドラマーだったんだ。

──今回はアナセマとの来日公演ですが、彼らのことは以前から知っていましたか?

スヴァビ:俺は初期からファンだったよ。1990年代初め、アナセマやパラダイス・ロスト、マイ・ダイイング・ブライドはイギリスのメタルの新しい潮流だったんだ。

アディ:俺はちょっと遅れて、『ジャッジメント』(1999)で初めて聴いたんだ。それ以来、アナセマの音楽はずっと好きだし、ソルスターフィアにとって初めての日本公演を彼らと一緒に行えるのは光栄だよ。

──ソルスターフィアとアナセマは共にエクストリームなメタルを出自としながら、徐々にプログレッシヴな方向へと変化してきました。現在のあなた達は、メタルとどのように接しているでしょうか?

アディ:メタルは今でも好きだよ。「オウッタ」を書いているときのワーキング・タイトルは「カントリー・オートプシー」だったんだ。ピュディが弾いたリフを元に曲を書いて、それがまるでデス・メタル・バンドのオートプシーがカントリーを弾いたような感じだったんで、そう呼んでいた。俺たちは今年に入ってからもアメリカの<メリーランド・デスフェスト>やチェコの<ブルータル・アソールト>フェスに出演して、デス・メタルやブラック・メタルのバンドと同じステージに立ってきた。その後にアナセマやmonoと一緒にライヴをやったり、オランダでファミリー向けフェスに出演したり…どんなフェスに出ても、音楽面で妥協することはない。セットリスト自体は毎晩異なるけど、俺たちのショーをやるだけだよ。ソルスターフィアの音楽には自由があるんだ。メタル・バンドと非メタル・バンドの両方とツアーや対バンをできるのは、俺たちの強みだと思う。

──アルバム『オウッタ』は、アイスランドの古来の時法“エイクト”(1日の24時間を8つに分ける)をコンセプトにしていますが、どんなところから着想を得たのですか?

ピュディ:“エイクト”はアイスランド人だったら知識としては知っていても、現代では使われない過去の時法なんだ。まだ腕時計やiPhoneが生まれる前の時法だよ。あるとき俺が読んでいた本にそのことが載っていて、これをテーマにしたら面白いと思った。

アディ:アルバム・タイトルを『エイクト』とせずに『オウッタ』としたのは、アイスランドにエイクト社という有名な建設会社があるからなんだ。たとえばアルバム・タイトルが『コダック』や『マクドナルド』だったら、変に感じるだろ(笑)?

──アイスランド語ヴォーカルはソルスターフィアの音楽に独特の響きをもたらしていますね。

アディ:海外進出するようになってから「アイスランド語の神秘的な、エキゾチックな響きが好きだ」と言われるようになったけど、ピンと来なかったんだ。俺は生まれてからずっとアイスランド語を話してきたし、母国語を神秘的と思ったことはないからね。でも映画『ロード・オブ・ザ・リング』を見て、原作者のJ.R.R.トールキンの作った架空の言語で登場人物が歌うのを聴いたとき、すごく幻想的でエキゾチックに感じたんだ。もしかして英語圏や日本語圏のリスナーには、アイスランド語ヴォーカルはこんな風に聞こえるのかな、と思った。

──一時期英語で歌っていましたが、それをやめたのは何故でしょうか?


アディ:俺はアイスランド語で歌い始めたし、ソルスターフィアが1995年に作ったファースト・デモもアイスランド語だった。その後に海外での活動を視野に入れて、英語の歌詞を採り入れるようになった。2枚目のアルバム『Masterpiece Of Bitterness』(2005)と『Kold』(2009)は、多くが英語だったんだ。ただ、クリーンなヴォーカルで歌うようになったことで、自分にとって歌詞の重要性が増した。母国語のアイスランド語で歌った方が、フィルターを通すことなく自分の感情をダイレクトに表現することができる。それで『Svartir Sandar』(2011)と『オウッタ』では再びアイスランド語で歌うようになったんだ。ただ今後もう英語を使わないとは言わないよ。英語はロックンロールの言語だし、ヘヴィな曲は英語が向いていると思うんだ。

──今年、フラプン・グンロイグソン監督の映画『大鴉が飛ぶとき』(1984年/日本では『アイスランド映画祭』で上映)とのコラボレーション・ライヴを行ったそうですが、それはどのようなものでしたか?

アディ:映画に合わせて演奏するというライヴをやったんだ。レイキャビクとオランダ<ロードバーン・フェスティバル>、それからアイスランドの<エイストナフルグ・フェスティバル>で、これまで3回やっている。基本的にソルスターフィアの既存曲をインストゥルメンタル・ヴァージョンにしてプレイするというスタイルだった。『大鴉が飛ぶとき』はアイスランド映画史上で最もよく知られている名作のひとつで、俺たち全員が好きな映画だ。

──『大鴉が飛ぶとき』は日本で劇場公開されていないんですよ。

ピュディ:それは残念だ。ソルスターフィアの世界観にも影響を与えた作品だし、ぜひ観るべきだよ!グンロイグソン監督は『大鴉が飛ぶとき』を作るにあたって、黒澤明の『用心棒』とセルジオ・レオーネの『荒野の用心棒』からインスピレーションを受けたと言っていた。だからきっと日本のファンも気に入るはずだよ。ソルスターフィアが音楽を担当したヴァージョンは9月にアイスランドのテレビで放映されて、その後にDVD化される予定なんだ。

──日本公演の後、10月から11月にかけて日本のmonoとドイツのジ・オーシャンとのヨーロッパ・ツアーを行いますが、monoとの共演はどのようにして実現することになったのですか?

アディ:monoは以前からヨーロッパで活動していたし、ジ・オーシャンがやっているレーベル『ペラジック・レコーズ』から作品を発表していたから、名前は知っていたんだ。音を聴いてみたらすごく良かったし、独自の世界観を持っていると感じた。さらに日本のバンドだということにも興味を持って、一緒にツアーすることにしたんだ。俺たちの日本公演のとき、彼らはちょうど海外ツアーをしていて、まだ会っていないんだけどね。日本のリスナーがソルスターフィアの音楽をエキゾチックなものと感じるのと同様に、俺たちにとっても日本の音楽はエキゾチックなんだ。

──他に日本のバンドで知っているのは?

スヴァビ:俺が知っているのはSIGHと…。

アディ:今はもう活動していないけど、GALLHAMMERが好きだった。日本の女の子3人がブラック・メタルをプレイしていて、一度スコットランドのグラスゴーでライヴを見たことがあるんだ。すごく良いライヴで、酔っ払っていたせいもあるけど、物販でLPを買ってサインしてもらったのを覚えているよ(笑)。


──それ以降の活動について教えて下さい。ニュー・アルバムの予定はありますか?

アディ:今年1月にドラマーがバンドを辞めることになったけど、それから80回ぐらいショーをやってきたし、ソルスターフィアの活動は上向きになっている。十代の頃、初めてバンドを組んだとき、いつか日本でプレイすることが夢だったんだ。それから20年、東京のホテルでとった朝食は、成功の味がしたよ。

スヴァビ:ハルグリムルが正式メンバーになるかは、まだわからない。バンドというのは音楽面だけでなく、人間的にも気が合わないとやってられないからね。でも彼とだったらうまくやっていける気がする。

アディ:今年の終わりにニュー・アルバムに取りかかるんだ。どんな方向性になるかは、まだわからない。よりアンビエントになるかも知れないし、ヘヴィになるかも知れない。グラインドコア・アルバムになる可能性だってあるよ(笑)。アルバムを発表したら、ぜひまた日本に戻ってきたい。ソルスターフィアのすべての音楽性を、日本の音楽ファンの前で披露したいんだ。

取材・文 山崎 智之
Photo by Mikio Ariga

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