【インタビュー】ボカロPのn-bunaが語るメジャー1stアルバム『花と水飴、最終電車』制作に使われたソフトSONARの能力 Vol.3

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■異なる設定のプロジェクトの扱いが劇的に改善
■ミックスリーコール


──作業時のフォーマットは?

n-buna:マスタリングの時に下げればいいというのもあって、ある程度上げてます。でも動画投稿にはそんなに高いのは必要ないなと思って48kHzくらいでやってますけど。

──レコーディングの時は?

n-buna:24ビット、48kHzで。QUAD-CAPTUREだから96までできるんですけど、そこまで必要ないかなあと。HDDもすごい容量になっちゃうんで。プロジェクトファイルが……、僕、感覚のままに暇ができてアイディアが浮かんだらどんどんプロジェクトファイルを作っていくタイプなんで、あんまり大きくできなくて。

「そんなn-bunaさんに朗報です」とTASCAM加茂氏が解説してくれたのが、「ミックスリコール」機能。プロジェクトのエフェクトやオートメーションの状態(ミックス)を複数記録して、いつでも呼び出せるようにするものだ。たとえば、一般的なDAWはドラム音源を聴き比べたい場合、複数のドラムキットを切り替えて、聴き比べた後に別プロジェクトとして保存という作業だが、ミックスリコールを使えば、1つのプロジェクトにそれらを異なる状態で複数内包でき、操作1つで切り替えて聴き比べができる。また、WAVファイルのエクスポート時にミックスリコールを選択すれば、1度の操作で各ミックスを個別にファイル出力が可能だ。CM音楽の作成では15秒バージョン、30秒バージョンを1つのプロジェクトで扱うことができるし、ライブのミックスで一部の曲だけミックスを変えるという作業にも有効、「プロジェクトファイル1個に別のバランスを入れて置ける、いろんな使い方ができる」とはTASCAM小泉氏。


▲エフェクトの設定やオートメーションの状態を複数保存できるミックスリコール機能。名前を付けていつでもリコール(保存した状態に戻す)することができる(左)。ファイルのエクスポート時は、複数のミックスを1回の操作で書き出すことが可能(右)。

n-buna:プロジェクトファイルがちょっと別のミックスをするたびにどんどん増えて。番号を付けてるんですが、それが膨大な数になってきてるので。ギターのちょっと低音切っただけ、みたいなのが。混在してわかんなくなったりしていますからね。ミックスリコールがあれば便利ですね。

このほか新SONARでは、各チャンネルにビルトインされているPro Channel(PLATINUM/PROFESSIONALのみ)のモジュールとして低域をコントロールする「Bark of Dog」やサンプリング・リバーブ「REmatrix Solo」などが追加されている。従来のデジタル・リバーブ「BREVERB」に比べ、ちょっとした残響を付けるのに使いやすいとのこと。「コンソールエミュレーターはけっこう使います。Neveのやつにしたり」とはn-buna。

また、「Room 335が好きだったら」とオススメされたのが、エレピ音源の「Lounge Lizard」。とても本物っぽく音がいいわりには軽いのが利点、モデリング音源なのでハンマーなどのパラメーターも豊富で音作りの自由度も高い。「エレピが欲しい時はこれ」とは、ライブでも使っているというTASCAM小泉氏。また、音色探しで困ったらサンプラーの「D-Pro」。どんな楽器でもだいたい入っているし、音質もいいので、まずはこれをきいて音を探すのがよいという。音を試聴したn-bunaは「イコライザーとかフィルターもついてるし、いいですね。ピチカートがすごいいい音!」と気に入った様子。豊富な音色を試しつつ、「これやってたら日が暮れちゃいますね」。


▲AASのエレピ音源「Lounge Lizard」(PLATINUMのみ)(左)、膨大なライブラリを収録したCakewalkのサンプルプレイバックシンセサイザー「D-Pro」(右)。D-ProはSONRA PLATINUMにはPRO版、PROFESSIONALにはLE版が付属。

■SI-Stringsはほんと最高
■SI-Bassは軽いのがいい!


n-buna:あと、よく使うのがSI-Strings。すごいよくないですか? 自動でビブラート付けてくれるのがすごいいいし。生っぽい音とデジタルっぽい音の中間じゃないですか。アルバムの中でも使いましたね。最後の曲とか。SI-Stringsはほんと最高だと思います。

──「拝啓、夏に溺れる」もストリングスがけっこう入ってますよね。

n-buna:あれ、まさにこれですよ。これで結構音を作りこんで。リバーブは別にかけるので、SI-Stringsではリバーブなし、アタック早めにして。32ぐらい。


▲SONARシリーズに収録されるCakewalk製の生音系音源Studio InstrumentsのSI-Strings(左)とSI-Bass(右)。どちらも多彩な音色に加え、MIDIフレーズパターンも内蔵。SI-StringsはBASS、CELLO、VIOLINが音域により発音。弓が動くグラフィックも楽しい。

n-buna:最初の設定だとリリースがけっこう遅くて、リバーブがかかった雰囲気になるのがあまり好きではないので。だからリリースをけっこう短くして、すぐ音が切れるようにして。その後にリバーブをかけるなりしないと、2重にリバーブがかかっちゃうから、そこのところが気になって。でもパラメータがいじりやすく、直感でできるし(触りやすい)。

──そのフレーズも鍵盤じゃなくてピアノロールで?

n-buna:そうですね。でも、伴奏に合わせて鍵盤を弾いて考えたりっていうのもたまにやってます。アイディアの1つとして。

──アルペジエーターとかは使いますか?

n-buna:使わないですね。たまにやって……生まれる偶然の産物みたいのもいいと思うんですけど、頭のなかのイメージと違うものが生まれちゃうんで。たまにしかやらないですね。「そこの音を入れてほしくない!」みたいな。ギターのリフのところとかアルペジエーターでちょうど来た音がかぶったりとか、1つしか音が違わないところでぶつかったりするのがあまり好きじゃないんですよね。

──他のプラグインは?

n-buna:あとはSI-Bass。これ、すごい軽いんですよね。僕、Trilianとかたまに使うので。Trilianがめちゃくちゃ重いからデモの時にぜんぜん使えなくて。この軽さが助かるし。デモの時にこれを入れて、あとで差し替えて……。画面はほんとのベースをいじってる感じ。遊び心がいいと思いますね。

──先ほどのミックスリコールで軽いセッティングと重いセッティング切り替えるといいかもしれませんね。曲作りでベースは実際に弾くのと打ち込み両方あるとのことですが、その選択は?

n-buna:曲に合わせて……。わりとかっちりしたものがハマることもありますし。弾いたやつがハマることもありますし。曲によって違う感じ……。SI-Bassは軽いのに普通に音がいいんですよね。低音がしっかり出てて、音質がいいというか、音がくっきりしてるベース音源って軽いのだと全然いいのがないんで。これを見つけた時はけっこう喜びましたね。

続きのVol.4は近日公開予定。お楽しみに。

『花と水飴、最終電車』

2015年7月22日発売
初回生産分限定スリーブ仕様 DGUR-10005 ¥2,000+税
【収録曲】
01 もうじき夏が終わるから
02 無人駅
03 始発とカフカ
 ウミユリ海底譚
04 昼青
05 拝啓、夏に溺れる
06 ヒグレギ
 透明エレジー
07 夜祭前に
08 メリュー
09 着火、カウントダウン
 敬具
10 ずっと空を見ていた
11 夜明けと蛍
 花と水飴、最終電車


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