【連載】「藤田麻衣子の恋愛相談室」 case 15 ~解決しないまま、時間は進んでいく~
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ペンネーム:ましゅ(大阪府/男性)
藤田さん、はじめまして。
私はインディーズの頃の藤田さんの曲を2年前に聞き、ファンになりました。
このような恋愛相談をやっていることを知り、プライベートでは他の人に相談できない悩みなのですが相談させてください。
私は男性です。しかし心は女性です。ちょうど2年ちょっと前でしょうか、私は男性に恋をしました。
ちょっとややこしいので、その男性をA君とすると、当時A君はその学校でほとんど唯一の友だちでした。
きっかけは受験の時、A君が私に話しかけてくれたこと。自分が持っているカイロを私にくれるような優しい子でした。A君とは学生生活を友だちとして一緒に過ごしました。お弁当を一緒に食べ、カラオケに行ったり、何気ないA君との時間を過ごしていくうちに、自分のこの気持ちに気付きました。
A君はすごく正義感の強い子で、受験で私が緊張していると「こういうテストは楽しむものやで!」って笑って言ってくれたり。クラスでもみんなをまとめてくれ、カラオケに行った時も、あんまり歌が上手なわけではないけれど、誰よりも一生懸命だったり。でも字があまり綺麗じゃなかったり……。ダメなとこもある子で、大好きでした。
私は時間を無駄にしてしまうのが嫌なタイプで、この恋の気持ちに悩んでいるのが嫌になり、また隠したままA君と一緒に過ごすことが悪いことをしてるんじゃないかという気持ちになって、A君に手紙で想いを伝えました。
でも自分と付き合っても、同性婚は法律違反で、相手には子どももできないし、相手の将来を潰してしまうかもしれないと思い、「付き合ってください」ではなく、「こういう私を知って、それでも友達でいてほしい」という想いを書きました。しかし、A君の返答はLINEで、「縁を切ってほしい」とのことでした。
その日から、私の心がすごく乱れて沈んでしまい、やっぱり同性愛って普通の人からすると気持ちが悪いことだったんだ、とか、打ち明けただけで全てを失うなら止めておけばよかった……など軽い鬱状態に陥ってしまい、それを見かねたのか、A君が2人で話す機会をくれて、一応仲直りをしてくれました。
しかし翌年(その機会の少し後)クラスが離れ、A君と関わる機会がバッタリなくなってしまいました。
廊下ですれ違ってもお互い見て見ぬ振り、私もA君に迷惑をかけたくないと思いお互い何もなかったかのように過ごしていきました。
そして1年半が経ち……いよいよ卒業に近づいてきました。
前置きが長くなりすぎてしまったんですが……私は今でも廊下ですれ違ったり、帰り道に遭遇したりするとどのように振る舞えばいいのかわかりません。弱虫なのですが、“避けられる”って思うのが怖くて逆に避けてしまいます……。
相手のことを考えると、このまま関係を風化させた状態で、卒業式を迎えるべきなのでしょうか?
すごく身勝手だと自覚しているんですが、今でもあの頃のように普通の友だちのように戻りたいといつも思ってしまいます。
今私にできることは何なのでしょうか……?
そして個人的に、藤田さんは賛成の声も、また反対の声も多い「同性愛」について、どうお考えになっているか、その考えを知りたいです。
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勇気を出して書いてくれて、ありがとうございます。
A君も、初めてのことでびっくりしたのかもしれませんね。どんなことでも、初めての経験って衝撃を受けますよね。器がまだないことは、なかなか受け止められなかったりしますが、ましゅさんから見たら、彼の器がどうのとか考えてる余裕なんかなく、拒絶されればその事実がまっすぐに刺さりますよね。
そうですね、ましゅさんと状況がまったく同じではないですが、例えば友達と気まずくなって気まずいままもう会わなくなったこと、好きな人と気まずくなったまま避けたり避けたられたりしてそのままになったことはいくつもあります。
「気まずくなる」っていうのは、いろんな場面で起こることだと思います。
それはとても苦しいし、残念だし、淋しいし……。
私は人それぞれ言わないだけでいろんな事情を持っていると思ってるので、“ましゅさんは同性愛ということを背負ってる人なんだな”と受け止めるだけで、気持ちが悪いとかは全然思いませんよ。
ましゅさんが、関係をどうにかしたいと強く望むなら、また話しかけてみるのももちろんいいと思います。
もしまた傷ついても、「自分はがんばりたいと思ったから勇気を出したんだ」って、勇気を出した自分を認めてあげることができると思います。
私は10代、20代の時に気まずいままになった人たちがいて、今でも思い出すとなんか苦いというか……なんとも言えない気持ちになることもあります。でも過ぎてしまったから言えることなんですが、「そういうこともあるんだ」というふうに受け止めてきたかな……。清々しいことばかりじゃないし、傷ついたこととか壊れたものとか、解決して次に進めることばかりじゃないんですよね。
私は異性を好きになりますが、拒絶された時はびっくりするくらい傷つきました。
フラれたり、避けられたりした時も本当にこんなに胸が痛いのかと苦しかったです。
ある日、友達に聞いてもらうだけじゃ気が済まず、お父さんに「こんなにずっと苦しすいものなの?」と聞いたくらい……恥ずかしい娘。
「お父さんだって、失恋した時はつらかったし苦しかったがね。苦しいもんなんだよ」と言われた記憶が……変な親子ですね。
“お父さんでも痛かったのか!自分だけじゃないのか!”とほんの少し納得できましたね。しばらく苦しかったけど。
友達に拒絶された時も、苦しかった。手紙を書いて渡しに行ったけど、ドアも開けてもらえず、それからも音信普通のままです(私が怒らせることしたんですけどね……)。
いろんな思いが自分の中にありました。
私のことはほんの一例ですが、ましゅさんは今、傷ついてるちょうどど真ん中にいるんだとして、でも必ず抜け出せる時は来ると思うので、同性を好きになる自分を否定しないでくださいね。今の自分だから傷ついたり背負っていかなきゃいけないものはあるけど、そういう自分だからこそ、見つけられるものや出会えるものがあります。
とても素敵なことがこれからまだまだたくさんあると思うから、このまま卒業まで気まずいのがつらいと感じ続けたとしても、私は少しだけ大人になった今の目線から、「気まずいままってつらいよね、でも人間関係は本当に傷つくことが、いくつもあるんだよね……」と見守ってしまいます。
10代はいろんなことが初めてだから、傷つくことがたくさんあります。
また少し大人になると、また初めてのことには傷つくし、逆にこれは初めてじゃないからなんだか受け止められる……っていう自分の変化を感じたりもします。
ましゅさんが、今よりもっと自分を好きになっていけますように。応援しています。
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