【ライブレポート】清春、46歳最後の夜「この先もみんなと、もっともっと幸せに」

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10月29日、東京・赤坂BLITZにて『THE BIRTHDAY』と銘打ちながらのソロ公演を行なった清春。彼の誕生日は正確には10月30日だが、毎年この時期にライヴを行なうのは恒例となっており、昨年のバースデーには黒夢の<TOUR 2014 BEFORE THE NEXT SLEEP VOL.1『夢は鞭』>の一環として、彼自身にとって初となる東京・新木場STUDIO COASTでの公演を実施。そして今年はソロ・アーティストとして、46歳最後の日をステージ上で迎えることになった。

◆清春画像

開演予定時刻を30ほど過ぎ、時計の針が午後7時を過ぎた頃に場内は暗転。オープニングSEが流れるなか、清春が信頼を寄せるミュージシャンたちが配置につく。三代堅(G)、中村佳嗣(G)、沖山優司(B)、そして楠瀬拓哉(Dr)というお馴染みの顔触れだが、この布陣でのライヴ自体は久しぶりだ。メンバーたちは全員、白いシャツに黒いパンツといういでたち。しかも両ギタリストは黒いベスト、リズム・セクションのふたりは黒いタイを身につけており、白地に黒いストライプの入ったスーツ姿で登場した清春が中央に立つと、まさに彼を中心軸としたシンメトリーな構図ができあがった。すると、聴こえてきたのは「JUDIE」。こうして記念すべき夜は幕を開けた。


新作リリースに伴うライヴではないだけに、演奏プログラムは斬新というよりは定番メニューに近いもの。清春のライヴに通い詰めてきたファンには身体に染みついているはずの楽曲たちが、いちばん気持ちのいい流れで繰り出されていく。途中、機材トラブルに見舞われて進行に滞りが生じたりもしたが、そんな局面でも清春自身が「忘却の空」や井上陽水の「傘がない」をさらりと弾き語りで披露するなど、結果的にはそれ自体がレアな場面となり、ファンの歓喜の声を集めていた。


「ついに本格的にアラフィフということで…」と語って笑いを呼んだかと思えば、「ニュー・アルバムをレコーディング中なんですけど、たぶん間に合わないんじゃないか、と」などという発言でどよめきを誘ったり。曲間で清春が投げかける言葉の数々も、その場に彩りを添えていた。終盤、「LAW’S」での一体感を経て「ALIEN MASKED CREATURE」で一気に“動”に転じると、続く「COME HOME」をもってライヴ本編は終了。この時点ですでに16曲を歌い終えていた清春だが、その後、彼は実に三度にわたるアンコールにそれぞれ異なったコスチュームで応え、結果的には最後の最後に披露された「あの詩を歌って」に至るまで、実にトータル25曲を歌い切った。同楽曲を彼が歌い終える頃には、すでに午後10時を20分ほど過ぎていた。


二度目のアンコールの場面では、突然、三代が「Happy Birthday To You」のメロディを弾き始め、それに乗って巨大なバースデーケーキが登場。それが載せられたカートを押しながら姿を見せたのは、sadsでの盟友、GOだった。そうしたいかにもバースデー・ライヴ然とした場面も印象的だったが、それ以上に象徴的だったのは、その少しあとに清春が発した言葉だ。彼は、「この先もみんなと、もっともっと幸せになりたいと思います」と客席に告げたのだ。もちろんこれは、その次に控えていたのが「HAPPY」だったからこそ吐かれた言葉ではあったはずだが、この言葉にこそ真理があるのではないだろうか。つまり、歌うことで彼自身が幸せになり、それがそのままオーディエンスの幸福に繋がっていくのだ。それは同時に、「この詩を歌うと幸せな気持ちになれたよ」という「あの詩を歌って」の歌詞にも重なるところがある。実際、ステージ上の清春ばかりではなく、この曲に歌声を重ねながら手を掲げる観衆の表情も、とても幸福感に満ちたものに見受けられた。


この夜のステージ上で清春自身が語ったところによれば、実に3年ぶり以上となる待望の新しいソロ・アルバムのタイトルは『SOLOIST』に決定しており、その完成は少し先になりそうではあるものの、12月23日のツアー開幕までには、何らかの形で楽曲を聴くことが可能になるはずだとのこと。それにまつわる詳報も、おそらくは近いうちにお届けできるはずなので、心してそれをお待ちいただきたい。そして同様に、この夜と同じ顔ぶれで展開されることになる久しぶりの全国ツアーも当然ながら必見だといえるし、年をまたぎながら行なわれるひとつひとつのライヴが、きっと清春自身と彼の音楽を愛する者たちに、さらなる幸せをもたらすことになるはずなのである。


増田勇一
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