【D.W.ニコルズ・健太の『だからオリ盤が好き!』】第38回『レインボー・キャピトルの“ブラウン・アルバム” を追って』

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D.W.ニコルズの鈴木健太です。

さて今回は前回の続編です。

The Bandの最高傑作とも言われるセルフタイトルのセカンドアルバム、通称『ブラウン・アルバム』のUSオリジナル盤について、さらに掘り下げていきましょう。


今現在、手元には4枚のブラウン・アルバムがあります。
前回ではこのうちの3枚とすでに手元にはない2枚の、グリーン・キャピトル盤ついて考察しました(第37回参照)。そしてその結果、『The Band』のオリジナル盤のファーストプレスは、レーベル面がグリーン・キャピトルで、メンバー名の印字のあるものだろう、という結論に至りました。

しかし、この4枚の盤が並んだ写真の一番右のレコードを見て下さい。この盤だけレーベル面が全く違っています。これは「レインボー・キャピトル」と呼ばれる、グリーン・キャピトル以前に使われていたCapitolのレコードレーベルで、The Bandの1st『Music From BIg Pink』のオリジナル盤のレコードレーベルと同じです(第10回参照)。そうなのです、なんと「レインボー・キャピトル」のブラウン・アルバムが存在したのです。



ブラウン・アルバムこと『The Band』は1969年リリースの作品。
Capitolのレコードレーベルは、その1969年を境にレインボー・キャピトルからグリーン・キャピトルへ変わりました。今までブラウン・アルバムのオリジナル盤はグリーン・キャピトルだという前提のもとに話を進めて来ましたが、もしやグリーン・キャピトルに変わる前のレインボー・キャピトルの、本当のファーストプレスが存在したのでしょうか?

……というと、そういうことでもないようなのです。

前回、ブラウン・アルバムのオリジナル盤をやっとのことで見つけて手に入れたのはツアー先の高松のレコ屋、と書きましたが、実はそこで検盤・購入したときに店主とこんなやり取りがありました。

けんた「すみません、盤面を見たいんですけど...」
店主「どうぞ、これは良いよ~。」

僕は盤面のグリーン・キャピトルを確認して、興奮気味に

け「わお!ずっと探してたんですよ!これオリジナルですよね?」
店「そうだよ、これがオリジナル。なかなか出ないよねぇ~。でもレインボーもあるはずなんだよなあ~。」
け「えっ!?(レインボーの方が年代が早いので)じゃあレインボーがファーストプレスってことですか?」
店「いやーこれ(グリーン)がオリジナルのはずなんだよ。でも見たことあるんだよね、レインボーのやつ……」

僕はその当時は、店主の勘違いかな、くらいに思ってそのグリーン・キャピトル盤を買い、それ以降すっかりそんな話は忘れていました。

ところが。
それからしばらく経ったあるとき、古い『レコード・コレクターズ』誌のThe Bandの特集を読んでいると、ブラウン・アルバムのレインボー・キャピトル盤についての記載があったのです。

それによれば、レインボー・キャピトルの『The Band』はレコード・クラブ・イシュー仕様盤とのこと。

「レコード・クラブ・イシュー」??
なんだそりゃ……??

ということで、今度はレコード・クラブ・イシューについて調べました。
するとどうやらレコード・クラブとは会員制のレコードの通信販売のようなもののようで、Capitolだけでなく、各レコード会社が当時はそういったものを運営していたようなのです(残念ながら情報が少なく、詳しいことはよくわかりませんでした)。また、そのレコード・クラブで販売されるレコード・クラブ・イシュー(issue)盤は独自の仕様を持っており、独自の品番が与えられていたり、特殊なレコードレーベルが使われていたりしたらしいということがわかりました。

そして『The Band』のレコード・クラブ・イシュー盤には、レインボー・キャピトルが使われていたということなのです。高松のレコード屋の店主の言っていたことは本当でした。グリーン・キャピトルがオリジナル、でもレインボー・キャピトルは存在する……。

レコード・クラブ・イシュー盤はもともと枚数自体がそう多くは出回っていないので、現在の中古市場ではかなりの高値がついていますが、やはりどうしても音が気になります。

ただレアだから高いのか。
それとも音も良いのか。プレスも実は早いのではないか。
……気になる!!!

気になり始めたらもう最後、今度はブラウン・アルバムのクラブ・イシュー盤探しが始まったのです。

前回の冒頭でも書いたとおり、僕がThe Bandのオリジナル盤探しに躍起になっていた頃はThe Bandのオリジナル盤自体になかなか出会うことができませんでした。その感覚でいけばクラブ・イシューに出会えるなんて夢のような話というところでしたが、何故かここ2、3年では割とよく見かけるようになっていたので、そのうち出会えるのでは? という気がしていました。
しかしさすがにクラブ・イシュー盤ともなるとなかなかお目にかかれません。それでも根気よく探しました。とは言っても、レコード屋に行けば必ずThe Bandのコーナーをチェックするという習慣がついているので、ただ出会える時を待つ、という感じでしたが……。

そして2014年の春頃だったか、ついにレコード・クラブ・イシュー盤のブラウン・アルバムに出会ったのです!

やっと出会えたクラブ・イシュー盤は、お店でも特別なレア盤扱いで、なかなかの高値が付けられていました。グリーンキャピトル盤の倍以上のお値段。コンディションもなかなか良さそうだったのですが、悩みに悩んだ挙げ句、見送りました……。

というのも、ちょうどその頃、機材関係で出費が嵩んでいた時期だったのです。その辺の事情がやっぱりコレクターの皆さんには到底及ばない大きな理由でもあるんです。オーディオ装置に関してもそうですが、やっぱりお金をかける順番としては楽器や機材が第一。ずっと探していたレコードに出会ったからと言って、ポーンと買えるとは限りません。いやもちろん悔しかったのですが、何となく、またきっとタイミングはあるという気もしていました。

そしてそれからまた数ヶ月後のこと。またクラブ・イシュー盤に出会えたのです!

しかも今度は前回見送ったものよりも少し安く出ていました。ジャケットに少し焼けが見られるものの、総合的なコンディションとしてはこれもなかなか良し。盤も良し。これはラッキー! まあ前のより安いと言っても高かったのですが、この時は懐具合にも若干余裕があったので、思い切って購入に踏み切りました!
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