新コンセプトのジャズギターや精度を高めた新モデルが多数登場、Gibson USA & Gibson Memphis 2016年モデル発表会レポ

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Gibson Guitar Corporation Japanが、Gibson USA & Memphis 2016 Model発表会を東京八重洲のGibson Brands Showroom TOKYOで開催し、両シリーズの新モデルを披露した。発表会には日頃Gibson製品を愛用しているアーティストも登場し、トークとライブで会場を盛り上げた。

今回登場したのは、Gibsonエレクトリックギターの2つの生産ディビジョンであるGibson USAとGibson Memphisの2016年モデルの数々。「今年はGibsonの最高の年」というGibson USA/MemphisジェネラルマネージャーのDavid Winters氏の言葉に続き、各ディビジョンの開発担当者が、新モデルを紹介した。


▲Gibson USA/MemphisジェネラルマネージャーのDavid Winters氏と、壇上に並べられたGibson USA、Gibson Memphisの2016年モデルの一部。

Gibson USAの2016年モデルは、「High Performanceシリーズ」と「Traditionalシリーズ」の2つのラインが用意される。Gibson USAのマスタールシアーであり、35年のギタービルディングの経験を持つJim DeCola氏が最初に説明したのは「High Performanceシリーズ」。

ファームウェアのアップデートでさらに早く正確になった自動チューニング機能G Force、ストリングロックの改良、より正確なチューニングと豊かなサスティーンが得られるチタン製ZFAN(Zero Fret Ajustable Nut)は丸みを帯びた形になって弾きやすくなったほか、ロックにはネジが追加され一度調整するとレゾナンスもサスティーンもチューニングも狂わないことなどを紹介。また、ハイパフォーマンスフィンガーボードは、ネックの幅が少し広くなりチョーキングやビブラートでも広くフレットが使える。フレットは横が丸く削られ、スムーズな演奏が可能に。フレットの溝が、指板を完全に横断するのではなく、端を残して溝を切るというかなり手間の掛かった加工がしてある。フレットの端が指板から露出していないので、季節や湿気の変化で指板の端のフィーリングが保てるのがメリット。さらにフレットの高さも昨年より低くなったことでイントネーションがより正確になり、チューニングも狂いづらくなったほか、クライオジェニック加工(零下250度で合金の結晶の組成を変える処理)により耐久性が高められている。「High Performanceシリーズ」の全モデルに導入されたファストアクセスネックヒールは、裏側をなめらかに削ることでハイポジションの弾きやすさを向上させている。


▲G Forceはじめ先進的な機能を搭載したHigh Performanceシリーズ。Les Paulはネジを使わずピックガードの着脱が可能(中、右)。

Les Paulシリーズではピックガードがカンタンに取り外せるのが特徴。ネジ穴を使用せず、ギターを傷つけることもないほか、ピックガードの表面にネジがないで新しいモデルだとすぐにわかる。2014年から採用されているスピードノブは通常のノブよりも背が高く、握りの部分に溝が切ってあるので回しやすいのが特徴だ。ブリッジサドルもチタン製で高いサスティーンを誇る。

エレクトロニクスも改善、たとえばスイッチはカチカチ音のしないスムーズなものに、また、Les Paul Standardの4つのプッシュ-プルスイッチのうちブリッジピックアップのスイッチを変更、コイルの内側/外側を切り替えられるようになっている。また、Les Paul Standard、StudioではDIPスイッチではネック、ブリッジピックアップそれぞれについてコイルタップ/スプリットの切り替えなどが可能。さまざまな音のバリエーションを1つのギターでプレイすることができる。また、ハイパス・フィルターにより高音を維持しつつ全体のボリュームを下げる設定も可能。さらにDAW使用時に威力を発揮する過信号サプレッサーも備える。


▲ボディ内部の構造も紹介。ノイズの少ないスイッチやゴールドのジャック、太く強度の高い配線など、さまざまな工夫がなされている。DIPスイッチは裏面カバーからアクセス。

「High Performanceシリーズ」はケースもエレガント。紹介されたのは、外側がアルミニウム、ハンドルはマホガニーで、内部のパディング(詰め物)もしっかりしたケース。ケースの中は湿気の影響を受けにくく、高所から落とす試験も数多くされている。また、「見た目がかっこいいので」ケースを保護する袋も用意する。一部モデルに付属するHigh Performance Gig Bagはコンパクトなケースで、以前のギグバッグよりもギター本体を守ってくれるものに、外側のポケットも充実し、背負いやすいのもポイントとのこと。


▲High PerformanceシリーズのLes Paul Standardなど一部のモデルに付属するアルミ製ハードケース。

「High Performanceシリーズ」と「Traditionalシリーズ」両ラインに共通の特徴としてまず挙げられたのが、フレットのスケールを再度精密に計算、測りなおしたこと。長さ自体は変わらないので弾いた際のフィールは一緒だが、イントネーションがより正確になっている。また、GibsonではすべてのギターにおいてPLEKマシンを用いて検査することで、精度の高いギターとなっていることも紹介。加えてGibson USAでは新しいセットアップゲージを導入したことで弦-指板間をより精密に計測されている。厚みを増したローズウッド指板にはプレミアムオイル処理がなされ、背面には帯電防止仕様のバックプレート(ポリカーボネート製)を採用、ストラップボタンは昨年同様大きなもので、クラシックな見た目を保ったまま、安心感のある仕様となっている。


▲演奏を交えつつ、Gibsonギターについて語ったTHE BAWDIESのJIMさん。Gibson USAから2016年のLes Paul Traditional High Performanceモデルが贈呈され、「夢みたいです」と一言。

ここでゲストとしてTHE BAWDIESのJIMさんが登場、「ギターをはじめたきっかけはジミー・ページ、その時から憧れはGibsonのStandard」「とにかくLes Paul、この形が大好き」と、Gibsonギター愛を語った。愛用中のLes Paul Traditional 2015については「弾き手の癖をちゃんと吸収してってくれるというか、お前はここで鳴ってほしいんでしょ?みたいな顔をして音を出してくれる」、今回試奏した2016年モデルについては「Gibsonの音で好きなところはねばねばしたところ。ねばっこくて、言葉は悪いんだけど陰湿っていうか、こいつスカッとしないやつだな、っていうところ」「ルックス最高ですよね、チェリー・サンバースト」「ジミー・ページが入り口で、ほんとに大好きなものだから、コスプレしてる気分になっちゃう。憧れが強すぎて。持っちゃいけないんじゃないかな、っていうのがあって持たなかったんですよ。並んでるの見たらすごく素敵だった」。Les PaulのHigh Performanceモデルについては「弾きやすいですけど、弾きにくいですよ、Les Paulなんで。でもそこがGibsonの大好きなところ」「すごく武骨、というかモノとして作りこんでてすばらしいんだけど、足りない部分とか絶対必要で。このLes Paulってハイフレット、みんなが弾きにくいよ!っていう感じで弾くところが愛情があると思いませんか?」と愛用者ならではのコメント。

■ジャズギタリスト向け新コンセプトモデルも登場したGibson Memphis

続いてGibson Memphisのプロダクツをプレゼンテーションしたのは、35年以上のGibsonの経験、40年以上のギターでの経験があるというMike Voltz氏。「これは完全に新しいモデル」と紹介したのが、ES-275 Figured Montreux Burst。「日本には才能のある、そして若いジャズギタリストの方がたくさんいる、そしてその人たちのニーズに応えるようなギターを作りたい」ということで作られたモデル、Les Paulに近い演奏感を持たせたジャズギター。Gibsonらしさ、Gibsonのトラディショナルな印象はなるべく変えずに、演奏性を高めるようモディファイされている。


▲ジャズギタリストのために作られた新モデルES-275。左はES-275 Figured Montreux Burst。右のバリエーションモデルはプレーントップのチェリー。ロールドバインディングネックでオールドギター同様、手にフィット。

CoreシリーズのハイエンドラインPremiereシリーズで採用されたのが「サーマルエンジニアリング」という技術。数年間に渡り研究を重ねたこの技術は、木材を乾燥し専用の炉で減圧することで細胞レベルで木材を変化させることで、何十年も経ったようなエイジングを施すもの。現在、センターブロックとブレイシングに施されており、「聞くとびっくりするほどすばらしい音」と説明された。現在は2モデルのみだが、今後の結果次第で採用モデルは増えそうとのこと。


▲写真左で、Mike Voltz氏が持っているのがサーマルエンジニアリングを施した木材。右の処理をしていない木材とは色が変わっているのがわかる。写真右はHistoricシリーズから再リリースされたES-355。

Historicシリーズからは1958年、最初期のES-355が再リリース。当時のモデル同様にネックのバインディングはなし。ブレーシングはアディロンダックスプルース、ブレーシング、ネックの接着には膠を使用。1958年と同じスペックで非常に弾きやすいのがポイント。また、Coreシリーズはいくつか仕様変更がなされた。ネックはやや厚みを増し弾き心地を高めたものに(1959ベース、その中でも細身のプロファイルを採用)、Studioモデル以上はチタンサドルを採用している。


数多くのモデルが紹介された後、ゲストとしてJiLL-Decoy associationのギタリストkubotaさんが登場。2016年モデルを試奏して、多くの気に入ったモデルがあったという中からまず挙げたのが、ボディの薄さと形とフルアコだということに惹かれたというES-275F。フルアコはハイポジションが弾きづらいと苦手意識があったが、「これは弾きやすい」「自分のプレイスタイル的にありがたい、音もセミアコっぽい鳴り方もしながら、ちゃんと箱の感じもディープに出てくるのがすばらしい」とコメント。「どう見てもLes Paul、まさかこれの中が空いてるとは誰も思わない」というES-Les Paul Standardでジャジー&メロウなサウンドからタイトなカッティング、歪みまで多彩なサウンドを聴かせた。


続いて登場したジャズギタリストの小沼ようすけさんは、写真を部屋に貼るほど憧れていた335をGibson Jazz Guitar Contestの賞品として手に入れるも、自分が求めている音が出せずショックを受けたというエピソードを紹介。その1年後、ある日突然自分の気持ちいい音が出せた後は335一筋で9枚のアルバムを制作したという。そしてここ2年は335から離れていた小沼さんが、2016年モデルを今回試奏、1本目に手にしたギターが「僕が335から自分の新しい表現をするために、ここをこうしてくれたらいいなっていう理想がつまっていた」、「一目惚れ」と紹介したのが、ES-275。「ネックの太さ、フルアコ構造になっているところ、レスポンス、使っている335と同じローズウッドの材質とネックのフォルム、でも出音はアコースティックで、フィンガーのタッチを繊細に表現してくれるギター」と絶賛。その後の演奏披露では、こうした言葉を納得させる表情豊かな音色で会場を魅力した。


▲ラストにはkubotaさん、小沼さんによるジャムセッションが。スリリングな展開に演奏終了後には大きな拍手が。


▲熱いセッションを披露したkubotaさん、小沼さんにはGibson Memphisからギターが贈呈された(右)。



▲今回発表された2016年モデルは、東京・八重洲のショールーム、Gibson Brands Showroom TOKYOで試奏が可能。

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