【インタビュー】THE MACKSHOW、「線抜けたら差しゃあいいじゃん、みたいな。それがライヴだろう」

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── ジョニー大倉さんへの想いを感じることができる「カワサキ・レイニーデイ」や、大瀧詠一さん的な作風の「今夜はShowdown」といった、アメリカのロックやポップスを日本の音楽として表現してきた先人へのリスペクトも感じられます。

コージー:もちろん、それはありますよ。やっぱり、「なんでアメリカみたいなアルバムができないんだ」って自分で作りだしたのは大瀧さんが最初だと思うし。僕は大瀧さんの作品は全部持ってるしね。

── コージーさんも参加したシュガー・スペクターさんの『A TRIBUTE TO ELVIS』は大瀧さんへの追悼という気持ちもあったということですし、そこにコージーさんが参加しているのも必然だったんですね。

コージー:大瀧さんは福生で古い機材を買ってやってたんだもんね。やっぱり良い音しているんだよね。その音とメロディと醸し出す雰囲気というのが切り離せないものなんだ、というのは日本では一番出てるよね。大瀧さんとか(山下)達郎さんとかね。

── 『THE ROOTS 2』で海外アーティストからの影響を打ち出したのと同じ年に、今作のような日本のアーティストからの影響を感じられるアルバムが出たのは面白いなと思います。

コージー:ジョニーさんには本当に影響を受けてるよ。だって他にないもんね。ジョニーさんのソロ作品はすごく完成度が高いんだけど、あまり評価されてないんだよね。それと僕がTHE MODSが好きなのは、キャロルとかそういうバンドみたいな良さがあるんだよね。もちろん歌ってる内容は違うよ? でも洋楽とも邦楽ともつかない“日本のロック”。ポップスとはまた違うんだよね。海外のコピーとも違って、すごく日本人らしい感じが出てるところが。そういう音楽に影響を受けていて、それが今出てる結果だと思うんだよね。僕は20代そこそこからプロでやっているんだけど、なかなかそれを表現できなかったという思いと、今ようやくという気持ちがありますね。何十年かかったんだという。

── ここにきてようやく、という気持ちがあるんですか?

コージー:ありますね。マックショウでも最初から全部できていたわけじゃなくて。スタートから10年くらいは、面白おかしく雰囲気のある曲を作って楽しませたいとか自分たちが楽しみたいということがまずあったんだけど、やっぱりこうやって出し続けてそれなりのステップアップしてこれて、この年齢になってまた出せるものというのは、ちょっとは良かったのかなと思いますけどね。「さすがにもうマックショウの曲作れなくない?」みたいな(笑)。普通こういうバンドで、アルバムって出せても3枚じゃない?

── それを出し続けるために、毎回リズムに合う日本語を見つけるひらめきがあるのがすごいなと思うんですよね。

コージー:そうなんですよね、それがないとできないよね。

── 「380」に出てくる“Stay with me相棒”のような、英語と日本語をチャンポンした歌詞というのは、コージーさんがジョニーさんから受け継いでいるものですよね。

コージー:うん、ジョニーさん本人は「キャロルとビートルズを混ぜて上手く作ってるね」って言ってたけどね。「ジョニーの良いところ全部取っちゃってるからな」とか言ってたよ(笑)。でも毎回これ作るの? っていうのはありますけどね。「もういいんじゃない、パパッとやっちゃえば」とも思うんだけど、そういうわけにはいかないんだよね。

── 僕はジョニーさんの追悼ベスト・アルバム『JOHNNY FOREVER -THE BEST 1975~1977-』でライナーノーツを書かせて頂いているんですけど、初期のソロ・アルバム3枚には特に良い曲が多いですよね。

コージー:良く聴いたね~、大好きだもん。特にその3枚あたりは。楽曲とかアルバムの出来は本当に良いからね。ライヴもすごく良かったって当時観た人が言っていたし。野音も武道館もやってたしね。

── ジョニーさんは日本のロックに大きな功績を残した方だと思うんですが、今やそれを知らない人も多いので、コージーさんが作る曲にそうした影響を強く感じることができるのはうれしいですし、今後も伝えて行ってほしいところです。

コージー:そうだね。ジョニーさんはビートルズからの影響に関しても、ソロの方がキャロルのときよりもRECで色々試してるものはありますからね。それをあの人は言わなかったというか、言う術もなかったんだろうけど。音楽家として雑誌とかでインタビューを受けたり評価されていないから。でもけっこう凝ったことやってるよ、よく聴いたら。

── 大瀧さんやはっぴいえんどが語られることは多いですけど、ジョニーさんはあまり語られてこなかったですよね。

コージー:キャロルに関しても誰も語らなかったからね。でもミッキー(・カーチス。キャロルのプロデューサー)さんに話を訊くと、RECもすごくこだわって時間をかけてやってたっていうし。当時ならではの音だけど、時代の音とかメロディもあるし、あの声と言葉の乗せ方であの人は特徴があると思う。THE MODSに関してもそうだね。その時代の感性を持っているから。やっぱりキャロルとTHE MODSは本当に好きだったね。ジョニーさんもそうだと思うけど、良いロックを作った人たちというのは、亡くなる前に評価されてほしいよね。えてして亡くなってから評価されるものだし、ジョニーさんがこの先評価されるかわからないし。誰かがスポットライトを当てないと、なかなかね。ビートルズなんかは限られた期間しかやっていないし限られた曲しかないから、名門の教科書みたいになっていて、それを紐解けばだいたい出尽くしてるみたいなことがあるからね。でも日本のロックも語られるべきだよね、いつかは。まだそのチャンスを得ていないんじゃないかな。キャロルとかジョニーさんとかは。
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