【インタビュー】アモラル「俺達はいつも自分達に挑戦し続けている」

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2008年にソロ・シンガーとしても知られるアリ・コイヴネンが参加して以降、プログレッシヴ・メロディック・メタル・バンドへと進化を遂げているフィンランドのアモラルが、7thアルバム『イン・シークエンス』を1月29日に発売する。本作から初期のデス・メタル時代のシンガーだったニコ・カリオヤルヴィがギター兼ヴォーカルとして電撃復帰し、音楽的にも幅を広げたこのバンドだが、どういう経緯でニコの復帰したのか、そして、新作はどういった内容なのか、ベン・ヴァロン(G)が語ってくれた。

◆アモラル画像

──前シンガーのニコ・カリオヤルヴィがギター兼ヴォーカルで復帰したが、どういう経緯で彼は戻ってきたのですか?

ベン・ヴァロン:彼が辞めたのは8年前だけど、その後も彼との関係はとても良好なままだったんだ。彼はギターを弾くことと、学校でギターの勉強をすることに集中したかったからバンドから離れたんだけど、その後も彼はヘルシンキでの俺達のショウに何回か参加していたんだよ。それで、<Tuska Open Air Festival 2014>で、その時に俺達は再びヴァイブが戻ったことを実感したんだ。それでニコが戻ってきたら、どうだろう…と俺は考えるようになった。世界一のグロウラーの1人であるニコの声と、世界一のクリーン・ヴォーカリストの1人であるアリが同じバンドにいるだけじゃなく、ギタリストも1人増えれば、クレイジーなパートをやることもできる…。そこで俺は、まずバンドの他の奴らに相談したんだ。すると彼らも全員、凄く良いアイディアだと賛成してくれた。それからニコに話をして意見を訊いたところ、彼は前向きに考えてくれて、復帰してくれることになったんだ。

──今作にはストーリーやコンセプトのようなものはあるのですか?

ベン・ヴァロン:ストーリーは、父親の友人から聞いた話がもとになっている。その人がアルコール中毒患者か精神病か何かのための施設で働いている時、病室から心地よいギターの音色が聴こえてきて、彼は毎日それを聴きながら仕事をしていたらしいんだ。でも、ギターの音が聞こえなくなったと思ったら、その患者は自殺してしまったということだった。彼は直接会ったことはなかったけど、若いギター・プレイヤーだったらしい。その話は俺の頭から2年くらいは忘れることができなかったよ。本当に才能のある若者が、アルコール中毒か、あるいは頭の中で何かが起こって、そういう施設に入っていて、最終的には自殺をしてしまう…。そのことを、俺は何度も考えてしまったんだ。そして、ついに思った。誰かも知らない、どんな人かも知らなかった人物のことを、俺は2年も考え続けている。もしかしたら、新しいアルバムで描くストーリーの主人公に相応しいんじゃないかとね。それで、そういうことをせざるを得なくなる理由には、どんなものがあるだろうと考え始めた。何が彼に自分の命を終わらせる決意をさせたのか。彼の親は彼の居場所を知っていたんだろうかといったことも考えるようになった。例えば曲の1つは、彼の父親の視点で書かれているんだ。それが今回のストーリーが始まったきっかけだったんだよ。実話があって、そこからストーリーを膨らませていって、色々なことを考えていったんだ。俺にとっては実に興味深いことだったよ。自殺を選んだ人は大勢いるし、それには理由があったはずなんだ。このアルバムは、俺が、そういうことに至る理由を考えてみようとしている作品だよ。

──アルバムを聴くとニコが歌っているパートはそれほど多くはないですね。


ベン・ヴァロン:ニコは素晴らしいスクリーミング・ヴォイスの持ち主だけど、俺達はメロディックなヴォーカルがメインのバンドのままでいたいんだ。でも、スクリーミング・ヴォーカルが必要な時には、俺達には世界一のスクリーミング・ヴォイスの持ち主がいるんだ。凄いことだよ。でも、将来もスクリーミングが増えることはないと思う。ヴォーカル・メロディを書くことを楽しんでいるし、メロディックなバンドでいることに満足しているからね。

──アリが入って4作目ということですが、アリのどういった部分に成長を感じますか?

ベン・ヴァロン:アルバムを作る度に、彼はどんどん上手くなっているよ。それにアリが入ってから、俺達の曲作りも変わってきていると思う。俺はアリの少し低めの声域が大好きなんだ。最初の1枚目(『ショウ・ユア・カラーズ』/2009年)では、多分2枚目(『ベニース』2011年)もかな、彼はかなり高い声で歌っていた。曲も高めの声に合わせて書かれていたよ。でも、今は7弦をBにチューニング・ダウンしていて、ゴーストのような、そんな声がこのアルバムでは沢山聴かれるようになっているんだ。俺はそれがとても気に入っているよ。それがこの音楽にもぴったり合っている。

──本作を製作したことで、バンドの音楽性にさらなる可能性が広がったと思いますが、どう感じていますか?

ベン・ヴァロン:新たな可能性を持つことは、どんなバンドにとっても凄く大事なことだと思うし、俺はアルバムを作る度に新しいことをやりたいと思っている。何か違うことを試したい。そして今の俺達は、そういうことがもっと沢山やれるようになった。才能のある人間がまた1人増えたからね。次に何が起こるかなんて、誰にも分からないよ。アモラルのアルバムは、どれも凄く違っている。俺達はいつも自分達に挑戦し続けて、新しいことをやっていきたいんだ。自分達が飽きないためだよ。利己的ではあるけど、俺達はこのアルバムを自分達のために作っているんだ。楽しんでくれる人達が他にもいてくれたら嬉しいと思いながらね。

──日本盤のボーナス・トラックの1つは、オフスプリングの「オール・アイ・ウォント」のカヴァーですが、この曲を選んだ理由は?

ベン・ヴァロン:偶然だったんだ。やる予定もなかったんだけど、ドラマーのユハナ(カールソン)と一緒にスタジオでドラムのレコーディングをしていた時、彼は凄く仕事が早いので、予定より半日ぐらい早くレコーディングが終わってしまったんだよ。だから、ほぼ1日、何をやるでもなく、スタジオにいることになった。スタジオ代は払ってしまっているし、何かレコーディングしよう、何かクールなものをプレイしよう、ということになった時、俺達全員、オフスプリングの「オール・アイ・ウォント」が昔から好きだったということに気づいたんだよ。史上最高のパンク・ソングの1つだからね。俺達もライヴで何年か前に一度プレイしたことがあったんだ。それでインターネットで一度聴いて確認して、「憶えている、大丈夫だ」ということになって、そのままレコーディングしたんだ。

──今後の予定を教えてください。

ベン・ヴァロン:2月から2ヵ月間フィンランドでショウをやる。少なくとも、2016年の間にヨーロッパ・ツアーはやるつもりだけど、まだ具体的には決まっていないんだ。できればアジアやアメリカにも行きたいね。

取材・文:Jun Kawai



【メンバー】
アリ・コイヴネン (ヴォーカル)
ニコ・カリオヤルヴィ(ヴォーカル/ギター)
ベン・ヴァロン(ギター)
マシ・フカリ(ギター)
ペッカ・ヨハンソン (ベース)
ユハナ・カールソン(ドラムス)

『イン・シークエンス』アモラル


2016年1月29日発売
【通販限定 CD+直輸入オフィシャルTシャツ】5,000円+税
【通常盤CD】2,500円+税
1.イン・シークエンス(プロローグ)
2.ルード・アウェイケニング
3.ザ・ビトレイアル
4.サウンズ・オブ・ホーム
5.ザ・ネクスト・ワン・トゥ・ゴー
6.ヘルピング・ハンズ
7.ディフューズ・ザ・パスト
8.フロム・ザ・ビギニング(ザ・ノート・パート2)
9.オール・アイ・ウォント(オフスプリング カヴァー)*日本盤限定ボーナストラック
10.ザ・ネクスト・ワン・トゥ・ゴー(エディット)*日本盤限定ボーナストラック

◆アモラル『イン・シークエンス』オフィシャルページ
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