【インタビュー】熊木杏里「これまで心の中でウニョウニョしたものがちゃんとまとまりました」

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映画、ドラマ、CMなど、30曲以上のタイアップ実績を持つ熊木杏里が、レコード会社移籍第一弾となる9枚目のフルアルバム『飾りのない明日』を3月16日にリリース。「今日と明日は違うから、毎日を大事にしよう」という思いがこもったタイトルが象徴するように、聴き終わった後には、自分にとって本当に大切なものはなんなのかを考えさせられる深淵なる作品だ。アルバムに込めた彼女の思いを聞いた。

◆熊木杏里~画像&映像~

■今日と明日は違うということをハッキリ思って生きていかないと
■楽しくないしイキイキしていけないと思うんです


――『飾りのない明日』でフルアルバムも9枚目になりますね。『飾りのない明日』というタイトルと「飾りのない明日」という曲はどちらが先だったんですか?

熊木杏里(以下、熊木):タイトルが先ですね。考え事をしていた時に、「飾りのない明日」という曲だけ半分出来て、「この曲は“飾りのない明日”だな」ってタイトルが浮かんだんです。だいぶ曲が出揃った時に、これが全部の曲たちのタイトルになるのかなぁって。でも、「飾りのない明日」という曲自体は半分しかなくて(笑)。

――そうなんですね。「望むことがある以上 この席を空ける訳にはいかないんだ」っていう一節に、毎日毎日を何があっても生きていかなければいけないんだっていう決心のようなものを感じて共感しました。

熊木:このフレーズはすごく気に入っています。柔らかな気持ちで、何があっても続けていこうっていう切なる思いが芽生えて。ちょっと痛みを伴ったとしても、今日と明日は違うということをハッキリ思って生きていかないと楽しくないし、イキイキしていけないと思うんです。悪いことに手を染めてしまう人が続出するのも、そう思えていないからなんじゃないかな。


▲『飾りのない明日』【初回限定盤 TYPE-A】


▲『飾りのない明日』【初回限定盤 TYPE-B】


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――同感です。「飾りのない明日」って、真っ白だからこそ、いろいろ思い描けるっていうことですものね。

熊木:そうそう。「ない」って言うと、何もない真っ暗闇な明日ってネガティヴに感じてしまう人もいるかもしれないんですけど。でも、飾りがないからこそ、自分で飾りがつけられるっていうことなんですよ。そういう前向きな言葉なんです。

――前向きなメッセージなんですけど、「飾りのない明日」の前の曲「ライナーノーツ」で「希望が持てなくても 生きてはいけるんだと 今なら励まさないで 伝えてゆけるのです」と歌っているからプレッシャーにならず、素直に「頑張ろう」と思えるんですよね。

熊木:確かに。実は意図してなかったんですけど、この曲順で良かった。「ライナーノーツ」は励ますというよりは、私よりも若い人たちに、「私も今まで生きてこれたから大丈夫だよ」っていう理由を言ってあげたかったんです。夢とか挫折とか、言葉にしてしまうと大きなものに思えてしまうけど、「挫折した!」って思わなければ、たいしたことないかもしれないって思うんです。今って、「夢」という言葉に縛られすぎて、「夢ってなんだろう?」って悩む若い人がたくさんいますよね。だったら、私は今はこういう風に言ってあげられるなって思って。

――夢がなくても、希望がなくても、あきらめずに毎日を生きていくという、力強い流れが「ライナーノーツ」と「飾りのない明日」で出来ていますね。「ハルイロ」「くちびるの魔法」とラブソングで始まって、楽曲を聴いているとどんどん深くなっていくんです。生活の中からにじみ出ててきた思いが各曲に散りばめられて、「灯び」では、昨年末のパリのテロも思い出されたりしました。

熊木:私の意図していないところでそう感じていただけたのはすごく嬉しい。この曲では、いろんな風に「命」を感じてもらえたらいいですね。以前、パリのノートルダム大聖堂に行った時に、祈りに来ている人がたくさんいて、祈っていた人の数だけろうそくが灯されていて、それがフッと思い出されたんです。最近、子供の虐待のニュースなんかも多いですけど、この曲には、自分が産んだ子を自分の手で殺めて欲しくないという思いを込めているんです。

――この曲はサウンド的にもすごくシンプルですよね。リヴァーブもかかっていて教会で歌っているような。

熊木:はい。祈っているようなあえて深い感じですよね。ろうそくが命の灯火のように暗闇にポッと浮かんでいて、それを見て温かい気持ちになってもらえるような雰囲気にしたくて。これだけはプロデューサーの扇谷(研人)さんのピアノと私の二人だけで、「せーの」で録ったんです。心の揺れも閉じ込めるという感じでしたね。

◆インタビュー(2)へ
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