【インタビュー】flumpool、3年半ぶりアルバムに「あとは捨ててでも大切にしたいもの」

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■“自分たちの曲”という意識も強くなりますよね
■懐の深いバンドにいつの間にかなってたんだなと

──アルバムの冒頭で、“過剰な平等”を否定し、“野性を取り戻す”ことを宣誓している形になっていますね。

隆太:そこが今、バンドとして一番言いたいことなんですよ。目の前、手の届く範囲だけしか守らないぞ、あとはもう捨ててでも、大切にしたいものを大切にするという“線引き”ですよね。人と人とを差別するというのは世間一般では絶対ダメなことだと思うんですけど、誰しも自分の中で、“家族や友だちが大事だ”という、他との区別があるのは当たり前じゃないですか? SNSでの表面的な繋がりなんていらない、というかね。目の前にいる、自分たちの音楽を好きでいてくれる人たちを徹底的に大事にしたい。そういうことを歌いたいんです。

──3曲目の「World beats」の歌詞でも、浅い交わりに疑問を呈していますね。

隆太:浅いなら水たまりぐらい狭くていいのに、今ではまるで“遠浅の海”が広がっているようで、それが僕にはすごく気持ち悪く感られるんです。人付き合いなら、狭く深くすればいいのにって。アルバムタイトルは『EGG』(卵)ですけど、自分の内側にある本音と、殻を隔てた外側にあるものとを分けたい、というイメージがあって。そこをしっかりと線引きして、選び取っていくことが大事ですよね。

──元気さんはアルバム制作にあたって、何か意識の変化はありましたか?

元気:コンセプトディスク『FOUR ROOMS』(2015年)を出した時に、“これがルーツだ”という部分を示せたのが、個人的にはけっこう大きな意味があったな、と。あそこでちゃんと自分も“署名”した感じがあったんです。それ以降、自分を出すことができるようになってきたし、メンバーの尊敬できるところが増えてきたのもありますし。大袈裟なことではなくて、会社員が30歳ぐらいになって、ようやくいろいろ任され始めて楽しい、みたいなテンションです(笑)。

──なるほど(笑)。元気さん作詞作曲の9曲目「産声」は朗らかなホーンセクションが気持ちよく、シンガロングする突き抜けたサビも爽快です。「ベガ ~過去と未来の北極星~」(2012年/作曲)以来となる自作曲の収録となりましたね。

元気:シングル「夜は眠れるかい?」(2016年2月)の時に曲を作りたいモードで、バンド内コンペに4曲出したんですけど、そのモードが残ってた……のかな?(笑)。ずっと「作れ、作れ」とはメンバーからは言われていたんですよ。「ベガ~」はflumpoolっぽさに寄せて作った部分が強いんですけど、今回は完全に自分の趣味で、一生に協力してもらいながら作りました。僕は、人に自分の作品を預けるのが好きじゃないので、一生のスタジオでいろんなことを形にできるようになっていたのはやっぱり、大きかったと思います。

──一生さんは最初に元気さんが持ってこられた曲を聴いて、どんな印象でしたか?

一生:はじめは“どうしたいのか?”が見えてなかったので、“……なるほどね”という感じでしたね。

元気:でも、はじめから「いい」とは言うんです。もめごと避けたいから、嘘つくんですよ(笑)。

一生:いや、嘘はついてない(笑)。いいとは思ってた。話しながら一緒にやっていくうちに、サビは皆で歌ってる感じにしたい、とかが分かってきて。そうなるといよいよやりたいことが見えてきて。いい曲ですよ。

──ある意味、一生さんがプロデューサー的に関わったところもあるんですか?

一生:いや、全然。彼はやりたいようにやってたので(笑)。

元気:でも、“♪タッタカタ”とか、「入れたほうがいいんじゃない?」とか、言ってくれましたよ。

一生:ああ、あのスネアロールみたいなね。

──こうしてお話を伺っていると、これまで以上に密に、メンバー同士でアレンジを詰めていくことができたアルバムだったんですね。

一生:そうですね。メンバー皆でこだわり合えたし、だからこそ、これまでで一番いい作品になったと思います。

元気:納得のいくところまでバンド内でちゃんと形にして、それからサウンドプロデューサーさんにアドバイスをもらう、という形だったのはよかったです。今までとはサウンドプロデューサーさんが関わる“割合”が違うし、ここからは一緒に揉むという“段階”もより明確になった状態で作ることができたので、“こちら主導”でしたよ。それは「産声」だけじゃなく、他の曲に関してもそうだったので、自ずと“自分たちの曲”という意識も強くなりますよね。だから、すごく楽しい曲作りができて。さらにはそれを“flumpoolのアルバムに入れてもいいよ”となったので、よかったな、と。“この曲、浮くかな?”と思ってたんですけど……。

──なじんでいると思います。

元気:まあ、なじんではない、と思うんですけど(笑)。懐の深いバンドにいつの間にかなってたんだな、と。友だちにちょうど赤ちゃんができたので、「産声」というタイトルで生命力のある曲にしたくて。そこで亀田さんが、歪んだパットの音を加えてくれたのがすごく良かった。初めてこういう(作曲者としての)立場で関わったので、“さすがだな、すごいな”と思いましたね。ドラムパターンは僕、適当に入れていたので、“亀田さんが辻褄合わせて、ちゃんとしたドラムに変えてくれる”とばかり思っていたら……。

一生:ほぼ全部、そのままいきましたね(笑)。

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