ハイレゾの音の良さにびっくり! TSUKEMENが体験するICレコーダーの最新アイテム<ソニー ハイレゾICレコーダー「ICD-SX2000」>

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■ICD-SX2000特集、機能編
■ハイレゾプレーヤーとしても使えるオールラウンダーなICレコーダー



録音した音が、目の前で演奏されていた時と同じように聞こえる。それがソニーのICレコーダー「ICD-SX2000」の魅力だ。今回、TSUKEMENのKENTA、TAIRIKU、2人のヴァイオリンをスタジオで収録、後日あらためてリプレイして持ったのはそんな感想だった。「ICD-SX2000」は、会議録や講演の収録などに使われる「ICレコーダー」という商品ジャンルに属するが、シリーズの中でも高級機に当たるモデル。アコースティック楽器をはじめとした音楽の録音にもバッチリ対応できる実力を持っている。

■録音・再生ともにハイレゾ対応

「ICD-SX2000」は手のひらに載るコンパクトサイズながら、96kHz/24bitのハイレゾ録音(非圧縮のリニアPCM)が可能。再生は192kHz/24bit(リニアPCMおよび可逆圧縮のFLAC)に対応する。本体には16GBのメモリーを内蔵。96kHz/24bitの最高音質でも6時間35分、CD音質なら21時間35分、MP3 192kbpsなら159時間の録音が可能。microSDHC/microSDXCカードを使用してより長時間の録音も行える。

CDや本機で使われるPCM方式の記録は、アナログ信号の連続的ななめらかな曲線を、細かい方眼紙のマス目に割り当てて記録するようなもの。録音時の96kHz/24bitというスペックは、音楽CDの44.1kHz/16bitと比べると、マス目の細かさは時間軸方向で約2倍、音量を表す縦方向で256倍の細かさとなる。マス目が細かければ細かいほど、原音の再現性も高くなる。データ量では約3.2倍だが、マス目の細かさは横×縦で約557倍となる。もちろん、両者を比較して「音が3倍いい」とか「557倍よくなった」と感じられるものではないが、音の良さは誰もが実感できるはず。インタビューパートでTSUKEMENの3人が語っているとおりだ。


▲おもな操作ボタンが正面に配置されるため使いやすいのが特徴。左側面は外部マイクとmicroSDカードスロット、右側面は電源・ホールドスイッチと音量ボタン、USBコネクタを出すスライド式のつまみを配置。裏面にはカメラ用三脚に固定するためのネジ穴がある。正面の上に並ぶ3つのボタンの左右はメニュー操作と設定項目選択のためのボタン。真ん中が録音データにマーカーを付けるトラックマークボタン。ヘッドホン端子は手前(写真の下)にある。

■可動式マイクでさまざまな録音シーンに対応


▲角度が変えられる2つのマイクは剛性の高いバンパーでしっかり守られている(左)。写真右は上から見た様子。上がワイドステレオポジション、下がX-Yポジション。

2つのマイクを内蔵し、シチュエーションに合わせてその角度を変えられるのも「ICD-SX2000」の大きな特徴だ。

マイクは平行・外側・内側にセッティング可能。講演会の話者を狙うなら平行にしたズームポジションで、複数人の発言を残したい会議や大編成のオーケストラのステージは外側90度に開いたワイドステレオポジションで、そして自宅やスタジオでの楽器演奏は内側90度に向けたX-Yポジションを使ってセンターの音も漏らさず収録、といった具合。また、野鳥の声を録りたいフィールドレコーディングでは、木の枝に止まっている鳥をピンポイントで狙うならズームポジション、より広い範囲の鳥の声に木や風の音も録りたいならワイドステレオポジションと、いろいろ使い分けができる。普段から録音を楽しんでいる人なら、いろんなマイクセッティングを試したくなることうけあいだ。


▲3つのマイクポジション。ソニーのサイトの製品ページで紹介されている使用例。

可動式マイクの搭載は、本体サイズの大きいリニアPCMレコーダー製品では珍しくないが、このサイズのレコーダーではほかに例を知らない。これだけでも大きなアドバンテージになるはず。マイクの角度を変えるのには力はさほど要らず、マイクの周りのバンパーには金属が内蔵されているため持ち運び時の不安もない。そして、見た目のスマートさも大きなポイントだ。

録音時の設定では、人の声以外の周波数を低減することでインタビューなどに効果的な「ノイズカットフィルター」、エアコンやプロジェクターのファンノイズなどを低減する「ローカットフィルター」、マイク感度を自動で設定する「おまかせボイス」など、会話や講義録音向けの機能も多数用意する。

ぜひ使いこなしたいのが、録音モードやマイク感度などの項目を一括でオススメの設定に切り替えられる「シーンセレクト」。「おまかせボイス」「会議」「講演」「ボイスメモ」「インタビュー」「歌・音楽」「バンド(大音量)」に加え、ユーザーが設定を記録できる「Myシーン1」、「Myシーン2」をプリセット。まずはシチュエーションに合ったシーンを選んでおいて、録音モードのみMP3から96kHz/24bitに変えるといった、一部項目だけを変更する使い方も可能。気に入った設定の組み合わせをMyシーンに登録すれば、いつでもその設定を一発で再現、すぐに録音を開始することができる。

■スマホをリモコンに、タッチノイズも回避

楽器録音に使いたいという人にオススメなのが、スマホをリモコン代わりに使うワイヤレス操作だ。専用アプリを使って、iPhoneやAndroidから録音・停止の操作や各種設定の変更が行える。通信に使われているのはBluetooth。初回利用時はペアリング操作が必要だが、NFC対応のAndroidならスマホをかざすだけでペアリングが完了。2回め以降はスマホのBluetoothをONにしてアプリを起動するだけだ。

楽器録音ではマイクの方向が重要になるので、三脚を使うのがベスト(うれしいことに本機底面には三脚穴もある!)。とはいえ三脚に固定すると操作のたびに液晶が正面に見える位置、すなわち演奏ポジションの反対側に移動しなければならない。移動自体も面倒だが、足をひっかけて三脚を倒す危険性もある。しかし、離れたところから操作できるリモコンがあれば、こうした心配は無用だ。さらに、本体に触ったりボタンを押した時の音が収録されるのを回避できるのもポイント。録音中のレベルメーターの確認やレベル調整も可能なので、マニュアル録音中でも操作に躊躇することはない。バンド録音では特に重宝すること間違いなし。ドラマーが座ったままでレコーダーをオペレートなんてことも無理なくこなせる。

ワイヤレス操作で気になるのが電池の持続時間。通常使用ではLPCM 96kHz/24bitで約15時間だが、ワイヤレス操作時は約8時間に。LPCM 44.1kHz/16kHzやMP3(320k/192k/128k/48kbps)なら約30時間が約15時間といった具合で、持続時間は半分になってしまうが、もともとのスタミナがあるので、多くのユーザーは問題なく使えるだろう。


▲専用アプリ「REC Remote」はiOS版とAndroid版を用意(いずれも無償ダウンロード)。各種設定項目の現在の状態が一画面に収まるのもアプリのアドバンテージだ。画面はiOS版だが、Android版も画面構成は同じ。

内蔵リチウム電池だけではどうしても足りないという場合は、市販のUSB接続のモバイルバッテリーの併用がオススメ。録音の最中に電池がなくなりそうと思った時点で接続しても、録音が止まることはない。もちろん、電源が確保できるところならUSB接続のACアダプターも利用可能だ。



ハイレゾ対応のポータブル音楽プレーヤーとして使えるのも注目すべき点だ。これは単に192kHz/24bitまでのWAV、FLACの再生が可能というだけではない。

まず、再生専用機並みに音がいい。その実力はインタビューパートで触れたとおり。音源を忠実に再現するために、ウォークマンにも搭載されるソニー独自の高音質技術であるフルデジタルアンプ「S-Master HX」をレコーダーでは初搭載、デジタル信号をデジタルのまま増幅することで音質劣化を最小限に抑え原音を忠実に再現するという。こうしたスペックを知らずとも、一聴すればその実力はすぐ実感できるはず。もちろん、moraなどの音楽配信サイトから購入したハイレゾ音源(WAV/FLAC)も存分に楽しめる。

使い勝手も重要だ。本機で録音したファイルは「REC_FILE」というフォルダに記録され、録音日や録音シーン、フォルダで管理可能(フォルダは録音時に設定でき、新規作成も可能)。一方、リスニング用の音楽ファイルは、PCを使って「MUSIC」フォルダにコピーすればよい。ホームメニューから「ミュージック」を選べば、アーティスト名、アルバム名、フォルダで曲を探すことができる。楽曲の再生中の操作で次の曲を探すということも可能だし、いったん電源オフ、再度電源を入れて曲の途中から続きを聴くということも可能だ(意外とこれらができないレコーダーが多い)。

ファイル転送の際は、本体側面のつまみをスライドしてUSB端子を出し、PCに接続(ケーブル不要なのが便利!)。エクスプローラーなどでコピーすればOK。アーティスト名/アルバム/曲といった階層構造ごとコピーしても問題なく認識してくれる。また、iTunesでCDから取り込んだAACファイルもアーティストやアルバムのフォルダごとコピーで手軽に再生できたのもうれしかった。


▲ファイルの転送はPCのUSB端子に直結でOK。出先でケーブルを忘れた!なんてこともない。USB端子をひっこめればしっかりカバーされるので心配無用。

■多彩な機能を搭載

ICレコーダーのフラッグシップモデルというだけあって、便利な機能はほかにも数多くある。まずは「クロスメモリー録音」。これは内蔵メモリーまたはメモリーカードの残量が録音途中でなくなった場合でも、自動的にもう一方のメモリーに切り替えて録音を続ける機能。残量が少ない場合も慌てることはない。なお、リニアPCM 96kHz/24bitの場合、microSDHC/microSDXCカードに直接録音することはできないためクロスメモリー録音は無効となる。本体メモリーへの録音後、カードへのコピーは可能なので、容量で問題になる場面はまずないだろう。

再生用の機能としては、人の声以外のノイズを低減する「クリアボイス」、音程は自然なままで再生速度を変更できる「DPC(デジタル・ピッチ・コントロール)」、再生中に一定秒数の早送り・早戻しを設定できるイージーサーチを搭載。

そして、インタビューの書き起こしや議事録作成にありがたいのが「書き起こし用再生」。このモードでは、曲送り・戻しボタンの機能が、10秒の早送り・3秒の早戻しに切り替わる(秒数は変更可能)。ボタンの長押しで送り・戻しをやるしかない機種のユーザーならこの便利さがわかるはず。指定範囲を繰り返し再生するA-Bリピートとあわせて、楽曲の耳コピーや語学学習にも便利に使えるはずだ。

また、録音・再生・一時停止中にボタンを押すだけで付けられる「トラックマーク」も書き起こしの強い味方だ。再生時の頭出しや分割位置の目安として利用できるもの(1ファイルに最大98件設定可能)で、トラックマーク付加は本体液晶下中央のボタンを押すだけ(スマホからのワイヤレス操作でも可)。付属のWindows用ソフト「Sound Organizer 2」でも参照&活用できるのもポイントが高い。


▲「Sound Organizer 2」は、録音したデータをカンタンに編集・再生・管理できるソフトウェア。会議の議事録作成、語学学習、音楽再生などをサポート、CD作成も行える。

外部入力端子が用意されるのもうれしいところ。ステレオマイク(プラグインパワー対応)のほか、ラインレベルの入力にも対応。カセットテープなどのアナログメディアのデジタル化にも重宝しそうだ。外部機器を接続した時点で、外部入力のレベル設定画面が表示されるのも気が利いている。また、パッケージにはキャリングケースやUSB接続補助ケーブル、そして屋外での収録に必須の風切り音を軽減するスポンジ製のウィンドスクリーン(風防)も付属する。


▲付属品は左からキャリングケース、USB接続補助ケーブル、ウィンドスクリーン。補助ケーブルは本体を直接機器に接続できない場合に使用する、メス端子付きのケーブルだ。

高音質の録音・再生、ハイレゾ対応プレーヤーとしての使用、ワイヤレス操作をはじめとした便利機能の搭載で、まさにオールマイティーに使えるICレコーダーに仕上がった「ICD-SX2000」。「録音するぞ!」と意気込んでたまに持ち出す機材というよりも、普段からバッグに突っ込んでプレーヤーとしてもカジュアルに活用できるグッズ(ただし、録再クオリティはめちゃくちゃ高い)という感じが似合いそうだ。もちろん、ハイレゾデビュー(リスニングもレコーディングも!)したいという人にもうってつけだろう。

文●高松靖博

製品情報

◆ICD-SX2000
価格:オープン(ソニーストア価格 29,880円 税別)
発売中


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