【インタビュー】Jam9、人生は点じゃなくて線だなと思えるようになってきたニューアルバム『SKETCH』

■街を離れて行く瞬間、昔の恋人に再会した瞬間、当たり前の物を愛しく感じてしまう瞬間
■それは誰にでも訪れる瞬間だけどそこで見ている景色は絶対に「アナタだけの物語」なんです

──M1「NEXT!!」では、「笑われても貶されても絶対負けんな」「言葉にして行動して　それを形にしよう」、M7「breath」では「失敗恐れないで 傷付いても苦しくても その呼吸を止めずに進め」「状況はどうこうじゃなく行動が物語る 」など、みなさんがこれまで実際に行ってきた、人生哲学が詰め込まれ、前向きに背中を押されます。どのような経験が、この言葉の元になっているのでしょうか？

Giz'Mo：誤解を恐れずに言えば、自分たちは類まれな才能に恵まれているワケではなかったので、「乗り越えて行くこと」でしか夢を叶えられなかったんです。でも逆に言ったら、才能が無くたって努力の積み重ねで夢に辿りつけるという経験を何度もしてきました。それが誰かの勇気になって欲しいし、そう信じて生きてきた自分たちだから歌える言葉だと思っています。


──M2「ONE-we’re SHIMIZU S-PULSE-」、M5「RESTART」は清水エスパルスのテーマソングとして作られた楽曲ですが、歌詞、サウンド共に、それぞれどんなイメージを膨らませて仕上げていったんですか？

イシノユウキ：自分たちも長らくエスパルスサポーターをやっている中で、やはり昨季はなかなか厳しいシーズンでした。ゴール裏のサポーター仲間たちはどんなに負けていても最後まで諦めずに声を出していたけど、試合後疲れきってうなだれてる姿を何度も見てきました。うまくいかない現状にゴール裏もバラバラになりかけていたので、サポがひとつになれるような、サポを勇気づけるようなそんな曲を作らなければと思い「ONE」の制作に取り掛かりました。結果的にチームは初のJ2降格となりオフシーズンは脱け殻でしたが、新体制発表やニューイヤーカップ、Jマスコット総選挙等いざシーズンが始まる空気を感じたら『あぁ、やっぱりサッカーのある人生は素晴らしいな』『エスパルスのある人生は素晴らしいな』と。『RESTART』のサビ頭のスペイン語にはそんな思いを込めました。

──M3「バイバイ」は、別れの季節でもある春にピッタリの、親元を旅立つ切ない楽曲ですが、どんなエピソードがこの楽曲の元になっていますか？

Giz'Mo：親元を離れて実家の500ｍ先に住んでいる僕ですが、それなりに「家を出る時の覚悟と葛藤」を学んだつもりでいます。だれもがいつか体験する瞬間なんですよね。この曲を作るにあたってどうしても描きたかったのは「2つの視点」なんです。歌は主観だけで作られている事が多いんですけど、どうしても「街を離れて行く若者とそれを送り出す両親」、その両方の心境を時系列で追いかけたくて。まるで映画を見ている様な気分になってもらえたら良いなと思っています。

──「バイバイ」、M4「巡会歌」、M6「LIFE～10年後のアナタへ～」は、世界観が地続きのような感じがします。「巡会歌」「LIFE～10年後のアナタへ～」が出来たいきさつをお聞かせください。また「巡会歌」でMIKUさんを起用した理由とレコーディングエピソードもお願いします。

Giz'Mo：それこそ3曲共に今回のアルバムのキャッチコピー「それは一見どこにでもあるアナタだけの物語」なんです。街を離れて行く瞬間、昔の恋人に再会してしまう瞬間、今ある当たり前の物を愛しく感じてしまう瞬間。それは誰にでも訪れる瞬間だけど、そこで見ている景色は絶対に「アナタだけの物語」なんです。それを聴いた人それぞれが思い浮かべてくれるような作品が並んだと思っています。巡会歌に参加してくれたガールズユニットCLEEMのメンバーMIKUは同じ事務所の後輩で、もう6年近く一緒に地元で活動してきた仲間でもあります。高音の掠れる感じが凄く切ない声で、ピッタリだと思い前作「恋散歌」に参加してもらい、周囲から好評だったので続編曲として同じメンバーで制作しました。

──今作では唯一の恋愛の楽曲であるM8「月照歌」が出来たいきさつは？　歌詞は切ないのに、サウンドは賑やかで、このギャップが切なさをさらに盛り上げているような気がするので、歌詞だけでなく、このアレンジになった経緯もお聞かせください。

イシノユウキ：激情と冷静ですかね(笑)。メロは男女3声をうまく使い分けれるよう、各自がメインとハモをグルグル回るようにしてます。アレンジに関しては、上昇してしまった恋の温度と「真夏の暑さ」をかけているんです。いけないと分かっているのに惹かれてしまう恋の熱が感じられるアレンジが出来たと思っています。

──「月照歌」で曽根由希江さんをフューチャリングシンガーに起用した理由とレコーディング時のエピソードをお願いします。

Giz'Mo：僕等Jam9と曽根由希江は、同じレコード会社の「2010年デビュー組」なんです。しかもその年は2組だけで。だからライバルであり戦友でもあり、ずっとお互いを認め合える存在でした。滅多にやらないんですが、半々でメロディーも歌詞も共作して。改めて曽根由希江の凄さを学んだし、互いの良さを掛け合わせられた瞬間でした。また一緒にやろうと約束しているので、期待していてもらえたら嬉しいです。

──前向きな「NEXT!!」で始まり、中盤ではキュンと暖かい気持ちになり、ラストの2曲M9「ハシリダセ」、M10「island melody-2nd mix-」では、再び前向きな気分になります。曲順にもしっかりメッセージがあるように感じましたが、曲順を考える時にはどんなところにこだわりましたか？

イシノユウキ：5曲目からは1度(メインキー)始まりの曲が増えるように、あと4度始まりの曲でも割りと明るく聴こえるものを後ろに配置しました。皆さん毎日生活している中でいろいろあると思うので、聴了感は出来るだけ明るいほうがいいかなと思いまして。

──全体を通して、自分たちを育んできた場所や人への愛を感じました。みなさんが伝えたいと思ったことは、どのくらいこの作品に込められた実感がありますか？　完成した今、作品に対して客観的に思うことなどをお答えください。

Giz'Mo：生きているって、凄い事だと思うんです。毎日同じ様に見えて、その日その日で感じる事は全く違う。聴いてくれる人の「大切な1日1日」が歌いたかったし、それが上手く形になったと信じています。

イシノユウキ：タイトルの『SKETCH』を通し、いろいろな人生を切り取って描写してきたわけですけど、聴いてくれた方がこれって自分の人生かもと感じてくれたとしたら、今回のクリエーションは成功だったんじゃないかなと思います。

MOCKY：いつもそうなんですけど、作るまではメンバーの仕事だし、リリース後はリスナー側が聞いて育てて行ってくれるものかなぁと思っています。今後、その反応はライブで目に出来るので楽しみです。

──今後、Jam9として挑戦したいこと、作ってみたい作品、これからの目標があれば最後にお願いします。

Giz'Mo：ミュージシャンとして、有難いことに1年で何十曲もの作品が形になって行く人生を歩ませてもらっています。その中で1曲1曲、いつだって「誰かの心に届く曲になります様に」と思っていて、それをこれからもずっと胸に音楽を作り続けて行きたいです。

イシノユウキ：目標は作り続けてくことですね。作り続けることって単純ですけど一番難しいことだと思うので。10年後も音楽に同じバイタリティを持って挑めていられたらそれが一番です。

MOCKY：新しい事もそうなんですけど、今までやってきた事も「ちゃんと継続して行くこと」が大事かなと思っています。これからも頑張るので、応援よろしくお願いします。




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