【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、四季を音で綴るアルバム『ふるさと』に“和”

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BREAKERZのギタリストAKIHIDEが3月23日、自身5枚目となるソロアルバム『ふるさと』をにリリースする。2015年12月に品川教会グローリアチャペルで開催されたクリスマスライヴではガットギターを駆使し、新曲の数々を届けたが、今作のテーマは“和”と“ガットギター”となる。

◆AKIHIDE 画像

童謡「夕焼け小焼け」のカバーで幕を開ける『ふるさと』には全12曲を収録。1月から12月まで四季折々の情景を描いたバリエーション豊かなインストゥルメンタルが収録されている。「懐かしく温かい響きの音色で、リスナーの日常に寄り添えるようなアルバムにしたかった」というAKIHIDEが思い描いていた情景はどんなものだったのか。ガットギターの持つ特色と繊細な魅力をはじめ、ギターという楽器を通して最終的に伝えたいと思っていることにも言及したロングインタビューをお届けしたい。

   ◆   ◆   ◆

■耳馴染みのいい柔らかい音で
■朝起きた時にも寝る前にも聴ける作品を作りたかった

──和をテーマにしたアルバム『ふるさと』は情緒的でありつつ躍動感もあって、気持ちが豊かになる作品だと思いました。1月から12月まで、それぞれの月をモチーフに四季の移り変わりを音で綴ったアルバムに仕上がっていますが、こういう作品を作ろうと思ったきっかけというのは?

AKIHIDE:前作『月と星のキャラバン』は“音で世界旅行しよう”というテーマのもと、自分なりに各国の音楽を取り入れて作ったアルバムで。そのリリースライヴの時に今作に収録されている「待雪草」を新曲として披露したんです。「待雪草」は“和”と“ガットギター”をテーマに作った曲だったので、次のアルバムではこれを軸にしたら面白いかなと思いました。その後はBREAKERZ再始動もあったので、具体的に曲に取りかかったのは昨年の夏以降ですね。

──コンセプトを思いついたのはかなり前なんですね。

AKIHIDE:そうですね。で、和と言えば、四季折々の景色だったり、情景を作品にしたいと思ったので、1月から12月にかけての曲を1曲ずつ作れたら、聴いてくださる方もイメージを膨らませやすいかもしれないですし、インストゥルメンタルで言葉がない分、いろいろな世界観を作り上げていけたら、と思って詰めていきましたね。

──音楽で綴るカレンダーのようなイメージですか?

AKIHIDE:おっしゃる通りで、昨年のツアーで、1年かけて読む絵本みたいなイメージのカレンダーを作ったんですよ。1月から12月まで自分でデザインを描いたんですけど、四季折々の景色って改めていいなと。もともと散歩が好きなんですが、それから街の木々を見る目も変わっていったんです。「蕾って1日でこんなに膨らむんだな」とか四季の感じ方が変わったことが大きな影響を及ぼしたかもしれないですね。不思議なんですけど、年を経るごとに景色が前より綺麗に見えるようになっている気がするんですよ。夕焼けも子供の頃より鮮やかに見えるんです。もしかしたら自分の見方が変化したのかもしれないですね。

──心情や思い出を重ねて見るようになっているからかな。

AKIHIDE:そうかもしれないですね。なので、四季を音で綴るのは自分にとって自然なことだったんです。

▲Jose Ramirez 4N-CWE(※ガットギター)

▲Taylor 814e(※アコースティックギター/スティール弦)

──ちなみにアルバムではギターはガットギターだけを使っているんですか?

AKIHIDE:今回、メインで弾いているのは甘くて優しい音がするナイロン弦のガットギターですね。きらびやかな音がするスティール弦のアコースティックギターを使っているのは12曲目だけ。入れても演奏のバックで弾いているぐらいです。

──どんな経緯があってガットギターにハマったんですか?

AKIHIDE:昔、ギターを弾き始めた頃に「ガットギター弾いたら上手くなるよ」って言われたことがあったんですけど、その時は食指が動かず、今になって“なるほど”って思いました。ガットギターはその昔、吟遊詩人が弾いていたリュートから派生した楽器で、すごく繊細でいろいろな表現ができるものなんです。クラシックはもちろんスパニッシュな音楽でも使われるし、優しい音からエネルギッシュな音までいろいろな表現ができる。今作は“優しくて温かくて、聴いてくださる方の普段の生活に寄り添える作品にしたいな”と思っていたので、ガットギターをチョイスしたんです。耳馴染みのいい柔らかい音で朝起きた時にも寝る前にも街中でも聴けるようなアルバムを作りたかったんですよね。

──じゃあ、“こんな音も出せるんだ”って、弾いていく内にガットギターの魅力にハマったんでしょうか?

AKIHIDE:そうですね。これまでメインで使うことはなかったので挑戦だったんですけど、独学ですが、エンジニアの方と相談しながら学んでいきました。それと自分自身、最近よくガットギターの音楽を聴いていたんです。

──例えば、どんな音楽ですか?

AKIHIDE:パット・メセニーとベーシストのチャーリー・ヘイデンのコラボレーションアルバム(『Beyond The Missouri Sky』)はよく聴きました。歌がないインストゥルメンタルですけど、流していると生活が潤うような音色だったので、自分でもそういう作品を届けられたらなと思っていました。

──でも、ガットギターって難しい楽器ですよね。同じ6本弦のギターと言えど、アコースティックギターともエレキギターとも異なるし。

AKIHIDE:そうですね。弦が柔らかいから力を抜いて弾くんですけど、レコーディング中は左肩だけ疲労していたのか、家に帰って寝るとピキッて肩がつるんですよ(笑)。エレキギターや普通のアコースティックギターとは違う筋肉を使っていたようです。でも力を抜かないとちゃんと音が鳴らないし、そこが大切な部分なんだなと学びましたね。

──柔らかい音を出すために力を抜くということですか?

AKIHIDE:強く弾くと硬い音が出るんですけど、歌と一緒で、リラックスしないと音が太くならないんです。だけど、音量を抑えて弾くと逆に自分の息づかいまで録音されてしまうので、レコーディングでは繊細な作業が多かったですね。

──昨年のライヴで観た時に、ガットギターってこんなにいろいろな音が出るんだ!?って驚きました。

AKIHIDE:ありがとうございます。ライヴはアドリブ合戦みたいなところもあるからエネルギッシュになりがちなんですが、いろいろな表現ができる面白さもありますね。

──ガットギターへの目覚めはアルバム『ふるさと』を語る上で大きな要素ですね。

AKIHIDE:大きいですね。目覚めた楽しさでウキウキしている僕を感じていただけると思います(笑)。

──その音色が日本の風景に馴染むと思ったんですか?

AKIHIDE:上手く言えないですけど、琴にも近いようなナチュラルな音色に和のテイストを感じたんです。アルバムに収録されている「桜の森の満開の下」では笙と尺八の方に参加していただいているんですが、和楽器である笙の音がパイプオルガンとどこか似ていたので演奏家の方に「パイプオルガンのような神々しさがありますね」って話したら、実は笙という楽器はヨーロッパに渡って、それがパイプオルガンへと発展したそうなんです。ガットギターは西洋の楽器ですけど、琴と根本は一緒なのかもしれないと思うと、自然と僕が抱いていた“ふるさと”のイメージにひっぱられていったのかもしれないですね。

◆インタビュー(2)へ
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