【インタビュー】BREAKERZのAKIHIDE、四季を音で綴るアルバム『ふるさと』に“和”

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■心臓の鼓動が止まらない限り
■音楽をみなさんにお届けしたいという想い

──アルバムのタイトルを“ふるさと”にしたのはそういう理由もあったのですか? オープニングが「夕焼け小焼け」のカバーで始まるのにも驚きました。

AKIHIDE:タイトルが決まったのは曲が出揃ってからです。ずっと悩んでいてスタッフさんと相談する中で出てきた言葉だったんですが、温かいアルバムにしたいというところでリンクしました。1曲目が「夕焼け小焼け」なのは、僕のふるさとが八王子だということと関係しているんです。「夕焼け小焼け」は八王子で生まれた曲なので。

──そうなんですね。知りませんでした。

AKIHIDE:子供の頃、河原で遊んでいて5時になると帰宅の合図みたいに流れていた曲でもあり、自分の原風景を思い出す曲なので、「夕焼け小焼け」で始めることで自分のふるさとの第一歩を踏めますし、ガットギター1本で演奏することでアルバムのメッセージにもなるなと思って。八王子に限らず、この曲はいろいろな場所でチャイム代わりに鳴っていると思うので、僕だけのふるさとの景色だけではなく、みなさんにとっても温かい入り口になればなと。

──とは言え、『ふるさと』は哀愁のある和の曲ばかりが収録されているわけではないですよね。躍動感のある曲、開放感のある曲もある。

AKIHIDE:バリエーションに富んだ楽曲を作りたかったというのもあるんですけど、自分が思う“和”は雅なメロディだけではないんです。5曲目の「小さなカーネーション」のような北の大地を思わせる曲だったり、日本人に根付いているスパニッシュな雰囲気を取り入れた8曲目の「ジェリーフィッシュ」のような曲とか、大きな意味で日本人としての自分に根付いているものを出せればと思って作っていきました。

──では、アルバムの中から何曲かピックアップして語っていただきたいんですが、さきほども話に出た4曲目の「桜の森の満開の下」はループするフレーズが印象的で、狂気を感じさせる異色なナンバーですね。

AKIHIDE:曲のタイトルは坂口安吾さんの有名な小説からいただいたんですが、その作品が狂気をはらんだおどろおどろしい内容で、インスパイアされて作った曲です。楽曲自体も攻めているロックな曲調なんですが、この曲をあえてガットギターで表現することによって新しいものが作れるんじゃないかなと。狂気的な異世界に行くような感覚と神様が舞い降りてくるような雰囲気をうまく絡めてみました。そこに和楽器を加えたことで今までではありえない不思議な曲になったなって、すごく満足しています。

──そして7曲目の「星祭りの夜に」は夏の開放感やキラキラした光が舞うようなイメージの曲だと感じました。

AKIHIDE:七夕は星祭りの日とも呼ばれていますが、お祭りの心踊るワクワクした感じや天の川のきらびやかなイメージの音色をパーカッションの方に入れていただいたんです。この曲は、和という括りで言うと歌謡なメロディですね。ノリやすくて聴きやすい雰囲気で作った曲で、この曲もアルバムの中では異質かもしれないですね。

▲初回限定盤『ふるさと』

──では、AKIHIDEさんの中で最も和テイストが強く出ている曲というと?

AKIHIDE:9曲目の「月下の蝶」は日本の情景を思い起こさせる曲だと思います。月をモチーフにしたいなと思った時に月の光を求めて飛ぶ蝶のイメージが浮かんできて、一緒にタイトルも浮かんできたんです。

──とても幻想的な曲ですよね。

AKIHIDE:参加していただいたミュージシャンも僕のデモとは違うアプローチをしてくれて、想像以上に華やかになった曲でもあります。アルバムでそういう化学反応がいろいろ生まれたのも嬉しかったですね。

──11曲目の「氷雨」はタイトルからウエットで悲しいバラードなのかなと思ったら、そうではないんですよ。

AKIHIDE:そうですね。タイトルと曲が同時に浮かんできた曲です。“氷雨”は冬の季語でもあり、非常に美しい響きの言葉ですけど、冷たい雨にただ打たれているのではなく、雨の中を会いたい人に向かっていく力強さがほしくて、ブラジルの楽器を取り入れてタイトルとは真逆のアレンジになっています。冷たい雨に打ち勝つ情熱をうまく表現できたかなと。

──なるほど。そして12月のラストナンバー「この時計が止まるまで」はホントに名曲ですね。

AKIHIDE:ありがとうございます。2ndアルバム『Lapis Lazuli』の頃にメインフレーズだけ存在していたんですが、その時にはうまく形にならず、やっと完成した曲です。この曲だけスティール弦のアコースティックギターで弾いていて、1音1音を大事に、ライヴではフレーズを歌いながら弾いていますね。自分自身の胸の時計というか、心臓の鼓動が止まらない限り、音楽をみなさんにお届けしたいという想いと聴いてくださる方の胸の鼓動がいつまでも健やかに回り続けるようにというメッセージを伝えたかった曲です。この曲には季語は入っていないのですが、最後を締めくくりたい大切な曲だったので収録しました。

──この曲に限らず、ギターのメインフレーズがあって、それが展開していって、またメインフレーズに戻っていくアレンジが印象的ですが、どんなふうに思いつくんですか?

AKIHIDE:サウナにいくとアイディアが浮かぶんですよ(笑)。脳内で何度もセッションして構築していくんです。聴いていて飽きないように。そういえば、ライヴのMCもサウナで考えてます、けっこう時間をかけて。

──家より外のほうがひらめくんですね。

AKIHIDE:外のほうが全然湧きますね。僕の源泉は散歩とサウナしかないかもしれない(笑)。

──AKIHIDEさんに曲を書いてもらいたい時はホテルじゃなくサウナに缶詰にするといいのかも(笑)。

AKIHIDE:ははは、温泉地とかに連れていってもらったら、永遠に湧き続けるかも(笑)。

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