【インタビュー】清春、『SOLOIST』完成に「自分はソロだってハッキリ言いたいなと」

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清春が約3年ぶりとなるオリジナルアルバム『SOLOIST』を3月30日にリリースする。すでにライヴで披露されている「DIARY」や「メゾピアノ」、音源化が長らく待たれていた「海岸線」などの楽曲に新曲を加えた新作はソロヴォーカリスト、清春の“今”を浮き彫りにする深く切なく奥行きのある作品に仕上がった。ソロとして定期的にライヴを行う一方で、黒夢、sadsのフロントマンとして精力的に活動を行ってきた近年の清春が久々のソロアルバムを“SOLOIST”と言い切った決意とは? 47才になった今も4時間のライヴを圧倒的声量で歌いきるパワーと同性からも憧れられるブレない美意識で独自のポジションを築いた清春は取材中に「もっと歌がうまくなりたい」と何度も口にした。その歌に対する飽くなき向上心と自身のイメージが強烈なゆえに抱える葛藤についても語り尽したロングインタビューをお届けする。

◆清春 画像

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■無理して音楽を若くしようとは思わない

▲2016/1/23 @広島CLUB QUATTRO

── 3年ぶりのオリジナルアルバム『SOLOIST』は切なくも甘美で清春さんのヴォーカルが沁みてきます。今作にはライヴで育ててきた楽曲も多く収録されているんですよね。

清春:そうですね。いちばん古い「海岸線」はもう10年ぐらい前の曲で、ソロで「HORIZON」という曲(2005年の3rdシングル)を作った時と同じ日にできた曲です。3年前、5年前、7年前の曲もあるし、もちろん最新の曲もあります。

── ライヴを開催する中で、曲が溜まってきたというのも久しぶりにソロアルバムを出す引き金となったのですか?

清春:そうですね。あとは5年前に黒夢が復活して、なかなかソロの作品に取りかかれない時期があったので。最初は古い曲は入れないでおこうと思っていたんですけど、3年ぶりのソロアルバムなので今、ライヴでやっている自信のある曲や新曲を含めて入れておこうと。ステージを観ていない人にとっては全てが新しい曲だと思うので。

── 『SOLOIST』には“大人の中の純真さ”を凝縮したとのことですが、大人の音楽を意識して作ったんでしょうか?

清春:僕は25才でデビューして、35才でソロデビューしているんですが、青春時代の基盤は自ずと出てしまうものなので、そこは置いておいて、曲、歌詞、プレイに関してはこの5~6年は意識していますね。もちろん若い人に聴いてほしいという気持ちもなくはないけれど、あまり気にはしてなくて、全方位にアピールしようというよりは一緒に成長してきた人たちに「これ、これ!」とか「また良くなったね」って思ってもらえる方がいい。だから、無理して若くしようとは思わないですね。本来なら、このアルバムよりもう少し大人っぽいことをやりたいんですけれど。

── それはサウンドにおいて、ですか?

清春:そう。ずっと一緒に組んでいる三代(堅)さんにアレンジをお願いしている曲はそれこそ10年前の曲も収録されているので少しバンドサウンド風になってるんですけど、今回、初めてお願いした森(俊之)さんや是永(巧一)さんにアレンジしてもらった曲に関しては、会話する中で“今の清春”というキーワードが生まれたこともあって大人のアプローチを意識しました。森さん(スガシカオ、椎名林檎、宇多田ヒカルなどを手がける)は僕のミュージックビデオの監督が知り合いで「一緒にやってみたらいいんじゃない?」ってずっと言われていたんです。で、森さんがアレンジャーとして参加している井上陽水さんのカヴァーアルバム(『UNITED COVER 2』)を聴いてみたら、感銘を受けて、それでお願いしました。是永さんは古くは黒夢の「ピストル」をプロデュースしていただいた方でもあり、復活してからもギターを弾いてくれたり、アレンジャーとして関わってもらっていますね。なので全13曲のうち、8曲は基本、いつもライヴでやっているヴァージョンに忠実に。あとの5曲が“今の清春”を表現したものになっています。

── 森さんがアレンジを手がけた「瑠璃色」や「メゾピアノ」は弦や鍵盤の使い方も含め、深みのあるアプローチですね。

▲2016/1/30 @HEAVEN'S ROCKさいたま新都心VJ-3

清春:ちょっとアカデミックっていうかね。もちろん僕の中には若い頃に好きだった音楽が基盤にはあるんですけど、Twitterとか見ると未だに昔のイメージで自分を捉えている人が多いんですよね。それは有難いことでもあるんですが、最初に僕に出会った時の印象が離れないんだろうなって。今年、48才になるので昔と同じ事をやっている訳ではないんですが、僕らが属しているロックのジャンルはそう思われがちなので、もっと今の自分の音楽を具現化していこうと思っているんですよね。

── そこを明確に打ち出せるのが清春さんにとってソロということなんですよね。

清春:黒夢が復活した時は僕もソロやsadsを経ているし、お互いに成長した上で制作していたんですが、バンドというフィルターを通すとやはり激しい部分も必要になるんですよね。ウチの場合、男のファンも多いので。

── ライヴで暴れられる曲も聴きたいとか、そういう気持ちは必ずありますよね。

清春:そう。復活したバンドのライヴに期待する気持ちもわかるので、黒夢のアルバムにはそういうテイストも多く入れたし、ロックってどこか大人の音楽じゃないから、音圧やスピード感は大事なんですよね。確かにソロだとバンドと分けてやれるというのはありますね。僕のライヴに来てくれる人に限らず、違うジャンルが好きな人やあまり音楽をふだん聴かない人にも「この曲、何?」、「すごくいい感じだね」って言われるような音楽をやりたいというか──。楽曲だけではなく、アレンジも参加するミュージシャンのプレイにしてもクオリティの高いものを作りたい。それを含めて大人っていうことなのかなと思いますね。

── だから、複数のアレンジャー、ミュージシャンとコラボレートしているわけですね。

清春:そうですね。スタジオの仕事もしているトップミュージシャン。若手ではcoldrainのKatsumaが8曲叩いてくれてるんですが、そういう新しい血を入れたいというのもありつつ、彼は勉強家でもあり、黒夢でも叩いてくれていたので。あとは僕より年上のミュージシャンばかりです。

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