【インタビュー】清春、『SOLOIST』完成に「自分はソロだってハッキリ言いたいなと」

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■「今でも『少年』みたいな歌うたってるんでしょ」「『忘却の空』でしょ」
■そういうのも嬉しいけど、あの頃より歌うまいんだよって

▲『SOLOIST』初回限定盤

── なるほど。『SOLOIST』というタイトルにも関係していると思うのですが、ヴォーカルの表現力が際立っていますよね。以前のソロ作品とは歌い方も変化しているし。

清春:今回のアルバムも録音してから日にちが経っているので、今はなるべく聴かないようにしているんですよ。ツアー中(取材時)なので、もしかしたらライヴのほうがいい歌をうたえているかもしれない。ポップになったり、コードが増えたりすればするほど歌は難しいですよね。ギターサウンドではなく鍵盤が入ってきたりするとピッチの甘さが目立ったりもするし。僕らロックミュージシャンはカッコよければちょっと荒くてもいいやと思ってやってきているけど、ソロシンガーの人たちは最初からピッチが合っていて当たり前だから、そういう意味での無駄な時間を過ごしていない。だから、ソロでデビューして10年少したつけど、歌に対する葛藤はすごくあるんです。

── そうなんですね。

清春:そういうこともあって去年は同じ会場で66公演、アコースティックライヴをやってきたんです。毎回、歌に対する解釈は変わるし、いろいろ試してきたので、『SOLOIST』はまだチャレンジの途中だという気もしていますね。

── ヴォーカリストとして挑戦している最中というか?

清春:新旧の曲が収録されているということも含めて結果的にですけどね。シンプルにしたいという意味ではなくて、最終的には楽器1つか2つと歌だけでもいいのかなと思うんですよ。黒夢の初期は、急に「ピアノで始まります」って言われると不安だったんですけど、今はそっちのほうがいいかなと。曲全体を聴くのもいいんですけど、歌を中心にっていう方向ですね。ヴォーカリストなので。

── タイトルを『SOLOIST』にしたのは、そういう意識があるからですか?

清春:あの、日本ってエンターティンメントにおいてグループの国だと思うんですよ。人数が多ければ多いほどいい。

── 特に近年はそういう傾向が強くなっているとは思います。

▲2016/2/19 @HEAVEN'S ROCK 宇都宮VJ-2

清春:昔もそうだったと思うんですよ。アイドルにしてもバンドにしても──。仲が良い方が人気が出たりとか。それは土壌にも関係していて、日本は友達ができないと「私、寂しいんじゃないか」って室内にこもっちゃったりとか、グループから外れるのが怖いから気を使ったりとか。でも、海外に行くとそういう発想がないんですよね。自分がやりたいことをやって、変に友達にも気を使わないですし。だから、アーティストにしてももちろんビートルズやストーンズとか偉大なバンドは出てきているんだけど、ストーンズだったらミック・ジャガーとキース・リチャーズだし、ビートルズならポール・マッカートニーとジョン・レノンの存在が独立してるじゃないですか。残っている人はデヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビヨンセ、テイラー・スウィフトとかソロが多いんですよ。そんな日本のシーンの中、僕もバンド出身で今までは黒夢やsadsと比べられることを気にしてたり、うやむやにしていたところがあったんだけど、ハッキリと自分はソロだと。SOLOISTだって言いたいなと。

── ということは節目となる大きなアルバムですね。

清春:次が10作目のアルバムになるので、そこでソロシンガーとしてコンポーザーとしての完成形を作りたいと思っているんですけど、ここで1回、バンドの自分を切り離すという意識はありますね。そういうものを今の自分は求めていないというのもあるし、求めないでほしいという想いもあるし。

── とは言え、清春さんには黒夢、sadsがあってバンド活動とソロが並行するスタンスというイメージもあります。

清春:そこは葛藤でもあるんですけど、以前、僕のファンだった人がデビューしたり、フォロワーというか、脈々と続く黒夢、sadsのヒストリーがあるんですよね。黒夢、sads=僕でしょうから、「今でも『少年』みたいな歌うたってるんでしょ」とか「『忘却の空』でしょ」みたいな。そういうのは嬉しいんですけど、その一方で自分は「今は違うんだよな。あの頃より歌うまいんだよ」って思ってるんですよ。例えばスポーツなら前の試合で負けても勝てば人は今しか見ないと思うんですよね。

── 確かに。記録が更新された今にフォーカスされますよね。

清春:でも、音楽は違うんだよね。思い出というか。

── 最初にそのアーティストを好きになった時の曲は聴き手の中に強烈に残りますからね。

清春:そうですよね。だから、そこは僕らやっている側のエゴかもしれないけど、単純にうまくなりたいんですよ。どうしてもファッションだったり、ライヴパフォーマンスにフォーカスして見られがちでそれも嬉しいけれど、音楽をいちばんに聴いてほしい。そういう想いもあって、『SOLOIST』でヴォーカリストだということを提示しようと思ったんです。

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