【インタビュー】中野テルヲ、孤高の電子音楽家の20周年ベストに「責任が持てる音楽」

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■当時の自分が、そういう音にしたいという責任を持って作ったわけで
■そこに今回、もう一度向き合えたことはよかったなと思っています

──そういったサウンド面での実験的なアプローチは、ソロ活動を始めてから、より積極的に打ち出していくようになったのですか?

中野:ソロになってからの方が強いですね。P-MODELでは、やはりプレイヤー寄りの意識でしたし、LONG VACATION時代は、アレンジャーでもあり、バンドマスターもやっていましたから、いろんなミュージシャンをまとめたりといった方に頭がいっていて、サウンド面で実験するところまでは、まだ手が回りませんでした。やはりバンドだと、グループ全体のこと、他のミュージシャンのことを考えて、一歩引いた感じにはなりますよね。それがソロになって、いろいろと実験的なことが試せるようになったんだと思います。

──ただ、実験を行いながらも、それが“実験音楽”で終わらずに、最終的にすべての作品をポップに着地させていますよね。そこは、意識をしてのことですか?

中野:ポップであるということは、ずっと意識してきました。できるだけ広く、いろんな人に聴いてもらいたいですから。“難しい音楽だ”という印象が最初にきてしまうと、本来は聴いてもらえる曲まで、耳を傾けてもらえなくなくなりますし、そういった点は、ライブでの経験が活かされていると思います。やっぱりライブだと、分かりやすい曲はウケもいいですし、盛り上がりますから。もちろん、そういった曲ばかりではダメで、実験性とのバランスの上に成り立っているということはあると思うんですけど。ライブの回数が増えたあたりから、ある程度はライブを想定して曲を作るようになってきました。ソロ初期は、それほどライブをやっていませんでしたから、最初の『User Unknown』は、あまりライブを想定していないんです。だから、ポップな要素は、ちょっと薄いですよね。どちらかと言うと、サウンドの質感重視といった感覚が、当時は強かったと思います。

──一般的には、キャリアを積むにしたがって、どんどんスタジオワークに比重が傾く場合が多いですが、中野さんの場合は、その逆なんですね。

中野:自分の場合それをやってしまうと、本当に、自宅スタジオに閉じこもっちゃうと思うんですよ(笑)。それはそれで“アリ”なのかもしれないですが、今は音源制作とライブとを並行とした、そういうスタンスで活動を続けていけたら思っています。ひょっとしたら、もっと先になって、本当に閉じこもってしまうかもしれませんけど?(笑)。

──では、いよいよベストアルバム『TERUO NAKANO 1996-2016』について伺います。2枚組全30曲と、とてもボリュームのあるベストになりましたね。

中野:DISC1には、1stアルバム『User Unknown(1996年)』と、2ndアルバム『Dump Request 99-05(2005年)』の楽曲を、できるだけたくさん収録しようと考えました。

──今や、1stアルバムと2ndアルバムは入手が困難ですから、喜んだファンは多いと思います。そしてDISC2には、2010年以降の作品がバランスよく網羅されていますね。選曲にあたって、当然ながら過去の作品を改めて聴き直したと思いますが、特に20年前に作ったご自身の楽曲に対して、今の感覚で、どのような印象をお持ちになりましたか?

中野:久しぶりに聴いてみて、“作った当時は、こんな考え方だったんだ”と感じました。“何でこんなバランスなんだろう?” “なんでこういう空気感なんだろう?”って。それは当時の自分が、そういう音にしたいという責任を持って作ったわけで、そこに今回、もう一度向き合えたことはよかったなと思っています。

──そういった『User Unknown』の楽曲が、オリジナル盤とは違う曲順でDISC1に全曲収録されている点が、とても興味深かったです。

中野:今回はベスト盤ですし、これを入門編として聴いてくださる方もいらっしゃると思うので、なるべく聴きやすくなるようにと考えて、曲順を決めていきました。ただその中には、もちろん自分の想い入れも加わっていて、1曲目は「Let's Go Skysensor」にしようとか、その勢いで、次にこれを聴いてもらおうといったような形で、全体の流れを考えながら。前後の流れが変わるだけでも、曲の印象は随分と変わるじゃないですか。オリジナル盤は、その作品の世界観があっての曲順ですが、ベスト盤には他の曲も混ざってきますから、そこは今の感覚でDISC1の曲順を決めていきました。

──その中で、特に印象に残っている楽曲をいくつか挙げてもらえますか?

中野:1stアルバム『User Unknown』の1曲目(「Uhlandstr On-Line」)は、やっぱり印象が強いですよね。この曲で、アルバムの世界観が決定付けられたといった面がありましたから。それから、『Dump Request』に収録されている「Let's Go Skysensor」も印象に残っています。この曲は、ライブでも人気が高いですし、お客さんの反応もいいので、そこから自分にフィードバックされた要素はたくさんありました。

──反対に、完成形に到達するまでに苦労したような曲は?

中野:そうですね……どの曲も、それなりに悩み、考えながら作っていったので、サラッと形になってリリースしたというような曲はないんです。楽曲のアレンジやミックスといった確認作業も多いので、そうすると、完成に至るまでの時間って、どの曲でも平均して同じくらいかかってしまうんですよ。ですから、どの曲も苦労はしましたね(笑)。

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