【対談】黒木渚×柴田隆浩(忘れらんねえよ)、チクショー!と歌う道を選んだふたりの人生哲学

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■クリエイティブな仕事と役所の仕事は両極端
■何者として死ぬか?と思った時に、公務員をやめました(黒木)


── 二人の共通点としては、社会人経験があること。「ふざけんな世界、ふざけろよ」の中にも、社会人として怒りをぶつける歌詞があったりします。

柴田:黒木さん、公務員だったんですよね。大卒で?

黒木:大学院卒です。

柴田:そっか。院卒で公務員というと、めちゃくちゃお堅いイメージですけど、選んだ理由は?

黒木:時間がなくて、就活してなかったんですよ。大学院で英米文学を専攻してたんですけど、文学って実用的じゃないんですよね。生きてく上で文学的であることは、あんまり必要じゃないから。だけどすごく好きで、教授になりたかったんです。

柴田:おお~。似合いそう!

黒木:でも留学しないと無理と言われて。この年から7年間イギリスに行きますとか、時間的にもお金的にも無理だなと。それに気づいた時に、周りはもう1年前から就活していて。Amazonで“公務員”という文字が入っている本を全部買って、2か月で全部覚えて、公務員になったんです。滑り込みで。

柴田:何タイプの公務員ですか。

黒木:地方公務員なので、市役所の財政課。窓口です。土地の登記とか。

柴田:何年やったんですか。

黒木:1年です。その時もずっとバンドをやっていて、アフター5はスタジオに入って、土日には県外でライブとか。でも正直、全力でやるバンド活動と社会人生活の両立って、すごくきつくないですか?

柴田:公務員という環境だと、不可能に近いんじゃないですか。

黒木:周囲の目もあるし、バレるとまずいと思って、顔を隠して活動してました。当時の写真を見ると、どれも扇子で顔を半分隠してるんですよ。クリエイティブな仕事と役所の仕事は両極端だし、私は何者として死ぬか?と思った時に、公務員・黒木渚と、音楽家・黒木渚だったら、断然こっちでしょということで、公務員をやめました。で、市役所時代には腹の立つことも多くて、お局にいびられるとか、あるわけですよ。音楽活動に反対してくる人とか、そのしわ寄せがこっちに来てチクショー!とか。いろいろあったけど、当時は生活がしんどすぎて曲にならなかったんですよ。時間が経って今になって、ふつふつと思い出して曲になったりすることがけっこうあるんです。

── 柴田さんは、一度バンドをやめて会社員になった。どんな経験だったんですか。


柴田:会社に入って、5年間営業をやってたんですけど、本当にきつかった! 要は、やりたくなかったんですよ。企画がやりたくて、面接でもそう言って入れてもらったのに、企画をする人をサポートする役割の営業に回されて。僕の得意なジャンルはこれではない!と思い込んでるもんだから、とにかくやる気が出ない。義務感でしか仕事をやれなくて。その時思ったのは、仕事ができる/できないとか、順位がつくとか、それを決めるにはやる気がでかいんですよ。できる人は努力するし、努力を努力と感じなくて、楽しいからやってる。そういう意味で、僕は本当に無能だった。やりたくなかったから、本当にきつかった。

黒木:体力的にもきついし、やりたくないことだったらなおさらですよね。

柴田:土日も家にずっと家にいて、土曜日の夕方ぐらいに酒飲みに行って、べろべろに酔っぱらって、日曜日の夕方ぐらいに目が覚めて。部屋もすげぇ汚かったし。しんどかったですね。

◆インタビュー(3)へ
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