2015年に開催された<B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT->ツアー中に曲創りをスタートしたというアルバム『enigma』は、同ツアー終了後にデモ制作を経てレコーディングへ。収録されたボーナストラックを含む全15曲が、前アルバム『New Horizon』のメロウな肌触りとは異なる仕上がりをみせたことは同時公開したインタビューの通りだ。そのサウンドを形成したギターレコーディング機材をご紹介したい。

◆松本孝弘 画像

「まずはワンコーラスを何本かのギターで弾いてみて、どのギターがいちばん合っているかを選ぶ。これでいこうって決まったら、それで録り始めていくんです」とは、前作取材時に松本自身が語ってくれたギターセレクト方法だが、それは今回も同様。レコーディングスタジオには松本からのオーダーとギターテックの提案による10数本のギターがセットされていた。

ギブソンTak Matsumotoファイヤーバードをはじめ、チェンバー(空洞)ボディのギブソンレスポール、そしてフェンダーのストラトが『New Horizon』レコーディングのメインだったのに対して、今回のアルバム『enigma』は使用ギター本数が圧倒的に増量。インタビューで松本自身が、「『New Horizon』を改めて聴いていると、音はいいんだけど、どの曲も同じトーンなんですよね。前回はファイヤーバードを使うことに執着していたから。だけど今回は、ヴィンテージのレスポールを使ったり、ギターの幅が広い」と語っているように、サウンドバリエーションが豊富。加えて、「今、松本さんのサウンド志向はレスポールに向かっているのかも」とはギターテックの弁だが、SGシェイプの61年製レスポールを含め、1959年製ヴィンテージ、P-90搭載の1956年製ゴールドトップ、ゴールドトップの1957年製リイシュー、1959年製リイシュー、そしてチェンバー(空洞)ボディと、レスポールだけでも6本が、それぞれの持つサウンドキャラクターによって使い分けられた。

また、ギブソンTak Matsumotoファイヤーバードはもとより、<B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT->のステージで初披露されたフライングVも今回のレコーディングでは大活躍。ギブソン以外のギターではシングルコイルサウンド用として『New Horizon』レコーディングでも重宝されたフェンダーストラトキャスター、7弦用としてアイバニーズのRGを基にしたカスタムモデルも。さらに12弦のギブソンレスポールという珍しいモデルも使用されたようだ。アコースティック・ギターでは、マーティンのジョン・メイヤー・シグネイチャーをメインに、ヴィンテージのマーティンのOOO-18が柔らかな音色を奏でている。

ギターアンプは、松本孝弘のギターテックチーム“FAT”による開発モデルをレコーディング/ライブ問わず愛用。アンプヘッドはクリーン用でFAT10、ディストーション用にFAT13という使い分けとなっている。スピーカーキャビネットはセレッションのヴィンテージ30を4発搭載したボグナー製。「できるだけアンプ直のサウンドメイクを行なった」ということで、ギターテック曰く「ディストーションサウンドはアンプで作り、ソロでブースターをかける程度。空間系は卓でかけた」。その他のエフェクターも必要に応じて抜き差ししており、アンプのセンドリターンを通したのはヴォリュームペダルだけだったようだ。

エフェクターもほとんどがFAT開発によるもので、MXRのフェイズ100を使用したのはFATではフェイズを開発していないことが、その理由。ソロで使用したFAT514.D(ブースター)やクリーンで常時ONにするFAT214.K(コンプレッサー)をはじめ、FAT314.C(コーラス)、FATフィックスド・ワウ(ツアーサンプル)、そしてジムダンロップ製TM95 / TAK CRY BABYやデジテックのワーミーなど、やはり基本的にはツアー<B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT->と同様のものがレコーディングで使用されている。以下、今回のレコーディングで使用したギターレコーディング機材のひとつひとつを写真と併せてご紹介していく。

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▲<Gibson Les Paul Gold Top 1956 P-90 #615315(※写真左)>
ピックアップにP-90を2つ搭載した1956年製のヴィンテージ。「enigma」「Drifting」「Hopes」「Under The Sun」「Mystic Journey」で重宝されるなど、レスポールの中では使用頻度の高いゴールドトップ。ちなみに「Mystic Journey」ではGibson Les Paul Standard 1959 #9-1156も使用したほか、「enigma」「Drifting」ではGibson Les Paul 12 Stringsの使用も。

▲<Gibson 1958 Les Paul Chambered Lightly Figured Top Washed Cherry #CR87124(※写真右)>
「松本さんはこのギターが気に入っていると思う」とギターテックも語るチェンバー構造のレスポール。虎目のメイプルトップにウォッシュドチェリーのフィニッシュが美しい1958年モデルのリイシューで、ボディ内部がくりぬかれているため、軽量に加え、鳴りが豊かな独特のサウンドキャラクターを持つ。「Vermillion Palace」で使用。


▲<Gibson Les Paul 1957 Gold Top Reissue #1-8283(※写真左)>
1957年製をモチーフとしたゴールドトップのリイシューは、ツアー<B'z LIVE-GYM Pleasure 2008 -GLORY DAYS ->や<B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT->でも使用。ピックガードが外されていることに加え、ピックアップカバーも外してゼブラカラーに。「enigma」で使用。

▲<Gibson Les Paul Standard 1961 #15712(※写真右)>
SGシェイプの同モデルは、1961年の開発当初レスポールと呼ばれていた最初期のもので、トラスロッドカバーに“Les Paul”の刻印が。<B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT->でも使用した松本孝弘生まれ年のギターだ。「enigma」「Drifting」「The Voyage」「Roppongi Noise」「Mystic Journey」で使用。


▲<Gibson Tak Matsumoto Firebird Trans Black Burst prototype #3(※写真左)>
Tak Matsumotoシグネーチャーのファイヤーバード。松本は同型のカラーバリエーションモデルを数本所有しているが、他のファイヤーバードと比較して、丸みのある音色が特徴のこのモデルは「Ups and Downs」「Rock The Rock」「Drifting」「Hopes」「Under The Sun」で使用。ちなみに「Rock The Rock」で使用したのはこの1本のみ。

▲<Gibson Tak Matsumoto Firebird Vintage Sunburst prototype #1(※写真右)>
Tak Matsumotoシグネーチャーファイヤーバードのプロトタイプ1号機。日本人ギタリストのシグネーチャーモデルとしてファイヤーバードが採用されたのはこれが初。Gibson Les Paul Standard 1959 Reissueと共に『ミュージックステーション』テーマソングのリ・レコーディング曲「#1090 ~Million Dreams~」で使用している。


▲<Gibson Flying V Korina 50th Anniversary 2008 #8-8163(※写真左)>
コリーナ材を使用したフライングVが1958年に発売されてから、50年後の2008年に100本限定で生産されたアニバーサリーモデル。松本自身の長いキャリアの中で初購入のフライングVとなるもの。「enigma」「Vermillion Palace」「Step to Heaven」「Hopes」「Dream Drive」「The Rock Show」で使用。「Step to Heaven」「The Rock Show」はこの1本のみでレコーディングされた。

▲<Ibanez 7-Strings(※写真右)>
アイバニーズの7弦ギターRGを基にして、TAK用に製作されたモデル。2000年前後にアイバニーズからプレゼントされたもので、イエローのカラーリングが当時のTakモデルを彷彿とさせる仕上がりだ。「Ups and Downs」の重低音で使用された。


▲<Fender Stratocaster 1969 Reissue(※写真左)>
松本自身が「3年くらい前にLAのギターセンターで見つけて買ったんです。何本か用意してくれて、その中から選ばせていただきました。これはレコーディングで使える!って」と語るカスタムショップ製1969年モデルのリイシュー。「Hopes」「Dream Drive」「Roppongi Noise」で使用。

▲<Martin John Mayer Signature Model #2463(※写真右)>
やや小さめのボディが身体にフィットしやすいというジョン・メイヤー・シグネーチャーは、「enigma」「Drifting」「The Voyage」「Hopes」「Under The Sun」で使用した。また、「Mystic Journey」ではMartin OOO-18 1937 #69867を使用している。

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