倉木麻衣が5月1日に大阪城ホール、同6日に東京国際フォーラム ホールAにて行われた<TV&MOVIE 20周年記念『名探偵コナン』コンサート2016>へスペシャルゲストとして出演した。先ごろ公開した速報レポートに続いて、東京公演の詳細レポートをお届けしたい。なお、写真は大阪公演時のカットも盛り込んでご紹介する。

◆倉木麻衣 画像

『名探偵コナン』の20年。それは江戸川コナンと仲間たちの終わりなき活劇であり、子供も大人も、世代を超えて受け継がれるエンタテインメントであり、スタッフや声優、ミュージシャンにとっては、共に歩んできた人生の物語でもある。5月6日、東京国際フォーラム ホールA。<TV&MOVIE20周年記念『名探偵コナン』コンサート2016>。それはコナンに関わるすべての人に捧げる、オーケストラ演奏と共に繰り広げる壮大な音と映像の夕べだった。


開演前、オープニング・アクトに抜擢されたシンガーソングライターの焚吐 (たくと) が、TVアニメ版の最新エンディング曲「ふたりの秒針」を、独特のフェミニンな歌声で披露する。沸き上がる温かい拍手。場内のムードはまさにクラシック・コンサートだ。司会進行、ラジオDJの大抜卓人と読売テレビアナウンサー諸國沙代子が、コンサートの趣旨を丁寧に解説する。午後6時半、いよいよ開演だ。

オープニングは、コナンと怪盗キッドとの軽妙な掛け合いから。ライバルでありながらどこか通じ合うこの二人、「今日は邪魔すんじゃねえぞ」と言いつつ、最後は声を揃えて「名探偵コナンコンサート、スタート!」と叫ぶところがほほえましい。オーケストラによる1曲目は、おなじみのメインテーマ。背後のスクリーンには、名場面が続々と映し出される。立て続けに過去のTVアニメのオープニング曲、つまりザ・ハイロウズ「胸がドキドキ」から稲葉浩志「羽」までの42曲をすべて含む、12分に及ぶ圧巻のメドレーだ。ピアノと弦楽器と管楽器、ドラムやパーカッションなどバンドも加わった分厚いサウンドが、ホールAの高い天井いっぱいに鳴り響く。予想以上に躍動感のある、リズミックな演奏に思わず体が動く。


阿笠博士と4人の少年探偵団による楽しい掛け合いをはさみ、“事件と推理”とタイトルされたコーナーは、その名の通り様々な事件と推理の名シーンからピックアップした音楽と映像のコラボレーション。走る、飛ぶ、追いかけるなどスリリングなシーンの連発と、スケボーやサッカーボールなど定番の名場面を、スピード感たっぷりに再現するオーケストラ。音と映像のシンクロは完璧だ。

続いてスクリーンに映し出されたのは、劇場版第2作『14番目の標的』のダイジェスト。98年4月公開、すでに18年前の作品だが、コナン映画のストーリーの巧みさや心理描写のクオリティの高さは、過去も現在も変わらない。そして、流れ出した歌声を聴いて思わず息を呑んだ。曲は『14番目の標的』主題歌、ZARDの「少女の頃に戻ったみたいに」。オーケストラの生演奏に乗せた坂井泉水のヴォーカルが、目の前の舞台で歌っているかのように生々しい息使いで聴こえてくる。さらに劇場版第9作『水平線上の陰謀(ストラテジー)』の主題歌「夏を待つセイル(帆)のように」、そして劇場版12作『戦慄の楽譜(フルスコア)』から「翼を広げて」。あまりの臨場感に唖然とするほど、見事な再現だ。スタッフも同じ気持ちだったらしく、直後の蘭と園子のナレーションで「……感動して涙が出ちゃう」と言わしめている。コナンにまつわる思い出の中でも、ZARDの存在が特別なものであったことがよくわかる、極めて印象的な名シーンだった。


ここで15分間の休憩が入る。のだが、客席前方に現れたコナン、キッド、蘭、小五郎の等身大キャラのおかげで、会場内は大歓声。コナンファンもキッドファンも入り乱れて盛り上がったあと、後半のスタートを告げたのは、博士と少年探偵団のナレーション。博士の寒いダジャレを引き取って、怪盗キッドが気障なセリフを放つ。「ここからイリュージョンの世界へいざなうぜ」。曲は「怪盗キッドの予告状」「次のターゲット」など、キッドの名場面と共に演奏される楽曲は、ほかのキャラクターの曲とはひと味違い、ジャズやファンクの要素を取り込んで、なんともおしゃれでかっこいい。

再び登場したコナンとキッドのトークバトルのあとは、キッドが主役級の活躍を見せる劇場版14作目『天空の難破船(ロスト・シップ)』のダイジェスト映像を。大迫力の空中バトルをたっぷりと披露し、そのあとに演奏されたのはもちろんその映画の主題歌だったGARNET CROW「Over Drive」。続けて「涙のイエスタデー」「君という光」と、TVアニメ版で使用された楽曲を含む3曲を、オーケストラ・アレンジで再現する。インストゆえにメロディの良さが際立つ、壮大な聴き心地だ。

お次のパートのテーマは、“蘭と新一の思い出の曲”。「蘭のテーマ」をはじめ、甘いシーンのバックに流れる楽曲はどれもロマンチックでメロディアス。コナンシリーズの中では独特の位置を占めているが、こうしてまとめて聴くとそのメロディの豊かさがよくわかる。そして劇場版第7作『迷宮の十字路(クロスロード)』のダイジェスト映像へ。京都を舞台にした和風情緒いっぱいの設定と、刀剣アクションをたっぷり見せるシリーズ屈指の人気作。そしてこの映画の主題歌を歌うのは……そう、倉木麻衣。事前に予告されていた、このコンサートのスペシャル・ゲストがいよいよ登場する。


オーケストラが奏でる「Time after time ~花舞う街で~」のイントロに乗せ、ステージに登場した倉木麻衣は、たっぷりと裾を広げたゴージャスなプリンセス・ドレス。ピンク地に赤の花模様やリボンをあしらった艶やかな姿で、美しいエアリー・ボイスを響かせて歌いだすと、場内の空気が変わった。スクリーンに映る凛とした表情を息を詰めて見つめ、一音も聴き漏らすまいという緊張感。倉木麻衣のファンならご存じだろう、あの<Symphonic Live>シリーズの空気感の再現だ。

「名探偵コナン、20周年おめでとうございます。今日はみなさんと一緒にお祝いできることを本当に楽しみにしてきました」──倉木麻衣

このコンサートの音楽監督をつとめ、指揮とピアノも担当する大貫祐一郎と、この日のために編成されたスペシャル・オーケストラを紹介すると、次に歌ったのは「白い雪」。涼やかなベルの音が美しい、ロマンチックなスローバラード。続く「風のららら」は爽やかなアップテンポで、ドラムも入ってアクティブに。前者は2006年、後者は2003年、どちらもTVアニメ版で起用された曲だ。あれからずいぶん時間は過ぎたが、倉木麻衣の美しい声と表情、コナンの鋭い推理と行動力は今も変わらない。そしてもう1曲「Secret of my heart」は、2000年、倉木麻衣とコナンが初めてコラボレートした思い出の1曲だ。


と、ここで飛び込んできたのが「倉木さん、素敵な歌声をありがとうございます!」という元気な声。おや、工藤新一くんじゃないですか。「ご一緒できてとてもうれしいですと」と倉木麻衣。新一の「一番思い出に残っている曲は?」という質問に、「Secret of my heart」と答え、当時学生で学業と音楽の両立に苦心していた自分を思い出し、「テレビからこの曲が流れて本当に励まされました」と、感慨深げに振り返る。逆に倉木から新一へ、「新一くんは蘭ちゃんのことをどう思ってるんですか?」という直球の質問に、しどろもどろになる新一の答えに場内爆笑。会場内の張りつめた空気が、柔らかくほぐれてゆく。

「これからも世界中で愛されるアニメとして、私からエールを送ります」──なごやかな時間を締めくくる最後の1曲は、劇場版第5作『天国へのカウントダウン』主題歌「always」。ステージ前に歩み出て大きく手を振り、「みなさんもご一緒に!」と笑顔を見せる倉木麻衣。歌詞の一部を♪20周年記念/ずっとこれからも応援しています、と替えて歌う、コナンへの愛の深さが伝わる演出に、会場を埋めた観客が大きな手拍子で応える。全5曲30分、倉木麻衣のステージは、間違いなくこの日一番ハイライトだった。


と、思ったのだが、ここで終わりではなかった。再び登場した司会者が、コナン役の高山みなみ、キッドと工藤新一役の山口勝平を呼びこむ。その時の大歓声は、予想をはるかに上回る熱烈なものだった。原作、脚本、キャラクター、声優、音楽、そのすべてが組み合わさって生まれる『名探偵コナン』の世界で、20年間主役を演じ続けてきた二人へのリスペクトが伝わる、素晴らしいシーン。

最後に二人が語った、これまでのエピソードと、これからの抱負。公開中の劇場版第20作『純黒の悪夢(ナイトメア)』への自信と意気込み。高山みなみが「これからもみんなと一緒に思い出を作っていきましょう!」と叫ぶ。そして最後の演奏は、オープニングとおなじメインテーマ。エンディングの瞬間、爆音と共に青と赤のテープが空中高く発射された。拍手、歓声、スタンディング・オベーション。それは今日の出演者への感謝と共に、20年間にわたるコナンの活躍に対する心からの賛辞の証だった。

音と映像とトークをふんだんに盛り込んだ、贅沢な2時間半。テレビと映画で繰り広げられてきた『名探偵コナン』の20年の軌跡を、たっぷりと堪能できた素晴らしい一夜だった。

取材・文◎宮本英夫


■<TV&MOVIE20周年記念『名探偵コナン』コンサート2016>

2016年5月1⽇(日)大阪城ホール 開演16:00
2016年5⽉6日(金)東京国際フォーラム ホールA 開演18:30

◆倉木麻衣 オフィシャルサイト